جميع فصول : الفصل -الفصل 20

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第11話 敬称の壁と、暴走する愛の差し押さえ

 馬車が王宮へ到着した。 「着きましたわね」 御者が扉を開ける。 その瞬間だった。 「シーラ、こちらへ」 ゼクス殿下が当然のように右手を差し出す。 だが、それより一瞬早く。 「……シーラ様、こちらへ」 ネスト様の手が、静かに私の前へ差し出されていた。 ……え? 一瞬だけ。 馬車の中の空気が凍った。 殿下の笑顔がぴくりと引きつる。 「ネスト」 「はい」 「その手は何だ」 「護衛として当然の職務ですが」 「護衛なら私がいる」 「ですが、ここまでの護衛は私の任務でしたので」 淡々と返すネスト様。 しかし二人の視線は、一歩も譲らない。 ……何かしら。 二人とも降りたいなら先に降りればいいのに。 狭い馬車で出口を塞がないでほしいわ。 「殿下」 ネスト様が静かに告げる。 「先ほどヤミー子爵邸に到着された時には、間に合いませんでした」 「……」 「ですので、せめて最後まで私が職務を全ういたします」 殿下は黙ったままネスト様を見る。 しばらくして、小さく鼻を鳴らした。 「……ふん。今回だけだ」 「ありがとうございます」 ネスト様は一礼すると、改めて私へ手を差し出した。 「……シーラ様、こちらへ」 馬車から降りる際、差し出されたネスト様の手。 その動きはこれまで以上に恭しく、完璧な騎士の礼儀を保っていた。 だが、私の耳に届いたその「言葉」に、思考がフリーズする。 「……様?」 「はい。先ほどのヤミー子爵への見事な裁き、感服いたしました。……今まで、あなたのような気高き方を『さん』などと、馴れ馴れしく呼んでいた非礼、お許しください」 そう言って、彼は爽やかに笑った。 ……笑った? 冗談じゃないわ。それは判決を下された死刑囚に見せる慈悲かしら!? (ちょっと待ちなさいよ! 『様』!? 何よその鉄壁のソーシャルディスタンスは! 前の『さん』の方が、まだ法的有効期限が残っていたはずよ! 契約更新の通知もなしに、勝手に呼び方を変えるなんて……不当だわ、不当よ!!) 心の中でハサミを乱舞させ、法律全集を投げつけたい衝動に駆られるが、表向きは鉄の仮面を維持する。 「……そうですか。ご丁寧に、どうも」 精一杯の冷徹さを
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第12話 逃げた近衛騎士

裏庭で一人座っている。 「……最悪だ。」 ネモを見た瞬間、身体が勝手に動いて逃げたこと。 孤児院時代の思い出。 「僕」と言っていた頃。 昔の——— 「はあはあはあ……。」 全てがフラッシュバックした。 「ライト様が行方不明ですわ。」 私はヤミーゲスゲスおじさんのせいで増えた仕事もしなければいけないので執務室を陣取っていた。 「いつものことだ。また戻ってくるだろう。数日後とかに。それより、シーラ!婚約指輪の宝石は何がいい?最近、属国でピンクダイヤモンドという珍しい宝石が発掘されるようになってな!鉱山を我が国が買い取ったんだ!」 「いりません。あと、鉱山は売却してください。」 「なぜだ?令嬢達がこぞって欲しがる幻のダイヤモンドなんだぞ?」 しょんぼりした目で見つめるな、めんどくさ。 私が悪者みたいじゃない。 「……わかりました。その代わり、鉱山の労働者の賃金をどんなに低くても我が国の最低賃金にすること。いいですね?」 「そんなことでいいのか!?」 そんなこともできないくせに。 「……。」 ネストは無言で2人を見つめた。 そして、ライトが逃げた理由を何となく察していた。 でも言えない。 「ネモ、ライト様を見ませんでした?」 「いいえ。」 ネモは嘘をついた。 うれしい。 現実を受け入れたくない。 大切な主人に嘘をついてしまった——— ネモの心にさまざまな色の絵の具が塗り重ねられ、混ざっていた。 シーラは嘘に気づかないふりをした。 でも、次の一歩を踏み出せなかった。 寄り添い方がわからないから。 でもなんでネモは嘘をつくの? 何かやましいことでもあるの? 普段から染み付いている疑い癖が私を襲った。 そんな自分が憎い。 『ネモはやましいことがあっても嘘はつかない』 そう信じたかった。 信じれなかった。 私は私に絶望しながら、ネモの孤児院時代の名簿を調べた。 なぜなら、ネモは生まれてからずっと孤児院で、引き取り先もデストーロ子爵家しかなかったからだ。 ネモにはネストの話さえすれど、近衛騎士団は女癖の悪い隊員たちも多いため、一切関わらせなかった。 ライトと関わりがあるならここしかないと思った。 ビンゴ。 一緒
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第13話 天才騎士と化けの皮

