LOGINある日突然交通事故で両親を失った京司(けいじ)。そんな彼を引き取ったのは極道で名の知れた五十嵐組の組長であった。 そんな彼の一人息子、叶弥(きょうや)とともに慌ただしい毎日を送る京司。時には絡まれ、時には涙することも。ガキ大将であった叶弥と泣き虫であった京司。高校生となり、二人は身も心も成長し、京司はいつしかそのケンカの腕っ節から、"五十嵐組の番犬"と呼ばれるように。そんな相思相愛の二人が繰り広げる"ワン"ダフルな日常の物語。
View Moreーー誓いを立てた小さな手は、今では立派な男の手となっていた。「けーじ!きょーや!」と慕っていた子供は今では「京兄、叶兄」と呼ぶように。「京兄、今日手合わせ付き合ってくれる?」「んー、そうだな。久々に身体動かさないと。デスク業務ばっかでなまっちまうからな」「!それじゃあ......痛っ!」「おいおい、どこに目ェ付けてんだ、兄ちゃん?」図体のデカい男がぶつかって来てイチャモンをつけてきた。見たところ、どっかのチンピラであろう。「オレ達はなぁ、天下の"五十嵐組"の幹部なんだぜ?痛い目見たくなきゃ慰謝料、払ってもらおうか?」......これは脅迫罪に恐喝罪。アウトだ。「おかしいな......お前らみたいな三下、ウチの組で見た事ねぇぞ?」「"ウチの組"だァ?兄ちゃん冗談言っちゃあいけねぇよ?......もしかして痛い目見たいドマゾちゃんかァ?」「やっちまってください!兄貴!」兄貴と呼ばれた男は俺に向かって拳を大きく振りかぶったりそしてその拳をそのまま振り下ろす。しかしその拳はまるで止まっているかのように遅く、受け止めるのは容易かった。オレがその拳を片手で受け止める流すと、チンピラ二人組は「そんなバカな!!」と言って目をまん丸くする。その隙をついて、オレは回し蹴りをお見舞いした。すると男はいとも簡単に吹っ飛んで行ったのであった。「あ、兄貴ィ?!」「ヒュー。流石"五十嵐組の番犬、田河 京司"!」剛がわざとらしくオレの通り名と名前を言うと、男どもは「ま、まさかあの伝説の......?!」とガタガタと震え始めた。「......で?"五十嵐組"の幹部がなんだって?」「い、いえ!すすす、すみませーん!!」そう言うと偽幹部は走り去って行った。「おっと、"若頭補佐"って教えてやるの忘れてた」「......そこまで言わんでいいわ。」オレは剛の頭をペシリと叩いた。身長はとっくのとうに追い越されている。...悔しい所だ。オレ達がそんな事をしていると、一台の黒いリムジンが停まった。そして中から叶弥が顔を出してきた。「お前らいつまで待っても帰ってこないと思ったら......こんな所で何してやがる。」「......いや、ちょっと地域貢献の為のゴミ掃除を......」「そうそう!京兄はいい事しただけだよ!」「まぁいい。京、もうじき会合の時間だ。早く車に乗れ
「つ、剛?でもね、新しいお父さんはお金持ちなのよ?」「そんなの関係ない!お母さん変わった!前はお金がなくてもオレといれれば幸せだって言ってたのに!!」剛は涙を流しながら涼香さんに詰め寄った。どうして、どうしてと言うばかりで他の言葉が出てこなくなった。そんな剛を見て涼香さんはショックを受けたようだ。「涼香、今のお前は結婚のために剛を利用しようとしてるとしか思えない。そんなヤツの所に剛は渡せない。」「!剛は私がお腹を痛めて産んだ子よ!私がどうしようと私の勝手だわ!」......涼香さんの言葉にオレはプッツンしてしまった。剛を道具としか見ていない態度に。「涼香さん。オレも貴方に剛を渡すのは反対です。剛は"家族"であって、再婚のための"道具"じゃない。」「な、何よ!孤児のくせに私にいっちょまえに説教するつもり?!」「いい加減にしないか!涼香!お前は勘当する!二度と五十嵐の敷居を跨ぐな!剛も絶対にお前なんかに渡さないぞ!!」「そ、そんな......!!剛?貴方はお母さんと一緒にいたいわよね?ね?!」...最早脅迫のようになっている。涼香さんの顔は恐ろしいものとなっていた。その顔を見た剛はオレの胸へと飛び込み涙を流した。「怖い、怖いよぉ......けーじ、けーじはオレを捨てる?」「捨てるわけがないだろう?