長距離輸送を終え、一条凛は夕暮れのアパートへ戻ってきた。オレンジ色に染まった空。古い扉を押して、一歩敷地に入ると、一日の緊張がふっとほどける。「ふあー、今日も頑張ったー」誰に言うでもなく、小さく呟いた。郵便受けを開け、自分宛ての郵便を取り出す。その時だった。「あれ……?」思わず視線が止まる。407号室の隣。404号室の郵便受け。いつもなら、『白石』と書かれたネームプレートがあるはずだった。けれど、そこには今、ガムテープが貼られている。「え……?」凛は目を瞬かせた。「空室……?」頭が追いつかない。白石が引っ越した。そんな話、一度も聞いていない。(何かの間違いだよね……。)胸がざわつく。荷物を抱えたまま、慌てて階段を駆け上がった。404号室。いつも見慣れた玄関。(なんだか……生活感がない……)不思議と凛はそう感じた。(……迷惑かもしれないけれど……確かめたい!!)凛は恐る恐るインターホンを押した。ピンポーン。返事はない。(……白石さん……?)胸のざわつきが強まる。何気なくドアノブへ手を伸ばすと——カチャ。鍵は掛かっていなかった。「……え?」凛は戸惑う。「白石さん?」恐る恐る扉を開ける。部屋は静まり返っていた。人の気配がない。凛はリビングへ足を踏み入れる。「あ……。」思わず息を呑んだ。家具がなくなっている。ソファも、冷蔵庫も。ほとんど何も残っていなかった。ついこの前まで笑い声が響いていた部屋。オムレツを食べて。唐揚げを作って。温かいスープを囲んだ食卓。その面影だけが、静かな部屋に残っている。「そんな……どういうこと……」白石が、何も言わずにいなくなるはずがない。そう信じていた。その時だった。ダイニングテーブルの上に、一通の封筒が置かれていることに気付く。黒い封筒。見覚えはない。だが、不思議と胸騒ぎがした。凛はゆっくりと手を伸ばす。封を開く。中には数枚の資料が入っていた。一枚。二枚。そして三枚目。その文字を見た瞬間、呼吸が止まる。《結婚式当日の狙撃は、神崎怜の指示によるもの》「……え。」目を疑う。読み違いではない。何度読み返しても、同じ文字が並んでいる。「まさか……」震える手で次のページをめくる。そこには、その内容を裏付け
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