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All Chapters of Real: Chapter 151 - Chapter 160

198 Chapters

22話

 § 100m走       ――2秒58     世界記録 約10秒 走り幅跳び     ――17・2m    世界記録 約9m 砲丸投げ      ――51.3m   世界記録 約23m 走り高跳び     ――10.2m     世界記録 約3m 400m走      ――10秒32     世界記録 約43秒 110mハードル走  ――5秒14 ※五度の跳躍で走破    世界記録 約12秒 円盤投げ      ――151m    世界記録 約74m 棒高跳び      ※棒が破損のため垂直飛び――7.2m  世界記録 約6m 槍投げ       ――283m   世界記録 約98m 1500m走     ――50秒      世界記録 約3分30秒 陸軍施設の一角、担当官は測定結果を用紙に書き込み、その常識外の数値に何度目かの溜息を吐いた。 そしてそんな彼の前には、 定期的な計測で世界記録を塗り替える人外、 首にタオルをかけ、スポーツドリンクを飲む二足歩行の人狼が立っている。「亜門一等陸佐、これで測定は終了です。お疲れ様でした」「ああ、お疲れ様」 徐々に人の姿に戻り去って行く彼を、担当官は尊敬と畏怖の目で見送った。「此方、今日の測定結果でございます」「有難う」 岩国は執務室にて、我道の秘書に渡された資料に目を通す。 特区から帰還した後、彼等はすぐに未知の力を解明するべく研究を始めた。 そうして分かったのが、今まで地球上に確認されていなかった新元素の存在。 巷に倣って、魔素(仮)と命名されたものだ。 この突如現れたダークマターについては謎が多すぎる故、安全地帯より危険地帯の方が含有量が多いという以外、詳細は殆ど明らかになっていない。 ただ一つ、『摂取量に応じて人間に超常的な力を発現させる』 という、世界を根本から壊しかねない特性を秘めている事実を除いて。 それらは魔法と呼ばれ、帰還した自衛官約八百人の内、七十七人にその傾向が見られたたことから、凡そ十分の一という高確率で発現することが分かった。 その多くは安全地帯にいた者と同様、些細な現象を起こすに止まったが、更にその十分の一、七人の自衛官は超常と呼ぶに相応しい力を手に入れた。 未だ安全地帯からこのレベルの魔法
last updateLast Updated : 2026-08-21
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23話

 「入れ」「失礼いたします」 その二十人の内の一人である彼が、隊服に身を包み姿勢を正した。「亜門 誠一郎一等陸佐であります」「あぁ、崩して構わないぞ。お前とも随分顔なじみになってしまったな」「はい、ですが私はこのままで」 二人は帰って来てからも同じ場所で過ごしている為、顔を合わせることも多くなっていた。「相変わらず固い奴だな……。見たぞ?また世界記録を塗り替えたな。おめでとう」 用紙を叩いて笑う岩国に、亜門は苦笑する。「私のはそういう能力ですから。他の発現者の方々はどうでしたか?」「魔法の精度は上がっているようだが、身体能力は以前とあまり変わらんな。肉体の強度が上がっているわけでもないし、怪我もする」 超常の力を手に入れても、超人になれるわけではない。岩国は例のビデオで見た青年を思い浮かべる。「……やはりモンスターを殺した数でしょうか?」「殺した数なら我々も相当数いってるぞ?何か別のカラクリがあるのだろうよ」 今話題になっている二人の存在は、勿論彼等の耳にも入っている。「彼等に連絡を試みたと伺ったのですが、その件はどうなったのでしょうか?」「とりあえず銀行の口座を作れ、と一方的に切られたらしいぞ。なぁ?」「……はい。申し訳ありません」 爆笑する岩国に秘書が頭を下げる。「それはまた……、随分と強気ですね」「まぁ当然だろう。今一番深淵に近いのは彼等で間違いない。その優位性を捨てるなんて猿でもしないさ。 それに理由はどうあれ、残された市民の為に食事を配り歩いているんだ。 我々が彼等に感謝以外の感情を向けることは許されない」「……重々承知しています」「……」 あの日の事を各々が思い出す中、岩国が手を鳴らし空気を切り替えた。「もうすぐ口座も用意できる。そうすれば我々の知らない情報も沢山入ってくるだろう」「……では、」「ああ。ようやく特区に残された市民を救出できる」 亜門の拳が強く握られる。 あの日助けられなかった命を、再び掬えるチャンスが来る。「その為に近場から部隊も集めている。内二人はお前と同じ能力者だぞ。 能力は……何だったか?」「はい。一人目が三等陸曹 千軸 楓(男) 能力系統は birther能力名『異世界』。 二人目が一等空曹 |彦根 空太郎《ひこね そ
last updateLast Updated : 2026-08-21
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24話

