All Chapters of こんなに好きなのに、伝わらないのなら――: Chapter 41 - Chapter 50

53 Chapters

兄貴の困惑2

 僕が想像した若林先輩の内面をズバリと告げたら、驚いた顔で痛いほどの視線を送る。『どうしてそう思う?』『だって、現役時代は兄貴とレギュラー争いをしたでしょ? イケメンで才能あふれる兄貴に、嫉妬していたんじゃないかと思ったのと、さっきのふたりのやり取りを見て直感したんだ』『さっきのやり取りなんて、ちょっとしか喋ってないだろ。それだけで俺が黒瀬のことを嫌ってるなんて思えるとか、どう考えてもおかしいって』 視線を宙に彷徨わせながら、あからさますぎるくらいに声が上擦っている若林先輩の様子は、僕の直感が当たった証拠だった。『嫌ってる相手の弟をヤることで、少しでも優位に立てると思ったから引き受けたんでしょ。僕は別にかまわないけどね』 歪んだ笑いを頬に浮かべて堂々と告げたら、若林先輩はボタンから手を放して立ち上がる。『黒瀬のヤツ、俺を罠にはめようとしたんじゃ――』『違うよ。兄貴は純粋に僕に嫌われたいだけ。兄貴だけじゃそれができなかったから、若林先輩を使ったんだ。人の手を使うことによって、卑怯な兄を演じたかったんだろうね』 言いながら両目をピアノの裏に走らせる。マスキングテープで固定された小さな物体は電源が入っているのか、赤く光っていた。『辰之くんはそれを知っていたのに、わざと捕まったのか?』『僕としてもこのまま、兄貴に嫌われてばかりもいられないんで、違う手段を駆使しようと思ってね。若林先輩、僕と手を組まない?』 うまく誘いつつ、ピアノの裏を顎で何度も指した。僕の動きを訝しく思った若林先輩は、屈んでピアノの裏に頭を突っ込む。『うげっ! 盗聴されてるじゃん!』『若林先輩じゃなかったんですか』『こんなことするわけないじゃん。ヤバかった……』 若林先輩はそれを外して、目の前に見せてくれた。わざわざ回転させて見せつけてから、電源を探してオフにする。『てっきり若林先輩だと思ったのに。僕をヤった証拠の声を、兄貴に聞かせるために仕掛けたんだと』『確かに。それはそれでアリだな』 持っていた盗聴器を床にポイすると、勇んで僕の躰に跨った。若林先輩の舐めるような視線を刺激する感じで、上半身をくねらせる。
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兄貴の困惑3

『僕、いい声で啼くよ。僕と手を組んでくれたら、若林先輩のスマホでもれなく録音できるけどね』『いいのかよ?』『その代わり、僕の言うことをきくことが条件。どうする?』 ピアノに両腕を括りつけられた状態でアピールするのは、それなりに困難を極める。だからこそ、その逆境に燃えずにはいられない。舌舐めずりしつつ、ワイシャツの開けたところから見え隠れしているっぽい乳首を揺らしてチラつかせ、それをエサにしてみる。 僕のアピールに気がついた若林先輩は瞳を細めて、にんまりと笑った。『生意気なタメ口で交渉するところは気に食わないけど、それ以外は許せるから手を組んでやるよ』 両手で僕のワイシャツを掴み、思いっきり全開にして顔を埋める。いきなりはじまってしまった行為の素早さに呆れたが、計画を完璧にしたかったゆえに、この動きを止めるしかない。『待って待って! 若林先輩のスマホで、これからのことを録音して証拠にしなきゃ。録音がスタートしたら、全力で嫌がるプレイを開始するよ。そのほうが若林先輩も楽しいでしょ?』『わかった、ちょっと待ってろ』 スラックスのポケットからスマホを取り出し、ご機嫌な様子で操作をはじめる。『若林先輩、録音がスタートしたら、スマホを床に置いてね。それと僕にキスしないこと』『注文が多いな、わかったよ。キスはしないが、他はなにをしてもいいんだろ?』『うん。好きにしてかまわない。どんなことでも受け入れてあげる』 キスだけは、どうしても他人としたくなかった。兄貴の綺麗な唇だけを忘れずに感じていたかったから――。『それじゃはじめるぞ』 わざわざ強姦の証拠をとってくれることに感謝しながら、僕は若林先輩に抱かれた。『んんっ…っぁ! や…め…っんん……ぁ』 泣きながら嫌がる僕を組み敷く若林先輩は、とても嬉しそうだった。快感に喘ぐ僕の耳元に顔を寄せて、録音されないように囁きかける。『宣言どおりマジでいい声で啼くのな。興奮が抑まらねぇよ。痕つけていいか?』『もう…やめて、くださぃ』 否定するセリフを口にしたけれど、首を縦に動かして大きく頷いた。喜び勇んだ若林先輩は、上半身のあちこちにキスマークをつけまくる。チクッとする独特な痛みに顔を歪ませながら、全力で嫌がるプレイに興じたのだった。
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兄貴の困惑4

