ゼクスの「自作自演」という名の洗礼を受けてから数日。 私は王宮の廊下で、耳を疑うような噂を耳にした。 「……聞いたか? ライトが、騎士団を辞めさせられるらしいぞ」 「あいつ実力はあったけど、素行が悪かったからな〜。まあこうなるのは時間の問題だったって感じ?憎めない感じで俺は結構好きだったんだけどな〜」 心臓が、嫌な音を立てて跳ねた。 ライト様。 あの実直で、チャラい仮面の裏に誠実さを隠していた人。 『ネモと一緒に生きて帰ってくる』 あの約束が、果たされないまま立ち消えようとしている? 「……不当だわ。そんなこと、私が許しません」 私は銀のハサミを握りしめ、騎士団の詰め所へと向かおうとした。 不当な更迭、あるいは自己犠牲という名の呪い。 それも切り裂くのが私の仕事だ。 (専門外ではあるけど。) だが。 私の行く手を阻むように、長く、優雅な影が差した。 「どこへ行くんだい、シーラ? 今日は僕と『愛の歴史』を紐解く読書会のはずだよ」 ゼクスだった。 彼は私の肩に腕を回し、逃げ場を奪うように壁へと追い詰める。 「殿下、どいてください。ライト様が……私の大切な依頼人であった彼が、不当な境遇に立たされているかもしれないのです」 「……他の男の名前を、僕の前で出すんだね」 ゼクスの声から、温度が消えた。 彼は私の顎をくい、と持ち上げ、その底知れない瞳で私を射抜く。 「ライトなら、すでに北の国との国境への異動願を受理させたよ。僕がね。彼には少し、僕と君の邪魔にならない場所へ行ってもらうことにしたんだ」 「……貴方の差し金ですの!? 彼の長期休暇でうやむやにして、それを、利用したというのですか!」 「利用? 心外だな。僕はただ、君の視界にノイズが入らないように掃除しただけだよ」 ゼクスは私の唇に指を当て、ゾッとするほど甘い声で囁いた。 「他の男の心配? 悪いけど、君の視線は僕だけが独占する契約なんだ。彼を助けようと動くたびに、僕は彼をさらに追い詰めることになる。……それが嫌なら、大人しく僕だけを見ていて?」 銀のハサミを振るう隙すら与えない、完璧な包囲網。 「苦い後味」は、消えるどころか、ゼクスという猛毒によってさらに深く、私を蝕んでいく。 「……殿下。貴方は本当
آخر تحديث : 2026-08-02 اقرأ المزيد