  § ――郊外。オシャレなカフェテリアにて、フラペチーノを添えた今どきの女学生の談笑。「この前の動画見た?」「見た見た~。ノエルちゃんめっちゃ可愛いかった」「ねー。絶対日本人じゃないよね」「あ~、二人共見てるんだ。あの動画けっこうグロくない?」「まあねーでも課金しなきゃ戦いはないし、許容範囲?」「つよ~い」「あはははっ、だってノエルちゃんが可愛すぎるんだもん~!あの白黒コーデとか最高だし!」「ね。めっちゃキュート。……カオナシさんはちょっと怖いけど」「それな」 部活終わり、部室で着替えながらスマホを囲む男子高生。「見ろよここ。土魔法だよなこれ」「ハンパねぇなノエル。ったく、俺も一時は魔法使えるってちやほやされたのによ」「まぁこんなの出てきちまったらしょうがねぇよ。自衛隊にも何人かいるって噂だし」「うおっ、どうなんってんだよこいつの身体」「やっぱスゲェよなカオナシ!こんな動きオリンピック選手でも出来ねぇよ」「そもそも人間が出来る動きじゃねぇよ。こことかどうなってんだ?」「ネットにスロー再生上がってたぜ」「後で見ようぜ」「いいね。お前んちな」「菓子持ってくわ」「じゃあ俺ジュース持ってくわ」「おっけ」 休憩中のサラリーマンが二人、ビルの屋上から遠くの危険地帯に煙草を吹かす。「……日本も変わっちまったな」「俺達の日常は何も変わらないけどな」「ああ。クソったれなままだ」「こんな時くらい会社休ませろってんだよ」「いっそ化物狩った方が稼げんじゃないか?」「……どうやって殺す?」「お前を囮にして、隙をついてめった刺しにする」「奇遇だな。俺も同じことを考えてた」「ははははっ」「ははははっ」「……ふぅ……。戻るか」「……ああ。クソったれな上司が待ってる」 とあるニュース番組。数人の学者やコメンテーターが、それっぽい顔を張り付け談議している。「今話題になっている此方の動画ですが、過激ながらも緑化地帯の謎の最前線を行っているとして、社会現象を起こしています」「問題なのは、彼等が……その、生物を殺害する場面を動画にして、娯楽として放送しているという事です。 課金をすれば、一般人の誰もがこの動画を見れてしまうという事に、私は恐怖を感じましたね。 なぜ国はこの動画が世に広まるのを許しているのでしょうか?」「そ
last updateLast Updated : 2026-08-22
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25話

