All Chapters of こんなに好きなのに、伝わらないのなら――: Chapter 61 - Chapter 70

98 Chapters

弟の悲しみ11

辰之が大きくビクビクと全身を痙攣させた瞬間、俺の手がびちゃっと熱い液体で濡れた。 驚いて上半身を起こして見下ろすと、弟の肉棒が激しく脈打つたびに、透明で粘度の低い潮がだらだらと溢れ続けていた。 ベンチの上に大きな染みを作り、俺の手首まで伝って滴り落ちる。「うあ、ぁああっ♡♡ んッ……あっ、あんっ……もぅ……だめ……ッ!」 ぐったりと脱力しながら目を閉じ、荒い口呼吸を繰り返す辰之の姿は、ひどく淫らで儚かった。俺は言葉を失い、ただその濡れた股間を見つめてしまった。「あのさ、辰之……お前——」 「兄貴……やりすぎ。感じさせたいからって、潮吹きさせるなんて……信じられない……「潮吹き……!?」(おしっこじゃなかったのか……。ごしごしやりすぎて尿意を催させたのかと……) 俺が呆然としていると、辰之は恥ずかしそうに頰を染めながらも、俺のブレザーの襟をぐいっと引っ張ってきた。「兄貴のバカ……責任、取ってよ」 「責任って……ちゃんと拭いてやるから」 「そうじゃなくて……僕、まだイキ足りないんだけど?」 「えっ……?」 辰之は上目遣いに俺を見つめ、熱い吐息を漏らしながら続けた。「兄貴の勃起したあれを見せられたせいで……奥が疼いて、どうしようもないんだよ」 そう言いながら、襟を掴んだ手で俺のブレザーの裾を捲り上げ、すでに痛いほど硬くなった俺の股間をわざと見せつける。ズボンの上からでもはっきりとわかるほど、大きく膨らんだそれを。「ここ……これについては構うなとか、刺激を与えるなとかお願いしたくて!」 弟の視線が熱く、ねっとりと俺の股間に絡みつく。ごくり、という俺の喉の音が、静まり返った部室に妙に大きく響いた。「宏斗兄さんは……僕とひとつになりたくないの?」 「ひ、ひとつって……あの、この間俺の部屋でしたアレ……?」(勃起したままこんなマヌケな質問をする俺は、本当に最低だ……) 視線を彷徨わせていた俺は、渋々辰之の顔に向き直った。そこにあったのは、意地悪くも艶めいた微笑みだった。弟は唇を少し尖らせながら、甘く囁く。「さっきはバイブを取り除くことに必死だったから気づいてなかったかもしれないけど……僕は、挿入された兄貴の指に感じまくってたよ。バイブなんかより……ずっと、ずっと気持ちよかった」 辰之は俺の手に自分の濡れた尻を触れさせながら、熱い吐
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弟の悲しみ12

