修は撮影スタジオから飛び出し、タクシーを拾った。車に乗り込むなり余計な言葉は一切口にせず、行き先だけを短く告げた。彼から放たれる凄まじい威圧感に気圧された運転手は、何も聞けずにアクセルを踏み込んだ。その間にも、修は次の一手を打つことを忘れなかった。スマートフォンを取り出して丸山に電話をかけ、十数人のボディガードを連れて蔦巻町碧ヶ丘6-1-4へ急行し、外周で待機するよう命じた。ただし、決して藪蛇になるな――相手に感づかれるなと、きつく念を押した。丸山の手回しは迅速だった。修が目的地に到着した時には、三、四台の黒塗りのセダンがすでに音もなく路肩に停車していた。修の姿が見えるやいなや車のドアが開き、丸山が六名のボディガードを引き連れて足早に歩み寄ってくる。丸山は声を潜めた。「修様。人員をお連れしました」修が顔を上げると、そこには高い塀に囲まれた三階建ての豪奢な洋館がそびえ立っており、正門のあたりには微かな明かりが灯っていた。修は簡潔に命じた。「お前は部下を連れて正門から突入しろ。騒ぎは大きければ大きいほどいい。奴らの注意をすべてそっちへ引きつけろ」「かしこまりました」修は自分に一番近いボディガードを顎でしゃくった。「お前は俺と一緒に裏から塀を越える。行くぞ」ボディガードは無言で頷いた。丸山が手を振り、残りの五人を引き連れて並木道沿いに正面へと向かう。修は例のボディガードを伴い、洋館の西側にそびえる塀へと回り込んだ。二人は比較的低い塀の区画を見つけ出した。ボディガードが半ばしゃがみ込み、両手を交差させて踏み台を作る。修はその手の上に足を乗せ、反動を利用して一気に塀の上へと身を翻した。ボディガードも黒豹のような身のこなしで、すぐさまその後を追う。敷地内には綺麗に刈り込まれた芝生が広がり、遠くにあるプールの水面が薄暗い青い光を反射している。修は植え込みの影に張り付くようにして進み、プールを回り込んだ直後、タバコを吸いに出てきた拉致犯の一人と鉢合わせた。拉致犯は口にタバコをくわえたまま、その場に立ち尽くした。ボディガードは彼に叫ぶ隙すら与えなかった。一歩踏み込んでその口を塞ぎ、相手の腹部に容赦なく膝蹴りを見舞う。拉致犯はくぐもった呻き声を漏らし、くの字に体を折った。修は一歩前に出て男の胸倉を掴み上げ、這うような低い声で凄んだ。「お前らがさらっ
Dernière mise à jour : 2026-09-29 Read More