All Chapters of その番犬、狂暴につきまして。: Chapter 21 - Chapter 30

55 Chapters

episode21

オレ達は長い時間抱き合っていたらしい。夕飯の支度をしなきゃなかなかったのに叶弥が離してくれなかったのだ。しばらく経ってから、部屋のドアを叩く音が響いた。「京司さん!若もいますか?夕飯出来たんで呼びに来たんすけど、若、部屋にいなかったんで......」どうやら夕飯はオレ無しで作られたようだった。少し気を使わせたようで申し訳ない。「あぁ、叶弥もこっちにいる。これから行くから先に戻っててくれ」 「わかりました!」呼びに来た若衆の足音が遠ざかるのを聞いて、オレは叶弥から身体を離そうとする。しかし、叶弥の腕の力が弱まることはなかった。「オイ......いい加減に......」オレが言葉を続けようとすると叶弥はオレの首筋に顔を埋め力強く、しかし甘く噛み付いた。そしてその後続けてチリっと吸い付いたのだった。「ちょ......叶弥、お前まさか......」 「いいだろ、これくらい。正式にオレのモンになったんだから見せつけてやりてぇんだよ」 「......クソッ」オレはなんだか腹が立ち噛み付くようにキスをした。そしたら、叶弥はハトが豆鉄砲でもくらったかのように目を見開いた。しかしそれも一瞬で叶弥の舌がオレの口をこじ開けて侵入してきた。「あ、ん......ふ......」自分の甘い吐息なんて聞けたもんじゃないが、溢れるものだから仕方がない。唾液が顎をつたったのを叶弥が舐め取り、口が離される。途端、おれは自分がした事が恥ずかしくなり、さっさとベッドから立ち上がる。「ホラ!夕飯行くぞ!」 「ハイハイ。京チャンはせっかちですねぇ。......あ、痕消えたら絶対またつけるからな」ふざけた口調から腹黒い口調に変わったのにブルってしまったが気づかないフリをする。「今日は京のメシじゃねぇのか......」 「仕方ねぇだろ。寝ちまったんだから」軽口を叩きあいながら広間へ向かう。大体のヤツらが揃っていて、待たせてしまっていた事に申し訳なく思いながら席に着く。そして全員が揃ったのを確認して凛太朗さんが音頭をとりいつもどおりの賑やかな夕飯が始まった。「アレ?京司さん、虫刺されっすか?」 「え?」 「いや、首筋が赤く......」オレの隣に座ったヤツから小声で指摘されオレはバッと首を隠してしまった。「そ、そうそう!虫刺されだから!」オレが赤面しながら言うと、逆
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episode22

翌朝、オレは息苦しさで目を覚ました。上体を上げようとすると、オレの腹に腕を回して抱き着いて眠っている叶弥の姿がそこにあった。オレはため息をつきながら叶弥の頭を思いっきりひっぱたいた。「いっ......てぇ......」 「起きろバカ」叶弥は頭をおさえながら身体を起こしたかと思うと、寝ぼけているのかオレの顔にキスをしまくってきた。「ちょ......フフッ......くすぐったい」 「ハヨォー、京......」 「フフッ、おはよう叶弥」オレはベッドを下りると制服に着替えてキッチンへ。叶弥は自室へと戻って行った。キッチンへと入ると、朝飯の支度を始めようとしている若衆数人がいた。「あ!おはようございます京司さん!」 「おはよう。悪い遅くなって」 「いえ!これからのところっスよ!」そんなやり取りをしながら、オレは若衆の軽口を笑い聞きながら朝飯と弁当の支度を始めた。すると、珍しく叶弥がキッチンへ姿を現した。かと思うと、オレの腰を抱きながら味見を要求してきた。仕方ないので、弁当に詰めようとしていた玉子焼きを一切れ食べさせた。すると満足したのか、オレの首筋にキスを落とし、「ごっそーさん」と言ってキッチンを後にした。一連の流れを見てしまっていた若衆共は口をあんぐりと開け、プルプルと震え始めた。「け......京司さんが拒絶しない......だと?!」 「い、一体どういう事ッスか!京司さん!」 「......ウルセェ......」コイツ等がいることを頭から離してしまっていたため、オレは赤面するしかなかった。理由を話さなかったせいか、無言は肯定と捉えられたようで、キッチンは阿鼻叫喚となった。「いつ?!いつからッスか?!」 「......一体なんの事だかサッパリデス」 「京司さぁん......!」キッチンだけだったのが、気がつけば屋敷中に騒ぎが広がり、果てには凛太朗さんにまで話しが行ってしまった。凛太朗さんは「やっとくっついたのかぁ」と笑いながら居間の席に腰を下ろした。そして当の本人である叶弥はというと、デカいあくびをしながらメシが運ばれてくるのを待っている。高校に上がってから、コイツのせいで騒がれる事が増えた気がするとオレは頭を抱えた。そうして本日の朝飯が始まるのであった。 騒がしい朝飯が終わり、オレと叶弥は学校へと登校をし始めた。「お前なぁ、ア
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episode23