「兄貴――」 ブレザーの裾を強く引っ張り、俺に自分の顔をしっかり見させる辰之。その瞳は痛いほどに熱く、想いが溢れんばかりに揺れていた。 だからこそ、この瞬間に伝えなければと思った。「辰之……俺は、弟としてじゃなく、一人の男として……お前が好きだ。愛しくて、愛しくて……このままじゃ、お前をめちゃくちゃに犯してしまいそうなくらい……」 声が上ずり、ところどころ裏返りながらも、俺は必死に想いを吐き出した。 辰之は一瞬目を見開いたあと、頰に満面の笑みを咲かせた。それは見惚れてしまうほどに甘く、嬉しそうで淫らだった。「兄貴……これまですれ違った分だけ、思う存分に僕をめちゃくちゃにしてほしい。宏斗兄さんの中に燻ってる気持ち……全部、僕にぶつけて。今すぐに!」 互いの顔が自然に引き寄せられ、唇が重なった。 熱く、湿った、貪るようなキス。辰之とキスをするのはこれが初めてじゃないはずなのに、胸が苦しいほどに鼓動が鳴り、唇が震えて情けないくらいおぼつかないものになった。 それでも辰之は俺の未熟なキスを優しく受け止め、逆に自ら舌を差し入れてきた。ねっとりと絡みつき、唾液を啜るような深い口づけ。甘い吐息が混じり合い、部室内に卑猥な水音が響き始める。「ん……はぁ……宏斗兄さん……もっと……」 キスを繰り返しながら、俺は弟のワイシャツを乱暴に引き剥がし、白い肌を露わにした。指先で乳首を摘まみ、強く転がすと、辰之が甘く喘いで俺の背中に爪を立ててくる。「宏斗兄さん……うぅっ……俺をもっと求めて……ぁあんっ、すごくいいよ……」 その声に理性が溶けていく。俺は辰之をその場に押し倒し、首筋を貪るように吸い上げ、胸から腹へ、太ももへと唇を這わせた。潮でまだ湿っている股間に顔を埋め、敏感になった肉棒を再び口に含む。 じゅぽっ、じゅるるっ……れろれろっ……。 昼休みの短い時間など、もうどうでもよかった。5限目のチャイムが鳴っても、俺は辰之から離れられなかった。弟の窄まりに指を沈め、かき回し、十分にほぐしたあと——俺は熱く脈打つ自分の肉棒を、辰之の濡れた尻穴に押し当てた。「入れるぞ……辰之……」 「うん……きて……兄貴の全部、奥まで……」 熱く締まる腸壁に包まれながら、俺は弟の最奥まで一気に突き入れた。辰之が背中を仰け反らせ、甘く長い喘ぎ声を上げる。 放課後を知らせる合図
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兄貴の悦び

僕の思惑どおりに、兄貴と両想いになれた。なれたのだが、思っていたのとちょっとだけ違った。「辰之、わざとこの問題を間違っただろ?」「わざとじゃないって。難しいのからいきなり簡単な問題になったせいで、変に難しく考えたというか」 現在自室にて宿題中。机に向かい問題に取り組んでいるのだけれど、椅子に座った兄貴の膝の上でさせられているのである。お尻のすぐ傍に兄貴のち〇ぽがある状況で、マトモに宿題なんてできるわけがない! というか、どうして兄貴はこんなことをするのか、さっぱり理解できなかった。「俺よりも頭のいいおまえが、こんな問題で躓くなんておかしいだろ」「おかしいのは兄貴だよ。どうして僕を膝の上にのせるのさ?」 ある意味拷問である。僕の集中力を試すために、わざとやっているとしか思えない。「どうしてって、辰之の躰を感じるにはこれが一番だと思ったから。太ももにかかる体重にしても、こうして後ろから抱きしめたときのぬくもりとか、いっぺんに感じることができるだろ」 小さく笑いながら僕の頭に顔を寄せて、思う存分匂いを堪能する。兄貴の両腕は緩く僕を抱きしめて、勉強に支障がないように施されていた。「兄貴、エッチしたい」「だ~め。ここでしたら辰之は宿題を投げ出すのが目に見えるだろ。それにリビングに声が丸聞こえになる。だからしない」「宿題が終わったらしようよ……」 部室で僕のことを抱き潰した兄貴。タガが外れたように腰を激しく動かして、僕の中にたくさん欲を注いでくれた。それは部室に備え付けられている、シャワールームでも続いたんだ。『辰之のナカきもちっ、い、あ、イクっ、たぁ…辰之っ…!…ぅ、すご………っ、も、無理、ださせてっ、もう』「んぅっ、きてっ…いっぱい俺の中に出して!」
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兄貴の悦び2

