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All Chapters of All World My hands: Chapter 61 - Chapter 70

102 Chapters

第60話 「薊の覚悟」

 その日は、昼の仕事……というか、普通に愛鹿の元へ出勤する日だった。 最近、主人帝への鬼出勤でご無沙汰だった嬉嬉軒で歓喜のラーメンを食べて愛鹿の元へ出勤する。---------------------------------------------------------------「きたぞー」 いつも通り、そう部屋に入っていけば———。「うぉ!?」「おかえりなさい……皇くん……」「ちょ、愛鹿!?おい、愛鹿!」 愛鹿が床に倒れていた。それはもうぐったりとしていて、皇は愛鹿を抱き起す。「ちょっと揺れるぞ」 そう言いながら、皇は愛鹿を抱えて、ソファに降ろす。そして、額にぺたりと張り付いた髪の毛を払って言うのだ。「どうした?体調不良か?」「いや……違うわ……過労……」「過労!?」「皇くんが鬼出勤頑張ってる分、こっち片付けようとして……」 なるほど。普段2人で分担していることを少しでも片付けようとした、と。皇の足を引っ張らないために。「そんなことしなくても今日出勤日だっただろ……!?」「休ませてあげたいじゃない、あんなに頑張ってるんだから」 そんな優しい愛鹿の言葉に胸がきゅ、と締め付けられる。「とりあえず、寝ててくれ。どうせ、全部やろうとして徹夜でもしたんだろ?」「徹夜3日目……風呂キャン4日目……」「寝たら風呂入ってくれ、頼む」 そう愛鹿に言うと、ソファの上の愛鹿が静かになる。直感的に、「これは意識が落ちたな」なんて思いながら、皇は愛鹿の顔を覗き込む。 肌が白いせいで黒い目元の隈が目立って、少し
last updateLast Updated : 2026-08-26
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第61話 「赤い華の襲撃」

 ついに本格的に雲の上の存在になったアザカとはAWM内……というか、デスサイズ内では関わることは少なくなっていた。 アザカクラスになると、ヘルプにつくのも売り上げ上位に居座るプレイヤーばかりで。 アザカとの会話がなくなって、少し寂しさを感じつつも、ヴィクトもヴィクトが貯められる範囲のネントを捻出しようと、日夜働いた。 そんな、ある日。---------------------------------------------------------------「ヴィクトさーん、すぐアザカさんの卓の方お願いしまーす。指名でーす」「あ、行きまーす」 反射で返事をした後に「ん?」となる。ヴィクトを呼んでくれた黒服に聞く。「え、指名?」「はい、指名です。め~っちゃ有名人来てますよ~」「え、え!?」「行けば分かりますって!奥の個室です!」 そんなことを言われて、ヴィクトは奥の個室への道を襟を正しながら歩く。 そして、ヴィクトがVIP個室の扉を開ければ———。 美しい、女性がいた。黒髪が綺麗に巻かれ、特徴的な赤い瞳。釣り目だけどどぎつくはなく、ただただ美しい。少しヴィクトより年上かな?ぐらいの美女が居た。 その美女の肩にはアザカの手、おいおい、様になってんなァ!なんて思っていれば、美女はヴィクトを見て、くすり、と微笑んだ。「初めまして、私は紅華」「初めまして、プリンセス。俺は弟系ホ———」 言葉が止まった。あれ、この人、今なんて言った?なんかとてつもない聞き覚えのある名前を名乗られた気がする。〝永夜都市・主人帝。統治者、紅華〟 頭の中で符合がかっちりとハマる。ヴィクトは口を池の鯉のようにパクパクとさせて紅華を見る。「あら、もう新人でもないでしょうに。姫を前に言葉に詰まるなんて」「いやいや、無理もないスよ。誰も、紅華さんに指名しても
last updateLast Updated : 2026-08-27
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第62話 「クロムとヴィクト」

