登入オレ達は長い時間抱き合っていたらしい。夕飯の支度をしなきゃなかなかったのに叶弥が離してくれなかったのだ。しばらく経ってから、部屋のドアを叩く音が響いた。「京司さん!若もいますか?夕飯出来たんで呼びに来たんすけど、若、部屋にいなかったんで...」どうやら夕飯はオレ無しで作られたようだった。少し気を使わせたようで申し訳ない。「あぁ、叶弥もこっちにいる。これから行くから先に戻っててくれ。」「わかりました!」呼びに来た若衆の足音が遠ざかるのを聞いて、オレは叶弥から身体を離そうとする。しかし、叶弥の腕の力が弱まることはなかった。「オイ...いい加減に...」オレが言葉を続けようとすると叶弥はオレの首筋に顔を埋め力強く、しかし甘く噛み付いた。そしてその後続けてチリっと吸い付いたのだった。「ちょ...叶弥、お前まさか...」「いいだろ、これくらい。正式にオレのモンになったんだから見せつけてやりてぇんだよ。」「...クソッ」オレはなんだか腹が立ち噛み付くようにキスをした。そしたら、叶弥はハトが豆鉄砲でもくらったかのように目を見開いた。しかしそれも一瞬で叶弥の舌がオレの口をこじ開けて侵入してきた。「あ、ん...ふ...」自分の甘い吐息なんて聞けたもんじゃないが、溢れるものだから仕方がない。唾液が顎をつたったのを叶弥が舐め取り、口が離される。途端、おれは自分がした事が恥ずかしくなり、さっさとベッドから立ち上がる。「ホラ!夕飯行くぞ!」「ハイハイ。京チャンはせっかちですねぇ。...あ、痕消えたら絶対またつけるからな。」ふざけた口調から腹黒い口調に変わったのにブルってしまったが気づかないフリをする。「今日は京のメシじゃねぇのか...」「仕方ねぇだろ。寝ちまったんだから。」軽口を叩きあいながら広間へ向かう。大体のヤツらが揃っていて、待たせてしまっていた事に申し訳なく思いながら席に着く。そして全員が揃ったのを確認して凛太朗さんが音頭をとりいつもどおりの賑やかな夕飯が始まった。「アレ?京司さん、虫刺されっすか?」「え?」「いや、首筋が赤く...」オレの隣に座ったヤツから小声で指摘されオレはバッと首を隠してしまった。「そ、そうそう!虫刺されだから!」オレが赤面しながら言うと、逆隣に座った叶弥がニヤニヤし始めたのでオレはヤツの胸板に裏拳をお見舞いし
どのくらい眠っていただろうか。部屋が薄暗くなっていた。時間を見ようとしたが、ガッチリした腕に抱きしめられていて身体が思うように動かせない。首筋には叶弥の寝息が感じられてくすぐったい。夕食の支度をさなければならないので、オレは叶弥に声をかけた。「おい。叶弥起きろ。もう夕方だぞ。」「んー...京がチューしてくれたら起きられるかも。」「...何をふざけたことぬかしてるんだ。いい加減にしろ。」オレは軽く叶弥の頭をこずく。すると力の込められていた腕が緩められたため、オレは上体を起こした。オレに続いて叶弥も起き上がりオレを力強く抱きしめたと思ったら首筋にキスをしてきた。「...オイ。そういうのは恋人作ってやれ。」「...ハ?なに。お前、オレが好きでもねぇヤツにキスするとでも思ってんの?誰彼構わずって?」「叶弥...?何、怖えよ...。だってお前オレに好きだとかなんだとか言ったことねぇじゃねえか。」オレは叶弥がキスしたり抱きついてきたりするのは、幼馴染みの延長線だったり、落ち着かせようとするためだと思っていた。それ以外の何物でもないと。いつも身近にいるせいで距離感がバグってるだけかと...「あんだけ熱い言葉投げつけといて、お前以外に目を向けろって?お前はそれで良いわけ?オレは絶対お前以外の人間はいらねぇよ。お前はオレので、オレはお前の物なんだよ。...好きなんだよ。出会った時からずっと...愛してんだ...。」熱烈な告白にオレは顔が熱くなり下を向いてしまう。しかし、叶弥はオレの顎を持ち上を向かせて自身と無理矢理目線を合わせさせる。叶弥の目は熱を帯びていて見つめられるとこちらが恥ずかしくなる。しかし、叶弥は目線をそらすことはさせずにいる。「...京司。お前は?お前は違うのか...?あとどれくらい示せばオレを見てくれる?」「...オレは...よくわからない。...けど、お前が他のヤツといるのを見るのは嫌だ...」オレは叶弥のシャツを握りながら今のオレの気持ちを伝えた。「...お前、それが"好き"っていう感情じゃねーの?しかも独占欲もあるみたいじゃねぇか。」先程まで怖い雰囲気を出していた叶弥だが、おれの言葉を聞き嬉しそうな笑みを浮かべた。「お前が不安なら何度だって言ってやる。オレは、五十嵐 叶弥は田河 京司を愛してる。」「...オレも。オレも愛してる