*** 意外だったのは、若林先輩が早漏だったことだろうか。 僕の躰に触れる手やフェラなど、感じるところをすぐに見つけ出し、絶妙な力加減で触れる玄人ぶりを発揮していたというのに、ナカに挿入された衝撃ですぐにイった僕のあとに、若林先輩も引きずられる感じで熱い液体をぶちまけた。『奥まで挿入した瞬間にイっちゃったね。トコロテンするとか、めちゃくちゃかわいい』(――その言葉、そっくり貴方に返しますよ) なぁんていう裏事情があったりと、他人との行為自体をそれなりに楽しませてもらった。 軽い打ち合わせを終えてから、若林先輩が音楽室を出ていったあとは、床に放置されたままの盗聴器の中身を確認する。録音が開始されたと思われるのは昼休み。しばらく無音が続いてから、5時限目の音楽の授業が録音されていたので判明できた。 早送りしつつすべて聞き終えてから削除して、ふたたび電源を入れてピアノの裏に貼りつけし直した。僕の靴音と音楽室の開閉の音のみしか拾っていない盗聴器を聞くことになる犯人の気持ちを考えると、気の毒でならない。(毎回逢瀬の場所は僕が指定して、盗聴器の有無などを下調べするとして――) 今後、若林先輩と逢瀬の予定がある。行為の前に室内に盗聴器が仕掛けられていないか調べてからじゃないと、安心することができない。 そしてこの流れでいくと若林先輩と付き合うことになったとき、兄貴は責任を感じて止めに入ってくれるだろう。しかしながらそこには好きという感情がないままだからこそ、すんなりと別れるわけにはいかない。 数学のノートの隅っこに指先に力を込めて、小さな文字で走り書きした。『宏斗兄さん大好き』 すれ違った僕らの気持ちは、いつになったら同じものになるんだろうか。『宏斗兄さん愛してる』 いつになったら伝わるんだろうか。『こんなに好きなのに、僕はこれからどうすればいい?』 不安定な気持ちが僕の足場を揺るがす。落ち着きを取り戻すために、目を閉じて集中した。焦りは禁物だ。馬鹿女から兄貴を引き離すことに成功しているんだから、計画を立てたことをすんなり実行し、兄貴を手に入れる未来を叶えるために尽力しなければ。 兄弟以上の関係を目指して、僕はまっすぐ突き進む――。
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兄貴の困惑5

*** 兄貴の気を惹くためとはいえ、正直なところ僕自身も他人に躰をあまり触れられたくないこともあり、若林先輩を呼び出すときは、短い休み時間を利用することにした。1階にある三年の教室から3階の一年の教室に移動するだけでも、時間を稼ぐことができるのはラッキーだと言える。「辰之くん、行くぞ!」 教室の扉を開けた瞬間なされた、下の名前での呼び出し。逢瀬の時間が刻々となくなっていくのもあり、若林先輩が焦っているのが丸わかりだった。 しかしながら教室に顔を出した相手が三年生ということで、自然と目立ってしょうがない。この状況に僕は渋々といった様子で自分の席から腰をあげて扉に向かおうとしたら、箱崎がいきなり腕を掴んで引き止める。「黒瀬、どうして若林先輩に呼び出されたんだ。今まで接点がなかっただろ」「兄貴経由でちょっとね……」「黒瀬先輩経由? だったら、なおのことおかしいって」 箱崎の行かせたくない気持ちが、僕の腕を掴む力に表れていた。(これが兄貴だったらよかったのに――)「箱崎が心配するようなことは、本当になにもないよ。進路について、ちょっと相談にのってもらってるんだ」「進路?」 さらに眉根を寄せて僕を見下ろす箱崎を説得しようと誤魔化す言葉を考えたそのとき、目の前に現れた人物の大きな背中が視界を遮った。「邪魔邪魔! 箱崎ぃ、とっとと辰之くんから腕を放せよ」 かなり焦っているのだろう。いつの間にか若林先輩は堂々と教室の中まで入り込み、箱崎の腕を掴んで僕から引き離すなり、攫うように連れ去る。「黒瀬っ!」「箱崎大丈夫だよ。行ってくるね」(音楽室での交渉後、短い時間で三発イった早漏の若林先輩が僕にナニをするのか。そこのところに興味があるし……) 作り笑いしながら力なく手を振る僕を、箱崎は歪むような苦しげな顔のまま見送った。若林先輩がバイなのを知ってるゆえに心配して、ああやって止めに入ってくれたのだろう。 僕は若林先輩に手を引かれて、3階の一番奥にある誰も来ないであろう教材室に連れ込まれた。登校後に盗聴器のチェックを入念に済ませていたが、空き時間に仕掛けられていたら朝のチェックが無駄になる。
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兄貴の困惑6

