All Chapters of その番犬、狂暴につきまして。: Chapter 41 - Chapter 50

55 Chapters

episode41

「京......京司......」「......お前が震えてどーすんだよ。オレなら大丈夫。何もされてない。お前が...叶弥が助けてくれたから。それに絶対助けに来てくれるってしんじてた。......ありがとう」「ホントに......無事でよかった」叶弥はそう言うとオレを強く強く抱きしめた。......まるでどこにも行かせないかのように。大事なものを守るかのように。伝わってくる叶弥の体温の温かさに、オレは安心して眠ってしまいそうになる。そんなオレの様子に気づいたのか、叶弥は「眠ければ寝てていい。組に着いたら起こすから」と言ってきたので、オレはその言葉に甘んじて目を閉じた。どれくらいの時間が経っただろう。車が停止したのを感じ取り、オレは目を覚ました。どうやら組に帰ってきたらしい。目を覚ましたオレに気づいた叶弥が、「京?」と名を呼びながらオレの顔を覗き込んできた。「ん......はよ、叶弥」「少しは休めたか?」「おぅ。今日は迷惑かけて悪かったな」オレがそういうと、叶弥は「違うだろ」と言ってきたので、オレは謎に思っていると、「迷惑なんかじゃねぇ。......オレこそお前に謝るべきだろう。油断して、傍にいたのにお前を攫われてさ......怖い思いさせて悪かった」「叶弥......お前こそ怪我ないのか?スタンガン思いっきり食らったろ」「あのくらい平気だ。むしろあんなので気を失うなんてダサい所を見せた」「お前も怪我がなくて良かったよ。......ありがとう。お前の存在があったからこうしてきぜんとしていられる。叶弥、好きだよ」「!お前、不意打ちかよ......。デレが突然すぎなんだよ」オレが気持ちを素直に伝えると、叶弥は顔を真っ赤にした。「フハッ!顔真っ赤!ウケる(笑)」「笑うなよ......。クソッ......」そんなやり取りをしていると、前方から咳払いが聞こえてきた。「お二人とも......オレいますんで。イチャつくなら部屋で頼みます......」......オレは運転手の存在を忘れていたことに恥ずかしくなって叶弥を突き飛ばしてしまった。
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episode42

「京司......!」「あ......凛太朗さん」「大丈夫か?どこか怪我は......」「大丈夫だ親父。拘束後が着いただけで京司に怪我はない。相手のヤツはサツに引き渡すように指示してきた。」「......心配かけてすみません、凛太朗さん」「謝るこたぁねぇ。無事ならそれでいいんだ」屋敷に着いた時、凛太朗さん達が出迎えてくれた。凛太朗さんを始めとした組の皆に心配かけてしまった事が申し訳ない。「どうやら湊とか言ったか?ヤツの身内にどっかの地主がいたらしく、ヤツの一家も恩情を受けていたらしい。だから金に困ることなく、京司を攫う時にも人を雇うことが出来たらしい。まぁ、今回の件でオレも堪忍袋の緒が切れた。オレの大事な家族に手ぇ出したんだ。地主だろうと報いを受けてもらう」そう言った凛太朗さんは黒いオーラを纏っていた。凛太朗さんは組、身内を一番に思う優しい人だ。血の繋がりのない子供のオレに対しても本当の家族のように考えてくれたり行動を起こしてくれたりしてくれる。幼い頃に家族の温かみを失ったオレはそれが嬉しい。「お前らが中学生の頃はストーキングをする程度だったから、学校に報告するくらいしか出来なかったが......これでやっと手出し出来る。安心しろ京司。あの一家は二度と表を出歩くことが出来なくしてやる」「...凛太朗さんもマジ容赦ないですよね」「何当たり前のこと言ってんだ。叶弥も京司。お前もオレの大事な子供だ。お前らのためなら何だってするさ」「......凛太朗さんや組の皆には感謝してもしきれないくらいです」「オイ。オレを忘れてないか?まさか"組の皆"に一括りにしてるんじゃないだろうな?」叶弥はブスっとしたので、オレと凛太朗さんは顔を見合せ笑いあった。「叶弥ァ。心のちっせぇ男は捨てられちまうぜ?」「大丈夫です凛太朗さん。......ちゃんと愛してます」「!京司!!」叶弥はオレの言葉に感極まりましたと言わんばかりに抱きつこうとしたが、凛太朗さんがオレの腕を引き不発に終わった。...叶弥は恨めしそうに凛太朗さんを睨みつけて「オヤジ......覚えてろよ......」と呟いたのであった。
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episode43