どこ?どこにいるの?王宮から図書館の調べ物のまま、文字通り飛び出してきた私の姿は、この泥の底のようなスラム街において悪目立ちなんてレベルではなかった。丁寧に仕立てられたドレス。艶やかな髪。傷一つないきめ細やかな肌———それらは、この行き場のない暗闇に生きる者たちにとって、「自分たちから搾取し、貪り尽くした富の象徴」そのものだった。路地裏から、一人、また一人と、濁った目をした住人たちが這い出てきて、私を何重にも取り囲む。子どももいた。「おいおい……見ろよ、王宮の温室で育ったお姫様が、迷い込んできやがったぜ」「そのドレス一枚で、俺たちが何年食えると思ってんだ、あぁ!?」「おいしい思いばかりしやがって……引きずり下ろせ!」王族かその周辺に住んでいる宮廷貴族と思われたようね。まあ、見分けつかないと思うわ。向けられるのは、単なる物欲ではない。生きる権利を奪われた者たちの、ドス黒い「恨み、妬み、嫉み」の濁流。さすがに背筋に冷たいものが走ったその時、私の白い腕を掴もうとした男の手を、凄まじい銀光が風を裂いて弾き飛ばした。「――悪ィ。その『お姫様』は俺の金ずる。頭空っぽの温室育ちだからノコノコこちらに出向いてくれて助かったわ。手ェ出されると、俺の面目が丸潰れになるからお前らは腹でも空かしとけ。後で金分けてやるからよ。」泥を被り、息を切らせ、けれどその眼光だけは王宮にいる時とは比べ物にならないほど鋭いライト様が、私の前に立ちはだかった。「ボスがそう言うなら……」圧倒的な近衛兵の威圧感に、スラムの群衆が蜘蛛の子を散らすように引き下がっていく。……なるほどね。今までもサボりに見せかけて、スラム街を訪れ、アウトローな仕事をした体にして、スラム街でお金を配っていた……という可能性が高いわね。女性の家渡り歩いていたのは嘘、ここに行くための体裁を保つためということか。近衛騎士団の団員は女癖悪い人も沢山いるから誤魔化せるといえば誤魔化せるけど……。ライト様は群を抜いて多いと言われていたから、よくボロが出なかったわね……。私はライト様に俵担ぎされて、さらに奥へと進んだ。……庇ってもらった上、仕方ないとはいえ、されると嫌な気分になるものね。ライト様は誰もいないことを確認した。重い空気が流れる。「シーラちゃん!? い、いつからそこに……。っていう
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第14話 最善という名の不正解

