LOGIN「たく......。なんなんだあのクソガキは......」「......叶弥、そろそろ痛ぇんだけど......」叶弥は剛が口づけてきたオレの頬をゴシゴシと拭いながら剛が去っていった方へと睨みをきかせていた。「それにしても...オレに叔母がいるなんて知らなかったぞ」「わるいな。あいつ、高校卒業してから姿を眩ませたからな。オレもガキが出来てたのは知らなかったんだわ」「でも、なんで縁を切った実家に我が子を預けたんですかね?」「さぁな......」と凛太朗さんは食後のお茶を飲みながら遠くを見た。「でもホントにウチの血を継いでるガキなんか?ホントにその叔母のガキって言う証拠は?」「オレも最初は疑ったんだが、見れば見るほど妹...涼香のヤツに似ててな......。それに手紙と一緒に妹一家の写った写真が入ってたからな」「確実な証拠ですね」「それにしても......なんかやけに京に懐いたな。ほんの数分しか会ってないのに」「あぁ......。多分だが京司が涼香の雰囲気に似てるんだよ」オレは思わず「えっ...」と声を漏らした。たしかに成長するにつれ、凛太朗さんの俺を見る目がなんだか懐かしいものを見る目になってきていたのには気づいていた。成程。それが理由だったわけか。「そんなにその涼香さんに似てるんですか?」「纏ってる優しい雰囲気がな。あと、そんな中にもある姐御肌とかな」「凛太朗さん。オレ、女じゃないです」「ハハッ。悪い悪い。でもホント、オレも涼香の面影を感じることがあるからさ。出来なかった分、お前を甘やかしてやりたくなる」凛太朗さんはそう言うと、オレの頭を撫でてきた。オレはそれが擽ったくってついつい、「子供扱いはやめてくださいよ。」と言ってしまった。でも、オレの顔はふにゃふにゃになっていたらしく、凛太朗さんは「ガハハ」と笑いオレの頬をムニムニと弄んだのだった。それを見た叶弥は面白くないと言わんばかりにオレと凛太朗さんを引き離した。「オヤジ......京に手ェ出すんじゃねぇよ。京も京だ。オヤジに好きにさせてんじゃねぇよ」「何言ってんだよ叶弥。オレは将来の息子の嫁さんにスキンシップをとってるだけだ。なぁ?京司」「......凛太朗さん、だからオレを女扱いしないでくださいよ」「京司はホントに可愛いなぁ。五十嵐の女に近づいてきてるぞ?涼香もだし、亡き
「...おい坊主。お前今なんて言った?」「な、なんだお前!」「オレは京の旦那だ。」「!!けーじはオレのだ!!」「いいや。オレのだ」叶弥は大人気もなく剛に食ってかかった。これは大変なことになりそうだぞ......。「叶弥、子供の言うことを本気にするのは......」「京。大人だろうが子供だろうが、オレのもんに手ぇ出すのは許せねぇんだわ」叶弥はそう言うと、オレに抱かれている剛に見せつけるようにキスをしてきた。それを間近で見た剛はカチンと固まったかと思うと、ふるふると震え始め顔を真っ赤にした。そして次の瞬間、剛は小さな両手でオレの両頬をつかみ、自分の方へ向けさせると剛までもがオレにキスをしてきた。「つ、剛?!」「オレだってこれくらいできる!けーじは絶対オレのものにしてみせるからな!」「......このガキ......」「まーまー!皆さん、メシにしましょう!ね?ね?!」存在を消していた若衆の言葉に、そういや朝メシの途中だったなと思い出し、「そ、そうだな!剛も腹減ったろ?」と問うた。すると剛の腹が"グー"っと鳴ったので叶弥に目をやると、「チッ...一時休戦だ、クソガキ。」と言い皆で広間へと戻るのであった。「おうおう。遅かったな、お前ら。...なんかあったか?」「い、いえ。なにも......」オレはそう言うと剛を床に降ろした。すると剛は凛太朗さんに駆け寄るとそれはもう元気よく、「おじさん!けーじをオレのおよめさんにください!」と堂々と宣言したのだった。その宣言の直後、メシを食っていたヤツらは思わずメシを吹き出したのであった。そして皆ゴホゴホと咳き込むと、黒いオーラを放った叶弥の姿を見て動けなくなってしまった。「オイ、ガキ。お前はメシ抜きだ。一生な。京のメシは食わせねぇぞ」「ちょ...叶弥、お前大人気なさすぎるぞ?剛。メシは食わせてやるから。な?だからさっきの宣言は無かったことにしよう。な?」「けーじ。男に二言はねぇよ!」ホントに5才か?と思うような言葉を放ち、「でもメシは食う!」と言うと剛はガツガツとメシを食べ始めた。「ハッハッハ!こりゃあ傑作だ!叶弥!うかうかしてらんねぇな?」「......京に相応しいのはこのオレだ」「おい、ガキ」と叶弥は剛を呼ぶと、オレと自分の左手薬指の指輪を見せつけた。「オレ達はこう言う仲だ。マセガキ