 彼等の朝は早い。 戦闘職以外にローテーションで回ってくる食事当番は、周りが起き出す前に目を覚まし、自主的に炊き出しを用意する。 殆どがレトルトなのでそれ程の手間はかからないが、量がバカにならないためサボってはいられない。 そうして食事の用意ができた頃、皆がぽつぽつと起き始める。 一日に二度しかない、貴重な栄養補給の時間だ。「どうぞー」「ありがとうねぇ」「どうぞー」「あざす」「どうぞー」「ありがとうは?」「ありがと」「はーい」「どうぞー」「……ちッ、少ねぇな」「……あ?」 人の数が多くなればなるほど、そこに溜まる不満や欲は大きくなる。 死と隣り合わせのコロニーの中で、いざこざが起きないはずがないのだ。 小声でぼやいた高年男性に、配給係のギャルが食ってかかる。「何だよおっさん、いらないなら返してくんない?他の人にあげるから」「誰もいらないなんて言ってないだろ」 二人の言い合いに周りの視線が集まる。「取ってきてくれる人達に感謝も出来ないような奴が、これに手を付ける資格はないよ」「「「そーだそーだ」」」「ちっ」 女性の怖い所はその数だ。一人を怒らせると、もれなく仲間もついてくる。まるで狼。獣の群れだ。「っ何を偉そうに、お前達も大したことは何もやってないだろ。女は黙ってろ」「うわー、典型的男尊女卑の老害じゃん。話す価値無いわ」 嘲笑するギャルの態度に、高年の頭に血が上る。「そもそも戦闘職だかなんだか知らないがっ、外に行けるならもっと持ってこれるだろっ。どうせつまみ食いでもしてんだろーよ」「おいおっさん、それくらいにしとけよ」 高年に声を掛けたのは、配給食を持った青年の集団。この場所で戦闘を担っている者達の一部だ。 他の者と比べても、健康的な見た目をしている。 高年男性は彼等の配給量を見て、更に顔を顰める。「ほら見ろっ、俺達と比べて明らかに多いじゃないか!」「今に始まったことじゃないだろ。それにこっちは命掛けてんだ。これくらいの贔屓許してもらわなきゃやってらんねぇぞ」「俺達の命なんてどうでもいいってか!」「……守ってもらってる分際で、うるせぇな」「「「――っ」」」 青年から魔力が放たれる。 彼の魔力は、快人や東条は勿論、快人の下についていた中年等よりも稚拙、矮小であったがしかし、その圧に全員が押
last updateLast Updated : 2026-08-22
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26話

  ――瓦礫が多く危ない為、普段は立ち入りを禁止している区域にある校舎の一角。 半壊した講義室に、五人の男女が集まっていた。「さっきまた飯でトラブってたぜ?」 机に胡坐をかく嶺二は、かったるそうに先の揉め事を報告する。 檀上に立つ新はその報告を聞いた後、少し考えてから口を開いた。「分かった。明日にでも遠征に出よう。メンバーはいつも通り、俺と嶺二、胡桃の三人で行く」「分かりました!」「……はいはい」 嶺二ともう一人、それなりに広い講義室にも関わらず、新のド真ん前に座る女性が元気に返事をする。 緩いカールがかかった髪、赤子の様なきめ細やかな肌を持つ、常に上品で優しい笑みを浮かべる彼女。 胡桃を一度目にした者は口を揃えてこう例えるだろう。お嬢様、と。「馬場さんと正宗は、戦闘員を纏めて皆を守ってくれ」「あいよ」 溌溂と返事をする女性は立ち上がり、伸びを一つ。 その身長はかなり高く、百八十㎝はある。スタイル抜群の身体にはすらりとした美しい筋肉が付き、鼻上のそばかすがキュートである。 そんな彼女ともう一人。「分かった」 ツーブロックと目元が隠れる程度に伸ばした黒髪、落ち着いた色の服を着た高校生。 一見クールな彼も立ち上がり、さっさとと部屋を出て行こうとする。 そんな彼を、新が呼び止めた。「正宗、後で皆で配置確認するから、十五時に会議室に来てくれ」「オーケー」 ひらひらと手を振って扉を潜った彼を除いて、教室には四人が残る。 正宗の淡白な態度はいつものこと。しかし今日とて今日も、それを受けた新の顔はみるみると悲しみに曇っていく。「……ん~。結構長い間一緒にいるけど、まだ距離がある気がする」「普通に一人が好きなんだろ。お前みたいな、皆大好きお友達精神の奴の方が希だからな?」 嶺二は呆れ気味に現実を教えてやる。世の中、誰もが友達を欲しがっているわけではないのだ、と。 しかし、「だけど、そこが新さんの魅力だと思います!」「有難う胡桃。俺は諦めない」 すぐに胡桃にフォローされ、彼は理想の中に戻ってしまった。 嶺二は再び溜息を吐く。 二人の脳内がお花畑なことなど、二ヶ月前から知っている事だ。只々真っすぐで、悪を嫌い、好意を振りまき続ける。 お花畑と言われても仕方ない性格の二人だが、そんな甘い考えを補って余りある
last updateLast Updated : 2026-08-22
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27話

