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All Chapters of Real: Chapter 161 - Chapter 170

198 Chapters

32話

 「あ、人。わぷっ」「はい俺の勝ちっ。あ?ほんとだ」 空中でノエルを袋に詰めた東条は、吹き抜けを飛び越え、そのまま三階の手すりにへばりつく。 眼下には、目を丸くして此方を見上げる三人の男女がいた。(んー。……あれ?身体強化してないのかあいつら) 身体強化を使う者に対しては、全身を覆う様な凝縮した魔力の気配を感じ取れる。 今まで会って会話してきた人は皆鎧を着ていたが、彼等のそれは例えるならTシャツだ。 魔力を帯びていないゴブリの一撃ですら危うい。(魔力量は多いのに、勿体ない) バットと女もそれなりに多いが、何より先頭のクソったれイケメンが突出している。 キュクロプスや紅には届かないまでも、快人よりあるのではなかろうか? しかしまあ、そもそも身体強化自体常識というわけではない。 ヤクザ三人組の様に勘で出来る者もいれば、自分や快人の様にロマンから到達する者もいる。 彼等にはその両方が無かったというだけだ。 そんなことを考えながら三人を見定めていると、「一度下りてきてくれないかっ?話がしたい!」 クソったれイケメンが声を張り上げた。 別に断る理由はないし、とジャンプして彼等の前に降り立つ。 目を丸くして驚愕する三人に、ちょっぴり優越感が湧き上がってしまう。「初めまして。まさと言います」「これは丁寧に、俺は新と言います。 単刀直入に言いますが、その袋に入った少女を開放していただきたい」「……?」 よく見れば、クソったれイケメンの新の顔は怒りと警戒に尖っている。 後ろの二人も似たようなもの。 東条は何故かと考えるも、すぐに思い至った。 あの一部始終を見ていれば、女児誘拐犯と間違われても仕方ない。「ああ大丈夫ですよ。こいつ俺の相棒なんで」「……信じられるわけがないだろう」「えぇ……」 説得を試みるも、返ってきたのは不審者への拒絶。 もしや面倒臭いタイプの人間か?と眉間に皺が寄るも、「そんな格好で女子を追いかける奴が、まともなはずがないっ!」「……忘れてた」 次の言葉で全てを理解した。 前言撤回、この男は正常だ。まともな価値観を持っている。「返す言葉も無いわ。おいノエル、お前もそろそろ出てこい。このままじゃ逮捕されちまう」 自分での説明を諦めた東条は、袋の中で今の状況を楽しんでいる彼女に助けを求める。 
last updateLast Updated : 2026-08-25
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33話

  腹が減ったという東条とノエル意見によって、適当な店に入ることになった。 二人共例の服は脱ぎ捨て、元の白黒に戻っている。「こんな風にちゃんと店で食べるの、久しぶりです。あ、私は光明院 新と申します」「姫野 胡桃です」「春谷 嶺二っす」 ソワソワした三人が自己紹介を始める。「ノエル」「歩き回っている身としては、色んな店で勝手に飯食えるの楽しいんですよ。 私はまさです。呼び方はカオナシでもまさでも、どっちでもいいですよ」「動画ではモザイクかけてますけど、いいんですか?」「一応ってだけなんで、構いませんよ」 席の土埃を払い、厨房を確認する。「とりあえずあるもの温めてきますわ」「俺も手伝います」「私も」「じゃあ俺も」「早めによろ」 さも当然かのようにパソコンを弄るノエルを置いて、彼等は各々食べれえそうな物を物色し始めた。 用意した食事を囲み、今までのお互いの経緯や雑談を交わしていく。「まさか新さんが次の目的地の代表だったとは、驚きました」「ではやはり、明海大学に向かっている途中だったのですね!」「え、えぇ」 嬉しそうに笑顔を作る彼に、東条は引き気味に頷く。「藜組の方々に聞いて、向かっている最中でした」「……藜組の」 その名前を聞いた途端、見るからに笑顔が曇った。表情豊かなことだ。(……なるほどね) 東条は察する。 わざと藜組の名前を出してみたが、聞いただけでこれだ。相当な善人さんのようだ。 別にその点は何とも思わない。ヤクザを嫌う人間は多いだろうし、自分だって利益と安全が無い限り出来れば付き合いたくはない。 ただ、善人は得てして自らの優しさを押し付ける。それが万人の為になると信じて。 目の前の男が善なのか偽善なのか、自分はそれが知りたい。(……まぁ、会って数十分で分かれば苦労ないわな) 自分に藜のような洞察力はない。適当に見極めていこうと決めた。「彼等とは価値観が合いませんでしたが、そうですか……。私達のことをまささん方に教えてくれたのには、感謝しなければいけませんね」 納得した新は、東条の目を見つめる。「俺は、他人の為にこの危険地帯を歩くあなた方を尊敬しています。動画も見させてもらいました。 皆が触れ易い媒体で現状の説明をし、被害にあっていない地域との協力を惜しまない。短期間でここまでの行動を
last updateLast Updated : 2026-08-25
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34話