スラム街から抜けた私たちは徒歩で王宮へと向かった。 無言。 互いに無言。 空気が重すぎて耐えらないわ。 「そういえばライト様、私を脅す時、途中から一人称『僕』になっていましたわよ?よーーーっぽど焦っていらしたのですね」 空気を軽くするためにという名目のもと、ライト様をいじって差し上げた。 「……ぃ」 無視。 まさかの無視! すると、ライト様が目をウルウルさせ始めた。 「な、なんで僕を無視するの……?やっぱり僕ってダメ人間なのかな……?絶対そうだ。兄さんだったら、スラム街でも、こんなみっともない姿なんて晒さなかった。もっと格好よくシーラさんを助けて、気の利いたこと言って笑わせてたはずなのに、僕は……。シ、シーラさんも僕のこと嫌いなんだ……。嫌いで嫌いで仕方ないんだ……。ごめんなさい。ごめんなさい。生きててごめんなさい……」 ……もしかして、何か返してくれてた? なんだか、彼の……『ライト』としての人生を垣間見た気がして、胸が苦しくなった。 「ごめんなさい。ちょっと聞こえなくて……。もう一度言っていただいてもよろしいでしょうか?」 私は笑顔で聞いた。 「ごめんなさい。ごめんなさい……。声が小さくてごめんなさい……。僕、話すの怖くて……」 ……なるほど。 かなり心の傷が重症ね。 ネモが特段酷い虐待だっただけで、他の子どもたちを酷い虐待を受けていたのね。 知ってた。 知らないふりしただけ。 ……もしかして、私がネモを引き取ったせいで、孤児院での虐待が悪化した? たぶん両方。 私のせいでもある。 だからやっぱりあの孤児院は腹立つけどゼクスに言って潰さないと……。 自分の力だけでは今もどうにもできないのが悔しい。 いや、潰したところでどうする? 子どもたちはもっと……。 しまった! ライト様を放っておいてしまった! 「ごめんなさいね。もう一度教えていただけますか?私はあなたを殴ったり、蹴ったり、罵ったりしません。絶対です」 私は屈んでライト様に目線を合わせた。 身長が低いのよね……。 ネモもライト様も。 孤児院の食卓の景色を思い出すと胸が痛んだ。 「……本当?」 大人を信じたいけど、信じられない子どものような目だった。 「本当です」ライト様が何かを決意して、縋るように私の服の袖を掴む。 「……………
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第15話 世界で一番……

「シーラ様〜!シーラ様〜!シーラお嬢様〜!……全くどこに……。王宮なんて1日かけても回りきれないわ」 私は胃薬片手に王宮を彷徨った。 ズンズンズンズン! すごい勢いで文官が近づいてくる。 ……嫌な予感しかしない。 「そこのメイド!デストーロの人間が外で待ってるから早く出てけ!……デストーロの人間なら優しくするんじゃなかった」 シーラ様! きっとシーラ様だ! あ〜〜〜よかった! このパターンは何事もない時のパターンだわ! 文官に言われるがままに私は王宮から放り出された。 ……デストーロ子爵様だった。 「ネモ、私ですまなかったな。シーラは……まあ、たぶん大丈夫だろう。どこにいるかは知らんが」 諦めないでよ!!! 大事な大事なあなたの一人娘じゃない! シーラ様がいなくなる度、わんわん泣いてたあなたはどこに行ったの!?!? 「ゼクスくんがね、馬車を貸してくれたんだ。せっかくだから乗って家まで帰ろう」 !?!? ツッコミどころが多すぎてちょっとよくわからない。 「いやぁ、実はさっきゼクスくんに会ってね。『初めまして!お義父さん!』って声をかけられたんだよ。絶対、私じゃないって思ったんだけどね。何度も私の目を見て言ってくるものだから、『私のことですか?私はあなたのお父様ではありません。私はテルウィス・デストーロと申します。以後お見知り置きを』と言ったら『いいえ!!!僕のお義父さんです!!!僕は絶対シーラと結婚する運命なんです!!!』って言ってきてね。『……君、もしかして、ゼクス王子のそっくりさんかい?ダメだよこんなところ歩いちゃ〜。勘違いされたら大変なことになるからね。それにかわいいかわいい娘はあげませ〜ん。お菓子あげるからこれで我慢してね?』って言ったら、なんと本物だったんだよ。『さすがシーラのお父様!いや、僕のお義父さん!ところで、今帰りですか?ぜひ!うちの最高級の馬車に乗って帰ってください!あっ!あと、僕のことは、今度からゼクスくんと呼んでください!お菓子もありがとうございました〜!』って言って去ってったよ。」 怒涛の情報。 ……胃に痛いを超えた何かを感じた。 胃薬を飲む気力も起きなかった。 気絶しそうになりつつも、なんとか意識を保って馬車に乗った。 王宮から馬車はいつぶりだ
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第16話 私の家族へ。私、犯罪者になります。

