Semua Bab Real: Bab 131 - Bab 140

146 Bab

2話

  ――皇居の中央広場を目指し、比較的綺麗な車道を進んで行く。「鉄砲っ鉄砲っ」「バズーカバズーカ。……お」 途中、横転した装甲車が視界に入った。「よっせぃ」 強引にひっくり返したところに、ノエルが乗り込みエンジンがかかるか確認する。中を漁るも、流石に武器は持ち出されていた。「ノエルが運転する!」 足を目一杯伸ばし、辛うじてアクセルに届いているという体勢で、彼女はふんすと気合を入れる。「別にいいけど、それ前見えてんのか?」「ギリ」 ハンドルに空いた穴から前方確認を行えば、何とかなる……はず。 助手席に座った東条は天井をぶち抜き、上半身を外に出す。「しゅっぱーつ」「進行―」 快活な合図と共に、力強い音を立てて車が動き出した。 ――時速三十㎞ お世辞にも上手いとは言えない軌道を描きつつも、ノエルの操る車は穏やかに進んで行く。「まっすぐ走ってくれ。俺酔いやすいんだよ」「走ってる」「どこがよ」 蛇行する視界に苦情を漏らす東条は、漆黒を伸ばして道中落ちている武器の類を拾っていく。ルーフに漆黒で固定されているのは、彼が集めた銃火器の数々である。「集まった?」「まあまあだな。……ん」 手元の銃の安全バーを外した所で、後ろから何かの気配を感じた。 振り向いた直後、横の林から双頭の黒犬が飛び出す。その数二十以上。吠えながら装甲車に追走してくる。「お出ましだっ。追いつかれんぞっ」「おらおらー」 東条は両手にサブマシンガンを持ち、反転して獰猛に笑う。 ノエルはアクセルを踏み込み、初めての快感にハンドルを握りしめた。 死のカーチェイスの始まりだ。 ――時速六十㎞「ヒャハハハハッ!血祭りじゃァッ‼」「ギャンっ」「キャインっ」 途切れない銃声と共に響く、狂ったような笑い声。四方八方に鉛玉を乱射しまくる東条は、シューティングゲーム感覚で命を刈り取っていく。 しかしやはりしぶとい。ニ、三発ぶち込んだ程度じゃどいつも倒れない。 加えて、「おいおいおいっ、どんどん集まって来たぞ!」「あははははっ」 これだけ騒いで他のモンスターが集まらないわけがない。前からも後ろからも、際限なくわらわらと湧いてくる。 そしてそれを跳ね飛ばし、轢き殺し進んで行く装甲車を操る少女の目は、キマってしまっている。「ハハっ」 東条は全身を外に晒し
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-11
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3話