  三人は早速東条とノエルを連れ明海大学に向かう、 のではなく、予定とは大きく外れ現在竹下通りを歩いていた。 それもこれも、全ては先頭をウキウキと歩く少女のせいだ。「まさ!これ何?」「綿あめ機だな。ふわふわの菓子作るやつ」「作りたい!」 言うが早いか、彼女は早速機械の後ろを漁り出した。「動いた。どやって作るの?」「ザラメぶち込んで、中で棒ぐるぐるすんじゃなかったかな」「ここ?」「そこそこ」 精一杯背伸びして中心にザラメを注ぐ彼女を見て、東条は近場から適当に瓦礫を引き摺ってくる。その途中、「先行ってて大丈夫だぜ?場所分かるし」 依然周りを警戒してソワソワしている三人に、笑って話しかける。「い、いや、ちょっと驚いたけど、楽しんでるよ」「本当か?」「ああ。……何というか、彼女は見ているだけで癒される。視聴者に好かれる理由が分かるよ」「只の我儘ロリだけどな。どうせだしあんたらも楽しみな。絵は明るい方が良い」「っ⁉なんか白いの出てきた!まさ!」「はいはい。棒は?」「ある!」 急かされた東条はノエルを持ち上げ、瓦礫を置き、その上にノエルを置く。 そんな父と子の様な微笑ましい光景を見て、彼等も肩の力を抜いた。「まさもああ言ってるし、気楽に行こう」「はいっ、私も綿あめ作りたいです!」「……てかどうやって瓦礫運んでたんだよ」 三人は思う。まさとノエルにに勝てない敵が来たなら、警戒など無意味に自分達は殺されるだろう。 今さっき会ったばかりだが、視聴者の一人として、彼等の存在はとても心強く感じた。 ――「うー。難しい」 ノエルは次々に出来上がる歪な物体を、見ている東条と嶺二と新に渡していく。 体のいい処理係だ。「ノエルさんっ、次私の番です。私もやりたいです」「胡桃うまいからやだ」「そんなぁ」 張り合う二人を、男衆は綿あめをもしゃりながら見学する。「眼福眼福」「……人の女をあまり凝視しないでくれるかな?」「あ?お前等付き合ってんのかよ⁉滅びろっ」「酷い言い様だな」「……カップルと行動させられる、俺の身にもなれってんだ」「同情するぜ。もしゃもしゃ」「もしゃもしゃ」「もしゃもしゃ」 ――自分の顔の五倍はある、熱の時に見る夢の様な色の綿あめを頬張りながら、ノエルは上機嫌に歩みを進める。「ノエルの方がデカい
last updateLast Updated : 2026-08-26
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35話

