Todos os capítulos de 16年の嘘、托卵妻への逆襲と男の覚悟: Capítulo 71 - Capítulo 80

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第71話

芙由は、誰がその錦鯉を贈ったのかを滉には教えず、紗彩に直接聞くようにと言った。もちろん、滉がそんな尋ね方をするはずはない。紗彩が本当のことを話すはずがないとわかっていたからだ。だが、滉の記憶が完全に抜け落ちていたわけではなかった。必死に記憶をたどると、この錦鯉が贈られてきたのは二年前のことだった。当時、紗彩は錦鯉を迎えるためだけに庭の造りを一新し、わざわざ日当たりや水の流れまで見て池を造らせていた。「そう考えると、確かにあいつにとってはよほど思い入れのある代物なんだろうな」滉は魚を贈った相手が不倫相手ではないかと疑っていたが、証拠がなければどうしようもない。DNA鑑定の結果すら真っ向から否定する紗彩のことだ。生半可な証拠を突きつけたところで、あっさりシラを切られるに決まっている。タバコを吸い終えて書斎を出ると、紗彩はすでに家を出た後だった。佑紀子が、テーブルの錦鯉の料理をすべて捨てようと片付けているところだった。「片付けなくていい。それより、錦鯉を扱っている専門店へ行って、新しいのを何匹か買ってこい」「これは市場で簡単に買えるような魚ではございません。そうでなければ、奥様があれほどお怒りになるはずがありませんもの」「あいつが大げさに騒いでいるだけだ。片付けは俺が後でやる。お前は今すぐ市場へ行って、羊を一頭丸ごと買ってこい。今夜は羊の丸焼きにするぞ」佑紀子は不満そうだったが、それでも言われた通りに出かけていった。彼女がいなくなると、滉は二年前の領収書や伝票を探し始めた。家の中も外も隅々まで調べたが、何一つ見つからない。紗彩がすでに処分したのかもしれない。その後、滉は邸宅の管理室へ向かい、当時の監視カメラの映像や来訪者記録の控えが残っていないか調べ直した。当時、錦鯉を運んできた車の運転手が訪問者記録に残していた名前をついに見つけ出した。【四海グループ】滉が記録に残っていた番号に電話をかけてみると、驚いたことにまだ通じた。相手は当時の運転手だった。魚がどこから来たのかははっきりと答えられなかったが、郊外にある「仙人農場」へ行ってみるよう勧めてきた。あそこには高級な錦鯉を専門に育てている人間がいるらしい。善は急げとばかりに、滉はすぐに車を走らせた。農場は辺鄙な場所にあったが、そこまで舗装された道路が真っ直ぐ
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第72話

――紗彩よ、お前が外で付き合っている男、つまり寧音の実の父親は、この農場の中にいるのか?それとも、ここに関係している人間なのか?こんな場所を隠し持っていたなんて、よくもまあ俺を完全に騙し通してくれたな!だが、悪事は必ず露見する。いくら完璧に隠したつもりでも、必ずどこかにボロは出るんだよ!滉は自分の推測にますます自信を深めた。100%の証拠はないが、少なくとも範囲は絞り込めた。滉はすぐには帰宅せず、帰り道でいろいろと思考を巡らせた。自分一人の力で調査を進めるにはどうしても限界があると感じたのだ。そこで、寧音の学校へと向かった。担任に連絡を入れると、すぐに寧音を呼び出してくれた。「何しに来たの?」寧音は滉を見るなり、露骨に不機嫌そうに顔をしかめ、まるで赤の他人に接するような冷たい態度を取った。――この小娘こそ正真正銘の恩知らずだ!何年も育ててやった恩を完全に仇で返しやがって……滉の胸の奥はかすかに痛んだが、表情には一切出さず、平然と振る舞った。彼は一枚のメモを差し出した。そこには【中村】【四海】と書かれている。「寧音、俺の推測が正しければ、お前は中村姓になるはずだ。四海グループの中村という人物が、おそらくお前の実の父親だ。良いんじゃないか、四海グループも相当な大企業だ。お前は将来、その後継者になる可能性が高い。すごい話じゃないか」「じゃあ、その中村って人は誰なの?」寧音はぱっと目を輝かせた。数日会わないうちに、滉がここまで大きな手がかりを見つけてくるとは思ってもみなかった。自分は来る日も来る日も考え続けていたのに、何一つ見つけられなかったというのに。「それはわからない。俺の調査はここまでだ。寧音、俺みたいな役立たずの父親から本気で離れたいなら、お前もただ待っているだけというわけにはいかないぞ。紗彩と野村伯山は、俺のことを泥棒みたいに警戒している。俺一人の動きでは思うように調べられない。だから、お前の協力が必要なんだ」「じゃあ、私にどうしろっていうの?」「お前に何ができるかなんて、俺にわかるわけないだろう。ただ、自分から動いてみて行き詰まることがあったら電話してこい。俺が相談に乗る。だが、最後はどうであれ必ずDNA鑑定が必要になる」「つまり、私が自分でその中村って人を探し出して、DNA鑑定をしろってこと?
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第73話