熱いシャワーが頭から降り注ぐ中、兄貴にバックで執拗に犯され続けていた。全身がびしょ濡れで水音はほとんど聞こえないのに、兄貴の低く掠れた声だけが、耳の奥に直接響いて僕を狂わせる。 部室で繋がって以来、兄貴は今まで隠していた欲望を全部さらけ出すようになった。「辰之……お前が好きだ……あぁっ、もう出るっ……!」 最奥をぐりっと抉るような深いピストン。兄貴の太い亀頭が、僕の敏感な前立腺を容赦なく突き上げるたび、脳みそがとろけて思考が溶けていく。 熱い精液が勢いよく僕の奥にぶちまけられた瞬間も、兄貴は腰を止めるどころか、さらに激しく動き続けた。どくどくっと注がれる精液を掻き回されながら、僕は限界を超えた快感に襲われる。「ああァっ!!!♡♡ やっ……な、んんん゛っ……なんかァ……くる゛っ、くる、きちゃうッ……!」 壁に手をついたまま、僕の肉棒がびゅっ、びゅるるっと透明な潮を勢いよく噴き出した。シャワーの床に飛び散るのを、兄貴の手がすぐに掴んでごしごしと激しく扱き始める。「ああぁっ♡ んんん……っ! もうやだ……出ないってば……イッたのに……っ!」 『ヒクヒク締め付けてきて……すっごく気持ちいいぞ、辰之……』 兄貴の声が低く艶めいて耳に落ちる。『また潮吹き見せて。繋がったままで、どんなふうに噴くのか……俺に見せてくれ』(兄貴……探究心強すぎ……こんなことされたら、本当に狂っちゃうよ……)「らめぇ……っ! やめ、あ゛ぁっ♡ おかしく……なる゛ッ……!」 膝がガクガクと崩れ落ちそうになり、僕は兄貴の上半身に体重を預けた。すると顔面に直接シャワーの熱い湯が降り注ぎ、息が苦しくなる。兄貴はすぐにシャワーを止めてくれたが、代わりに後ろから僕の顔を強引にねじ向け、呼吸を奪うような深いキスを浴びせてきた。「ンンっ……! ぁ、兄貴ぃっ……好き……好きだからぁ……」 『俺も辰之が好きだ。もう誰にも触れさせない……お前は俺だけのものだ』 低く独占欲に満ちた声。兄貴の手が僕の胸に回り、乳首を痛いくらいに摘まんで捻り上げる。同時に腰が再び激しく動き出し、結合部からぐちゅぐちゅと淫らな水音がシャワールームに響き渡った。 前立腺を抉る肉棒、乳首を責める指、そして貪るようなキス——三点同時の責めに、僕は完全にメスイキさせられた。「あ゛ぁああっ……!! い、いく……またい
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兄貴の悦び3

「辰之がシたい気持ちはわかるけど……」 この間のことを思い出しながら問題を解いていたら、不意に兄貴が喋りだした。その声は元気がなく、話の続きをどこか言いにくそうにしたまま口を噤んだ。 気まずい雰囲気が部屋の中に充満するのを感じたので、シャーペンをノートの上に置き、振り返って背後にいる兄貴に視線を送る。兄貴の目線は僕にはなく、横を向いて頬を赤く染めた状態だった。(なんだか、兄貴と出逢ったあとのことを思い出すな――) 小学6年の兄貴の見た目は、僕よりもうんと大人に見えたのに、たったひとつしか違わない僕の扱いに困ったのか、幼い子どものようにされた。なにかあってもなくても頭を撫でたり、どこかに出かけたときは必ず手を繋いで、迷子にならないように気を遣ったり――。 兄貴はバレーボールの少年団のクラブに入っているから、年下のコとも当然交流しているはずなのにと、当時はひどく困惑した。 僕に対する扱いのすべてがとても恥ずかしかったけれど、兄として一生懸命に尽くしてくれる宏斗兄さんの姿を見ているうちに、無条件に好きになってしまった。『俺は辰之の兄として、仲良くしていきたい! だけど迷惑なことがあったら、遠慮せずにちゃんと言ってくれよな。辰之に嫌われたくないし』 頭を掻きながら無邪気に笑う小学生の兄貴と、今の兄貴の顔がたぶって見えた。「兄貴……」 子ども扱いされたくなかったゆえに、僕は宏斗兄さんを兄貴と呼ぶようになり、出かけたときは並んで歩くことを推奨させ、手を繋ぐ行為をやめさせた。「辰之、そんな目で見るなよ……」 兄貴は顔を背けた状態を維持しながら、横目で僕の顔を見下ろす。頬だけじゃなく、耳朶まで真っ赤になっているのが確認できた。「そんな目?」「好きがいっぱいっていうか、そんなふうに見つめられるとすっごく困る」 困ると言ってるのに、兄貴の両腕は僕の躰をぎゅっと抱きしめた。必然的に距離が近くなったお蔭で、兄貴のシャープな頬にキスを落とすことができた。「辰之っ!」
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兄貴の悦び4