  ――時速百二十㎞「なんか凄い足音する!」「ギア上げろ‼速ぇぞ‼」 ノエルは自分の踏み込める最大までアクセルを押しこむ。片足をピンと伸ばした現状、もうブレーキは掛けられない。 エンジン音を轟かせ、一瞬は引き離すがしかし、「コゲッ‼」「追いつくかよ!」 強靭な脚力で大跳躍した鶏は、そのまま東条に回し蹴りを喰らわした。 腕を武装し防いだ彼は、そのまま掴もうとし、「――ッ⁉」 横から首に迫る影を反射的にしゃがんで躱す。「ケっケっケっコゲェェェ」「シャァァア」 地面に着地した鶏は、涼しい顔をして百㎞越えの車に追走してくる。 そしてその尻から鎌首を擡げる、一匹の大蛇。 牙からは紫色の毒が滴り、瞳孔が彼を映す。「……コカトリスってやつか」 伝説に登場する、雄鶏の怪物。 東条は全身を武装し、臨戦態勢に入った。「来いや」「ゲェェエッ‼」 再び跳躍したコカトリスに狙いを定め、半歩足を引き、構え、「あ⁉」 そのまま頭上を飛び越していく巨体に虚を付かれる。 装甲車の前方に着地したコカトリスは限界まで右脚を引き、「コゲェアッ‼」「「――ッ⁉」」 弾き出す様に全力の前蹴り放った。 轟音を上げひしゃげ吹き飛ぶ鉄塊。宙を舞うそれは、最早車としての原形を留めていない。 蹴られる瞬間全身の武装を解除した東条は、反動でそのままコカトリスに向かって突っ込んでいく。(っぶねぇッ!)「シャァギャっ」 空中で身体を捻り、迫る毒牙を紙一重で躱す。 次いで、カッコいいからと腰に装着しておいたマチェットを抜刀。 振り抜き、大蛇の首を切り飛ばした。 鮮血が飛び散る中、しかしコカトリスは動じず、軸足で一回転。たったそれだけの動きで、東条の顔面に己の蹴りの軌道をドンピシャで合わせた。 風を切り裂き迫る旋風脚に瞠目。 咄嗟に左腕を曲げ頭を庇い、右手でそれを支える。「ゲガァッ‼」「――ッグ、ぉ――ッ―― 衝突。 一瞬の抵抗も許されず、直角の線を描き、東条はトレントをへし折りながら森の中へと消えた。「あいたた……くない?」 大破した装甲車から転がり出るノエルは、自分の身体に傷一つついていないことに驚く。 そして、辛うじてぶら下がっているサイドミラーに映ったモノにさらに驚いた。 そこにはただ一つ、黒い球体が在った。 それも次の瞬間には霧散
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-11
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4話

  § 皇居を囲む巨大なトレントの一柱。その頂上付近。 手で丸を作り、森の中へ進んで行く二人を眺める男がいた。 男は焦るように携帯を取り出し、冷汗で湿った手でボタンを押す。 数秒の呼び出し音の後、「何だい?」 気怠そうな女性の声がマイクの奥から響いた。「あ、姉御っ。ヤベェ奴がいる!ヤベェ奴が来た!」『落ち着きな、デカい声出したら食われちまうよ』 男は小声で叫ぶという器用なことをしながら、足りない語彙力でたった今自分が見た非常識な光景を説明する。「あいつらヤベェんす。男は笑いながら銃乱射してたし、小学生くらいの女が装甲車運転してた。一番はあの男、コカトリスを一撃で殺しやがった!」『コカ?……あぁ、あの鶏か』 男は先の衝撃を思い出し、再び戦慄する。驚きすぎて危うく木から落ちるとこだった。『それで?そいつらの目的は分かるかい?』「詳しくは分からないっす。けど、女はビデオカメラ持ってました」『カメラ?……その女、白髪だったか?』「は、はい。恐ろしいくらいの美人でした。何か知ってるんすか?」 数秒の沈黙。『……いや、まだ分からん。ボスには私から言っとく』「わ、分かりました」『そいつらの行動、逐一私に報告しろ。お前なら見えるだろ?』「はい。俺の『望遠』なら、木に隠れなければ皇居全域カバーできます」「ならいい。切るぞ」「はい。お忙しい中失礼しましたっ」「はいはい」 男は切られた携帯をポケットにしまい、一度深呼吸をし、再度手で丸を作った。「――っ」 件の二人は、踊るようにモンスターを殺し続けていた。 §
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5話