  § 明海大学周辺には、素行の悪い輩の根城が多くある。 数ある内の一つ、さらにその一角で、現在ちょっとした騒ぎが起きていた。「おい!どうしたお前等⁉」 バタバタと倒れていく仲間に、スキンヘッドの男が焦り叫ぶ。 青白い線と、バチチッ、という音と共に、一人、また一人と白目を剥き泡を拭いて地に伏していく。(何だ、何だ⁉モンスターか⁉姿が見えねぇ‼) 遂に残り一人となってしまったスキンヘッドは、手当たり次第に火球を放り投げる。 今まで人を食いものにしてきたくせに、いざ自分がその立場になると慌てふためき正常な判断がとれなくなる。彼等半端者の特徴だ。 そんな滑稽な姿を、パーカーを被った彼は斜め後ろから呆れながら見ていた。 彼はスキンヘッドのすぐ後ろにいるにも関わらず、スキンヘッドはその存在に気付かない。 それもそのはず。彼がcellを発動した時、彼の姿は彼以外の誰にも見ることはできなくなるのだから。 彼は火球を余裕で躱し、ガラ空きの首に片手を翳す。「出て来やがりゃびゃびゃびゃびゃ――」 痙攣するスキンヘッドは、涙と汗を撒き散らしぶっ倒れた。 静かになった室内で、彼はボロボロのソファに腰かけ、奪った食料を広げる。「……お、これ美味い」 適当につまみながら寝っ転がる彼は、天井をぼー、と見つめ一休みする。(……そろそろ帰らなきゃまた怪しまれるか。あーあ、しくじったなー) 五分程グダグダと過ごした後、起き上がり、再び切っていたcellを発動した。(あいつ等の事嫌いじゃないけど、そろそろ潮時かな。勝手にいなくなってもいいけど、……どうし「よっ」 これからの行動に頭を悩ませる彼は、パーカーをはためかせ、苔に覆われるマンションの四階から飛び降りた。 §
last updateLast Updated : 2026-08-27
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36話

  何度目かの新の炎が大きめの爬虫類を焼き尽くし、嶺二の風を纏ったバットが小動物を叩き潰した。 現在地はあれから一・五㎞程進んで、大学まで残り約半分という所。 東条は綿あめの形が崩れない様に注意を払いながら、道中目にした光景を纏めていた。 まず一番驚いたのは、南に行くにつれ生態系が急激に変化していたことだ。 自分達がいた北側に比べ、樹型トレントの数も少なく、小さい。 反対に苔型や草型など、足元にわさわさしたものが多い。 これはノエルによると、モンスターは強い個体ほど豊潤な魔力を持っていて、死体にもそれは言える。 故にスカベンジャーの中でも大きい個体であるトレントは、より強い個体が多い場所に密集する性質があるのでは?とのことだ。 モンスターを殺して食っていた彼女の言葉だ。信用できる。 そうしてそこから導き出せることは……、 前方から何かが蒸発した音が響く。 東条が顔を向ければ、そこには部分的に溶解した大きな鼠と、手をつき出す新が立っていた。 因みに新は、炎と光の属性を操るダブルだ。希少なダブルという特性だけでなく、『光』という初めて見る属性に心底興奮した。 原理はよく分からないが、周囲の光を収束しているらしいし『光』で合っていると思う。 嶺二は風をバット纏って戦う戦闘スタイル。高速回転させて敵を切り刻んだり、風の塊を飛ばしたりと、案外器用らしい。 似たような事をする豚をどこかで見た気がする。 姫野さんだが、彼女のcellを聞かされた時はその万能性に驚いた。 俗に言うアイテムボックス。 トラックに轢かれる奴らが総じて持っている便利能力だ。 加えて土魔法も使えるといったもんだから、コロニー維持には姫野さんの存在が不可欠なのが窺える。 そんな彼女は生物を傷つけることが出来ないため、今も自分とノエルの横で戦う彼等を見ている。 甘いとも思うが、補助として充分すぎる仕事をしているし、まぁ良いのではなかろうか。可愛いし。 話を戻すが、トレントの規模や大きさから言えること。 それは、皇居を境として、南と北ではモンスターの強さが異次元に違うという事だ。 東条は先ほど丸焼きにされたデカい鼠を見下ろす。 自分にとっては、今やいてもいなくても変わらないような存在が、この場所では『敵』として認知されているのだ。 聞けばこの鼠でさえ、食物連
last updateLast Updated : 2026-08-27
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37話

