翌日。紗彩が出社すると、芙由をオフィスに呼び出した。改めて芙由をまじまじと見つめると、かなりの美人で、自分より少し見劣りする程度だと気づいた。若さまで考慮に入れれば、さすがの紗彩でさえ思わず羨ましくなる。自分も年齢を重ねたのだと、嫌でも意識させられた。紗彩は昨夜の夜食代を芙由の口座に振り込むと、相手に断る隙も与えなかった。「芙由、昨日の夜、あの人があなたのことで何と言ったか、当ててみて」「滉さん、私があんなエグい夜食を買ってきたことをまだ怒っているんですか?もう謝ったのに、まさかまだ根に持っているんじゃ……」「違うわ。昨日の夜、あの人は、あなたを引き止めて三人で楽しめばよかったって言ったのよ。ねえ、芙由、あなたにその気はある?あるなら今夜、私と一緒に家へ来なさいよ」これは、どう答えても破滅しか待っていない罠だった。芙由はたちまち恐怖に駆られ、慌てて否定した。「紗彩さん、私がどんな人間かご存じでしょう。滉さんを誘惑しようなんて、これっぽっちも思っていません。紗彩さんに引き立てていただいたからこそ、今の私があるんです。恩を仇で返すような真似は絶対にしません」「あなたがそんなことをしないのも、そんな度胸がないのもわかっているわ。でも、あの人は今や何をするかわからない図太さがあるから、あなたに手を出すかもしれないわよ」「どうすればいいんでしょうか」芙由は少しうろたえた。その脳裏に、滉の端正で知的な顔立ちと、ときおり見せる男らしくたくましい一面がふと浮かんだ。彼女とて、滉と一夜を共にすることを想像したことがないわけではない。だが、それを表に出すわけにはいかなかった。「紗彩さん、これは滉さんの策略じゃないでしょうか。私たちの上司と部下の関係を裂こうとしているんです。前の離婚騒動の時に私があなたの側に立って以来、彼はずっと私を恨んでいるはずです。もしかしたら、システム部門に嫌がらせをしたのと同じで、私たちを仲間割れさせて不快にさせたいだけなのかもしれません」「そうね。あの人に私を傷つけるような悪意はないわ。私たちに嫌がらせをして腹いせをするくらいしかできない人だってこともわかっている。でも、用心するに越したことはないわね。私がほかの女の味を教えてしまったから、今度はあなたも味わいたくなったのよ」「それは……」
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