学校に着き、オレは覚悟を決めて下駄箱を開ける。そこには普段と変わらず自分の上履きが入っているだけという光景があった。その事にオレは 安堵のため息をつく。そんなオレの様子を見た叶弥はオレの背中をポンと叩いた。「今日は大丈夫だったな」 「あぁ......。よかった」そうして上履きへと履き替えると教室へと向かう。たまに視線を送られてきたが、オレは気が付かないフリをした。しかし、それに気が付いた叶弥は視線の元へと睨みを効かせていた。すると、「ヒッ」という小さな悲鳴が聞こえた気がしたが、これもまた気が付かないふでやり過ごした。「五十嵐組の番犬は京のハズなのに、なんかオレのが京の番犬みたいじゃね?」 「その呼び名恥ずいから別にオレは構わねぇよ?」 「お前なぁ......」叶弥は盛大なため息をつくと、オレの頭をわしゃわしゃと撫でつけた。そうこうしている内に教室へとたどり着き、中へとはいる。軽く「おはよう」と挨拶をすると、クラス中から声がかけられた。「おはよう、田河君!よかった学校来れたんだね!」 「たくよー、心配すんじゃねぇか。まぁ、五十嵐がいるから大丈夫だとは思ったけどよ」 「心配かけて悪い。情けないところを見せたみたいで......」オレが言葉を続けようとすると叶弥の手がオレの口を塞いだ。「おい、京。情けないなんて事ねぇんだから、いらん事言うんじゃねぇよ」 「そうだぜ田河。大事なクラスメイトなんだから心配して当然だぞ?」 「......そっか。ありがとう。」オレが笑みを浮かべお礼を言うと、声をかけてくれたクラスメイトは何故か顔を赤らめた。オレはそれに疑問を持ったが、その瞬間、叶弥の手がオレの顔を覆った。「ブッ!叶弥!何すんだよ。前見えねぇだろ!」 「可愛いお前が悪い」 「ハァ?!バッ、可愛いとかねぇだろ!」 「こういうやり取りを見てると、番犬って言うよりチワワみたいに見えてくるね(笑)」クラスメイトに"チワワ"と呼ばれてしまい、オレの覇気は地へと沈んでいった。「......チワワはねぇだろ......。」 「ハハッ!言い得てんじゃねぇか(笑)」 「わーらーうーなー!」クラス中が笑いに包まれていると、チャイムが鳴り、担任の大森が「賑やかだなぁ」と言いながら入ってきた。大森はオレを見ると安心したように笑い、「出席取るぞー」と言い教
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episode24