剛はオレの家族」「京の言う通りだぞ、剛。この組にいる全員がお前の家族だ」「けーじ!きょーやぁ!!」剛は泣きながらオレ達の名を呼びオレ達の元にいたいと訴えてきた。「......どうやら剛の答えは出たようだな。言ってなかったが涼香。お前が剛を組に置き去りにした後、剛とオレは特別養子縁組をしている。だからお前の出る幕はハナからないんだよ」「そ、そんな...それじゃあ、私のセレブ生活が......」「...結局、お前の目的はそこなんだな」「あ、いえ......それは......」再会の時に涙していたのは嘘のようだった。所詮、涼香さんは"母親"ではなく"女"でいることを選び、そのために剛を利用しようとしていたというだけの話しだった。「も、もういいわ!二度とこんな所になんて来ない!剛!貴方ももう私の息子じゃないわ!」「お母さんなんて呼ばないで!」そう言うと、涼香さんは組から去っていった。残された剛のことを心配したが、剛はオレと叶弥の服をギュッと
「それで?今になって剛の前に姿を現したのには何か意味があるのか?」凛太朗さんが涼香さんにそう尋ねると涼香さんは口をもごもごと動かし言いづらそうにしていた。「......私は......私はただ、剛の様子が見たくって......」「オレはホンネを聞きたいのだが?」「そ、それは......」「当ててやろうか?剛を引取りに来たんだろう?」「「?!」」オレと叶弥は驚愕した。剛が来てまだそんなに経っていない。一体どういう事なのか......。「い、今お付き合いを始めた男性がいるの。本当、ごく最近。それで彼、不妊症らしくって自分の子が持てないんですって。......剛の話しをしたら是非養子に迎えたい、と......」「借金もどうにかしてくれるって。だから!」と涼香さんは顔を明るくして凛太朗さんに近寄った。「だから、なんだ?お前は自分の勝手で剛をウチに置き去りにしたんだぞ?」「でも彼と結婚したら、剛には父親が出来るわ!やっぱり本当の家族と一緒にいるのが一番いいに決まっているわ!そうよ、ね?剛?!」カンペキに目がイッてしまっている。そんな顔の母親を見た剛は怯えてしまっていた。先程までの優しい面影が無くなっていた。「剛!お母さんと一緒に新しいお父さんと暮らしましょう?前よりも......ううん。今よりもうんと幸せに暮らせるわ!」そう言いながら涼香さんは剛に詰め寄った。......剛はそんな母親に、涼香さんに恐怖心を抱いたのか、オレの後ろへと隠れてしまった。「剛......?どうして隠れるの......?お母さんに会いたかったでしょう?」「今のお母さん怖い!オレ、ここにいる!けーじときょーやとおじさんと一緒にいる!!」剛の発言に涼香さんはカッとなり、顔を赤く染めながら怒り任せに剛を叩こうとした。......しかし、間一髪。オレがその手を取ったのだ。「!離して!......離しなさい孤児の癖して!興信所使って調べたから知っているのよ!どうやって兄さん達に取り入ったか知らないけれど、私は騙されな......!!」涼香さんが全部言い切る前に叶弥が涼香さんにビンタをかました。「...アンタも駆け落ち相手が死んだんだから分かるはずだろ?京司は両親を亡くしたんだ。......今までどれだけ辛い思いをしたと思ってやがる......!!」「涼香。オレもお前の
女性は急いで立ち上がると逃げるように走り出した。しかし、いち早く叶弥が反応し、女性の後を追いかけた。そして、叶弥が女性に追いつき、腕を掴むと女性はピタリと動きを止めた。「アンタ...もしかして剛の母親の"涼香さん"か?」「......」「黙りか?無言は肯定ととらえるぜ?」女性は、"涼香さん"は叶弥の問いかけに一切応えない。オレは剛を連れ二人の元へと近寄ると、剛は...静かにオレの手を離した。そしてゆっくりと涼香さんに歩み寄り、「お母さん」と呼んだ。その瞬間、涼香さんはバッと剛を見て涙を流した。「つ......つよし......!」「お母さん!!」剛と涼香は涙しながら抱き合って離れる事がなかった。「......オレ前園に連絡するわ」「あぁ、よろしく」叶弥が前園に連絡を入れると、すぐさまリムジンが此方に向かってきた。そしてオレ達の前で停ると、中から凛太朗さんが現れた。