私たちは重い足取りで王宮内にある近衛騎士団管理棟に着いた。 コンコンコン。 「入れ」 第一隊隊長室の扉が開いた。 ネスト様は大量の書類の山からひょっこり顔を出した。 ガタッ!!! ネスト様は珍しく驚いた表情をし、次第に嬉しそうな表情に変わった。 「ライト……!は、話がある……。他の者は下がってくれないか?」 「……そういうのいいです。他騎士団への移動願の紙を貰いたいです」 ネスト様の顔がサーッと青ざめていく。 だが、次の瞬間にはいつもの無表情に変わっていた。 「現時点では、移動願の紙を渡すことはできない。理由を述べよ」 「いっ、……いっしんじょーの、つごー、です」 私の入れ知恵発動!……と言いたいとこだけど、カタコト感が否めない! 道中たくさん練習したけど、疑問形にならなかっただけマシか。 「悪いが、理由を言ってもらわないと移動願の紙を渡すことができない。しかし、理由を言ったからといって移動願の紙を必ず渡せるとは言えない」 ネスト様、大人だった。 突っ込まなかった。 でもたぶん私が吹き込んだのバレてる。 そして、さすが第一隊隊長なだけあって引き留めるの上手いわね。 ネスト様の私情もあるだろうけど、やっぱり戦力として、みんなのムードメーカーとして必要なのよね……。 周りの隊員たちの表情は9割悲壮感漂ってて、1割嬉しそうね。 第一隊はライト様以外はみな貴族。 第一隊の代々の隊長、副隊長は侯爵家の三男とか伯爵家の次男、三男とかが多いって聞いたことあるわ。 子爵家から、しかも次男から初の第一隊隊長になったネスト様と近衛騎士団初の孤児出身で第一隊副隊長にまで登り詰めたライト様……。 2人とも最初は歓迎どころか嫌がらせされただろうに、本当にすごいわ……。 ネスト様はみんなに尊敬されているし、ライト様はみんなに好かれている。 ネスト様は言葉足らずな部分あるけど、行動でしっかり示すし、ライト様は言葉や強さでみんなを引っ張る。 本当にバランスの取れたコンビだっただけに残念だけど、ここは心を鬼にして、ライト様を辞めさせる方向に持っていくしかないわね。 「あの、私からもお願いします。ライト様に移動願を渡していただけないでしょうか?」 「お前!ライトまでたぶらかしたのか!
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第17話 『運命の番』を書き換える男

「ネモ!ちょっとこの袋私の部屋まで運んでくるわ!」 「いえ!私がお運びします!」 「いいのよ!ちょっと、まあ、見せるのには時間がかかりそうなのよ!」 「……もしかして、その中に人間入ってます?」 「……」 シーラ様のことだわ。 孤児でもまた助けたのかしら? ……私がいなくなっても大丈夫そうね。 シーラ様はもしかしたら私より前に見初め式のこと伝えられていたのかも。 「シーラ様!私の代わり見つかって良かったですね!私、一安心です!これで私は今日何も後悔なく辞められます!」 「……え?」 シーラ様の頬から一筋の涙が伝った。 珍しく動揺している。 知っているんじゃなかったの? 「どういうこと!?ネモ!?何で辞めちゃうの!?!?……ごめんなさい。私があなたに苦労をかけすぎたのよね。……幸せなってね。国外へ行くのなら、推薦状書いておくわ。国内ならデストーロ家の人間は疎まれるけど、国外なら外商からの成り上がり貴族として認識されているから、同じ系譜の貴族からは歓迎されるはずよ」 本当に知らなかったのね。 でも、これ以上シーラ様に迷惑をかけるわけにはいかない。 「実は、『運命の番』の方と来月見初め式を行うんです!私、幸せになり……うっ……うっ……」 私は精一杯の笑顔を作って見せようとしたが、無理だった。 「……ヴァレン神官」 「え?」 「ヴァレン神官の元へ行きなさい。ライト様と共に。彼は唯一『運命の番』という理不尽な制度に静かに抗っている神官よ。彼の元に行けば心から愛し合っている人と結ばれることができるわ。彼は『運命の番』を書き換えることができるの。西にある国境付近の村、ドルトブルクにいるわ。デストーロ家の数少ない支援者でもあるの。私たちの味方よ」 「嫌です!!!何でライトなんかと!ライトはもう私が好きだったライトじゃない!……変わってしまったんです。チャラチャラした典型的な騎士に」 「ライト様があなたのためにこんな姿になったと知っても?」 ドサッ 「ライト!?ライト!!!なんで……なんで!?……私を……置いていかないで……」 「生きてますよ。ただ気絶しているだけで」 「でもなんでこんな……こんなボロボロなんですか……?」 「あなたの幸せを邪魔したくなくて、南の国境への移動
last updateآخر تحديث : 2026-07-17
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第18話 狐と狸の化かし合い