先に入室した若林先輩が僕に抱きつこうとしたが、素早く身を翻して山のように積まれている教材の隙間に視線を飛ばしてチェックをはじめた。「辰之くん、なにをやってるんだ。俺の相手をしてくれ」「少しだけ待ってください。この間のように盗聴器を仕掛けられていたら、ふたり揃って誰かに脅されるかもしれないんですよ」 節操のなさにうんざりしつつ、たくさんの教材を見渡しながら盗聴器を探していく。 僕なりにしっかり注意をしたというのに、若林先輩は探し物をする僕の背後から両腕を伸ばし、躰をまさぐりながらうなじにキスを落とした。ぞくっとする唇の感触に、頭を振ってやり過ごす。「辰之くんとなら、どんな噂をされてもかまわないけど」「あんな派手な呼び出しされた時点で、尾ひれがついた噂をされそうですけどね。ンンっ!」 若林先輩のいやらしい手の動きで感じてしまい、探し物をする集中力が一瞬で削がれた。(くそっ! 大事なときだっていうのに、敏感な自分の躰が疎ましい……)「いい匂い。こっちを向いて」 首筋を執拗に責めることに飽きたのか、僕が振り返る前に強引に振り向かせ、ぐぐっと顔を寄せる。「キスはダメですよ!」 目の前に迫った唇を、右手でやんわりと塞いだ。油断も隙もありゃしない。「俺、キスはうまいよ。挿れたくなるくらいに、感じさせてあげる」 キスを強請っているくせに僕の尻を揉みしだく感じで、念入りに両手を使って撫でまわされた。「だったらなおのこと、遠慮させていただきます」「ふーん。辰之くんがそういうつもりなら、俺にも考えがある」 含みのあるまなざしに嫌な予感しかしない。黙ったまま若林先輩の唇から、静かに手を退けた。「辰之くんとのデートは、明日のこの時間だろ?」「はい、そうですけど……」「キス以外は、なにをしてもいい約束だったよね。だからさ――」 わざわざ耳元に寄せて楽しげに語られたセリフの続きに、顔を歪ませるしかない。 若林先輩は、告げられた言葉に絶句して固まる僕のワイシャツのボタンを数個だけ外し、片手を忍ばせて胸の頂きに触れる。「辰之くんとの短い逢瀬の時間を、俺なりに楽しませてもらうから」
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兄貴の困惑7