照れを含んだ兄貴の声が、心地よく耳に聞こえた。「兄貴ってば僕との距離感がわからなくなって、お手上げ状態になってるでしょ?」 気持ちが弾んでいることがわかる僕の言葉に、兄貴は面白くなさそうな表情をする。「そういうおまえは、随分と余裕があるみたいだな」「だって僕はずっと、兄貴に恋愛感情を抱いていたし。むしろ今のこの状況を、結構楽しんでいるよ」 後ろからハグする兄貴の体温が背中に伝わってきて、眠たくなってしまう。さっきまでエッチなことがしたかったはずなのに不思議だ。「楽しんでるって、俺の困ってる様子を見て、腹の中で笑ってるのか……」「笑ってなんていないよ。すべてが愛おしくて、幸せを噛みしめてる」「辰之――」 逸らされたままでいた兄貴の視線が、ゆっくり僕を直視する。絡み合う視線を嬉しく思って、口角をあげながら話しかけた。「どこか無理だと思ってた。兄弟以上の関係になれないって。だけど兄貴に彼女ができたことを知って、絶対に諦めたくない気持ちに火がついたんだ」 僕を抱きしめる兄貴の大きな手の上に、自分の小さな手を重ねた。出逢った頃と変わらない互いの手の大きさの違いに、懐かしさをほんのり覚える。「俺は辰之に襲われて、信じられない気持ちでいっぱいになった。こんなこと異常だって頑なに否定したんだけどさ。おまえが若林先輩と付き合うって聞いた瞬間から、胸の中に表現しがたいモヤモヤが表れて」「そんなことがあったんだ」 僕の隣にはいつも兄貴がいた。その状況を一変させるなにかがあれば、兄貴の心に変化が生まれると見越した、僕の作戦勝ちといったところだろう。 凝視する僕の視線を受け続けた兄貴は微笑みを消し去り、意を決したような面持ちで口を開く。「若林先輩に俺の考えがおかしいと指摘されてから、それまでの見方をリセットして改めて考え直してみた。弟じゃなくひとりの男として、辰之をどう想うかってさ」「兄貴……」「辰之が俺に視線を合わせないだけで、不安に苛まれたこともあって、それがきっかけになって、いろんなことを思い出したよ。そしたら愛しく想う心と好きだっていう気持ちだけが、綺麗に抽出された」
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兄貴の悦び5

兄貴の顔が近づいてくることでキスされるのを察し、慌てて瞳を閉じた。押しつけられる唇は、軽く触れただけで終わったけれど、僕から強引にキスをしかける。「ん、うっっ!」 鼻にかかる兄貴の甘い声を、もっと聞いていたい。「たっ辰之、もっ…やめっ」「やめたくないよ、兄貴を僕の虜にしたい。僕だけを見て、好きでいて。ずっと傍にいて、お願い……」 兄貴は無頓着なところがある。自分がどれだけイケメンでモテるか、さっぱりわかっていないこと。隣でそれを垣間見る僕の複雑な気持ちなんて、全然わからないだろうな。「俺は辰之をずっと好きでいるよ。こうしているのも、抱く以外におまえを感じることができるのを、いろいろ模索しているからなんだぞ」「模索するのはいいけど、ほどほどにしないと、僕の欲求不満が爆発するかもしれない」「アハハ……。部室では俺が爆発しちゃったもんな。躰、大丈夫か? 辰之が気を失ったときは、肝が冷えまくった。ヤりすぎたってさ」 僕がクスクス笑いながら本音をぶつけると、兄貴は困ったように頭をかいて微笑んだ。和やかな雰囲気にのせて、あのときのことをさらに突っ込んで問いかける。「気持ちよかった?」「ん~、潮吹きしてるときより、イったときのほうが好きかも。締めつけ方が微妙に違うんだ」「まだ一緒にイったことないよね」「俺としては、大好きな辰之をイカせることに全力だから。イく瞬間の顔、すっごく可愛いんだ。ずっと見ていたいと思うくらいに」 耳元で告げられたセリフの返事をしようとしたら、抱きしめる兄貴の両腕が痛いくらいに僕を締めつけながら、顔がぎゅっと押しつけられた。なんていうか小さな子が抱っこしている、ぬいぐるみになった気分。「兄貴ってば……」 以前の僕ならこんな愛情表現よりも、肉体関係を伴うものを欲していた。兄貴とヤりたくて堪らない気持ちのほうが強かったはずなのに、こうして甘やかされていると、それもアリだなと思えるように変化しつつある。「辰之大好き」 この幸せを守るために、僕は行動しなければならない。まずは今回のことで協力してくれた若林先輩に報酬を与える。そしてもうひとつ――。「僕も宏斗兄さんが大好きだよ」 兄貴を狙っているであろうとある人物に釘を刺すことを、抱擁されながらしっかりと考えたのだった。
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兄貴の悦び6