  ――「ふぅ」「できたか?」「ん。そっちは?」「完璧」 ノエルは立ち上がり、土の棒で串刺しにしたコカトリス、だったものを肩に担いだ。 首と尻尾を落とし、逆さに吊るし、羽を毟り、内臓を取り除く。初めての下処理ではあったが、上手くできたのではないだろうか。 その証拠に、見た目はよく見る食用の鶏だ。サイズ感がおかしいだけの……。「よいしょ」 ドスン、と支えに置かれ、東条が用意した巨大な焚き火の上に掲げられる。 チャッカマンでトレントに火をつけるのは、中々骨の折れる作業だったのだろう。 黒い顔に慣れた今、ノエルには漆黒の上からでも精神的な疲労が見て取れる。 しかし準備は終わった。あとは回しながら待つだけだ。「どれくらいかなー?」「結構かかるだろ。火力もまああるし、気長に待とうや」「ん~」 ぐるぐるぐるぐる――「まさの黒いので回せないの?」「無理無理。持ち上げる、とか握る、とか、簡単な操作しかできないのよ」「ん~」 ぐるぐるぐるぐる――「こ~たい~~」「まだ五分だぞ。……たくっ」 寝っ転がってブローチを弄っていた東条は立ち上がり、駄々をこねるノエルと場所を交代する。 あと何分かかるのか……。腹の虫を聞きながら、彼は獣の唸り声をBGMに作業に入った。 ぐるぐるぐるぐる二十分後――「……モンスター襲ってこないな」「あれだけ殺せば身の程を知る」「それもそうか」 パチパチと油の弾ける音を聞きながら、漂ってくる香ばしい香りに二人の涎が湧き出る。 鼻が良く、且つ彼等に襲い掛かるような怖いもの知らずのモンスターが、この香りに引き付けられないわけがない。 しかし準備から今まで、唸り声を上げるだけで一向に飛び掛かってこない。なぜか、 理由は然して単純。 二人の周りを、無造作に積み重ねられた死体が円状に囲っているからだ。 引き裂かれ、撲殺され、原形を留めていない同胞の死体が、壁となり生き残ったモノを阻んでいた。 要するに、見せしめである。 貴様らも近寄ればこうなる、という、弱者への警告。 三大欲求という本能を上回るだけの、恐怖という本能を、新たに刻み込んだのだ。「おなかすいた~~」「うん。そろそろ、できたかなっ」 死体から溢れる膨大な血に囲まれ、濃厚な鉄臭さの中、食事に笑顔を向ける彼等は、はなから常人の感性など持
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6話

 「ぶはっ、大丈夫か?ひひっ」「…………」 地面に倒れ伏すノエルを笑いつつも、森の奥から近づいてくる何かを警戒する。 感じる威圧から察するに、今日一番の大物だ。「ボルルルル……」 木々の暗がり現れたそれは、大きな手で死肉を掴み、バリバリと噛み千切り咀嚼する。 四mに届きそうな体躯は筋肉で覆われ、何より特徴的なのが、顔の半分を占める程の単眼だ。 一つ目の巨人は東条の持っている巨肉を瞳に映し、三日月型に牙を覗かせた。「キュクロプスってとこか。すげー迫力だな」 肉を肩に担ぎ、ベヒモスを除いた過去一の威容と向き合う。 東条は、あの象とノエルを理解という枠組みから外している。 そうして作られたランキングの中で、目の前の化物はパッと見の魔力量、肉体能力共に間違いなくトップに君臨するだろう。 因みに現在の東条の位置は、ライノスより上、ヒポポタより下と言ったところだ。 人間の中では、潜った修羅場の数が違いすぎるせいでずば抜けているだけであり、強者の中では特段高いというわけではない。 何度も言うように、強くなればなるほど魔力量は増大するが、一概にそれが全てとは言い切れないのだ。 技量や、それこそcellによって、いくらでも戦況は変わる。 彼がキュクロプスを分析している隣で、ノエルがゆらりと立ち上がった。「……まさは手出さなくていい。持ってて」「んぁ?生きてたんか」 先のお返しと冗談を言うが、ノエルは何も言わず、カメラを投げ渡し歩いていく。(……あちゃ~、怒ってらっしゃる) 確かにあんなことをされれば切れるのも当然だ。 東条は邪魔にならないよう、出来るだけ二人から離れ始めた。「一応気ぃつけろよ。強ぇぞ」「ん」「冷めねぇ内に終わらし」「ん」「ボルァア‼」 肉が去って行くのを見たキュクロプスは、全身のバネを使い突進。前方に立つ小さな邪魔を無視して地を蹴った。 瞬間、「ルっ⁉――ッ」 足元から連続で生える土棘を、巨体からは想像のつかない驚異的な身体能力で躱し、自分を追って迫ってくる分を殴り壊す。「……ルオォ」 睨む先には、一人の少女。邪魔と判断した少女が、此方を見ている。「ノエルを見ろ」 縦に割れた紫眼が、瞬きもせずにキュクロプスを射抜く。「ノエルは怒っている」 風に髪を靡かせ、空気が揺れる程の殺気を滾らせて、「
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7話