薄暗い部屋の中、一人の青年が壁に向かってぶつぶつと呟いていた。彼の視線の先には一人の青年が写った写真が壁一面に広がっていた。「ハァ、ハァ...京司君...また会えたね...もしかして僕に会いたくてこの学校に来てくれたのかな...?中学の頃は無理矢理引き裂かれてしまったけれど...まるで僕たちはロミオとジュリエットだね...。でも、もう君と離れる事はしないよ...」そう言いながら彼、"湊 友樹"は二枚の写真を手に取り口付けをする。そこに写るのは中学の頃と今現在の高校の制服に身を包む京司の姿であった。「昔は愛らしくて仕方なかったけれど、君はどんどんキレイになっていくね...。今じゃ大人の色気まで...ダメだよ京司君...僕以外にそんな姿を晒しちゃ...。それにしても、五十嵐 叶弥...未だに僕の京司君の傍にいるとは...憎らしい...!!」彼はそう言うと、写真に写る叶弥の顔に画鋲を突き刺した。「あぁ...早く君をこの部屋に囲ってしまいたいよ...この部屋は僕と君の為に作らせた愛の巣だよ?君も僕に攫ってほしいんだろう...?」彼はねっとりとした視線を壁一面の京司に向けた。「待っててね...僕のジュリエット...」本当は叶弥を自室へ戻すべきなのだろうけれど、オレはなかなか叶弥に握られた手を振りほどく事が出来ずにいた。「京?どうした?」「...叶弥は部屋に戻るのか...?」オレの言葉に叶弥はしばらく固まっていたが、フッと笑みを零し握っていたオレの手を離して頬へとあてがった。「京が傍にいろって言うなら、傍にいてやるよ。昔みたいに一緒に寝てやろーか?なーんて...」叶弥がケラケラと笑いながらふざけて言ったのだろうけど、オレは顔を赤くしながら頬に当てられた叶弥の手に自分の手を重ねた。「それでいい...それでいいから今日は一人にしなでくれ...」「...昔みたいにくっついて寝ていいんか?」叶弥の問いかけに小さく頷いた。「しゃーねぇな。生殺しだが一緒に寝てやるよ。まだ昼間だし軽く昼寝でもするか。」叶弥はそう言うとベッドに上がってきて、オレを抱きしめる形で横になった。同じような生活を送っていると言うのにガタイのいい身体が羨ましく思えた。そして筋肉の付かない自分の身体を恨めしく思った。
オレと叶弥は授業に出る事なく、迎えに来た車に乗り帰路へとついた。叶弥は車内にいる間、ずっとオレの手を握って安心させようとしてくれた。車が組へと着くと、叶弥はオレの肩を抱きながら屋敷の中へと入っていった。連絡を入れたお陰か、若衆は離れたところから心配の視線を送り静かに見守ってくれていた。オレの部屋へと着くと、叶弥はオレをベッドに座らせ、叶弥はオレの隣に腰を下ろした。「京、大丈夫か?少しは落ち着いたか?」「あ、あぁ...悪い。もう大丈夫だ。」「...ウソつけ。まだ顔色悪いぞ。」そう言うと叶弥はオレの頬へと手を当てた。そしてオレの額に自身の額を当てジッと見つめてきた。「...叶弥...?」「大丈夫だ京。お前はオレの隣にいればいい。オレがお前を守るから。」そう言うと叶弥はオレに深く口づけてきた。「んぅ...ふっ...あっ、ハァ...」「けい...京司...」オレは息苦しくなったのと気恥しさ、...何より叶弥の体温を感じたくて、腕を彼の背に回した。「ハァ...京司?」「オ、オレも...オレも叶弥の隣にいたい。...これからずっと...」オレがそう言うと叶弥は顔を真っ赤にしオレを見つめてきた。「け、京司?」「もし、許されるなら...オレはお前の隣から離れる事はしたくない。...