Tous les chapitres de : Chapitre 201 - Chapitre 203

203

第201話

修は撮影スタジオから飛び出し、タクシーを拾った。車に乗り込むなり余計な言葉は一切口にせず、行き先だけを短く告げた。彼から放たれる凄まじい威圧感に気圧された運転手は、何も聞けずにアクセルを踏み込んだ。その間にも、修は次の一手を打つことを忘れなかった。スマートフォンを取り出して丸山に電話をかけ、十数人のボディガードを連れて蔦巻町碧ヶ丘6-1-4へ急行し、外周で待機するよう命じた。ただし、決して藪蛇になるな――相手に感づかれるなと、きつく念を押した。丸山の手回しは迅速だった。修が目的地に到着した時には、三、四台の黒塗りのセダンがすでに音もなく路肩に停車していた。修の姿が見えるやいなや車のドアが開き、丸山が六名のボディガードを引き連れて足早に歩み寄ってくる。丸山は声を潜めた。「修様。人員をお連れしました」修が顔を上げると、そこには高い塀に囲まれた三階建ての豪奢な洋館がそびえ立っており、正門のあたりには微かな明かりが灯っていた。修は簡潔に命じた。「お前は部下を連れて正門から突入しろ。騒ぎは大きければ大きいほどいい。奴らの注意をすべてそっちへ引きつけろ」「かしこまりました」修は自分に一番近いボディガードを顎でしゃくった。「お前は俺と一緒に裏から塀を越える。行くぞ」ボディガードは無言で頷いた。丸山が手を振り、残りの五人を引き連れて並木道沿いに正面へと向かう。修は例のボディガードを伴い、洋館の西側にそびえる塀へと回り込んだ。二人は比較的低い塀の区画を見つけ出した。ボディガードが半ばしゃがみ込み、両手を交差させて踏み台を作る。修はその手の上に足を乗せ、反動を利用して一気に塀の上へと身を翻した。ボディガードも黒豹のような身のこなしで、すぐさまその後を追う。敷地内には綺麗に刈り込まれた芝生が広がり、遠くにあるプールの水面が薄暗い青い光を反射している。修は植え込みの影に張り付くようにして進み、プールを回り込んだ直後、タバコを吸いに出てきた拉致犯の一人と鉢合わせた。拉致犯は口にタバコをくわえたまま、その場に立ち尽くした。ボディガードは彼に叫ぶ隙すら与えなかった。一歩踏み込んでその口を塞ぎ、相手の腹部に容赦なく膝蹴りを見舞う。拉致犯はくぐもった呻き声を漏らし、くの字に体を折った。修は一歩前に出て男の胸倉を掴み上げ、這うような低い声で凄んだ。「お前らがさらっ
last updateDernière mise à jour : 2026-09-29
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第202話

部屋の中央にはパイプベッドが置かれ、澪はその脚に縛り付けられていた。スーツはとうに剥ぎ取られ、薄手のシャツ一枚しか身につけていない。襟元のボタンも引きちぎられ、三人の男たちに取り囲まれていた。 扉を蹴り破る轟音に、三人が一斉に振り返った。 「誰だ――」 修の背後にいたボディガードが、黒い稲妻のごとく駆け抜けた。真っ先に飛び出してきた拉致犯に身構える暇すら与えず、その顎に重い一撃を叩き込む。男は吹き飛ばされ、傍らにあったスチールラックをなぎ倒した。 二番目の男が腰から鉄パイプを抜き放ち、ボディガードの頭上へ振り下ろす。ボディガードは身を捻ってそれを躱すと、即座に相手の手首を逆手に取って捻り上げた。鉄パイプが硬質な音を立てて床に転がり、男は悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。 形勢不利と見た三番目の男は踵を返して逃げようとしたが、修に壁際へと追い詰められた。 男はブーツに隠し持っていたナイフを引き抜き、でたらめに振り回す。 「失せろ!」 修は表情ひとつ変えず、首を横に傾けた。背後から音もなく忍び寄ったボディガードの手刀が、男の首筋へ容赦なく振り下ろされる。ナイフが手から滑り落ち、男はそのまま床に沈んだ。 一連の出来事は、わずか二十秒足らずの間に終わっていた。 修は床に転がる拉致犯たちを跨ぎ越え、パイプベッドへ向かって駆け出した。 「澪!」 彼は片膝をつき、震える指先で彼女の手首を縛る結び目を解こうとした。ロープは容赦なくきつく締め上げられ、柔らかな肌に深く食い込み、赤紫色の痛々しい痕を残している。 修は拉致犯が落としたナイフを拾い上げ、ロープを断ち切ると、続けて彼女の足首の拘束も解いた。 「
last updateDernière mise à jour : 2026-09-30
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第203話

ボディガードの叫び声と、鈍器が肉を打ちつける鈍い音が同時に響き渡る。 修は後頭部を巨岩で殴りつけられたかのような衝撃を受け、視界が真っ白な光に包まれて弾けた。両脚から力が抜け、そのまま前のめりに倒れ込んだ。彼は無意識のうちに澪を腕の中で庇ったが、背中から階段に強く打ちつけられ、抱き抱えていた澪もその腕から転げ落ちてしまった。 ぼやける視界の中、黒いブルゾンを着た男が金属バットを手に、目の前に立っているのが見えた。さらに二人の男がその後ろから姿を現し、先頭の男が倒れたボディガードを足で蹴りつけ、動かないことを確認してから修へと歩み寄ってくる。 男はしゃがみ込み、修の頬を軽く叩いた。 「九条の坊ちゃん。綾音さんが仰っていたよ。自分から飛び込んできたのなら、まとめて始末しろってな」 修は動こうとしたが、後頭部に走る激痛で四肢がまったく言うことを聞かなかった。這ってでも澪のもとへ向かおうと身をよじったが、こめかみに強烈な肘打ちを食らい、瞬時に意識の糸が断ち切られた。 漆黒の闇が、すべてを飲み込んでいく。 再び意識を取り戻したとき、修が真っ先に感じたのは耐え難いほどの蒸し暑さだった。 後頭部の痛みが脈打つように神経に沿って広がる。苦しみながら重い瞼を持ち上げたが、視界にはただ真っ暗闇が広がっているだけだった。 無意識に手を伸ばして後頭部に触れようとしたが、肘を曲げた途端に何かにぶつかり、鈍い音が響いた。 彼は動きを止め、慎重に上下左右へと手を伸ばして探った。 どうやらここは、極めて狭く密閉された空間らしい。下には粗い起毛素材のマットのようなものが敷かれており、その横には氷のように冷たく硬い鉄の壁があった。修が拳を握ってその鉄壁を叩くと、空間全体が揺れた。 トランクだ。
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