「クロムが私以外に仲間に選んだメンツはクセが強いって言うか。みんな、個性的だった」 紅華が紫煙をふーっ、と吐き出した。紅華の吸っている煙草はあまり匂いがなく、鼻で感じる感じは軽そうだった。「だけど、クロムを中心に集まったからにはクロムの目的がパーティー内での大まかな指針となったわ」「クロムの目的……?」 ヴィクトがそう問えば、紅華が目を細める。「そう。まずは近衛騎士としての目的、姫様を探しているって言っていたわ。姫様の分霊とはあった、だけど、本体がどこかには居る筈、って。で、それと並行して聖ユリア王国、ひいてはAWM内の他の並行世界を解放するために……統治権、7つの神器の欠片を探していた」「は?」 ヴィクトは素直に頭が混乱した。いや、ここまでくると素直に停止したと言った方がいいだろう。〝聖ユリア王国、ひいてはAWM内の他の並行世界を解放するために……統治権、7つの神器の欠片を探していた〟 それはすなわち。聖ユリア王国だけではなく、AWMに存在する全てのワールドが並行世界……異世界である、ということで。 そして、そんなヴィクトの混乱を見抜いたのだろう。紅華が補足をする。「クロムは言っていたわ。このAWMというゲームは生成されたものではなく、実際にある異世界を侵略し成り立っている、と」 ヴィクトは手で口を覆い考える。考えに、考えて。「紅華さんは……それを信じたんですよね?」「まあね。クロムの言葉だから、というのもあったし、明かせないけど別口から色々言われてたのもあったわ」 別口。でも、明かせない。それならそこを切り込むだけ時間の無駄だ。最初に明かせないと言われたことは明かせないのだろうだから。「異世界……」 ヴィクトは口を押さえながら呟いた。でも、そう思うと合点がいくこともあった。生きているようなNPC、あれはAIで駆動するNPCで
last updateLast Updated : 2026-08-28
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第63話 「見て欲しい人」

 ———2日後。 薊の予言通り。紅華とオフで会ってくるということをオーナーに話したら気前よく、当日から前後1日ずつ。合計3日の休みを貰えた。 そして、当日皇と薊は地下鉄を乗り継ぎ、都内のタワーマンションの前に来ていた。エントランスに警備員が立っているタイプのところだ。(なんか警備員いると入りにくいよなー……) 遊城の家にも警備員は居たが、皇の家にいた巡回タイプは居ないときに通ればいいが、こうしてカウンター越しに立たれていると建物に入りにくいものがあって。 薊に至っては、何回かちらちらと警備員を見ている。見るな。怪しまれる。 そんなことを思いながら、エントランスの機械で部屋番号を押してエンターを押す。すると、ピンポーンという音が鳴り響いた。『そのまま上がってきて』 そんな紅華の声と同時に、エントランスホールと居住区を区切る自動ドアが開いた。皇と薊はその扉を潜って、エレベーターで上がる。「えーと……」 リムレットでこの間の紅華とのやりとりの記録を見る。27階の3号室。それを確認すれば、薊と共にエレベーターで上がっていく。「やべェ……めっちゃ緊張してきた」「今更か?」「いや、AWM内だったらなんてことないんだけどよォ……現実で会うと思うと、なんか足の裏がぞわぞわするっつーか……」 いったいなにが違うというんだ。「こんな高級そうな場所、俺バイト先以外知らねェよ……」「ははははははははは、慣れろ」 もうそれしか言うことはない。こういうのは慣れでしかないのだ。慣れ。 そんなことを思いながら、27階に到着したエレベーターを降りれば、そもそも扉は3つしかなくて。なるほど角部屋。 そして、3つ目の扉の前でインターホンを押す。 ——&mdas
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第64話 「貴方を愛した人」