オレと叶弥はオレの部屋でベッドに座りながら静かに過ごしていた。隣同士で座りながら手を繋いで離さないでいた。特に何かを話すことも無くゆるりとした空気が流れている中、叶弥が「京」とオレの名を呼んできた。「ん。......何、叶弥?」「嫌じゃ......ないか?オレにさわられるの」「?なんで?」叶弥の突然の言葉に疑問を持った。確かに数時間ではあったが拘束され、身体を撫で回されてはいたが、嫌悪するのは叶弥以外の人間に触れられることに対してだ。「確かに他人に触れられるのは気持ちのいいものじゃない。......だから叶弥。お前が上書きしてくれよ」オレがそう言うと、叶弥はオレをベッドに押し倒して、オレの顔を覗き込みながら優しく頬を撫でてきた。そしてオレの手を取ると、手首の拘束跡を見て、眉間に皺を寄せながらそっと口づけた。「他は?他に何された?......まさかキスとかされてねぇよな......?」「オレがお前以外に許すとでも思うか?」「......思わねぇ。......でも拘束された状態だったからさ。......されてねぇならいいんだ」「されそうにはなったけど」「ハァ?!それは許せないぞ!」「されてはないのに?」「それでも!お前はオレのなんだから」「独占欲強いもんな。昔から」オレがそう言うと、「お前だから。京だから独占したいんだ」と言った。オレはその独占欲が心地よくて......無意識に叶弥の背に腕を回すとオレの方から顔を近づけキスをした。叶弥にとっては不意打ちだったようで、顔を真っ赤にしながら口をパクパクとさせていた。そんな叶弥の様子がおかしくて...愛おしくて。オレは叶弥の髪をわしゃわしゃとかき混ぜた。「京、お前たまに凄いことするよな......」「別に?叶弥にしかしないんだからいいよな?」「......オレ以外にしたら、ソイツのこと殺すかもな」「ハハッ。......怖いくらい愛されてんのな。オレ」オレがそう言うと叶弥は深い口づけをしてきたかと思うと、それも短いものですぐ離された。「?叶弥?」「オレをここまで愛させるのはお前だけだよ」「そりゃ、嬉しいね。...な。もっとしてくれよ。あんなんじゃ足んねぇわ」そう言うとオレ達は何度も何度も、確かめ合うようにキスをした。
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episode44