「……本当にヤるんですか?」「だってこんな短い時間じゃ、辰之くんの中を解すだけで終わるだろ。どんなに頑張っても、早漏の俺だって無理な話」(いやいや、記録更新すべく頑張ってみればいいのに。僕の予想では、ちゃっちゃと解してぱっぱと挿入し、サクッとイけるって。だって若林先輩は超早漏でしょ!)「だからさ、リモコン型バイブを辰之くんの中に挿れて、俺がブルブルさせたいタイミングで、スイッチオンするわけ! 何度もブルブルされて我慢できなくなった辰之くんが俺のをほしがって『若林先輩、お願いっ! 早くちょうだい!』とまぁこんなふうに、自ら強請る展開にいけたらなぁと」 耳元で最初に語られた『小型バイブを仕込みたい』という卑猥なセリフだけでもおいおいと思ったのに、詳しく説明される内容に顔の片側だけ歪むのがわかった。 そんな僕の表情で感じていると勘違いしたのか、若林先輩の責めが激しくなっていく。胸の頂きに触れていた指先が強く先端を摘まんだせいで、腰から下がじんじん疼いた。「あっあっ…若林先輩の好きなタイミングでブルブルしたら、授業に集中できなくて疎かになるっ」「1階から3階まて飛ばせるような、高性能なリモコンじゃないから安心しろ。まぁそれでも同じフロアにいたら、震わせることができるけどな」「うわぁ……。休み時間毎に、わざわざここまで上がって来てスイッチを押して、教室の外から僕が耐え忍ぶ姿を覗き見るわけか。悪趣味を極めてる!」 開けたワイシャツをズラして乳首を露にしたと思ったら、舌先でぺろぺろする。「あぁん、くすぐったい」「くすぐったいだけじゃないくせに。ココとアソコを硬くして」 山のような教材の壁に僕の躰を押しつけ、乳首を食みながら下半身に触れられた。前の手はち〇ぽの根元をやんわりと扱くように、後ろの手は割れ目をなぞるように強く触れていく。「ん、ふ、あぁ……」「この間のように、嫌がらなくてもいいんだよ。もっと淫らになってみてくれ」「充分に淫らだと思いますっ…けど。ぁっ…っぁあ」「やっぱあれか。黒瀬に操たててるから、全力で楽しめない感じ?」 そんなものを壊してやると言わんばかりに、前を弄る手の力が強められた。
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兄貴の困惑8

「んんっ…っぁ! や…め…っんん……ぁ」「やめてじゃない、もっとだろ?」 割れ目を弄っている指先が、尻穴をコアに刺激する。ただでさえ疼いているところをぐりぐりされると、ほしくて堪らなくなった。「時間っ…ないのに、そんなこと…い、ぃうわけないでしょ」 しかしながら、ほしがっているのを悟られるわけにはいかない。「遠慮せずに言えって。早く挿れてくださいってさ」 今こういうことをされているのは、他人の手を借りたオナニーだと思い込んだ。僕が心の底から欲して止まないのは、兄貴だけなのだから。「そうだ、いいこと思いついた。俺が来る前に辰之くんが授業中にトイレに行って、解しておけよ。そしたら、すぐに挿れられる!」(冗談じゃない。他人のを受け挿れるために自ら解すなんて、やってられるか。どうやって卑猥なお願いを、うまく回避できるだろうか)「若林先輩っ、バイブとソレのどちらかを選んでくださぃっ…んあっ!」 さらなる快感を求め、腰が勝手に上下に揺れてしまった。このまま気持ちよさに身をまかせたいというのに、無理難題を思いつく若林先輩のせいで、思うように集中できない。「え~っ、究極の選択じゃないか。困ったな……」「あっあっあっ…んっ…は…ぁっ……!」
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兄貴の困惑9

上目遣いで口を半開きにしたまま、若林先輩の肩に両腕をかけて、いやらしく腰を動かす。 僕の躰は兄貴だけのもの――この人と肉体的な関係を築くより、玩具という道具でプレイしたほうが、まだ穢れずに済むと考え、淫靡に乱れる姿をあえて見せつけてやった。「あっ…ああん! やぁっあっ…んぁっ……」「きーまり! バイブにするわ」 喉仏を動かしながら生唾を飲んだ若林先輩の選択に、思わず笑いだしそうになる。自分なりに甘い喘ぎ声をあげつつ、イキたいのを我慢してますという顔を必死に作り込み、道具を選ぶように誘導したのが功を奏した。「辰之くんがバイブの振動で感じてるところ、すっごく楽しみにしてる」「頼むから、バイブの振動を最強にしないでよ」「あまりの気持ちよさに我慢できなくなって、どこかへ行ったり、俺から逃げようとしたらそうするかも」 若林先輩がセリフを言い終える前に、予鈴が教材室に響き渡った。僕は慌てて、開けているワイシャツのボタンをはめる。「はいはい。若林先輩から最終攻撃をされないように、それなりに頑張りますよ」「そうやって無理して意地はってるところ、俺の好みだけどな。さっきだって、相当感じていただろう?」 名残惜しいと言わんばかりに僕の首筋に顔を寄せて、チリっとした痛みを肌に残した。嫌なそれを右手で拭ってから、教材室をあとにする。あからさまに冷たい態度をとる僕を、若林先輩はどんな気持ちで見つめていたかなんて、知る由もなかった。
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兄貴の困惑10