 皇の涙が止まれば、紅華は冷めたコーヒーではなく、暖かい緑茶を淹れなおしてくれて。 紅華の気遣いに感謝しながら、緑茶を啜る。「ヴィクトくん単刀直入に言うわ。ヴィクトくんはアザカくんと共に主人帝の神器の欠片を狙っている……ということでいいのよね?」 それに関しては「うん」とは言いかねる。最終目標的にはそうなるが、当面の目標は紅華と話すことだったから。 そう皇が息詰まっていると、薊が冷静に口を開いた。「いや、そこはまだ確実ではねェッス。俺たちの今の目標は、紅華さんにクロムのことを聞くのが目的だったんスが……」「……どうやって?」「店に行って……」 薊がそう言うと、紅華は「ぷっ」と軽くお茶を吹いた。そして、喉に入ったのだろう咽てからカップを置いて、口を拭きながら言うのだ。「あんな高い店に私と話しに!?絶対その必要ないから。はぁああ……よかったわ、老婆心で先に動いて」 その紅華の砕けた雰囲気は僅かに硬くなった空気を解してくれて。皇の気も少し軽くなった。「でも、剣の……いや、クロムと会わせていただいてありがとうございました。俺、今日此処で思い出せなかったら……クロムのこと誤解したままでした」 そんな皇の言葉に、紅華は考えるような表情を浮かべてから口を開く。「ねえ、ヴィクトくん。ヴィクトくんはクロムが急に変わったことをどう考えているのか聞かせてもらっていい?」「え、はい……」 そう問いかけられれば、皇は緑茶に一口口を付けて言うのだ。「俺は、神器の欠片がもたらした精神的作用なのではないかと思っています。AIの研究を専門にやっている人に解析をしてもらったのですが、そのようなモノなのではないか、という後押しももらえたので……」 でも、自信はない。八坂教授だって解析
last updateLast Updated : 2026-08-30
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第65話 「統治者・アザカ」

 結局あれから、薊ともアザカとも一言も喋ることはなかった。意図的に、現実世界でもAWMの中でもお互いを避け続け、気づいたらそこそこな時間が経っていた。 もう、紅華の話は聞いた。ヴィクトに主人帝の売り上げ1位を取れるような器量はない。それが分かっているからこそ、此処最近のデスサイズでのヴィクトはいまいち上の空だった。---------------------------------------------------------------「はーい、賭けた!賭けた!」「いや、紅華一択だろ!」「いやいや、最近アザカってホストが熱くてな~!」「そろそろベルフェ当ててくれよ~~~~」「俺の全財産!紅華様に託したぁ!」 その日は主人帝の締め日だった。その日までの1週間の売り上げで主人帝の統治者が変わる日。 主人帝の中央広場は、1種のイベントと言うか、お祭りのような様相だった。 まあ、大体賭け事。今回は誰が統治者になる?そんな話題を全員で酒の肴にする。 あの喧嘩別れの日からアザカのことは店の締め日の集まりで遠くから見るだけだった。日に日にアザカは稼ぐ額を増やしていって。今や10億を稼ぐホスト……本当に、遠い遠い人になってしまった気がした。 ヴィクトはシステムウィンドウを開く。そこには主人帝の次の統治者は誰かというのを賭けるページがトップに表示されていて。 ヴィクトはアザカの名前の欄に10万ネントをぽん、と賭けた。 これでアザカが本当に統治者になったら、賭けた金で飲みにいくのを誘おう。話もあるって言ってたし、それも聞いてやろう。だから。「いつも通り、てめぇって呼べよ……」 ヴィクトの呟きは、主人帝の喧騒に塗りつぶされた。--------------------------------------------------------------- ———22時、永夜都市・主人帝。中央広場。
last updateLast Updated : 2026-08-31
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第66話 「願いは裏切られる」