伯山と芙美は滉を見下しており、滉もまた、娘の育て方を根本から誤った二人に強い嫌悪を抱いていた。野村家の人間は、権力を笠に着て人をいたぶるか、息をするように嘘をつく詐欺師のどちらかしかいない。滉は一刻もこんな場所にいたくなかった。娘たちは滉と一緒に帰りたがったが、伯山と芙美に強く拒絶された。彼にはどうすることもできない。あの子たちは他人の子なのだ!邸宅を出ると、以前解雇した算数の家庭教師がやって来るのが見えた。「水野さん、紗彩さんに呼ばれて来ました」家庭教師は少し気まずそうだったが、ここが滉の自宅でもあることを考え、できるだけ自然な笑顔を作った。「娘たちをしっかり教えてやってください。先生は優秀な方ですから」滉は家庭教師を困らせるようなことは言わず、車に乗り込んでその場を離れた。家の中では、部屋に戻った芙美が紗彩に電話をかけ、声を潜めて言った。「あなたのこと、もう完全にバレているんじゃないの。さっき滉が、あなたが外の男と一緒にいると確信しているような口ぶりだったわよ。あなたは今、仕事中なの?それとも外で男と遊んでいるの?」「えっ、あの人、なんて言ったの?」「傷ついた心を慰めてもらいに男のところへ行っている、ってね。当てずっぽうの嫌味なのか、前から証拠を掴んでいたのかはわからないけど。とにかく、あなたのその中途半端なやり方はもう通用しないと思うわ。耳が痛いだろうけど言わせてもらうわよ。火遊びもいい加減にしなさい。今すぐ決断するの。外の男を選ぶなら、滉とはさっさと離婚しなさい。もし家庭と子どもたち、今の結婚生活を守る気があるなら、浮気相手との関係は今すぐきっぱりと断ち切りなさい」「お母さん、そこまで深刻な話じゃないわよ」「紗彩、あなたが力をつけて、とても有能になったのはわかっているわ。でも、滉を甘く見てはいけない。滉も一人の男よ。窮鼠猫を噛むって言葉を知らないの?最悪の場合、あなたを巻き添えにして破滅しようとしたら、どうやって身を守るつもり?私に言わせれば、滉のような取るに足らない人間はもう見切りをつけて捨てるべきよ。つまらないことのために大きな損失を招かないことね」芙美は電話を切ると、表情を次第に曇らせた。彼女はずっと滉のことを、後ろ盾のない取るに足らない小人物だと考え、警戒する必要などないと思い込
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第74話