今日の午後の授業は体育祭練習だった。昼休みにジャージに着替え、イスを持ってグラウンドへと向かう。ぞろぞろと生徒達がグラウンドへと集まって来ると、オレは緊張した。オレを脅かす存在......"湊 友樹"の姿ないか、警戒してしまう。そんなオレの様子に気付いた叶弥が「大丈夫」と言いオレの頭をポンと叩いた。「安心しろ。お前の傍から離れねぇから」 「叶弥......。ありがとう」 「おう」叶弥の言葉にホッとしていると、オレ達に近づいてくる影が一つあった。...湊 友樹だ。「京司君。久しぶり。僕の中学卒業ぶりかな?」 「......湊先輩......」 「何の用ッスか、センパイ。京に近づくのやめて貰えます?」叶弥が湊先輩をバチバチに睨みつけていると、湊先輩は「おぉ、怖い怖い。」とおちゃらけた様子で言った。「まだ京司君の傍にいるんだね、五十嵐君。......本当に邪魔だなぁ......」 「そりゃどーも。」 「まぁ、同じ競技だから君が何と言おうと京司君と一緒にいられるからね。......体育祭の間に......ね?」湊先輩はそう言うと、オレにねっとりとした視線を送ってきた。オレは背中がゾクリとして叶弥の後ろへと隠れた。「どうしたの?京司君。あぁ、恥ずかしいんだね。......可愛いなぁ......」 「......もう時間デスよ?いい加減、クラスに戻ったらどーすか?」 「......仕方ないな。今日はこのくらいにしておくよ。......じゃあまたね、京司君」湊先輩はそう言うとオレ達から離れていった。オレは張りつめた緊張の糸が途切れ、その場にしゃがみ込んだ。「京?!大丈夫か?!」 「......大丈夫......。緊張しすぎたせいだから。叶弥もいたからそこまで酷くないから安心して」叶弥は納得していない様子だったが、それ以上は言及しないでいてくれた。「まぁ、今日は競技練習はないからもう大丈夫だと思う。叶弥も気を張りすぎないで大丈夫だから。な?」 「......京がそう言うなら......」オレ達もクラスの待機場所へと向かうと、クラスメイト達から「大丈夫?」と声をかけられた。......どうやら先程のやり取りを見ていたクラスメイトがいたようで、何かを察したらしかった。「大丈夫だから。心配かけて悪かったな」オレはクラスメイトにも礼を言うと、
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episode25

今日の体育祭練習は応援を中心としたものであった。3年生が用意した応援歌を覚えたり、応援合戦の振りを覚えたりと、これまたなかなかに大変だった。オレは熱心な上級生達に教わりながらなんとか少しずつ覚えていく。たまに過剰なスキンシップをとってくる上級生がいたが、叶弥を始めとしたクラスメイト達から助けて貰っていた。「......なんかやたらと触ってくる先輩多いんだけど......オレの気のせい?」 「んな訳あるか。事実だよ。」 「田河君、すごいモテるよね。......男からだと嬉しくないだろうけど」 「「それな」」クラスメイト達からの言葉にオレはガクッと肩を落とし、ため息をついた。「京はオレのだから、いくらセンパイだろうが変な目で見てくるヤツらタダじゃおかねぇ」 「何?とうとうお前らくっついたの?」クラスメイトからの疑問に叶弥はオレの肩を抱き、頬にキスを送ることで応えた。そうしたら周囲から「嘘だぁ!」と叫び声が上がった。「叶弥......何すんだよこんなとこで......」 「手っ取り早い方法をとったまでだし」 「田河君、ファンクラブあるから今後大変だよ?」 「「ファンクラブ??」」オレや叶弥の知らないところでファンクラブなるものが結成されているのに驚きながらオレ達は口をつむいだ。「田河、"五十嵐組の番犬"って呼ばれてるみたいだけど、"和泉野男子校の女王様"って異名もあるみたいだぞ?」 「......ナニソレ知らない......」 「田河、男にしては美人だからなぁ。納得納得」クラスメイトからとんでもない事実を知らされ、オレは開いた口が塞がらない。「京が美人なのは認める。......が、京はオレのだ」叶弥はそう言うと、オレを背後から抱きしめてきた。これ以上は何を言おうが無駄だと思い、オレは叶弥の好きにさせた。「田河君、もういいの?五十嵐君ベッタリだよ?」 「......こうなった叶弥には何を言っても無駄だからな」オレはそう言うと、肩にグリグリとしてくる叶弥の頭をポンポンと叩いた。「田河が女王様なら、五十嵐はナイトか何かか?」 「そこは王子様じゃないんだ(笑)」 「王子って柄じゃねぇだろコイツ」練習をサボって駄弁っていたため、上級生から「そこ!1年!」と注意をされてしまった。
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episode26