***「辰之、話がある。ちょっと来い」 若林先輩が僕の首に赤い痕を残したせいで、自宅に帰って来た兄貴が首筋に指を差しながら、ここぞとばかりに僕に向かって突っ込んだ。(あーあ。突っ込んでほしいのは、兄貴のち〇ぽだけだっていうのにな――) 目敏くキスマークを見つけた兄貴は、ムッとしながら僕の腕を引っ張り、強引に自室へと連れ込む。扉が閉まったのを機に、兄貴から口を開いてなにかを言いかけたので、すかさずベッドにあがって四つん這いになってみせた。「辰之、なにしてんだ」「なにって、こういうコトをするために、わざわざ僕をここに呼んだんじゃないの? 兄貴とのバック、すっごく気持ちがよかったしね。二回目とは思えないくらいに、僕のナカで弾けたでしょ。兄貴としては、正常位よりも気持ちよかったのかなって」 笑いながら流暢に説明し終えた途端に、兄貴の頬が真っ赤に染まった。図星をついた発言ができたことに満足しつつ、兄貴の枕に顔を押しつける。大好きな匂いを思いきり嗅いだ。「そんなことよりも俺だけじゃなく、箱崎だって心配してるんだぞ。今日、部活が終わってからアイツに呼び出された」「箱崎がどうして……」「おまえの首のそれ、結構目立つからさ。若林先輩に呼び出されたあとにつけられたのがわかって、どうして黒瀬先輩は若林先輩を紹介したんですかって、箱崎に食ってかかられた」 兄貴のしょんぼりした声を聞いたせいで、仕方なく枕から顔をあげる。第三者が絡むと、余計に面倒くさくなるのは目に見えていた。それゆえに、僕の口からは文句しか出てこない。「ただの友達の箱崎に心配されても、僕にはどうにもならないっていうのにね。全部兄貴のせいなのに!」「そうだ、俺のせいだ。若林先輩に呼び出されたときに、どうして俺に頼らなかったんだよ」 ベッドにうつ伏せに寝転ぶ僕を無理やり起こしたと思ったら、ぎゅっと抱きしめてくれた。「兄貴?」 苦しいくらいの兄貴からの抱擁で僕の頭がバグったのか、目の前がチカチカした。ただ抱きしめられているだけなのに、下半身はカタチが変わってしまう始末。呼吸すら普通にできなくて、口ではぁはぁしなければならないくらいだった。「宏斗、兄さん……」
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兄貴の困惑11

恐るおそる大きな背中に両腕を回した。縋りつくようなそれは外されることなく、兄貴は僕の躰をさらにキツく抱きしめる。「辰之お願いだから、自分を大事にしてくれ。頼む……」 これだけ密着度の高い抱擁だからこそ、僕の下半身の変化が伝わっているはずなのに、躰に巻きついた兄貴の両腕の力が緩められることはなかった。それは僕にとってとても嬉しいものなのに、どうして胸がしくしく痛むんだろうか。「兄貴、苦しいよ。それ以上抱かれたりすると、この間みたいに僕から襲っちゃうかもしれない」 兄貴の背中に触れていた手で、服をぐいぐい引っ張った。それを合図に躰から両腕が外される。「兄貴が思いやってくれる気持ちと僕の気持ちは、種類が違うことくらいわかっているでしょ。大好きな兄貴にこんなことされたら、期待するんだって。それによって、僕がどんどん傷ついていくのがわからないかな……」「ごめん。だけど俺のせいでおまえが、嫌なことを若林先輩に強要されているのをわかっていながら、見過ごせるわけがないだろ」「俺に同情しないでよ! 穢れてしまった俺なんて、兄貴に愛される資格がないんだから!」「辰之、おまえ――」「兄貴なんて大っ嫌いだ!!」 目の前に立ち尽くす兄貴に体当たりして、部屋から逃げ出した。いろんな感情がこんがらがって、涙すら出てこない。そのまま自分の部屋に飛び込み、鍵をしっかりかけた。「俺は……いや僕は兄貴が大嫌い、になれば…きっと楽になる、はず」 兄貴の望んだ展開になったことで、互いがしがらみから解かれると思った。このまま兄貴を嫌いになれば、昨日よりも楽になるはずだと信じて、呪文のようにリピートする。『宏斗兄さんなんて大嫌いだ』 目をつぶり心に信じ込ませるように、延々と唱え続けたのだった。
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