紗彩が書斎に入ると、滉は手術の録画映像を見ていた。血まみれの生々しい画面は、医療従事者ではない彼女にはあまりに刺激が強すぎ、正視できるものではなかった。「あなた、少し話をしましょう。その映像は後で見てもらえないかしら?」「何を話すんだ?この二人の命が失われたのは、お前の父親が身勝手な理由で俺を病院から追い出したせいだ」「どういう意味よ?お父さんが関係しているの?はっきり説明してちょうだい!」「わからないのか?お前の父親は、俺たちがまだ離婚していないのが気に入らず、俺を病院から追い出すよう上層部に圧力をかけたんだ。その結果、高橋はお前の父親の言いなりになって俺を解雇した。この二人の患者は俺を頼って来たんだ。もし俺がICUに残っていれば、患者の担当も手術の執刀も俺だった。成功を100%保証はできないが、90%の確率なら助けられたはずだ。……もういい、患者は死んでしまった。今さら何を言っても無駄だ。ただ、お前の父親に伝えておけ。これ以上罪を重ねたくないなら、二度と病院の人事に口出しするなとな。人の命に関わることだからな。ああ、お前も同じだ」滉は映像を一時停止し、タバコに火をつけて書斎を出た。「あなた、病院の仕事がそこまで大切だとわかっていたなら、どうして無理にでも行かなかったの?問題が起きてからお父さんのせいにするなんて、責任転嫁じゃない!」「世間の目はごまかせないさ!だが、高橋にはもう院長でいる資格はない。あいつこそ、海東大学附属病院から一番に出て行くべき人間だ!」「でも、さっきも言ったように、あなたは明日から仕事に戻るのよ。明日は私が車で送っていくから」紗彩は眉をひそめた。今の滉は、弱い立場から権力の使い方を試し、自分たちを揺さぶっているようにも見えた。「ははっ、野村会長。ずいぶんと他人の職場にまで口を出してくるんですね。俺がお前の言うことを聞かなければ、またハニートラップでも仕掛けるつもりですか?お前の父親と同じように人を雇って俺を殴らせるか、それともまた別の卑劣な手を使うつもりか?」「あなた、どうしてそんな風になってしまったの?昔はそんな人じゃなかったのに」「昔?今?俺は今、虫ケラ以下の扱いを受けているんだぞ。高橋の一言でクビにされ、この女にまで――」滉はそばにいた佑紀子を指差した。「俺を睨みつけ
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第75話

仕事モードに入ると、滉の心は凪のように静まり返り、真剣に手術映像の分析を始めた。だが、次第に眉をひそめる。今回の手術は、茂の手技に明らかな問題があったとは言い切れない。彼の年齢と技量を考えれば、あれが精一杯だったのだ。もちろん、偉心が執刀したとしても結果は同じだっただろう。どんな手術にもリスクはつきものだ。滉自身が執刀したとしても、リスクを100%回避することはできない。映像をもう一度見直し、所見をまとめ終えたところで、不意に腹が減っていることに気づき、書斎を出た。リビングでは、紗彩が静かな表情で本を読んでいた。滉が出てくると顔を上げ、彼が次に何をするつもりなのかを見極めようと視線を送る。「夜食を作ろうと思う。目玉焼きをのせた簡単なラーメンでいいか?お前も食べるか?」滉は、さっきまで紗彩と激しく口論していたことなどすっかり忘れてしまったかのように、あまりにも自然に振る舞った。「ええ、いただくわ」紗彩は一瞬驚いたが、すぐに微笑んで答えた。本を置いて滉の料理の様子を見に行くと、滉はエプロンを手に取り、ぱっと広げて手慣れた動作で紐を結んだ。滉が手際よく、まるで本職の料理人のように鍋を振るうのを見て、彼女は不意に、滉がかつて自分のために料理を学んでくれたことを思い出した。寧音を身ごもっていた頃、つわりがひどく、何を食べても吐いてしまっていた時期があった。滉は彼女の体を心底心配し、彼女の好みに合わせた妊婦用の食事を作るためだけに料理教室へ通い、あの苦しい時期を乗り越えさせてくれたのだ。産後の食事も同様で、滉は彼女をこれ以上ないほど手厚く世話してくれた。その後、静玖と澪を身ごもった時も、滉は全力で彼女の面倒を見た。そう考えてみると、あれからもう十数年が過ぎている。彼女は昔を思い出して感動すると同時に、滉の料理の腕はさらに磨かれているに違いないと期待した。料理ができあがり、彼女が一口食べると、その懐かしい味に一気に食欲が湧き上がった。気づけばすべてを平らげ、スープの一滴まで飲み干していた。滉は片付けを終えると、気分転換に屋内プールへ向かった。ほどなくして紗彩もやってきて、滉と同じ水の中へ入った。二人の間には、先ほどの口論の張り詰めた空気はもうなく、むしろ穏やかな時間が流れていた。プールの中で、二人は情熱的に愛
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第76話