 「……えっぐ……」 凄惨な現場を目の当たりにした東条は、肉を食うのを止め、此方に歩いてくる少女に戦慄する。「おまた」「お、おう。お疲れさん」「あーっ、先に食べてる!」「いや、これはあれだ、映画にコーラとポップコーンがないとダメな感じの、あれだ。ノエルの姿がカッコよすぎてつい、な?」 焦り気味に弁明する東条の視界の端では、常に一凛の大きな薔薇が存在を主張している。「むー。許す」「あざす」 優しい少女で本当に良かった。……本当に。 ――「うめぇうめぇ」「うみゃいうみゃい」 持ってきた塩を振り掛け、パリパリの皮と程良くしまった肉に舌鼓を打つ。 骨を持ってかぶりつき、捨ててはもぎ取りかぶりつく。口の周りを汚しながら手掴みで噛み千切るのが、骨付き肉の一番おいしい食べ方である。「そういやあの技何よ?」「んむんむ、ンぐ、必殺技」 しっかりと呑み込んだ後、油べとべとの手でピースを作る。「かっこいいだしょ」「かっこいいだわ。いつの間に?」「一日一個作ってた」「めっちゃあるじゃん」 必殺技とはそんなに簡単に作れるものなのだろうか……。疑問は尽きないが、東条もそのロマンには大いに共感できる。だからこそ、「いいな~。俺も考えたことあるけどよぉ、派手な技がねぇんだよぉ」「まさのパンチは充分派手」「華がねぇ」「確かに」 自分の技に名前をつけるとなると、『ぶっ飛ばし』とか『ぶん殴り』になってしまう。それではあまりにダサい、ダサすぎる。なのにノエルときたら、「『ロゼ』ってなんだよ~めっちゃカッコいいじゃ~ん」「うぇへへ」 ゴロゴロと転がりバタつく東条に、頬を緩ませ照れるノエル。「他にどんなのあんのよ」「秘密~」 血が滴る一凛の薔薇の横で、肉を片手に談笑する二人であった。
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8話