*** 若林先輩にきちんと報酬を渡すため、昨夜LINEで打ち合わせした。 次の日の中休みに、同じフロアにある教材室で待っていると、廊下を走る靴音がどんどん近づいてくる。慌ただしいその音に呆れて、苦笑いを浮かべたタイミングで、勢いよく扉が開かれた。「お疲れ様、若林先輩」「辰之くん、黒瀬と両想いおめでと。報酬、本当にいいのかよ?」 息を切らしながら扉を閉めて僕に近づく若林先輩に、会心の笑顔をみせた。「当たり前でしょ。若林先輩の説得のお蔭で、僕らは両想いになれたんだし。でも全部はあげられません、時間がちょっとね」「それって、どこまで――」 生唾を飲んで僕に手を伸ばした若林先輩に、スマホにつながっているイヤホンを押しつけた。「実際に聞いてみてよ。僕の喘ぎ声がすべてを語ってる」 弾んだ声の説明を聞くなり、慌てて両耳にイヤホンを装着し、音が聞こえるのを待つ若林先輩の顔が、すっごく面白い。再生ボタンをタップしてそれを聞かせた瞬間に真っ赤に頬を染めて、恥ずかしそうに口元を押さえた。「す、すげぇ…黒瀬のヤツご褒美とか言って、ちゃっかり辰之くんにむしゃぶりついて」 あのとき兄貴にされてることをわざわざ実況したのは、このためだった。ブレザーのポケットに忍ばせたスマホから録音した。 以前音楽室での行為を録音したことにより、若林先輩がそっち系に目覚めたのがわかったので、あえて今回の報酬にしてやった。「辰之くん、俺とシたときよりも感じてるだろ。声がマジで可愛いしエロい!」 ただし、報酬は兄貴にフェラされてるところまで。今後なにかあったときの報酬として、残りの声をストックしておこうと中途半端にブチ切った。「辰之くん、俺と」「絶対にしないよ。最初からそういう約束だし、もし手を出したら音楽室の音声を公表して、若林先輩の将来にキズを――」「ごめんごめん、冗談だよ……。おっかない顔で怖いこと言わないでくれ」 睨みながらぴしゃりと言い放った僕に、若林先輩はわざとらしく怯えた顔をして、教材室の隅っこに逃げる。距離をとってくれたことで、自動的に己の身の安全が確保された。「若林先輩、LINEに音声を送っておくね。コレの続きはあるんだけど、僕になにか問題があって、助けてほしいときにプレゼントするから」「わかった。必ず手を貸すから、遠慮なく言ってくれ」 こうして、もしも
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兄貴の悦び7