玲子は滉が濡れ衣を着せられたのだと信じていると言ったが、滉は彼女を完全に信じたわけではない。今の彼にとって、手放しで人を信じることなどできない。ただ、起きた事実だけは信じられる。彼女が自分に歩み寄ってきたのは紛れもない事実だ。彼女にどんな目的があるにせよ、今の滉にとっては助けになる。滉はひとまず、その好意を受け入れることにした。玲子が去った後、滉は思いがけず寧音から電話を受けた。寧音が会いたいと言うので、滉はここへ来るよう伝えた。寧音はタクシーで駆けつけた。滉が川辺にいると聞いて、てっきり身投げでもする気なのだと思い込んでいたのだ。ところが実際には、滉は一人で羊の丸焼きを突きながらビールやジュースを飲み、このうえなく悠々と過ごしていた。自分の考えがいかに幼稚だったかを思い知らされた。「あんた、結構料理上手いのね」寧音も腹を空かせていたのか、口元を油まみれにしながら夢中で肉にかぶりついた。滉は黙ったまま、焼き上がった肉を寧音の前に次々と置いてやった。どれも彼女の好みの焼き加減ばかりだ。この光景は十数年もの間、何一つ変わらなかった。何しろ、あの頃の滉は寧音を自分の実の娘だと固く信じていたのだから。しかし、あまりにも冷酷なDNA鑑定の結果が、そのすべての美しい思い出を一瞬にして打ち砕いた。寧音は小さくげっぷをすると、アウトドア用の椅子から立ち上がり、少し体を動かして腹ごなしをした。滉を見つめながら、もし彼が自分をあれほど厳しく束縛さえしなければ、きっと優しい父親だっただろうにと思った。だが、いつまでも子ども扱いされ、少しの自由も与えられないくらいなら、滉を父親として認める気にはなれない。彼女はDNA鑑定の結果を信じていた。自分は、滉の実の娘ではないのだ。寧音はバッグから資料を取り出し、滉に渡して言った。「これ、私が調べた四海グループにいる中村って名前の人のリストよ。あんたが言っていた私の本当のお父さんは、この中にいるの?」「お前が調べられる程度の情報なら、俺にも調べられる。次にやるべきなのは、このリストの男たちからどうやってDNAのサンプルを手に入れるかだ。男たち本人や、その妻、子どもたちの中に、お前と似た顔立ちの人間がいないかも同時に探っていく。もちろん、最終的な決め手はDNA鑑定になるがな」「こん
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第77話

野村グループの本社で、芙由は焼かれた羊のもも肉が入った箱を持って紗彩のオフィスにやって来た。「これ、滉さんが差し入れしてくれた羊のもも肉です。どうぞ味見してみてください」これが今朝、滉が言っていた「サプライズ」だったのだ。紗彩は羊肉の香ばしい匂いに食欲をそそられ、一口食べてみると、確かに絶品だった。「滉は来ているの?」「はい、下のフロアで社員たちに羊肉を配っています。でも、彼の様子を見る限り、上の階には上がってきたくないようです。私が引っ張ってきましょうか?」「いいわ、上がりたくないなら放っておいて」紗彩は少し不満に思ったが、すぐに考え直した。今は家庭を大切にする滉が注目を集めている時だ。わざわざ自分が出ていって、その主役の座を奪う必要はない。しばらくして、芙由の携帯にSNSの通知が入った。彼女は滉の投稿を開き、社員たちに滉の羊料理の腕前についてコメントするよう促した。「滉さんも気が利きますね。みんな滉さんにごちそうになったばかりですから、悪く言えるはずがありません。それに実際の腕前も抜群ですから、みんな喜んで『いいね』を押していますよ」芙由自身も満点の評価をつけた。紗彩が投稿の内容を確認すると、特に問題のあることは書かれておらず、ほっと息をついた。「紗彩さん、これって本当に滉さんのへそくりなんですか?」芙由は滉の投稿に『へそくり』という言葉があるのを見て、わざと紗彩に尋ねた。「家の生活費に彼のお金を使わせることはないから、当然彼の収入はすべてへそくりになるわね」紗彩は頭の中で計算した。グループの全員に羊肉を振る舞うとなれば、羊一頭では到底足りない。この一食だけで、滉は数十万円は使ったはずだ。滉の本当の狙いを探りながらも、紗彩には、彼がグループ内での自分の地位や評判を高めるためだけにこんなことをしたとは到底思えなかった。だが、紗彩が深く考える間もなく、滉はすぐさまその投稿のコメント欄で情報システム部門を名指しで吊し上げ、システム部門の全員が対応に追われるほどの騒ぎを引き起こした。その追記されたコメントの主な内容はこうだ。システム部門は以前、滉の投稿を二度も削除し、横柄な態度をとっていた。そこで今回、滉は彼らだけを特別扱いすることにしたのだという。他部署には正真正銘の羊肉を配ったが、システム部
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第78話