二人がベッドの上でじゃれ合いを楽しんでいると、"コンコン"と部屋のドアが叩かれた。「?はい」「若、京司さん、失礼しま...…!!スンマセン!!」入ってきた若衆は、ベッドの上で横たわったオレに覆いかぶさっている叶弥と言う光景を目にし、即座に謝りながら開けたドアを閉めた。オレと叶弥はもう開き直っているので気にしないのになぁという思いと、見苦しいものを見せてしまったか?という思いで、オレは叶弥に降りるよう促した。そうして、オレはドアの向こう側に「入ってこい」と声をかけた。すると、恐る恐るとドアが開かれた。「悪かったな。何かあったか?」「い、いえ......お二人とも夕メシ食ってないんじゃないかと思って、夜食持ってきたんスけど......」「そーいや腹減ったな。京も食うだろ?」「ん。もらう。ありがとな」オレは笑みを浮かべてメシを持ってきた若衆に礼を言うと、ソイツは赤かった顔を更に赤くして「い、いえ!」と返事した。次の瞬間だった。オレの顔を叶弥が手でおさえてきた。「おい、叶弥なんだよ......」「今のお前色気ダダ漏れなんだよ。......おい、お前らもさっさとメシ置いてでてけ。」「「ハ、ハイィ!!」」「......肝のちっせぇ男は嫌われるぞ?それにオレは至って普通だ」「......普通じゃないからアイツら顔赤くしてたんだろうが」「皆が皆、男のオレに変な目を向けるわけじゃねェんだよ。安心しろ。オレはお前しか見てないから」「京......」叶弥はオレにまたキスをしてこようとしていたが、腹が減っていたオレにとっては夕メシの方が最優先だった。そのため、叶弥の腕を掻い潜り、テーブルに置かれた飯の前に座った。そんなオレを見て、叶弥は「あーもう!」と叫びながらしゃがみこんだ。「?何してんだ?食わねぇの?」「食うよ!食うけどさ!......あー!後で覚えてろよ?!」「メシ食ったら、風呂入って寝る」「もうちょいイチャイチャしてもよくね?!」「......明日、学校だぞ?」「なんで学校なんてもんがあるんだ......!!」そう叫んでいる叶弥に、オレは「あ、何言っても無駄だな。メシ食お」と思い、温かいうちに夜食に手をつけるのであった。
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episode45

翌日、学校に登校すると、オレはたくさんの視線に晒された。どうやら察するに、湊先輩のオレに対する誘拐事件の噂が広がったらしい。どうして、どうやって広まったかはわからない。だが、集まってくる視線が気持ち悪くて仕方がない。よっぽどそれが顔色に出ていたのだろう。叶弥がオレの肩を抱き、「大丈夫だ」と言ってくれた。それがオレにとってどれだけ力強いものであるか。正面玄関を入ったところで、担任の大森が待ち構えていた。「はよーさん。田河、五十嵐。二人共ちょっと生徒指導室まで来てくれるか?」「おはようございます。あの...何かやらかしましたか?叶弥が」「おい」「いや、まだ五十嵐はやらかしてないから安心しろ。別件だ」「まだってなんだよ。まだって」「別件......?」「ここじゃ、あれだから......」と大森に促されるまま上履きに履き替え生徒指導室へと向かった。そしてソファーへと腰かけると大森が、「五十嵐の話しではないと言えば別に心当たりがあると思うが...」と話し始めるとオレの方へと目を向けた。その視線で何を言いたいかわかった。どうやら叶弥も同じようだ。「......湊、先輩の事、ですね?」「あぁ。この休みにあった事件については学校側は周知している。まずは田河。学校側として何も対処出来ずにすまなかった。湊は退学処分になったよ」「そう...ですか...」「まぁ、ヤツに関しては五十嵐組がほとんど応対したようだが......」「当たり前だ。京に手ェ出したんだ。組総出で手をくだした。」叶弥がそう言うと、大森は「敵には回したくない人間だもんな、お前は」と口にした。「ニュース案件の筈なんだがそうならなかったのは五十嵐組の根回しか?」「あぁ。未成年ってことで名前は出ないにしろ、京の身を案じて、な。それなのに......学校内に噂が広まったってのはどういう事だ?組のヤツらには慎重に事を運ぶように言ったんだが......」「それについてもスマン。お前らが登校してくる前に湊の両親が退学処分に対して物申しに来てな......。あまりの大声で捲し立てていたせいで応対していた校長室から外へ筒抜けになっていたらしい」「処分に関してはいつ出したんだ?」「昨日の夜、緊急でな。部活動でオレも学校に来ていたんだが、お前んとこのヤツらが来て、すぐに校長も呼んで会議して......だ」
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episode46