 ———カラン。 そんな音がした。アザカの姿が霧散していく。アザカの悔しさを滲ませた笑顔だけが目に焼き付いて、言葉が出なくなる。 ヴィクトがアザカの霧散していく体を集めようとするも、それは掌の隙間から零れていき、形にならない。最後にヴィクトの掌に残ったものは神器の欠片だけだった。「ちくしょッ……!!!!!!」 ヴィクトは神器の欠片を握りしめることしかできなかった。 だが。 ———ガタン。 瓦礫の中から人間の立ち上がる音。その音に顔をあげれば、クロムが冷たい視線をヴィクトに寄越していた。背筋が凍るような、あの異世界での日々が嘘のような、ヴィクトのことを何も知らないような視線。 ヴィクトは目を見開いた。 なにを感じて、どう動けばいいか、ヴィクトの中では軽いパニックが訪れていた。 アザカを殺された、クロムが居る、そこで受け取る情報がストップしてしまう。怒ればいいのか、クロムと相対すればいいのか。 でも、今の状況でクロムと戦って勝てるのか。 そんな疑問の中、クロムがアザカを貫いた黒い剣を構える。(……逃げなきゃ) 此処でクロムに殺されてはアザカが繋いでくれたこの神器の欠片が無駄になる。それだけは絶対に避けなければいけない。 そんな思いで、ガクガクと震える足で床を蹴って、クロムに背中を向けようとした瞬間だった。「ッ……ッ!?……ッ!」 クロムがまたもやヴィクトを見て苦しみ始める。 クロムは必死にヴィクトに剣先を伸ばし、顔を押さえながら、一歩、一歩とヴィクトに近づこうとする。 だが、ついには剣を地面に刺し、藻掻くような声を上げた。「がっ、あっ……がああああああああああッ!」 そして、クロムは逃げるように立ち去って行った。 ヴィクトは呆然とそのクロムの背中を見送るしかない。「は、は……は……」 無意味な言葉の塊が口から吐き出される。ヴィクトは神器の欠片を自身のアイテムボックスに仕舞い、急いでログア
last updateLast Updated : 2026-09-01
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第67話 「託されたものの意味」

 あれから。薊と皇の乗った救急車は都内の病院に運び込まれて。皇は検査の結果をひたすら待つことになった。「……」 病院の椅子に力なく座っていると、コツコツ、というヒールの音が響いた。「……ヴィクトくん」 現実で、その呼び方をする人間は一人しか居なくて。「紅華さん……」 顔をあげれば紅華が居た。紅華は皇の顔を見れば、眉根を寄せて。「……まさか、アザカくんが狙われるとは思わなかった」 そんな紅華の言葉に奥歯を噛む。狙われるのは皇だと皇自身も疑ってなかった。でも、実際に狙われたのは薊で。 そんな現実との乖離に言葉が出なくなる。すると、病院の裏口から走ってくる複数の足音。 それは、愛鹿たちだった。 愛鹿と姫沙羅、瑠奈は紅華を見て言うのだ。「主人帝の……」「もう統治者じゃないけどね」 そんな随分な挨拶。すると、姫沙羅が言うのだ。「……薊は……?」「検査中。一応、目覚めないことがデメテール由来なのか、なにか他の要因があるのか、ね」 紅華が唇を触りながら言う。その指先は煙草を持っているかのようで。「……ということは、やっぱりあの噂は本当なのねぇ……」 瑠奈が苛立つように大きなため息を吐いた。「あの噂?」「愛鹿も噂ぐらい聞いたことあるんじゃないかしらぁ?クロムに刺された人間は現実でも意識をロストしてるって噂」 一拍を置いて、瑠奈が肩を竦めていう。「まあ、私も噂程度にしか知らないけどぉ」 そして、瑠奈はちらりと紅華を見た。その視線はなにかを知っているだろうことを値踏みしていた。 瑠奈の視線に、愛鹿と姫沙羅の視線は紅華に誘導されて。そして、紅華が小さく息を吐いて口を開く。「……その噂は本当。だけど……その話の前に聞きたい。ヴィクトくん、彼女たちにはどの程度の情報を許しているのかしら?」「どの程度って……あ」 全部許してますよ、そう言おうとして
last updateLast Updated : 2026-09-02
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第68話 「変わらない兄、変らない妹。」