応援練習を終えて、オレ達は先輩達にお礼を言い、イスを持って教室へと帰り制服へと着替える。「田河ー、腰ほっせぇな!ちゃんと食ってっかぁ?」 「ひぁっ?!」ジャージを脱いだ瞬間、クラスメイトがオレの腰を掴んで言った。急すぎて驚いたためなんとも情けない声が漏れた。それを聞いた叶弥は目をギンッと光らせ、オレの腰を掴んだクラスメイトの頭を思いっきりバシッと叩いた。「痛ってぇ!!悪い!悪かったって五十嵐!!」 「......次はない」 「お前怖いもの知らずだなぁ。命が惜しけりゃやめとけばいいのに......」 「いやぁ、思わず...」教室はいつになく賑やかであった。体育祭練習が始まったため、皆浮き足立っているのだろう。高校最初の体育祭が楽しみで仕方ないのだろう。......しかし、それとこれとは話しが別だ。オレの腰を掴んで良い理由にはならない。そして、オレが怒るところを何故叶弥が怒るのか。「叶弥。なんでお前がキレてんの?意味わからん」 「......京に触っていいのはオレだけだろ?お前はオレのなんだから」 「五十嵐ー、ヤンデレ化してるぞー」 「オレは事実しか言ってない」クラスメイトにツッコまれた叶弥だったが、叶弥はいたって真剣です。と言わんばかりの物言いで言い返したのだった。「京ー、帰りスタボ行こうぜ、スタボ。フラペチーノ飲みてぇ」 「五十嵐、キャラに似合わないもん飲むのな。」 「叶弥は昔から甘党だ。学校でもよくイチゴ牛乳飲んでるし」 「言われてみれば(笑)」叶弥は顔とキャラに似合わず甘い物が好きなので、スタボでは必ずフラペチーノをたのむ。コーヒーはブラックは絶対飲めず、飲むとしてもスティックシュガーを3本入れる。「オレからすると、スタボと言えばフラペチーノなんだからフラペチーノ以外たのむヤツの気が知れない」 「全世界のコーヒー好きに謝れ」そんな雑談をしているうちに帰り仕度が終わり、オレと叶弥はクラスメイトに帰りの声がけをして教室を出る。そして学校を後にすると、叶弥の要望を叶えるためにスタボへと向かい、叶弥はフラペチーノ、オレはブランドを注文して、飲みながら五十嵐組の屋敷への帰路へとつくのであった。
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episode27

「京ー。ココどうやって解くん?」「ココはー......」学校から帰って来て、オレと叶弥はオレの部屋で今日出された宿題をしていた。叶弥は勉強がからっきしダメなので、オレが見ることになっている。...実際、オレが勉強を見ないとテストで全教科赤点を叩き出す事態があったのだ。「ハァー。京がいるお陰で勉強が楽だわぁ」「......テスト前はスパルタで行くからな」「ゲェ」「ゲェ。じゃない。赤点回避しないと2回目の1年生が待ってるぞ」オレがそう言うと、叶弥は「ガンバリマス」と言って教材に向き合った。オレはそれを見るとホッと一息つき、オレも机に向き合った。そうして1時間が経つ頃、オレは宿題を終わらせた。叶弥はまだ少し残っているようで、「うーん、うーん」と唸りながら宿題を続けている。本当は付いて見てやりたい所だが、夕飯の支度があるのでその旨を叶弥に伝えると、叶弥は手を振りながら「夕メシ楽しみにしてる。」と言い、オレを見送った。そうして、オレは自室を後にすると、キッチンへと足を向けた。オレがキッチンに入ると、先にキッチンへ来ていた若衆2人がオレを出迎えた。「京司さん!学校お疲れっした!」「お疲れっす!」「ありがと。2人もお疲れ」オレが2人に「お疲れ」と言うと、2人が「京司さんに労われた!」「癒される!」とよく分からないことを口にしていた。「京司さん、今日組長が珍しくリクエストしてきましたよ」「凛太朗さんが?ホント珍しいね。なに?」「京司さんの"豚汁"が食べたいらしいです」「材料は買ってきてあるんで!」豚汁なら一度にたくさん作りやすいし、何より凛太朗さんの大好物だ。作らない訳にはいかない。なんでも、オレの作る豚汁が今は亡き奥方の味にそっくりらしい。オレはそれが嬉しくてリクエストが来る度、腕によりをかけて作っている。「それじゃあ、今日は豚汁メインで。あとは、サバの味噌煮込みとキノコの炊き込みご飯かな」「いいっすね!聞いただけで腹減ります(笑)」「バッカ!おメェも作るんだよ!」「頼りにしてるよ、2人共」オレがそう言うと、2人は「任せてください!」と目をギラギラと輝かせながら宣言した。なんともまぁ、頼もしい限りである。この調子なら19時過ぎには夕飯出来上がるかな、と時間を計算して、オレ達は調理にとりかかった。
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episode28