ダメか...?」「!だ、ダメじゃねぇ!ダメなわけあるか!」叶弥はそう言うと、オレを力いっぱい抱きしめた。その温かさにオレは心が安心していくのを感じ、叶弥を抱きしめ返した。「叶弥、お前はオレだけを見て、オレだけを守ってくれ。...その代わりにオレの全てをお前にやるから。」オレはそう言うと叶弥の手に口づけた。これはオレなりの誓いだ。叶弥はその様子を黙って見ていたかと思ったら、オレの口づけた手に笑みを浮かべながら口づけた。「...これはオレらなりの盃だな。」そう言われると、オレは自分のした事が急に恥ずかしくなり、ベッドにうっつぶした。叶弥はそんな様子を見て、ケラケラ笑いながら手を握り、オレの頭に口づけを送ってきたのであった。
登校して下駄箱を開けた瞬間、オレの足元に大量の写真が広がった。そこに写っていたのは、中学三年間のオレの姿であった。オレは思わず「ヒッ」と声を漏らし、後退る。そんな様子を見た叶弥がオレに近づき、足元に広がった写真を見ると顔をしかめ、オレに「見るな!」と叫んだ。オレは立っていられなくなり、その場に倒れ込みそうになったが、叶弥に抱き支えられた。そんなオレ達の様子に気がついた登校してきたクラスメイトが「田河君?!五十嵐君もどうしたの?!」と駆け寄ってきた。叶弥はそのクラスメイトに「コレ、片しといてくれ!」と言ってオレを抱きかかえて保健室へと駆け込んだ。「先生!ベッド貸してくれ!」「あら?...ど、どうしたの?!顔真っ青だし、震えてるじゃない!早くこっちに!」そう言われ叶弥はオレをベッドへと横たわせた。そして「大森のトコ行ってくる。」と言ってオレから離れようとしたが、オレは叶弥の手を握りしめた。「京?」と声をかけられたため、オレは震える声で「行かないでくれ...」と告げた。叶弥は少し迷っていたが、叶弥が"大森"と言ったのを聞いた保健室の先生が、「大森先生を呼べばいいのね?」と言い内線をかけ始めた。少し経つと、大森が保健室へとやって来た。「五十嵐。一体何があった?」「実は...」叶弥は大森に問われ、登校時の事を説明した。大森は叶弥の話しを聞くと、「それであの玄関騒ぎか...」と呟いた。叶弥が「玄関騒ぎ?」と大森に問うと、彼は「あぁ...」と言葉を続けた。「実は保健室に来る途中で玄関に人集りが出来ててな。ウチのクラスの連中が"見ないで"と言いながら、散らばった写真を集めてたんだよ。」叶弥は「アイツら...」と言いながらホッと胸を撫で下ろしていた。「写真はお前らが言ってた2年の湊か?」「...それは分からないっす。」大森は「そうか...」と小さく呟いた。「現状だとまだヤツに注意も出来なくてな...」「...そーなんすね...一体どうすりゃ...」「まぁ、見回りを強化させるようにするわ。」「...お願いします。」そう言うと、大森は「田河」と声をかけてきた。「は...はい...」「今日は無理せずに帰れ。迎え呼んどくから。五十嵐も。緊急事態だから田河と一緒にいてやれ。」「...あざす...」大森はそう言うと保健室を後にした。保健室の先生は「迎えが
帰宅をし、オレは制服から部屋着に着替え、ベッドに座りながら雑誌を読んでいた。すると部屋のドアがノックされたため、オレは「はい」と返事をした。次の瞬間「京ー」と言いながら叶弥が入ってきた。「叶弥か。どーした?」「いや...何か大丈夫かなぁって。」「なんだそれ。」どうやら叶弥は、湊 友樹の事でオレの事を心配しているのが見て伺えた。「あんま心配すんなよ。」「でも、中学の時のアイツの京に対する執着ヤバかったからさ...。もうオレはこの間みたいな目に京をあわせたくねぇんだよ...」叶弥はオレの隣に座り、オレの頬を撫でてきた。...そして叶弥はそのままオレにキスをしてきた。「きょう...んぅ...」「...京...」「ハァッ」とオレが息を漏らすと、叶弥は口を離した。「...叶弥...」「京...次は守るから。絶対に。」そう言うと叶弥はオレを抱きしめた。オレはそれに対し、喜びで胸を踊らせてしまっていた。翌朝、オレは早く起きて自分と叶弥の分の弁当を作っていた。