  ――「おー、あれか」「(もむもむ)」「ノエル、ちゃんと焼けているかい?お腹痛くなったりは」「ん。うまし」 東条は見えてきた大学の塀に感嘆し、ノエルは綿あめの串に突き刺した焼魚に舌鼓を打ち、新は自分の焼いた奇妙な魚の安全性を心配する。「本当かい?……もし安全なら、大幅に食糧事情が改善するな」 顎に手を当て考える新に、嶺二と胡桃が嫌な顔をする。「食えるとして、食いたがる奴がいるとは思わねぇぞ」「掃除機みたいな顔してました……」 あーだこーだとガヤガヤ話し合っていると、遂に目の前に塀が迫ってきた。 胡桃が手を翳すと、うにょん、と入口が開く。 その先には、新の連絡で既に集まっていた大勢が、興奮したように五人の、主に二人の到着を待ち侘びていた。「おぉ、大層なお出迎えだな」「二人が来てくれるって連絡を入れたからね。結構君達のファンは多いんだよ」 何だかむず痒いというか鬱陶しいというか、変な気分になる。 隣のロリっ子は当然だと言わんばかりに胸を張っているが。 三人に促され入口を通り、中に入った……瞬間、 東条の目と一人の青年の目が交差した。 向こうの彼も東条を見て、厳密には東条とノエルを見て目を見開いている。(……へ~、ここで一番強いの新だと思ってたけど、そういう事でもないのね) 不気味な漆黒に見つめられてか、彼は眼を逸らしてしまった。「……まさ、あいつの魔力なんか変。薄い」「分かってる」 そんな二人に気付き、新が同じ方向に顔を向ける。「凄いな。見ただけで分かるのか?」「と言うと?」「彼は朧 正宗 。俺達と同じ、ここを纏めてる一人だよ。もう一人いるんだけど、多分子供達と遊んでるね」 五人で五百人を纏めているとは、何ともハードそうな職場だ。「なるほど。で、これからどこ行くんだ?」「そうだな、それを子供達に届けるついでに、彼女に会いに行こうか。その後は夕食だけど、食べるだろ?」 新が綿あめを指さす。 食事は自分達で用意するからいいっちゃいいのだが、食料事情を動画にすれば再生数が稼げると前に知った。 初日くらいご馳走になっておこう。「そんじゃ頂くよ」「分かった」 東条はちらほらと鳴るシャッター音を鬱陶しく思いながら、先を歩く三人についていった。 ――ドアを開けると、大勢のちびっ子が元気
last updateLast Updated : 2026-08-27
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38話

  暗さを増す橙色の空の下、大体育館の中から外にかけて長蛇の列が伸びる。 食事を受け取った人達は、思い思いの場所で夕食を口にしている。 土壁の上に座り、外を眺める東条の手にも、今しがた賄われたレトルトのカレーと白米がある。「けっこー豪華だな」「ん」 彼女のシュパシュパと動くスプーンの先には、既に無くなりかけている今日の夕食。ノエルは最後の一口を飲み込むと、物欲しそうに東条のカレーを見つめた。「……あげねーよ?」「けち」 いつ作ったのか、即席の釣り竿で釣りをするノエルの横で、彼が足をぶらつかせながら静かにカレーを食んでいると、「どうやって上ったんだ?」 後ろから、新が胡桃と共に歩いてきた。「気合」「流石まさだ」 胡桃が壁に階段を作り、ノエルの横に座る。その横に新も座った。「釣りですか?」「ん」「何か釣れましたか?」「全然。胡桃餌になって」「嫌ですよ⁉」 驚きつつも生餌になることを拒否した胡桃の顔は、乾いた笑みを浮かべ段々と曇っていく。「……やはり足りませんか?」「ん。足りない」 ノエルの素直な意見に、彼女の表情に更に影が差す。 助けられた者達の殆どは、まだ感謝が不安や理不尽さ、無力感に勝っている。 しかしそれが当たり前になった最近、安心と安全の隙間から人の欲が漏れだすことが多くなっていた。 その中で最も顕著に表れているのが、言わずもがな、食欲。 自分がもっと頑張れば……。自分に力が足りないから……。 優しすぎるが故に、彼女は避けられない切先《問題》を自らに向ける。 新も隣で寂し気な笑みを浮かべているから、どうせ同じようなことを考えているのだろう。まったく、揃いもそろってこのカップルは。 東条は溜息を吐いた。「辛気臭い顔上げて、飯食ってる奴等見てみな。お前等って、この為に頑張ってるんじゃねぇの?」 東条にその感情は分からないが、彼は、佐藤は、確かにその為だけに生きていた。 顔を上げ後ろを向く二人の目に、明かりに照らされる笑顔が、談笑が、暗闇を抜けて飛び込んでくる。 冷たい血溜まりの中で、強く輝き温かく燃える場所。そんな自分達の目指した光景が、眼前に広がっていた。 遠くから手を振る少女に、二人は慌てて手を振り返す。「お前等凄ぇぜ?こんなに沢山の命、守り抜いてきたんだからよ。 ……人間誰だって見返り
last updateLast Updated : 2026-08-28
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39話