「涼香!!」「に、兄さん......」「お前、一体剛を置いて何していたんだ!」「ご、ごめんなさい!!生活が苦しくて......!剛だけでも平穏な所で暮らして欲しくて......!!」「家出した身でお願いするのが忍びなくて...」と涼香さんは涙ながらに話し始めた。すると凛太朗さんは涼香さんにビンタをしたのだった。オレ達が驚き固まっていると凛太朗さんは涙を流しながら「バカヤロー!」と叫んだ。「いくら家出してようがな、家族は家族なんだよ!今の今まで心配しない日は無かった!辛いなら頼って欲しかったぞ!......今からでも遅くない。ウチに帰ろう。な?」「でも、でも借金が......」「どうせ駆け落ち相手がこさえたモンなんだろう?」「......剛の父親でもあるの。......でももう亡くなってしまっていて......」「なんでそん時に頼ってくれなかったんだ?」凛太朗さんがそう尋ねると涼香さんは「ごめんなさい」と言うばかり。すると、剛が凛太朗さんと涼香さんの間に入って涼香さんを庇うように両手を広げた。「おじさん!お母さんをしからないで!お願い!!」「剛......」剛の健気な姿に凛太朗さんも叶弥もオレもどうする事が出来なかった。「......とりあえず組に帰るぞ。全員車に乗れ」全員、凛太朗さんの指示に従うしか無かった。果たしてこれからどうなってしまうのか...。
オレの祈り虚しく、迎えは黒塗りのベンツだった。周りの生徒達がなんだなんだと騒いでいる輪に近づくと、車の外で待機していた若衆が「若!京司さん!」と大声で呼んだ。すると人集りの輪が解けオレ達に道が譲られる。「入学式お疲れ様です!宴会の準備が出来てるんで、早く組へ帰りましょう!」「...五十嵐組って本当に何かとこじつけて宴会したがるよな。」オレがボソッと呟くと叶弥は「そーでもなくね?」と言う。「だってお前の誕生日はともかく、オレの誕生日までどんちゃん騒ぎじゃねーか。」「そりゃお前、未来の若頭補佐の誕生日は祝わねーとだろ。」「そうですよ!京司さんはオレ達の女神ッス!」「...女神って
そんな夢から目を覚ますとオレは涙を流していた。涙なんていつぶりだろう...そう思っていると部屋の扉が開かれた。「京、早く仕度しねぇと入学式に遅れるぞ。」「悪い叶弥。急いで支度する。」「...ってお前。何泣いてんだよ。"鬼の目にも涙"ってか?」そう。あれから叶弥と共に体術などを学び、見る見るうちに力をつけていって、中学卒業する頃にはここら一帯じゃ"五十嵐組の番犬"言われ恐れられるまでにケンカの腕を磨いたのであった。叶弥は叶弥でガキ大将だったのが嘘かの様に、次期組長に相応しい貫禄を身につけていたのであった。そうしてオレはベッドから降り、真新しい制服へと袖を通す。「お待たせ、叶弥。
懐かしい夢を見た。両親を失くした時の夢。あの後凛太朗さんは宣言通り二日後の退院の日に迎えに来てくれた。そんな彼の後ろにはオレと同い年くらいの少年が偉そうに立っていた。「ほら。コイツが俺の息子の叶弥だ。年は前にも話したが京司と同い年だ。叶弥、ふんぞり返ってないで挨拶しろ。」「...五十嵐 叶弥。よろしく。」「田河 京司です...よろしくお願いします。」そうオレがあいさつをし返した途端、叶弥は顔をバッと上げニカッと笑いながら言葉を続けた。「お前が今日からオレの舎弟になるんだよな!な!そうだろオヤジ!」「先ずは友達から始めんか。何をまるで出会って速攻結婚を申し込むみてぇな世迷いごと
ある日突然、両親を失った。交通事故だった。両親とオレの三人で散歩をしていた時、飲酒運転のトラックがオレ達目がけて突っ込んできた。オレ達が渡っていたのは青信号の横断歩道で、トラックは赤信号。完全にトラックの運転手の過失だった。トラックはスピードを落とすことがなかったので、オレ達は避けるヒマを与えられなかった。そんな中でも両親はオレを守るように抱きしめてくれた。お陰でオレは事故から3日後に病院のベッドの上で目を覚ます事が出来た。しかし、両親は直に地面に叩きつけられた為即死だったらしい。そんな事を淡々と医師に告げられた。「君はご両親のお陰で骨折を免れる事が出来た。あと二日程で退院する事ができるだ