*** 一緒にお昼を食べようと、僕から進んでその人物を誘ったら、ソイツは二つ返事でOKした。晴れ渡る空が見える屋上に向かって階段を昇る僕の隣で、笑いながらついてくる。お弁当を食べ終えたらはじまる、僕からの糾弾を知らずに――。「黒瀬とこんなふうにふたりでお昼を食べるのって、久しぶりになるかもな」「そうだね。いつもだったらギルドメンバーで顔を突き合わせながら、ゲームの話をしているし」「アイツら、黒瀬と話したそうにしてたのにいいのか?」「毎晩ゲームでチャットしてるのに、わざわざ学校でしなくてもいいと思うよ」 日の当たる場所に設置されているベンチに座ると、ほのかな暖かさを感じた。そんな和やかな雰囲気の中で、互いの弁当に舌鼓を打つ。今日のテストで頑張れるようにと、お母さんが僕のために大きなハンバーグを作って、弁当箱のど真ん中に入れてくれた。「あのさ黒瀬……えっと」 箸を使ってハンバーグを半分にぶった切り、口に突っ込んだ瞬間に話しかけてきた。「んぅ? なあに?」 緊張感を孕んだ声が耳に聞こえたが、なにも知りませんというふうを装い、ハンバーグを咀嚼しながら返事した。「どうして俺だけ誘って、一緒に弁当を食べようって思ったのかと……」「ん~、ふたりきりっていうのも、たまにはよくないかと思って誘ったんだ。箱崎には、いろいろお世話になってるしね」「そんなに世話してるつもりないけど……」「本人にその自覚がないってところが、箱崎らしいというべきなのかも。はじめて逢ったときのことを思い出すよ。こうやってふたりきりで話をしてるとさ」 弁当に入っている人参のグラッセに口をつけつつ、青空を眺めた。 箱崎と出逢ったのは、こんなふうに青空が眩しく見えた4月の入学式だった。お互い席が離れていたけれど、クラスでおこなった自己紹介で、中学時代にバレー部だったと言った箱崎に興味を抱き、休み時間に僕から話しかけた。『箱崎って、高校でもバレーをやるつもりなのかな?』 出逢い頭、いきなり部活のことについて問いかけた僕を、箱崎はアホ面よろしくぽかんとした顔で見つめる。ひとことも発しない箱崎に、僕はしまったと思った。自分の名前を名乗らずに馴れなれしく話しかけたことを、もしかしたら怒ってるかもしれないって。
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兄貴の悦び8

「唐突にごめん。僕、黒瀬辰之。ひとつ上の義理の兄貴がここのバレー部にいる関係で、箱崎に声をかけたんだけど……」「…………」「箱崎、もしかして怒ってる?」 固まる箱崎に顔を少しだけ寄せたら、ぶわっと顔を赤らめながら慌てて席を立った。その勢いは椅子を倒すくらいに。その物音のせいで、クラスメイトの視線が僕らに集中する。入学式早々に喧嘩をはじめたんじゃないかという、疑惑の視線をモロに浴びてしまった感じだった。 突き刺さるような周りからの視線にいたたまれなくなりかけたとき、箱崎は倒した椅子を急いで直しながら、やんわり声をかけてきた。「黒瀬、悪い。怒ってないから、全然! ちょっとビックリしただけ。考えごとをしててさ」 わざとらしく大きな声で言い放ち、小さく頭を下げる。その様子で、クラスメイトの視線から解放された。「そ、そうだったんだ。僕こそいきなり声をかけてごめん」「黒瀬のお兄さん、バレー部なんだ。もちろん、ここでもやるつもりだよ。そのために受験したんだし。お兄さんの話、もっと聞かせてほしいな」 そうして兄貴の前情報をしっかり仕入れた箱崎は、兄貴と仲良くなった。僕と同じクラスメイトだからという理由だけじゃなく、なんとなくふたりそろって、僕の話をコソコソしているような気がときどきしていた。 バレー部に顔を出した際に見る、兄貴と箱崎の表情がそれを物語っていたから――。 まだ食べかけだというのに、箱崎はさっさと弁当をしまって小脇に置く。どこか決心めいたものが、まなざしに表れているように思えた。(これはさっさとカタをつけたほうが、お互いよさそうだな――) 残ったハンバーグを口に放り込み、僕も弁当を片付けた。「箱ざ――」「黒瀬、若林先輩と本当に付き合ってるのか?」 話を切り出しかけた瞬間、箱崎が個人的に気になっていたことを口にする。僕は一旦唇を引き結んでから、息を吐き出すように言葉を発した。「あれはフェイクだよ。僕が付き合ってるのは」「黒瀬先輩だろ? 傍で見てたらわかるって。ふたりとも前とはなにか違うし。気づかないほうが変だと思うけどな」
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