そのまま教室へと向かう最中にもこちらをチラ見するヤツはいたが、その度叶弥が睨みをきかせたため、朝のうちにオレと湊先輩の事件の噂は広まることがなくなった。流石に叶弥様様だ。だが、クラスに着くと、クラスメイト達は心底心配してました!と言わんばかりに、オレの元へと集まってきた。「田河、お前マジ大丈夫か?!」「今日くらい休んでも良かったんじゃないか?」「......ありがとう。でも下手に休むと逆に来ずらくなるからさ。それに叶弥がついていてくれるし」「たしかに五十嵐がいれば安心か」「ハイハイ。お前ら京に近寄りすぎ。離れろや」叶弥がおれを背後から包み込むように抱きしめると、手で"シッシッ"とやった。そんな叶弥にクラスメイトは「独占欲丸出しだよ」「心狭いぞー」と声を上げた。「独占欲で結構。京はオレのだから。勝手に触んじゃねぇぞ?」「これじゃどっちが"番犬"かわからねぇな」「......なんて言うか、"女王様"と"ナイト"って感じが強い」「「たしかに」」「オイ。ケンカ売ってんなら買うぞ?叶弥には及ばないがオレもそれなりに強い方だからな?」オレがそう言うと「女王様のお怒りじゃー!」「こういうとこは"番犬"っぽいな」と口々に言い出してきた。オレは登校してから今まで、若干気が重たかったが、クラスの様子に心が軽くなったと同時に温まるのを感じた。「ケンカと言えば、最近停学してた上級生が復学してきたらしいよ?」「?なんでそれが"ケンカと言えば"なんだ?」それは叶弥も疑問を持ったようで、発言したくらを二人して見やった。「それが、他校の生徒とのケンカが原因らしいんだ」「なんでも視線で人を殺せる"番長"って言われてるらしい」「......"番長"って古くないか?」大概のクラスメイトは同じ感想を持っていたようで、皆が「うんうん」と頷いていた。「で?その"番長さん"がどうかしたのか?」「いやぁ、かなりのケンカ狂らしいから、五十嵐君達のこと知ったらそれこそケンカ売りに来ると思うよ?」叶弥はそれを聞くと何かを考え、「ソイツの名前、"財前 正義"か?」と尋ねた。オレはその名前を聞いた瞬間「ゲッ」と声を漏らし、クラスメイトは「なんでわかったんだ?」と疑問を持った。「なるほどな。財前なら平気だ。なんてったって"自称"京司の舎弟だからな」叶弥の発言に教室が凍ったかと
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episode47

昼休みになり、叶弥と弁当を食べていると、廊下が急にザワザワと騒がしくなった。オレと叶弥はなんだ?と目を合わせると、教室に一人の男子生徒が入ってきた。その男子生徒とは、朝話題に上がっていた"財前 正義"であった。財前は教室内を見渡し、オレと叶弥を見つけると、つかつかと近づいてきてオレの足元に跪いてきた。「ちょ、ちょっと財前!お前何してんだ?!」「京司さん...!ご無沙汰しておりました!若もお元気そうで何よりです!!」「おぉ、財前久しぶりだな。なんでも停学食らってたんだって?」叶弥がそういうと、財前は「うっ......」と声を上げた。そして「これには深い訳がありまして......」と言葉を紡いだ。「オレがボコったヤツら、京司さんの隠し撮りをしてて、それを回収するために......仕方なく......ですね......」「「隠し撮りぃ?」」オレはまさかそんな物が出回っていたことに驚きを隠せないでいた。叶弥に至っては怒りのあまり箸を握り折っていた。「財前......それ全部回収出来たんだろうな......?」「も、もちろんです!若!コチラになります!」財前はそう言うと回収したという写真を机に広げた。......中には着替えの最中の際どい物まであった。一体いつこんな物を撮ったのやら......。見たところ、写真は中学生の頃の物ばかりだった。......男の隠し撮りを欲しがるなんて変わり者がいたもんだ。「財前、良くやった。写真はオレが預かる。停学食らう覚悟で良い働きをしてくれた。流石京の舎弟だ。オレが太鼓判を押してやる。これを機に五十嵐組の一員に格上してやる」「ホ、ホントっすか?!若!」叶弥は「あぁ」と言うと財前の肩を叩いた。「これからは堂々と京の護衛をしてくれ。ケンカは停学を食らわない程度に。な?」「お、おい叶弥......」「ハイ!任せてください!停学を食らったせいで、今回の騒ぎには手を下せなかったのが歯がゆかったんで......。京司さん!これからよろしくお願いしますね!」財前は目をキラキラさせながらそう言うと、オレの手を握ってきた。しかし、「そこまでは許可してねぇぞ」と叶弥がその手を叩き落としたのであった。
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episode48