滉は部屋の中で、価値がありそうな品を一つずつ調べ、それがどこから来たものなのかを確かめていった。紗彩は珍しいものをいくつも家に持ち帰っており、市場に出せば途方もない値がつくであろうものばかりだった。だが、滉が気にしているのはそれらの値段ではなく、誰が紗彩にそれを贈ったのかということだ。これほど高価な品が、理由もなく贈られるわけがない。特に、紗彩が誕生日の直前に持ち帰ったものは極めて疑わしかった。子どもが生まれてからというもの、紗彩は自分の誕生日を基本的に家で過ごすようになっていた。これはある意味で非常に理にかなっている。紗彩のように不倫を隠したい人間なら、疑いを避けるため、結婚記念日や誕生日は必ず家族と一緒に過ごそうとするからだ。そういう女が羽目を外すのはイベントの前夜であり、その時に間男と狂ったように体を重ね合う。だから滉は、これらの品々は紗彩の間男が彼女への誕生日祝いとして贈ったものだと確信していた。これらの贈り物には、有名な絵画、骨董品、珍しい小物、高級酒、さらには伯山の家にあった、あの希少な赤いカメまで含まれていた。それ以外にも、名前すらわからない品がいくつもあった。どれにも領収書や保証書が残っておらず、そのほとんどが誰かからの贈り物であることは明らかだった。――この十数年もの間、紗彩、この性悪女め。俺の目を盗んで何度も何度も不倫を繰り返してきたなんて、人を馬鹿にするにもほどがある!これらの品々を見つめていると、滉の心には底知れぬ憎悪が湧き上がり、紗彩と間男を殺してやりたい衝動に駆られた。紗彩を寝取られた恨みは、絶対に忘れられない。この屈辱は、相手に必ず償わせるしかない!滉はこれらの品々を前にネットで検索をかけ、写真を撮って中古品売買サイトにアップした。彼はこの分野の専門家ではなかったが、本気で欲しがる人間がいれば、それは必ず目利きの専門家であるはずだ。そうなれば、彼らからさらに詳しい情報を聞き出すことができる。滉は偉心の私用携帯と院長室からの電話を着信拒否にしていた。もちろん、偉心が別の番号からかけてきたとわかれば、それもすぐに切るつもりだった。しかし、秀人から電話がかかってきたのを見て、少し迷った末に出ることにした。「水野先生、君の今の状況は大体把握している。我々はお互い、目指す方向が一
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第79話