          §――「準備はいいか?」「ん」『はい!』      『はい!』『はい!』      『はい‼』――「題‼」「童貞殺し」『……わり、俺死んだわ』             『バタ』『バタ』          『……お前等童貞だったのか』――「題!」「パリジェンヌ」『あぁ、ここはパリだったか』              『日本だ』『幻覚が見える』              『病院に行くことをお勧めするよ』――「題‼」「大人のクリスマス」『エッ』      『エッ』『エッッッ』      『メリィィィクリスマァァスッ‼』――「だぁい‼」「クラシカル」『やっぱ白黒似合うなぁ』             『間違いない』『かぁいい』             『かぁいいなぁ』――「んダァイっ‼」「ノエル」『――』      『――天使だ』『……お姫様』      『……妖精だ』――「……あぁ、とても綺麗だ」「ん。……うれし」『……尊いな』            『ああ』『守りたい。この笑顔』『その言葉がこれ程似合う存在に、俺達が今後出会う事はないだろうな』――「着替えたー?」『カオナシさんスーツとか似合いそうだよな』                      『軍服だろ』『迷彩』       『お前らはこの人に何を求めてるんだ……?』『出てくるぞ』         『ドキドキ』『⁉』       『⁉』『ぶはっ⁉』――「あハハハハハッ、ダメっ、ツボっ、ふふふっ」『悪魔だ』                       『化物』『変態』『なんてものを生み出したんだノエルちゃん⁉』『めっちゃ笑ってる』『これは笑う』『お』――「わるぃごはいねがぁってなァ」『そりゃなまはげだ』           『逃げてノエルちゃん‼』――「くっ、トナカイ!殉職いたしましたァッ‼」「なむ!」『トナカイィィ‼』                    『お前はよく頑張ったよ‼』『あんたの上司ががイカレてるだけだ‼』                    『パルクールの動画見てるみたいだな』『迫って来る音が戦場のそれだけどな』             
last updateLast Updated : 2026-08-28
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40話