「……長期休暇、だと?」 第一隊隊長室。 昨日、僕を袋詰めにすることを許可した張本人であるゼクス王子というキングオブクソ貴族は、ふんぞり返った状態で僕の提出した書類を指先で弾いた。 その隣では、ネストがいつもの無表情で、だが射抜くような視線で僕を凝視している。 昨日の今日だ。 全身包帯まみれの僕が、開口一番「ちょーききゅーかをいただけたい」と言えば、怪しまない方がどうかしている。 「理由は『傷病の療養のため』……。昨日、僕とネストに完膚なきまでに叩きのめされたから、体を休めたいと?……ライト、君がそんなタマじゃないことくらい、僕もネストもよく知っているよ?」 ゼクス王子の細められた瞳の奥で、冷徹な光がギラリと揺れた。 完全に疑っている。ここで一歩でも引けば、すぐに「西への逃亡」を察知され、ネモと一緒に捕まる。僕は奥歯を噛み締め、事前にシーラさんと練り上げた「嘘の防衛線」を展開した。 「……そうかもしれません。ですが、理由はそれだけではありません」 「ほう? 聞かせてもらおうか」 「……俺の名誉の問題です。これ以上は、騎士の尊厳として言えません」 あえて「言えない理由がある」と突きつける。 人間の考えのパターンとして、完全に隠されるよりも「名誉について」とちょっとだけ言った方が、いろいろな考えを生むらしい。これを「余計なじゃすい?じゃずい?」と言うらしい。これに加えて、僕の「チャラついた騎士」という表向きのキャラを利用するという作戦らしい。 (頼む……! シーラさんの言った通り、あのクソ野郎の『お花畑フィルター』に引っかかってくれ……!) 沈黙が部屋を満たす。ネストが静かに口を開いた。 「ライト。お前が実は私情で任務を放り出す人間ではないことは知っている。……だが、昨日の移動願の一件といい、今日の休暇申請といい、タイミングが不自然すぎる。誰かに、入れ知恵をされたか」 ゾク、と背中に冷や汗が流れた。 さすがネスト、鋭すぎる。近衛騎士団入団試験の学力試験で全て1位、この騎士団に何年の歴史があるのか知らないけれど、詩では近衛騎士団入団試験最高得点だっただけある。シーラさんの影を完全に捉えかけている。 ここでネストに追求されたら終わりだ、そう思った瞬間――。 「――あぁ! なるほどね! 分かったよ
last updateآخر تحديث : 2026-07-18
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第19話 絶対成功する(大嘘)