滉は海東大学附属病院には出勤していなかったが、根っからの医者であることに変わりはない。三日も患者を診ないでいると、どうにも腕がうずいてくるのだ。海東大学附属病院は彼を信用しなかったが、それでも彼の医術を信じて頼ってくれる人はいる。例えば、あのリウマチの患者だ。滉は患者の家へ行って治療を行い、そのまま簡単な食事をご馳走になった。夜にもう一度治療を施してから、芳子と一緒にその家を後にした。帰りの車の中で、芳子が尋ねた。「さっき患者さんの家では聞きにくかったんだけど、どうして高橋院長とあんなに揉めることになったの?」「正直に言うと、俺の結婚生活が破綻の危機に陥っているんです。俺のほうから離婚を切り出し、義父母もそれに同意した。だが、妻だけが自分の浮気を認めず、離婚を拒み続けている。それで義父が高橋院長とのつながりを使って、俺を病院から、さらにはこの海東市から追い出そうとしたんです。俺は高橋院長を恨んでいるわけじゃない。彼はただ、義父の側に立つことを選んだ。それだけのことですよ」「そういうことだったのね。高橋院長はあなたを高く評価していたし、一生懸命育てようとしていたから、どうして急に関係が悪化したのかずっと不思議だったのよ」「俺自身は高橋院長にとても感謝しています。病院では色々と便宜を図って助けてくれましたから。でも、それはあくまで彼が職務上持っている権限の範囲内でできたことだ。実際のところ、彼は義父の側にいる人間なんですよ。義父は、俺がこのまま医者をやっていても大した出世は見込めず、野村家に名声や社会的地位をもたらすことなんてできないと見下しているんです」「それじゃあ、あなたの義父は見る目がないわね。あなたのこれほどの医術を見抜けなかったんだわ。高橋院長があなたに才能を発揮する機会を与えなかったことも原因でしょうけど」「確かに、高橋院長は俺にあまりチャンスを与えなかった。もちろん、それは妻が高橋院長に手を回して、俺に重要なポストを任せないように仕向けていたからだろう。そうすれば、俺を早く家に帰らせることができるからな。病院に入ったばかりの頃は、俺だって必死に働いて腕を磨いていたし、出世したいと思っていたさ」「仕事と家庭の両立って、本当に難しいわよね。私たち医療従事者にしかわからない苦労もあるし……さっき結婚生活や家庭の
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第80話

深夜。滉は、思いがけず芙由が書斎のドアをノックして入ってきたことに驚いた。彼女は愛想よく言った。「滉さん、夜食を買ってきましたよ。出てきてください」「どうしてここに?」「わかっていて聞いているんでしょう。あなたが家でご飯を作らないからって、紗彩さんを空腹のまま放っておくわけにはいかないじゃないですか。紗彩さんに頼まれて、夜食を買ってきたんですよ。それに、あなたも仕事で疲れているだろうからって、あなたの分もわざわざ頼んでくれたんですからね」滉は手元の作業を切り上げ、ダイニングへ向かった。確かに芙由は大量の夜食を買ってきており、紗彩はすでに食べ始めていた。滉が自分の分の箱を開けてみると、中にはウナギの蒲焼きやニンニクをふんだんに使った料理、栄養ドリンクなど、いかにも精力がつきそうなものばかりがぎっしり詰め込まれていた。「芙由、お前がこんな露骨なものを好むとは知らなかったよ。まさか、こんなものを平気で買ってくる女だったなんて。見損なったな」「私の趣味じゃありません、あなたのためですよ。紗彩さんが、あなたに食べさせるようにってわざわざ指定したんです」芙由は慌てて弁明した。「もういい年だが、俺はそこまで精力が衰えちゃいないぞ」「それは私に言われても困ります。それを判断できるのは紗彩さんだけでしょう。そうですよね、紗彩さん?」「黙って食べなさい。本当に減らず口なんだから」紗彩は軽くたしなめた。滉をちらりと見やり、彼がもう箸をつけているのを確認すると、得意げに口角をわずかに上げた。「もういい年だが、俺はこんなものに頼るほど衰えちゃいない。芙由、次はもう買ってこなくていいぞ」滉は少し口をつけただけで、不満そうに箸を置いた。「あなたが焼いたものは確かに美味しいんでしょうけど、どうも消化に悪いみたいですからね」芙由は、先日のシステム部門の騒動を引いて意味ありげに皮肉を言った。「消化に悪い?それは食った連中の自業自得ってやつだ。芙由、お前も自分の胃袋には少しは気をつけろよ。この前俺が頼んだ件、まだちゃんと片づけてくれていないからな!」「滉さん、私は……」芙由は、まさかこんなに早く滉から釘を刺されるとは思っておらず、慌てて紗彩に助けを求めるような視線を送った。「あなた、おしゃべりが過ぎるわよ。食事中は静かにしてちょうだい」
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