 アザカの襲撃の後、数日後。AWMではまことしやかに噂が流れるようになった。〝統治権を持っているとクロムに狙われるんじゃないか〟 そんな噂から、主人帝の毎週の締め日も誰彼もが遠慮したい、みたいな空気が漂い、今はヴィクトがその神器の欠片を保持し続けている。--------------------------------------------------------------- ———アパート最寄り駅、コーヒーショップ。 「はあ……」 皇は薊が意識不明になったことにより、家賃の支払いなどが止まるといけないから、と仲介屋さんに名義の書き換えに来ていた。 それがすんなり終わっての、休憩のコーヒー。 早速、なにをしたらいいか、どうしたら薊の意識データに辿り着けるか、を話し合おうとしたら愛鹿にも、姫沙羅にも、瑠奈にも言われてしまったのだ。「今は休め」と。 しかも、愛鹿からはアルバイトもしばらく来なくていい、と言われてしまったため、本当にやることがなくなってしまった。 だけど、正直。(……辛いな) 1人で居ると、もし、薊が此処に居たらを想像して尚更辛くなってしまうのが正直なところだった。 だから、みんなの中に居たかったんだが……いや、その甘えはよくない、か。気を使わせるだけだ。 そんなことを思いながら、皇が1人立ち上がろうとすれば———。「うおっ」「きゃっ」 皇の背中になにかがぶつかり、そして、上半身に冷たい感触が這って。……うん、これは誰かのコーヒーをダメにしたな。 皇は頭が理解すれば、慌てて謝罪しようと顔を上げると……。「ご、ごめんなさい!お怪我……て、あれ……皇、兄さま……?」 目をパチクリ、とする義理の妹。「悠理《ゆうり》、だよな……?」 そんなまさかの再会にお互いに驚きの表情を浮かべて。だけど、すぐに皇は思い出した。「いや、あの、すまん!コーヒー駄目にしちまって……すぐ、代
last updateLast Updated : 2026-09-03
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第69話 「妹のため」

 そうして、兄妹の買い物は結局兄が妹に弁償以上の洋服をコーディネートされて購入してもらうというなかなか情けない局面を迎えていた。 だが、悠理の嬉しそうな顔を見ると文句も言えなくて。皇は最早腹をくくったぐらいの気持ちでどっしりと構えていた。 そして、洋服も着替え、両手にショッピングバックを持っての最初とは違うカフェにて。 悠理はアイスコーヒーとサンドイッチ、皇は桃のパフェと桃のラッシーを飲みながら会話をしていた。「そういえば、兄さま。AWMでご活躍なさってますよね?」「お、おー……活躍って言うほどかは謎だけどな」 活躍と言うかは謎だが、大分名前が有名になってきている自覚はあった。話しかけられはしないが、「あれが」とひそひそされる微妙なライン。学校の有名人レベルのソレだ。「え、ていうかAWMのこと知ってるのか?」 いや、悠理の才能の範囲に恐らくAWMも入るからガンスルーしているということはないだろうとも思うけど……特に外部賞金大会などがある訳ではないAWMに興味を持っていることが意外だった。「……遊城家からのオーダーで、です。AWMで統治者になって、全てのワールドを凌駕するワールドを作成せよ、とのこと」 なんて大雑把なオーダー。そういうのは全て基準を設けてもらわないと、困るのは悠理だというのに。「……いや、でも、大変だな。統治者になれってことは今の統治者との交渉からだろ?」「あ、いえ」 悠理がサンドイッチを口に含み、咀嚼して飲み込んでから言う。「統治権は遊城の家が用意してくださいました。多分、お金に物を言わせたんだと思いますが」 ああ、ある意味正攻法だ。そう皇は思った。「で、一応ワールドらしきものはサンドボックスゲーの要領で作ってはみたんですが……正直、統治者って何をすればいいか全然分からなくて……」 悠理が苦笑する。確かに、悠理は
last updateLast Updated : 2026-09-04
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