剛は「たべるー!」と大きな声で返事をしたため、「お手伝い出来るかな?」と聞くと「できるぞ!」と元気よく応えたので一緒にキッチンへと向かった。あまりこの子はあの場にいない方が良いだろう。そう思ったからだ。先程まで剛の世話をしていた若衆にもついてきてもらったが、剛はそいつとオレを見比べるとオレの手をギュッと握ってきたのだった。「ん?どうした?」「名前!お前名前なんてゆーんだ?!」「オレは"京司"って言うんだ。」「けーじ?」「うん」オレはそう言うと余っていた玉子焼きを一切れつまみ、剛の口へと入れた。「ん!うまい!」「みそ汁もあるから、それとご飯も一緒に持っていこうな」「ハーイ!」オレが剛にそう言い聞かせると、ついてきた若衆はポカーンとしていた。オレはそれが不思議に思い「どうした?」と声をかけた。「い、いえ......剛坊ちゃん、オレらこ言うことはあまり聞かずに好き放題だったんで......」「お前ら子供の相手向いてねぇもんな」「おい!けーじ!はやくメシ食べたい!」「ハイハイ。おい、お前メシ運んでくれるか?」「わ、わかりました。」「けーじ、オレ自分で持てるぞ!」「お!偉いな。でも広間まで遠いから大人に運んでもらおうな?」「じゃあ、手!つないで!」剛はそう言うと小さな手をオレに向けて伸ばしてきた。まだこんなに小さいのにな......と思い、オレは剛の頭を撫でると抱き上げた。「おわっ!けーじ、すげー!力もちだな!」「剛くらいなら抱っこできるぞ?剛は今いくつなんだ?」「んーと......5!さい!」5才か......。オレが両親を亡くした時よりもだいぶ幼い。父親は亡くし、母親は行方をくらませる......。5才ならまだまだ親に甘えたい年頃だろうに......。「剛。お前父さんと母さんいなくて悲しくないか?」オレは思わずそんな事を聞いてしまった。剛はキョトンとした後、何故かニカッと笑った。「けーじ!これは"男の試練"なんだぞ!母ちゃんはオレが強くなった頃に迎えに来てくれるって!」「......剛は男前だな」「おう!......だ、だから......」「?」剛は何かモジモジとした様子を見せてきて、何か口をもごもごとさせていた。するとなかなか広間に戻ってこないオレ達の様子を見に叶弥がやって来た。なんとそのタイミングで、「け
体育祭の代休として、休みになった月曜日。オレは窮屈さに目を覚ますと、身体をガッチリホールドされているのに気がついた。その正体は言わずもがな叶弥である。オレはそのホールドを無理矢理とき、叶弥をベッドから蹴り落とす。「......痛ぇ......」「なんで毎日毎日オレのベッドに入り込むかな......」「恋人なんだし、良いじゃねぇか。それに休みだ。もう少しゆっくりしても......」「皆の朝メシ作らなきゃだし、オレもう行くな」「おい......」オレは叶弥を軽くいなして部屋を後にし、キッチンへと向かう。キッチンには当番の若衆も来ていて、「おはよう」と挨拶すると、「京司さん!おはようございます!」と朝から元気のいい返事が返ってきた。オレはエプロンを身につけ調理を始めた。しばらく若衆らと雑談しながら料理をしていると、キッチンに叶弥と凛太朗さんが顔を出してきた。「おはようさん。今日もいい匂いさせてんなぁ。京司、まるで若妻みてぇだな...。どうだ?今からオレの嫁さんになるか?」「おい、オヤジ。京はオレの嫁なの。変な目でみるなよ」「心の狭い男は逃げられるぞ?な、京司?」「......いや、凛太朗さんも冗談が過ぎますよ。叶弥も本気にすんなよ。って、二人してオレのケツ撫で回すのやめて貰えますかね......!」「「そこに良いケツがあったから」」「...ハァ...