芙由は、誰がその錦鯉を贈ったのかを滉には教えず、紗彩に直接聞くようにと言った。もちろん、滉がそんな尋ね方をするはずはない。紗彩が本当のことを話すはずがないとわかっていたからだ。だが、滉の記憶が完全に抜け落ちていたわけではなかった。必死に記憶をたどると、この錦鯉が贈られてきたのは二年前のことだった。当時、紗彩は錦鯉を迎えるためだけに庭の造りを一新し、わざわざ日当たりや水の流れまで見て池を造らせていた。「そう考えると、確かにあいつにとってはよほど思い入れのある代物なんだろうな」滉は魚を贈った相手が不倫相手ではないかと疑っていたが、証拠がなければどうしようもない。DNA鑑定の結果すら真っ向から否定する紗彩のことだ。生半可な証拠を突きつけたところで、あっさりシラを切られるに決まっている。タバコを吸い終えて書斎を出ると、紗彩はすでに家を出た後だった。佑紀子が、テーブルの錦鯉の料理をすべて捨てようと片付けているところだった。「片付けなくていい。それより、錦鯉を扱っている専門店へ行って、新しいのを何匹か買ってこい」「これは市場で簡単に買えるような魚ではございません。そうでなければ、奥様があれほどお怒りになるはずがありませんもの」「あいつが大げさに騒いでいるだけだ。片付けは俺が後でやる。お前は今すぐ市場へ行って、羊を一頭丸ごと買ってこい。今夜は羊の丸焼きにするぞ」佑紀子は不満そうだったが、それでも言われた通りに出かけていった。彼女がいなくなると、滉は二年前の領収書や伝票を探し始めた。家の中も外も隅々まで調べたが、何一つ見つからない。紗彩がすでに処分したのかもしれない。その後、滉は邸宅の管理室へ向かい、当時の監視カメラの映像や来訪者記録の控えが残っていないか調べ直した。当時、錦鯉を運んできた車の運転手が訪問者記録に残していた名前をついに見つけ出した。【四海グループ】滉が記録に残っていた番号に電話をかけてみると、驚いたことにまだ通じた。相手は当時の運転手だった。魚がどこから来たのかははっきりと答えられなかったが、郊外にある「仙人農場」へ行ってみるよう勧めてきた。あそこには高級な錦鯉を専門に育てている人間がいるらしい。善は急げとばかりに、滉はすぐに車を走らせた。農場は辺鄙な場所にあったが、そこまで舗装された道路が真っ直ぐ
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