  §§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§ 草木萌動、靡く純白の御髪。 小さな妖精は今日もスキップを踏み、鼻歌を奏で芽吹きを讃える。 そんな奇々怪々なリズムに付き従う、軽快な打音。 遠慮もなく叩かれる彼の正体は、ある時は洗濯機、ある時は食糧庫、そして今日はくの字のドラム。千変万化の風雲児。 フィニッシュと同時に、限界だったスティックがへし折れた。「……ついた」 ノエルが目を輝かせる先には、イルミネーションによって美しく飾り付けられた、長大な欅並木。 天の星々すら霞ませる、春宵に煌めく地の星団。「これが日本のシャレオツ街道、表参道だ」 明海大学にて会議が行われた、その日の夜。 二人は目的地にした大学への道中、盛大な寄り道をしていた。 §§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§
last updateLast Updated : 2026-08-23
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28話

          §『上がったぞ!』        『二、三日ぶりか。マジで心配したぜ』『数日動画上げないだけでネットニュースの急上昇に載ってたぞ』                   『今や社会現象だからな』『そのせいで最近回線遅くなって動画重くなってるよな』『まぁ再生回数億越える様な動画だし、それはしょうがないだろ。上がったの見て、後日纏めサイトでラグが無い動画見るのが今の主流だしな』『戦闘シーンは別で作られてっからラグ少ないのが救いだな』        『そろそろ個人でやるの限界じゃないか?』『それは二人に任せるとして、そろそろ見ようぜ』             『だな』「ノエルはめちゃかわダンスへびー♪ほらこれみて尻尾をふりふりー♪スーパーへびーはパンチもすごい♪顔面パンチそれめちゃかわパンチ♪邪魔する奴は皆殺し♪」 「どんな歌だよ……」             『いやどんな歌だよ』『可愛すぎかよ』             『へびーってなんだ?』『べびーじゃね?ノエルちゃんの肌赤ちゃんみたいに柔らかいし』             『変態がいるぞ』『捕えろ』『ち、違う‼俺はただげふゥっ――』『悪鬼滅殺』――「ここか?」「でか」『なんだこれ……』             『バカでけぇ』『城壁だな』                     『中のモンスターも強いらしいぞ』『そこに躊躇なく飛び込んでいく二人よ』――「鉄砲っ鉄砲っ」「バズーカバズーカ。……お」『こんな奴等絶対皇居に入れちゃダメだろ』                  『あ、装甲車』『いやあんたが運転するんかいw』        『道路交通法違反、並びに銃刀法違反』『犯罪のオンパレードじゃあっ‼』                  『流せんのかこれ』『今更だろ』――「おいおいおいっ、どんどん集まって来たぞ!」「あははははっ」『なになになに⁉後ろで何が起きてんの⁉』『カオナシが拾ったマシンガンぶっ放してると推測』『ノエルちゃんも笑ってモンスター轢き殺しまくってるし、こいつらヤベェッて‼』――「穴だらけになっちまいな」『⁉』     『⁉』『⁉』     『⁉』『うるさッ⁉』『何の音だよこれ⁉』『連
last updateLast Updated : 2026-08-23
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29話