  翌朝、宛がわれた教室で目を覚ました二人は、寝袋から這い出した後朝食を貰うべく大体育館に向かっていた。「あれに並ぶのか」「めんどくさ。コンビニ行こ?」 長蛇の列を見て並ぶ気を無くしたノエルが、腹を鳴らして駄々をこねる。「ここらのコンビニ漁り尽くされてるって話だったろ」「うーー」 不承不承と最後尾に付いたノエルの気を紛らわせるため、簡単な指遊びをしていると、「あの、すみません」 自分達の後ろに並んだJKの集団が話しかけてきた。 先頭の一人がスマホを両手で握りしめ、残りはその子の後ろでじっとこちらを見ている。「はい?」「私達と写真を撮っていただけませんか‼」 思いっきり頭を下げる彼女達に少々面食らうが、そういうことなら仕方ない。 というか大歓迎だ。 人生で三度あると言われるモテキ。遂に自分の所にも来たか、と東条は心の中でガッツポーズをした。「全然いいっすよ。ノエルは?」「ん」 二人の了承が得られたことに、JK達が手を取ってキャッキャと喜ぶ。「有難うございます!やった!」「よくやったわ!」「殴られなくてよかったね!」「うん!」 何やら誤解混じりの会話が聞こえてくるのだが。初対面のJKを殴るわけがないだろう。「おいおい、俺はそんなサイコパスじゃないぜ?」「す、すみません。でもやっぱり、ちょっと怖くて」 苦笑する彼女に、つい笑いが漏れる。「じゃあそんな勇気ある君を称して、好きなだけ撮るがいいさ!」「有難うございます!じゃあツーショットからっ」「来い来い。苦しゅうないぞ!」「ピース」「ピース」「……女に甘い」 鼻の下を伸ばしているのが目に見える彼の姿に、ノエルは深い溜息を吐いた。 ――個人、全員、と撮り終わっても、列の先までまだ長い。「カオナシっち筋肉凄いよね。身体触らせてー」「存分に触るがいい」 ジャンパーを脱ぐとすかさず抱き着いてきたギャルに、変な笑いが漏れてしまう。「ムキムキー!凄い凄い」「えー?ほんとだ!」「ヤバ!」(何だここ。天国か?)「ノエルちゃんのもち肌の方がヤバいし!」「ホントなにこれ?人間?」「化粧品何使ってるの?」「|まにもつかっえあい《何も使ってない》」「「「えー⁉」」」(……姦しい) 高笑いを浮かべる東条の隣で、ノエルもまた彼女達に大人気であった。 ――
last updateLast Updated : 2026-08-29
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41話

「カオナシさん今どれくらい稼げてるんですか?」「んー?そーだな。両手に女性侍らせて、料亭に行ってラグジュアリーホテルに泊まれるくらいは稼げてるぜ?」「えー⁉めっちゃ稼いでるじゃん!」「まぁ、それこそこいつのおかげなんだがな」「ん」 ドヤ顔をするノエルの髪をわしゃわしゃする。 交渉も製作も、全て彼女がやっているのだ。今ある金は彼女が稼いだと言っても過言ではない。「やっぱりノエルちゃん凄いね!」「当然」「よっ、才色兼備!」「最強ロリ!」「ロリじゃない」 皆がやんややんやと彼女を持ち上げている最中、「お楽しみ中失礼」 東条の背中に嫌みったらしい声がかけられた。 振り向けば、高年の男性と数人の大人が立っている。「随分大きな声だったからね、注意しにきたよ」「?あぁ、それはすみま「……なんだよおっさん。仲間集めて嫌がらせかよ」 さっきまで優しかったギャルっぽい子の、苛立たし気な声に驚いて振り返る。「……動画投稿者か何だか知らないが、他人の迷惑を考えた方がいいな」 しかし当の高年は彼女の声を無視し、東条とノエルの二人を見下ろし続ける。 彼の後ろにいる大人達も、「最近の若いのは」だの「気味が悪い」だの「はしたない」だの、こそこそと言いたい放題言っている。 ムカつきはするが、迷惑になったのなら自分にも落ち度はある。 別に静かに食う必要などないと思うし、注意と称すなら、なぜここより騒がしい男子学生の方に行かないのかなど、はたはた疑問は尽きないが、さっさと謝って済ましてしまおう。 そう考えた東条を、無視されて怒りを露わにしたギャルっ子が遮った。「ちッ、カオナシっち、このおっさん戦ってくれてる人に感謝もしない老害だから、無視していいよ」(あぁ、そーゆう感じの……) ここまで大きなコロニーなんだ、そういうのがいるのは予想していた。 彼女達の反応を見るに、今までも何度かやり合ってきたのだろう。だいぶ面倒なのに絡まれたもんだ。「今は大人同士で話してるんだ、黙っててくれないか?」「はっ、自分の事しか考えられない奴が大人なんて笑わせる。子宮からやり直せ」(言うね~) 立てられた中指に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる高年は、口喧嘩では勝てないと悟ったのか、彼女から目を逸らし再び東条を見下ろした。「時間がもったいない。単刀直入に言う
last updateLast Updated : 2026-08-30
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