湊先輩の件もあり忘れていたが、体育祭が間近に迫ってきていた。体育祭練習も多方進んで、各種目や応援合戦など、どの組も力が入っていた。オレ達の所属する組は特に応援合戦に力が入っていて、よさこいを踊ることになっていた。普段ケンカ以外には興味ややる気を見せない叶弥だが、祭りごととなると力が入る。中学の時の体育祭でもよさこいを踊ったのだが、叶弥は普段やる気を出さないのにキレッキレのよさこいを披露した。そして、競技にも力が入っていてぶっちぎりの1位を取り優勝へと導いたのだ。「京......オレはこの体育祭で優勝してみせる。そんでもって、最優秀選手賞を取ってお前に......」「待ったァ!若、いくら若でもそれは譲れません!京司さん!オレが絶対にあなたに勝利を捧げます......!!」「......いや、いらんし。てか財前に至っては組違うだろ......」バカと不良は祭りごとが好きだなぁ......とオレは遠い目をしていたりそんなやり取りを見ていた周囲からは、「五十嵐組の跡取りとケンカ狂の財前が手懐けられている......」と注目を集めてしまっていた。オレはその視線が痛くて、勘弁してくれ......と心底思うのであった。「そういえば、オレ、お前らと同じ中学だったけど毎年体育祭凄かったよな」「凄いってどんな風に?」「五十嵐組総出で応援に来てんの。な、田河!」「......叶弥見ればわかるだろ?祭りごとに目がないヤツらばっかりなんだよ」そう言うとクラスメイトには「なるほど......」と納得されてしまった。「オイ、財前。お前組対抗リレー出るんだよな?ならオレと勝負しろ。京に良いとこ見せるのはオレだって証明してやるよ」「望むところっすよ!若!」叶弥と財前は二人で目をメラメラと燃やしていた。高校初の体育祭はきっと波乱が起きるんではないかと心配になってきてしまうオレであった。そんなオレの心配を他所に、この二人に触発された生徒達は多く、「最高の体育祭にするぞー!」と立ち上がるのであった。......オレはそれについていくことができず、何事も起こらず無事に体育祭を終えることを祈るだけだった。
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episode49