「おぅおぅ。いい匂いじゃあねぇか」「凛太朗さん」「京司。リクエストなんかして悪かったな。無性にお前さんの豚汁が食べたくなってな」「お安い御用ですよ」調理も終盤にとりかかった時、凛太朗さんがキッチンに姿を現した。「凛太朗さんがリクエストして下さったお陰で献立が組みやすかったです。サバの味噌煮込みは、前に凛太朗さんと叶弥が美味しいって言ってくれたので久々に作ってみました」「......お前さん、そんな前の事覚えてんのか。いい嫁さんになるなぁ」いくつになっても凛太朗さんから褒められるのは嬉しく、くすぐったい気持ちになる。「叶弥もいい嫁さん貰えて、オレは幸せもんだぁ」「嫁さんはやめてください。オレも男なんで。」「ハハッ。そーかいそーかい。......しかし、お前さんがウチに来てくれて良かったとオレは思ってるぞ?ありがとうな」「......なんですか、急に」「別に。言いたくなっただけだ。気にするこたァねぇ」凛太朗さんがあまりにしんみりと言うものだから思わず疑問を持ってしまった。しかし次の瞬間には凛太朗さんもカラカラと笑うものだから、オレも気にしないことにした。「もう出来上がるので、広間で待っていてください」「おぅ。そうさせてもらうわ」そう言って凛太朗さんはキッチンを後にした。それを皮切りにオレは料理を仕上げ、盛り付けていく。「京ー。宿題終わったァ。腹減ったァ」「もう出来たから。運ぶの手伝え」「うぃー」凛太朗さんと入れ替わる様にキッチンに入ってきた叶弥には料理を運ぶ雑用を命じる。叶弥は文句を言わずに素直にオレの言うことを聞いた。......いつもなら、めんどくさい。ダルいと言って聞かないのだが。そう思っていると、叶弥が近づいて来たので料理を手渡そうとした。その時だった。オレの両手が塞がっているのをいい事に抱きついてきた。「おい!危ないだろ!離れろ!」「京ぃー。疲れたァー」「......早くしないと夕飯抜きな」「ちぇっ。ハイハイ。持っていきますよー」叶弥は油断も隙もあったもんじゃないから困る。今のオレらのやり取りを見ていた若衆のヤツらはポカーンとして固まっている。「ん?どした?」「け、京司さんが若に抱きつかれたことに対してはキレなかった......」「むしろ、危ないって心配してた......」コイツらももうダメだ思いなが
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episode29