  §「…………ははっ。……ぅえ、ぅぼぇっ……ふぅ、ふぅ……」 一連の戦闘を木の上から直視していた男は、衝突する埒外の魔力と殺気に晒され、落下した後胃の中の物をぶちまけていた。 彼女の質量を持った圧力に耐えられる生物は、キュクロプスと東条を除いてこの庭園の中にはいない。 異様な程の静けさが辺りを包んでいる。 生きとし生けるものが、息を殺し、命を潜めている。「ぅっ、おぶぇっ……」 男は一凛の薔薇を思い出し、又も嘔吐く。 色々な死に目や死体を見てきたが、あれ程悪意に満ち、害意極まりない殺し方は初めて見た。 そしてそれを行ったのが、幼気な少女だという事も悍ましさに拍車をかけている。 何より、その横で笑顔で談笑している彼等が、怖くて、恐くて、仕方がない。 男は震える手で携帯を取り出し、今日何度目かの番号にかける。『デカい音したけど、何かあったか?……おい……泣いてんのかお前?』「もぅ怖いです。帰っていいですか?」 涙ながらに訴えるも、『何情けないこと言ってんだ。報告』「うぅ、はい」 聞き入れられることはない。「あの二人、キュクロプスを殺しました」 携帯の奥から、少しだけ驚いた雰囲気が漏れた。『……あの単眼の化物か。それはまた凄いな』「凄いとか言うレベルじゃないですってっ。この数時間で、俺がここにいる理由無くなりましたからね」『喜ばしいことだな』「……まぁ、そうですけど」 良い方に捉えれば確かに、自分は今日を以てこの危険な仕事を引退できるだろう。『で?どっちが殺ったんだ?二人でか?』「……少女です。それも、五分とかかっていません」『ハハっ』「……笑い事じゃないですって。何なんですかあの二人、魔王か死神の類ですよ絶対」 男は、(見ていないから笑えるんだ)、と心の中で一人ごちる。『そうだ。仕事の無くなったお前に新しい任務をやる』「な、なんですか」『その二人をここに連れてこい』「俺の話聞いてました⁉」 予想外の任務内容に、身体中から冷汗が噴き出る。『うるせぇな。さっきボスが帰ってきた。会いたいって言ってんだよ』「嫌ですよ!殺されちゃいますよ!」『……私がそこまで行って殺してやろうか?』 ドスの効いた声に、男の身体がビクりと固まる。慣れ親しんだ恐怖。 しかし先のものと比べれば、心地良ささえ感じる。自分が
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-13
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9話

  焚き火が燻る広場では、コカトリスを残さずに平らげた二人が、膨れた腹を摩りながらへそ天していた。 沢山食べた後に運動する気など起きるはずもなく、こうして一休みしているのだ。「ケプっ。あとどれくらい休む?」「ん~十分くらい」「り」 口数少なく、ボケ~、と揺蕩う雲を眺める。 人間たまにはこういう時間を作らないと、自分が今まで抱え込んできたものに圧し潰されてしまう。 東条はいいとして彼女に抱えるものがあるのかは甚だ疑問ではあるが、思考の放棄こそ、最高の整理術なのだ。 冷えた空気にお日様が気持ちいい。……そんな中、「……なんの音だ?」「何か来る」 遠くの方から、バタバタ――、と小さいながらも疾駆音が聞こえる。段々と大きくなるそれは、確実にここに向かって近づいてきている。 じー、と木々の間を見ていると、「……なんだあれ。人か?」「モンスターいっぱい連れてる」 涙を流しながら半笑いで全力疾走する金髪オールバック黒スーツの男が、大量のモンスターを連れて此方に迫ってきていた。 その必死さは尋常ではなく、何かを謀っている様には到底思えない。それほどまでに、惨め。「笑ってるぞ」「泣いてる」「なんでこっち来んだ?」「肉食べたかったのかな」 そうこうしている内に男は死体の壁を飛び越え、二人の下に顔面から転がり込んできた。 男が慌てて後ろを振り返るも、追って来ていたモンスターは全て壁の外で急停止し、唸り、睨みつけるだけである。 数秒もすると、諦めたのか悔しそうに去って行った。「たす、かったぁ」 緊張の解放からがっくしと地面に手をつく男に、じー、と向けられる視線。 そんな男と二人の視線が、交差する。「っ……ごほんっ。……初めまして、藜組の平塚 康と申します。この度は救っていただき感謝します」(別に救ってねぇんだが……) いきなり顔面スライディングをかまし、引き攣った半笑いで九十度に腰を折る目の前の男に、東条とノエルは懐疑の目を向ける。 まるで準備してきたかの様な切り替えの早さ、怪しい。……それに何より、この男は今聞き捨てならないことを言った。「あ、こちら私の名s「止まれ」っ……」 懐に手を忍ばせた康の身体が、東条の威圧を受けビクり、と固まる。(……え、何⁉俺なんかまずいことした⁉ヤベェ殺されるっ。てか
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-13
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10話