もういいです。もう少しでメシ出来ますから広間で待っていてください」オレはそう言うと二人をキッチンから追い出した。そして調理を終えると他の若衆らも呼び、料理を運ぶように指示を出した。そして広間に料理と若衆らが揃うと、朝メシを食べ始めた。「叶弥に京司。今日は何か予定あるか?」「いや、ねぇけど。な、京」「はい。今のところはなにも」そう言うと凛太朗さんは「それは丁度いい!」と言って言葉を続けた。「実はお前たちに頼みたいことが......」そう話しをしようとした次の瞬間、廊下からドタドタと走る音が聞こえてきた。「なんかいい匂いがするー!オレもたべるー!!」「「?!」」「おい、剛。こっちに来い」「?ハーイ!」凛太朗さんがそう言うとその子供を呼び寄せた。「オヤジ、そのガキは?まさか......隠し子?!」「んな訳あるか。バカが。こいつは剛。オレの年の離れた妹の子供......まぁ、甥っ
体育祭が無事終わり、クラスで簡単な打ち上げをしていると、リレーで活躍した叶弥はクラスメイト達に囲まれていた。「ウェーイ!兄貴!流石の活躍っぷりでしたねぇ!」「サンキュー。でも、それを言うなら京のお陰もあったからだな」「たしかに。田河の追い上げ凄かったよな」「バトンパスも上手かったよな。流石夫婦!」「......だから夫婦はやめろ。」「おーい、お前ら!保護者会からアイスの差し入れだぞー!あとジュースも追加してくれた」大森はそう言うと大量のアイスとジュースを持って入ってきた。「先生......もしかして......」「おう。大体五十嵐組の人達からだな!ほら」「京司さん!お疲れ様っす!」大森の後に荷物を持った若衆の姿があった。クラスメイトからは、「おぉ......モノホンのヤクザだ......こんな近くで見れるなんて......」「なんかこうして見ると田河、姐さんって感じに見えるな」「将来的にはそうなるんじゃね?」と口々に声が上がった。「おい!お前ら、聞こえてるからな?何が姐さんだ!」「いやいや、京司さん。オレらはいつも心の中で"姐さん"って呼んでますぜ」「......教育し直してやろうか?」「まぁまぁ、京。事実なんだし照れることはねぇぞ?」「照れてない!」「田河可愛いー」「田河顔赤いぞー」と教室中から言われ恥ずかしさと怒りが入り混じった感情を抱いた。「じゃあ若、京司さん!オレらはこれで!夕飯どうします?」「簡単な夜食でいい。お前らで先済ませといて」「わかりやした」そうやり取りすると、若衆の連中は帰っていった。「ヤクザって普段何食ってんの?毎日ご馳走?」「んな訳ねぇだろ。作るの一苦労だわ」「え?田河が作ってんの?」「オレだけじゃねぇけどな。まぁ、主だって作ってるのはオレだな」「京作だぜ?」クラスメイトと話していると叶弥かわアイスを咥えながらやって来て、「京、バニラでよかったよな?」と言いながらアイスを渡してきた。「ヒェー......。田河ハイスペじゃん。」「ハイスペ?オレが?」「だって、顔いいし、勉強も運動も出来るじゃん?それに加えて料理にケンカにヤクザまとめたり......」「最後ハイスペ関係ねぇな」「でもそれだけ凄いってことだよ」そう褒められては赤い顔を更に恥ずかしさで赤くしてしまう。オレは火照った顔
リレーの成果もあってか、体育祭は赤組の勝利で幕を閉じた。そして、なんと叶弥が最優秀選手賞を取ったのである。これには生徒よりも保護者席にいた五十嵐組の連中が盛大に盛り上がったのであった。「若ー!!最高です!」「叶弥ァ、良くやった!」「......うるせぇ......」流石祭り好きの連中だ。盛り上がりが尋常ではない。珍しくこれには叶弥も参っていた。そしてもう一人、こちらはとても落ち込んだ様子であった。「くっそー!リレーで若に勝てばオレにも京司さんを口説くチャンスがめぐってくると思ったのにぃー!!」「お、おい財前落ち着け!五十嵐が凄い睨みつけてきてるぞ......」「京司さんって"五十嵐組の番犬"だろ?お前、前にケンカ売ってボコり返されてたじゃねぇか。......たしかに美人だけど、これは諦めるしかねぇよ......」「くそ......くそぉ......!」「ダメだこりゃ」「あの日......