夕飯が終わり、片付けも終えてオレは叶弥と二人で自室へと戻った。叶弥はオレの部屋であるのにも関わらず、我が物顔でベッドへと座ると両手をオレに向けて差し出してきた。「ん?なんだよ」「いや、お前もココに座れよ」「......ココって......」叶弥が指し示すのは叶弥の足の間。要はベッドに座った叶弥に寄りかかるように座れとのことだった。「ヤダよ。恥ずい」「ハーイ。異論は認めませーん」叶弥は身を乗り出し、オレの手を引いてきた。オレはバランスを崩して叶弥の元へと雪崩込んでしまった。そして二人してベッドへダイブする形となった。「......痛てぇよ。何すんだ」「だって、恋人と二人きりだぜ?イチャイチャしたいだろ」「い、イチャイチャって......ん......」オレは異論をとなえようとしたが、叶弥はそんなオレにキスを送ってきた。最初は口に。それから顔中にキスの雨を降らす。そして最後にまた口へと戻り、今度はしたも入れてきた。「んぅ......ふっ......ハァ......」「京......好きだ。誰にもお前を渡さない。一生オレの腕の中で飼ってやる」「......重いこというなよ......」「こんなオレはイヤか?」叶弥はオレの頬を両手で包み込み、自分とオレの額を合わせてきた。「......イヤだったらここまで許してねぇよ」「じゃあ好きだって言えよ。まだお前の口から聞いてねぇよ?」「......言わなくてもわかるだろ......」「言ってくんねぇと離してやらねぇ」そう言うと叶弥は力強くオレを抱きしめてきた。離してくれないのは困るので、オレは気恥しさを押し殺し、意を決して言うことにした。「......好きだ。オレは叶弥が好きだ。もしお前がオレ以外を思うってんならその両手潰してやるよ」「フハッ!お前も重いじゃねぇか(笑)」「......うるせぇ......」「まぁそんなとこも好きだぜ?」そう叶弥が言うと引き合うようにオレ達はキスをした。時には啄む様に。時には深いものを。オレはそんなキスが心地よくてかつ、うとうととしてきてしまった。「京?大丈夫か?」「ん......。別に大丈夫......。気持ちいいだけ......」「!!」オレの言葉に叶弥は感極まりましたとでも言うかのように抱きしめてきた。「あんまり可愛いこと言うなよ.
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episode30

夢を見た。幼い頃の両親を亡くした日の夢を。突然独りぼっちになってしまい、最初は泣くことも出来なくなっていて。医者や看護師の言葉をまるで他人事の様に感じてしまって。医者や看護師は泣きもしないオレを可哀想なものを見る目で見てきたのを今でも覚えている。彼らがオレの病室を去って行った後、オレは糸が切れたかのように一人になった病室ではらはらと涙を流し続けた。いきなり暗闇の中に取り残されたようになったのだが、そこに一筋の光が差し込んだかのように一人の男性が入ってきた。...凛太朗さんだ。凛太朗さんは突然家族を亡くしたオレに自分の元へと来るように言ってくれた。叶弥にも引き合わせてくれた。両親と言う家族を亡くしたオレに新しく家族の温かみをくれた凛太朗さんには感謝してもしきれない。そんな夢を見ていると、どこからかオレの名前を呼び続ける声が聞こえてくる。オレが目を開けると、叶弥が心配そうにオレの顔を覗き込んでいた。「......きょう、や?」「京!大丈夫か?!」「......あれ?オレなんで泣いて......」涙を流しながら眠りについていたオレに驚いて、叶弥は慌てて起こしにかかったらしかった。叶弥はオレの上体を起こすと、頬をつたう涙を優しい手で拭ってくれた。「......ありがとう叶弥。もう大丈夫だから」「......悪い夢でも見たか?」叶弥は心配そうにオレを見た。「どっちかと言うと懐かしい夢、かな?」「......懐かしい夢?」叶弥は怪訝そうにオレを見てくるので、オレは思わず「フフッ」と笑みを零してしまった。「なんで笑うんだよ。......泣いてたから心配になったんじゃねぇか」「......ありがと、叶弥。子供の頃の夢を見たんだよ」「子供の頃?」オレがそう言うと叶弥は不思議そうにオレを見てきた。そんな叶弥をオレは抱きしめた。すると叶弥は「け、京?!」と慌てたように声をかけてきた。「家族を亡くしたオレに、凛太朗さんがお前達って言う新しい家族をくれた時の夢だったんだ。......嬉しかったなぁ......」「京......」「叶弥に出会えて、オレは変わったよ。泣き虫だったオレを強くしてくれたし、今じゃこうして愛してくれる。......オレは今凄い幸せだよ。これからもお前と共にいさせてくれ」オレの言葉に叶弥は力強くオレを抱きしめ返してきた。「オレから
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