 『なん「姉御ぉ‼」……次耳元でデカい声出しやがったら殺すぞ』「も、申しわけないです」『チっ。それで?了承は取れたか?』「めっちゃ疑われてる最中ですよっ。理由を聞くまで動く気ないです、てか殺されます」『あぁ、忘れてた』「でしょうね!」『ボスが糞猿共を血眼で探してんの知ってんだろ?』「は、はい」『この付近歩き回ってるそいつらなら、情報持ってんじゃないか?ってことよ。要するに商談だな。他にも目ぼしい情報あったら買うつもりらしい』「なるほど」『分かったらさっさと連れてこい。そいつらにとっても悪い話じゃないはずだ』「了解です」 一方的に切られた携帯を耳から外し、改めて二人の方へ向き直った。「お待たせして申し訳ありません」「いえ。それで、何と?」「私達のボスがあるモンスターを探しておりまして、その種についての情報が欲しいと」「……なるほど」 東条も納得する。情報を売ると公言しておいて、この話に応じないのは違うか……。「いこ、ノエルビジネスやりたい」 初の金が動きそうな仕事に、ノエルは既に乗り気である。「まぁ、そういうことなら俺も構わねぇな」「有難うございます」 ほっとしたように康も頭を下げる。「それで、何処に行けばいいですか?」「はい。一旦皇居前発電所まで徒歩で向かい、そこから幹部が車で本部までお送りいたします」「皇居前発電所?」 東条の眉がピクリと上がる。「はい。どうかされましたか?」「いえ。丁度私達もそこに向かおうとしていたので、驚いただけです」 何の因果かその場所は、二人が次の目的地に決めていた場所であった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-14
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11話

  ――「まさかお二人が発電所に向かおうとしていたとは、驚きでした」「私も藜組の方々がそこを守っているとは思いませんでしたよ」 皇居前発電所は、皇居に隣接する最新型ソーラーパネルを設備した超大型発電所である。 山手線範囲内を賄えるだけの電力を、この場所だけで供給している。 現代人の一人として、それ以上に、この中でサバイバルを生き残った者として、電気の存在が途轍もない助けになったのは言うまでもない。 勿論この場所に来るまでに、断線し暗闇に呑まれた場所は幾度も見た。 トレントの枝葉がうまい具合に電線と接触せず、電気が東条の元まで届いたのは運によるものだ。 一部を除き、モンスターが公共施設に興味を示すことが無かったのも大きい。 しかしもしこの場所を守っている人間がいるのなら、自分は必ず礼を言うべきだ。 東条は予てから、その思いをずっと胸に抱いていた。「そこはその方がお一人で?」「そうですね。戦闘は姉御、幹部がほぼ一人で請け負っていますね。というよりも、私達下の者では彼女の邪魔になりますから」 康は彼女の恐ろしさを思い出し、カラカラと笑う。 本部が別にあるとすると、その女性は一人でライフラインを任されていることになる。 察するに、相当の実力者なのだろう。「いったいどんな力を使うのか、とても気になりますね」「はははっ。流石にカメラの前では、それも私の口から言うのは憚られますね」「それもそうですね。申し訳ない」 ――三人で雑談を交わしながら、西に向かってひた進む。「そういえば平塚さんも、よく私を見つけられましたね。迷わずこちらに向かわれてたようですし」「いえいえ、偶然ですよ。あれだけ大きな音を立てれば、誰でも気になりますって」「ハハハ、確かにはしゃぎ過ぎました。……平塚さんはよくここの見張りを?」「……えぇ。怖い上司に無理矢理、ですかね」 康はやれやれと言ったジェスチャーをつけ、笑顔で答える。「それにしてはモンスターから全力で逃げていましたけど、いつものことなんですか?」「まさか。私は遠くから、発電所に近づくモンスターがいないか見る役目です。これで」 そう言いポケットから出したのは、市販の双眼鏡。「……組織って大変なんですね」「まったくですよ」 警戒するのもめんどくさくなってきた東条は、元より自分の柄ではない、と探り
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