オレが京司さんにケンカ売った日...夕日をバックに佇む血濡れの姿が綺麗で......美しくて......」「......なんか語り始めたぞ......」財前はどうやらクラスメイト相手に何やら力説しているようで、遠目から見てもその不振さは見てとれた。「おい、京。財前のヤローお前見ながらなんか言ってんぞ」「放っておけ。なんで男のオレ相手に......」「まぁ、財前の気持ちはわからなくはないけどな」おかしい。オレの周りの男共はどいつもこいつもイカれてやがる......。家でも、学校でも......。女のいない環境のせいか?組はオレが引き取られる前から叶弥の母親は亡くなっていていなかったし、学校は男子校だし、女教師も数少ない。百歩譲って、オレが女顔ならまだわかる。だが現実のオレはちゃんと男とわかる顔立ちをしている。......まぁ、華奢とまではいかないが、いくら鍛えたり、ケンカしたりしても筋肉はつかない体質で細身である。だからか、大抵の不良どもからは舐めて見られるし、普通の男からはゲイ受けしそうと言われている。「まぁ、財前の事は置いといて。叶弥、オレのタオル知らねぇ?なんか見当たらなくて......」「あ......あー......知らねぇな」「......叶弥」「言ったら怒るだろ......?」「内容による」消えたタオルの行方を叶弥に問うと歯切
オレの祈り虚しく、迎えは黒塗りのベンツだった。周りの生徒達がなんだなんだと騒いでいる輪に近づくと、車の外で待機していた若衆が「若!京司さん!」と大声で呼んだ。すると人集りの輪が解けオレ達に道が譲られる。「入学式お疲れ様です!宴会の準備が出来てるんで、早く組へ帰りましょう!」「...五十嵐組って本当に何かとこじつけて宴会したがるよな。」オレがボソッと呟くと叶弥は「そーでもなくね?」と言う。「だってお前の誕生日はともかく、オレの誕生日までどんちゃん騒ぎじゃねーか。」「そりゃお前、未来の若頭補佐の誕生日は祝わねーとだろ。」「そうですよ!京司さんはオレ達の女神ッス!」「...女神って
そんな夢から目を覚ますとオレは涙を流していた。涙なんていつぶりだろう...そう思っていると部屋の扉が開かれた。「京、早く仕度しねぇと入学式に遅れるぞ。」「悪い叶弥。急いで支度する。」「...ってお前。何泣いてんだよ。"鬼の目にも涙"ってか?」そう。あれから叶弥と共に体術などを学び、見る見るうちに力をつけていって、中学卒業する頃にはここら一帯じゃ"五十嵐組の番犬"言われ恐れられるまでにケンカの腕を磨いたのであった。叶弥は叶弥でガキ大将だったのが嘘かの様に、次期組長に相応しい貫禄を身につけていたのであった。そうしてオレはベッドから降り、真新しい制服へと袖を通す。「お待たせ、叶弥。
懐かしい夢を見た。両親を失くした時の夢。あの後凛太朗さんは宣言通り二日後の退院の日に迎えに来てくれた。そんな彼の後ろにはオレと同い年くらいの少年が偉そうに立っていた。「ほら。コイツが俺の息子の叶弥だ。年は前にも話したが京司と同い年だ。叶弥、ふんぞり返ってないで挨拶しろ。」「...五十嵐 叶弥。よろしく。」「田河 京司です...よろしくお願いします。」そうオレがあいさつをし返した途端、叶弥は顔をバッと上げニカッと笑いながら言葉を続けた。「お前が今日からオレの舎弟になるんだよな!な!そうだろオヤジ!」「先ずは友達から始めんか。何をまるで出会って速攻結婚を申し込むみてぇな世迷いごと
ある日突然、両親を失った。交通事故だった。両親とオレの三人で散歩をしていた時、飲酒運転のトラックがオレ達目がけて突っ込んできた。オレ達が渡っていたのは青信号の横断歩道で、トラックは赤信号。完全にトラックの運転手の過失だった。トラックはスピードを落とすことがなかったので、オレ達は避けるヒマを与えられなかった。そんな中でも両親はオレを守るように抱きしめてくれた。お陰でオレは事故から3日後に病院のベッドの上で目を覚ます事が出来た。しかし、両親は直に地面に叩きつけられた為即死だったらしい。そんな事を淡々と医師に告げられた。「君はご両親のお陰で骨折を免れる事が出来た。あと二日程で退院する事ができるだ