帰り道。 僕はシーラさんと歩いてデストーロ邸に向かった。 「シーラさん、実はゼクス王子から名前覚えられてた……。ずっとお前とかおいとかしか言わないから、覚えられていないかと思った……。ゼクス王子は興味ない人の名前は覚えない主義なんだ……。でも、僕のこと好きそうな感じ一度も出していないのに名前呼ばれた……。今回は何とか逃げ切れたけど、処刑の前兆かも……」 「安心してくださいませ、バレたら全員処刑ですわ。たぶん袋詰めの時、偶然通りすがって、あのクソ王子に呼び止められ、ライト様を袋詰めをした近衛兵も処刑ですわ。ついでに、その近衛兵に麻袋と紐を渡した何も知らない庭師も処刑ですわ。でも、あのクソ王子、いくら興味ないとはいえ、覚えてないのは無理があるかなと思いまして。『花形の第一隊で一番強いのに副隊長、近衛騎士団史上初の孤児出身、王の超お気に入り』……この条件が揃っていれば誰でも覚えますわよ。嫉妬から今まで「お前」呼びにしてて、揺さぶりかけるためにここぞというタイミングで名前呼びしたのでは?」 「でも、今まで一貫して興味なさそうな塩対応だったけど?」 「それは、興味ないと思い込むことで自分を保とうとしてただけですわね、たぶん。そもそも、今まで平民が行ける最高位は近衛騎士団300年の歴史の中で第三隊隊長でしたからね。どんなに強く、聡明でも。しかもその人は商人の出ですし。第二隊からは全て貴族構成される……各隊の隊長は隊で一番強い者が務める……それが今までの慣習だったけど、あなたが覆したのよ。何でだと思いますか?」 「……僕の築き上げた努力を才能として認めてくれたから?」 「それも一つの要因ではあります。ただ、それだけだと説明し切れません」 「で、でも!今までの隊長はどの隊でも基本的には貴族だって聞いたし、ネストだって、第一隊の隊長にしては珍しい家柄じゃないか!」 「……環境が違うのです。全ての環境が。高位になればなるほど、優秀な家庭教師がつく。学問も武術も。そして、教わった子どもは優秀な人になりやすくなる……それのループですわ。もちろん、優秀な人に教えられたからと言って、教え子も必ず優秀になるとは限りませんが。あくまで確率論です。……でも、ごく稀にとてつもなく優秀な人がそうではない出自から出てくる。でもその人たちは、努力、才能、運……全て持ち合わ
last updateآخر تحديث : 2026-07-19
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第20話 駆け落ちの心得と、毒薬を添えて

「ただいま〜」 「お、お邪魔します!!」 「お帰り!シーラ!君がライト様だね!前もちょこちょこ一緒に仕事してたよね?」 「はははははい!お世話になります!!」 ライト様、素でてるわよ……。 私のお父様はネモの両親的な立ち位置でもあるから緊張しているのね。 それにしても、お母様はまだ仕事に行っているし、ネモは遠くから返事してくれたけど準備に忙しいのね。 駆け落ちに準備なんて必要ないと思うし、荷物持ってたら何かと大変よ?……と思いつつも、ネモの性格上ちゃんと準備しないと心が落ち着かないだろうから、いざとなったら道中でライト様に捨ててもらいましょうか。 「ライト様は一旦ここで休んでいてください。すぐにお茶をお持ちしますので」 ギュッ 誰かに服が破れるか破れないかくらいの強さで服を掴まれた。 ……ライト、お前か。 「行かないでぇぇぇ〜!僕を残して二人にしないでぇぇぇ〜!前、護衛についた時、めっちゃ怖かったんだよぉぉぉ〜!全然こんな感じじゃないぃぃぃ〜!また、あの時みたいに豹変するぅぅぅ〜!」 ライト様号泣。 ハンカチを貸してあげたら、鼻水までかみ始めた。 ……良くも悪くもそういうところよ。 まあ、無理もないか。 私の父、テルウィス・デストーロは『最強で最恐の縁切り師』としてこの国で有名だからだ。 私の前では舐めた態度を取る貴族も、私の父の前では遠回しに邪険にしつつも、大人しくなる。(陰ではめちゃくちゃ悪口言われているが) 普段は穏やかで天然なのだが、仕事になると、圧や追い討ちの掛け方がえげつない。 淡々と圧をかけ、相手を追い詰めていく。 情はない。 でも、取り調べの時のライト様も相当だけど。 簡単に言うなら、暴力を振るわない取り調べの時のライト様かしら? でも、私のお父様の方が言葉の暴力は上手いわね。 また、私の父は常に依頼がかなり立て込んでおり、貴族の集まりに滅多に顔を出さない。 代わりに私が行っているんですけどね!!! ……話が逸れたわ。 「怖い……。怖いよぉぉぉ……。また豹変してとばっちり喰らう……」 まだ泣いていたのね。 よくあることですわ。 私のお父様はマルチタスクが苦手だから、仕事中に話しかけると、同じ火力の言葉をぶん投げてくる。 プラ
last updateآخر تحديث : 2026-07-20
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