時たま若衆が入ってきてつまみ食いをしようとしたが、オレはその手をつまみ上げ阻止した。「痛いッス!京司さん!」「お前らが食うと、オレと叶弥の昼飯が無くなるんだよ。...これ終わったら朝飯作ってやっからそれ待ってろ。」「...!!京司さん!!」「流石、オレ達の女神...」朝飯ごときで...。女神って言うな、女神って。そんなこんなで二人分の弁当を完成させ、朝飯の支度に取りかかる。量が多いため、つまみ食いをしようとしたヤツらに手伝いをさせる。そうして朝飯が出来上がろうとした時、廊下からドタバタと複数の足音が聞こえてきた。「京司さん!」「スンマセン!今日の当番オレらなのに...」そう言いながら入ってきた若衆は、台所に広がる匂いにか、「ゴクッ」と喉を鳴らしていた。...目線はエプロン姿のオレに向けられていたので、オレに対してではないと思いたいと思うのであった。「...大丈夫だ。もう終わるし。」「はよーッス。」「叶弥。」「はよー、京。」叶弥はあいさつをしながら、オレの頬にキスを落としてきた。「若!ズルいっす!」「オレ達の女神に何するんすか!」「...お前らウルセェ...」「叶弥が原因だろ。何すんだ。」「良いじゃねーか。愛情表現だよ、愛情表現。」そうして騒がしい朝が終わるの
「えぇー、以上を持ちまして入学式とさせていただきます。新入生の皆さん、保護者の方々、本日は本当におめでとうございました。」そう教師がマイクに向かって言うと入学式は終了となった。50音順に並んでいたため、オレと叶弥は少し離れてしまっていたが、それでいても叶弥が欠伸をしつまらなそうにしている様子は確認できた。...後で説教だな、これは。教師の「では新入生退場。」と言う言葉で新入生は並んでいる順に教室へと向かう。そうして自分達のクラスへとやって来ると、各々が自分の席へと着く。ちなみに新学期なため、最初の席は50音順で決まっていた。オレも自分の席を確認すると早速席に座る。教師が来るまで少し時間
黒い髪をサラサラと靡かせ学校へと向かう。今日の入学式を祝うかのように桜の花びらが風に煽られ舞っている。オレの隣には少し長めの金髪を後ろで一括りにして気怠そうに歩いている叶弥がいる。「朝っぱらから疲れた...」「凛太朗さんじゃ無いけど、ホントお前ってオレの事になると子供の頃のガキ大将みたいになるよな。」「...ウルセェ...」オレが叶弥にそう言うと叶弥は力無く項垂れるのであった。そんな叶弥にオレは追い打ちをかけるような言葉をかける。「いいか、叶弥。中学の時みたいに誰彼構わずケンカ売るなよ?」「...それは京にも言える事じゃねぇか?」「オレはケンカを売ったことは無い。...買い
そんな夢から目を覚ますとオレは涙を流していた。涙なんていつぶりだろう...そう思っていると部屋の扉が開かれた。「京、早く仕度しねぇと入学式に遅れるぞ。」「悪い叶弥。急いで支度する。」「...ってお前。何泣いてんだよ。"鬼の目にも涙"ってか?」そう。あれから叶弥と共に体術などを学び、見る見るうちに力をつけていって、中学卒業する頃にはここら一帯じゃ"五十嵐組の番犬"言われ恐れられるまでにケンカの腕を磨いたのであった。叶弥は叶弥でガキ大将だったのが嘘かの様に、次期組長に相応しい貫禄を身につけていたのであった。そうしてオレはベッドから降り、真新しい制服へと袖を通す。「お待たせ、叶弥。
懐かしい夢を見た。両親を失くした時の夢。あの後凛太朗さんは宣言通り二日後の退院の日に迎えに来てくれた。そんな彼の後ろにはオレと同い年くらいの少年が偉そうに立っていた。「ほら。コイツが俺の息子の叶弥だ。年は前にも話したが京司と同い年だ。叶弥、ふんぞり返ってないで挨拶しろ。」「...五十嵐 叶弥。よろしく。」「田河 京司です...よろしくお願いします。」そうオレがあいさつをし返した途端、叶弥は顔をバッと上げニカッと笑いながら言葉を続けた。「お前が今日からオレの舎弟になるんだよな!な!そうだろオヤジ!」「先ずは友達から始めんか。何をまるで出会って速攻結婚を申し込むみてぇな世迷いごと