天気は雲一つない晴天。絶好の体育祭日和である。オレは朝早くから朝メシと弁当の支度をしていた。すると、背後からぬっと手が伸びてきて、ギュッと抱きしめられた。そして作っていた唐揚げを一つヒョイっと取り上げられてしまった。「うん。今日も最高に美味い。はよー、京」「おはよう、叶弥。つまみ食いはすんなと前々から言ってたんだけどな。てか動けないから離せ。弁当作れねぇだろうが。朝メシも同時進行してんだからさ」オレ達がそんなやり取りをし続けていると、朝メシ作りを手伝っていた若衆が「朝から仲良いっすね......」「スゴいラブラブっぷりですね」と言ってきた。「......見せもんじゃねぇぞお前ら」「いやいや、若。見せてきてるんじゃないッスか!」「そーっすよ。いくら組公認だからと言って、前よりイチャつきっぷりが加速してるじゃないですか!」「京司さんも!前ならもっと抵抗してませんでした?!」「いや......もう何言ってもムダだし、好きにさせておいても大丈夫だろ。害はないし」「ど、毒されてしまった......!!」と若衆が悲鳴を上げた。そう言っている間にオレは弁当と朝メシの支度を仕上げ、エプロンを取って叶弥に投げつけた。「お前のせいで時間ギリギリじゃねぇか。おい、お前ら。出来上がったから広間に運んでくれ」「は、ハイ......」「ブレない京司さん......流石ッス!」そんなこんなで朝メシが広間に揃うと、凛太朗さんや若衆が広間に集まってきた。「叶弥、京司。今日はいよいよ体育祭だな。組総出で応援行くからな。気張れよ?」「凛太朗さん、もう子供じゃないんだからそんな応援なんていらないですよ......」「何言ってんだ京司。いつまで経ってもお前らは可愛いオレの子供達だ。応援くらい行かせてくれや」「そうだぞ、京。オレらの勇姿を見せてやらなきゃならん。それに祭りは人が多い方が盛り上がるぜ?」凛太朗さんと叶弥はホントそっくりな性格をしているな。とオレはため息をつきながら朝メシを食べ進める。そして食べ終えると、食器を片付けにキッチンへと移動した。すると、俺の次にキッチンへ入ってきた若衆が「洗い物はオレらがやるので学校へ行ってください!」と言ってくれた。なのでオレは礼を言いお言葉に甘えて、叶弥と共に学校へと登校した。
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episode50

学校に着くと、オレ達生徒は椅子を持ってグラウンドへと向かう。そして指示された場所に椅子を置く...はずだった。本来、オレと叶弥は離れた位置に座るはずであったのだが、叶弥がオレの隣に座るはずの生徒を脅し、俺の隣を陣取った。「おい......。お前何してんだよ」「あぁ?せっかくの祭りなんだから、お前の隣に座るのは当たり前だろ?」「いや、当たり前じゃないだろ......」「まぁまぁ、田河。別にいいじゃねぇか。夫婦喧嘩は良くないぞ?」「お!いいこと言うな。夫婦だってよ、京。やっぱりわかるヤツにはわか......って痛え!」クラスメイトの言葉に気を良くした叶弥は調子に乗り始めたので、オレは叶弥の足を思いっきり踏みつけた。「おーい、1年!急で悪いんだが、誰か借り物走に出てくんねぇか?出場予定のヤツが病欠になっちまってな」「借り物走ッスか?......五十嵐一番足速いし、五十嵐がいいんじゃね?」上級生からの頼み事にクラスメイトが叶弥を推薦してきた。「あぁ?借り物走はヤル気出ねぇ......」そう言う叶弥に、そう言われるのは想定内。とでも言うように、クラスメイトがオレに耳打ちしてきた。「あー......。叶弥の借り物走で1位取る勇姿、見たかったなぁー(棒)」「うしっ。オレが出れば百人力だろ」チョロい。チョロすぎる。五十嵐組の跡継ぎがこんなにチョロくていいものなのか...。「借り物走の種目順は開会式のすぐ後だから、初手から1位取って覇気とヤル気に火ぃつけてくれや。」「......田河」「叶弥ー、期待してるー(棒)」「おう!任せとけ!京に1位の名誉をくれてやるよ!」「キャー!五十嵐男前ー!」「......叶弥、カッコイイー(棒)」叶弥はクラスメイトやオレからヨイショされヤル気満々になっていた。クラスメイト達に叶弥が囲まれ始めた時、上級生の三人組がオレの元ヘとやって来た。たしか、応援団のヤツらだ。「1年の田河......だったな?」「?ハイ。そうですけど......」「折り入って頼みがある。これを着て応援をしてくれ!」「......は?これって......」「お前がこれを着て応援してくれれば五十嵐だけじゃない、この組のヤツらのヤル気はアップするはず......!!」そう言いながら差し出された衣装にオレは言葉を失った。「......
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