  表参道ヒルズにて一夜を明かした彼等は、池袋の物とは比較にならない美しさのクリスマスツリーの前で、カップ焼きそばをズゾズゾと食す。「ブティックばっか」「まぁ、そーゆーの集めた場所だからな」 口を尖らせるノエルに、しょうがないと言い聞かせる。 レストランはレストランで、良い食材を使っているいいレストランが多い為、冷凍を求める自分達からすると渋いというもの。「勿体ねぇよな~。原宿のスイーツ巡りは俺の楽しみだったのに」 甘味好きの自分からしても、この場所が無くなったのには悲しいものがある。 ついこの前までJKやJDで溢れかえっていたこの聖地も、今では閑散とした魔境だ。 そんな昔の思い出に浸っていると、前方から怨嗟の混じった視線を感じた。「……うらやま」 頬を膨らますノエルに吹き出す。「そうむくれるなって。日本も案外無事みたいだし、ここ出たら食い放題だぜ?」「……ん。金も入った」「金も入ったしな!」「グラララララ!」「ゼハハハハハ!」 彼等の高笑いの理由は一つ。先日遂に、国から口座の用意ができたという知らせが届き、加えて藜によって即日金が振り込まれたからだ。 故に今の彼等は、貯金残高二十億を超える金持ちなのだ。 ――「せっかく来たんだし、何かやってこうぜ」「んー」 ヒルズを歩きながら頭を捻るノエルだが、そんな彼女の目に一つの店舗が映った。「……ファッションショー」 大人びた服を着る、子供のマネキン。「……いいね」 笑い合った彼等は、悠々とお洒落な扉を潜った。 ――試着室の前、東条がソファにどっかりと腰掛ける。「準備はいいか?」「ん」 山手線内はクリスマスで時間が止まっている。 今回はそれに合わせて、テーマをクリスマスコーデとした。 準備完了の合図を受け、カメラを構える。 さて、お手並み拝見といこうではないか。「題‼」「童貞殺し」 瞬間、バッ、とカーテンが開き、着替えたノエルが短いランウェイを歩いてくる。 シンプルな黒のニットに、ブラウンのチェック柄のフレアスカート。 シックでおとなしめな雰囲気に、甘い栗色のレザーバッグが良い味を出している。 優しい温かみを感じさせる、大人可愛らしいコーデだ。 確かに、童貞ならば一撃で殺されていただろう。 ノエルは自分の前でポージングを取った後、再び試着室に戻り
last updateLast Updated : 2026-08-24
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30話

  §「胡桃、あとどれくらいいける?」「これで半分くらいですから、あとコンビニ三軒ほどです」 そう言う彼女が集められた物資に触れると、その場にあった全てが徐々に消えていった。 今いる店の商品を包み終えた彼女は、まだ容量には余裕があると立ち上がる。 姫野 胡桃 birther 『抱擁』 彼女は異空間に、現実からは不可侵の空きを作ることが出来る。 容量は凡そコンビニの商品六軒分。 生物、非生物問わず包み込むことが可能だが、生物の場合少しの反抗で飛び出してしまう。 人助けという難題を慣行できているのも、彼女の力があるからこそなのだ。「分かった。早めに次に進もう」 新は警戒に当たっていた嶺二を呼び戻し、再び外に出た。 ――静まり返る欅並木に、三人とも聊かの違和感を覚える。「……ここらへんよ、モンスター少なくねぇか?木も多いしよ」 嶺二がバットをコツコツと肩に当て、周りを見渡す。 ここに来るまではそれなりに襲ってきたモンスターも、表参道を少し進むとピタリと姿を現さなくなった。 拠点から離れるにつれ人の街の面影が薄れていくのも、彼等にとっては薄気味悪かった。「自然にできたセーフティスポットかもしれない」(……本当にそうか?) 希望を見出す新とは反対に嶺二は訝しむが、考えても分からない、と次の目的地に歩を進める。 その時、「……ん?」 常人より基礎能力の高い新の聴覚が、微かな音を拾った。「どうしました?」「なんだ?」 集中する新を見て、二人の身体に力が入る。「……笑い声、か?」 確かに聞こえる。遠くに響く、何かの破壊音と、狂笑。「人がいるかもしれない」「おいおい、少しは警戒しろ」「もしいるのなら助けなくてはっ」 そちらに向かって躊躇いなく歩き出す新に、慌てて二人もついていく。 速足で駆け、木々を縫い、車を飛び越え、立ち止まった先にあったのは、「表参道ヒルズ」「……聞こえるか?」「流石にな」 中から時折聞こえてくる、物を壊すような音と男の笑い声。 新は冷静に考えていた。 一つ。人の声を真似るモンスターがいるとして、そのモンスターと争っている以上、片方は人の可能性が高い。 二つ。モンスターを殺しながら笑う人間がいるとしても、同様に手助けすべき人。 そして三つ。ここから東に直進した位置には、藜組が
last updateLast Updated : 2026-08-24
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