Todos los capítulos de 婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました: Capítulo 71 - Capítulo 80

98 Capítulos

試される想い

「知英ちゃん、そろそろ帰ろうか」「そうね」私と桐生が帰り支度を終えた時、彼のスマートフォンが鳴った。「もしもし」「翼。俺だけどさっき、日本に着いてさ」「はぁ!?」私は桐生の大きな声に思わず驚いた。「レオ!帰国するなら事前に連絡しろって毎回言ってるだろ」どうやら電話の相手は、〝レオ〟というらしい。私は桐生の隣で、通話が終わるのを静かに待った。「分かったよ。いつものホテルのバーな。ああ。また後で」桐生は通話を切った。「知英ちゃん、今夜なんだけど……」「私の事なら気にせず行ってきて?」「いや、そうじゃなくて、知英ちゃんも一緒に来て欲しいんだ」「でも、私は知らない人でしょ?お友達と積もる話もあるだろうから」「ううん、知英ちゃんは知ってるはずだよ。世界的ジュエリーデザイナーのレオ・ベルバトフだから」「レオって、あのレオ様だったの!?」私は思わず大きな声を出して驚いた。ジュエリーデザイナーを志す者で、知らない人は居ないであろう。レオの生み出すデザインは、どれも斬新で人の目を惹く。私もレオのデザインに魅了されたひとりだ。「留学先で意気投合してさ。それからの腐れ縁なんだ」「そうだったのね」「レオに知英ちゃんを紹介したいんだ。俺に本気の恋人が出来たら紹介するって前から話しててさ。もちろん、知英ちゃんが嫌でなければだけど」「嫌なわけないわ。嬉しい。ありがとう」すると、桐生は私の顔をじっと見つめた。「翼さん、どうしたの?」「ううん、なんでもない」「そう。ならいいのだけど」私は桐生の表情に一抹の違和感を抱えながらも、レオの待つバーへと急いだ。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「レオ、待たせたな」「おお!翼、来たか!って、その方は?」今、私の目の前に、レオ・ベルバトフが居る。メディアや雑誌でしか拝見したことがない雲の上の存在の彼が、私に話しかけている。これは現実なのだろうか?「初めまして、桜井知英と申します」「桜井……あ!!希望の石!君だったのか」「え?私の作品をご存知なのですか?」「ああ。翼が絶賛しててね。俺に何度も見せるからさ」「レオ。それ以上は」「だって、本当の事だろ?」レオと話す桐生は、いつもと違い肩の力が抜けているように見えた。桐生にとってレオは、気心が知れた相手なのだろう。「ところで、桜井さん
last updateÚltima actualización : 2026-09-02
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ずるい人

「ちょっと……翼さん、待って//」桐生はホテルの部屋に入るなり、私の静止も聞かず、私を壁に追いつめた。桐生の整った顔が私に近づいてくる。私は抗う術を忘れたかのように桐生を見つめた。「ほんとに待って欲しいの?」「ずるい……」「言わないと分からない」「分かってるくせに//」すぐ傍に桐生は居るのに、触れてくれない。それがもどかしくて堪らなかった。「知英ちゃん、顔真っ赤」「翼さんのせいだから///」「俺?まだ何もしてないけど」すると、桐生は私の唇に触れるか触れないかの所まで顔を近づけた。しかし、寸前の所で桐生は私から顔を逸らした。「どうしたの?」「今日の翼さんは意地悪だ」 「嫌い?」「嫌いになれないの知ってるでしょ」私は背伸びをし、桐生の首に両腕を回した。そして、自ら桐生の唇にキスをした。いつから私はこんなにも欲望をさらけ出すようになったのだろう。「こんな私は嫌い?」私は桐生の目を見つめた。「ううん、好き」「んん……//翼さん、苦しっ」私は桐生のキスに応えることに必死だった。桐生はキスが上手い。容赦なく桐生の舌が私の口内に侵入してくる。それ故、気を抜くと腰から砕け落ちそうになる。「煽ったのは、知英ちゃんでしょ?」桐生は私を軽々と抱きかかえ、ベッドまで運んだ。私に覆い被さる桐生の胸元から、鍛え上げられた素肌が見えた。桐生は私の服のボタンを慣れた手つきで外し、自らも服を脱ぎ捨てた。ずっと見ていたいほど、桐生はいい体をしている。私は思わず桐生に手を伸ばした。「触りたいの?」私は無言で頷いた。すると、桐生は私を起き上がらせ、腕を掴んだ。「いいよ。触っても」私を見下ろす桐生の視線が、更に私を興奮させた。私は思わず生唾を飲んだ。そして、そっと撫でるように桐生の上半身に触れた。「知英ちゃん、満足した?」「まだ……」私のこの言葉を合図に、桐生は何度も私の唇にキスをした。唇が腫れるのではないかというくらいお互いの唇を貪った。どんなに触れても足りない。桐生をもっと感じたい。誰が何と言おうと、桐生は私のものだ。そして、私は桐生のもの。だから私は桐生の身体に、私の痕跡を刻みつける。私は桐生の背中に爪を立て、彼の首筋に吸い付いた。数日もすれば痕は消えてしまう。それでも今夜は、証が欲しい気分なのだ。「知英ちゃん……はぁ……」桐生の吐息が
last updateÚltima actualización : 2026-09-03
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逆転への招待状

俺は隣で眠る知英の寝顔を眺めた。知英の平穏を脅かす者は、誰であっても許さない。今日も知英が笑顔で過ごせるように。俺は知英の頭をそっと撫でた。今日は知英にとって、間違いなく人生の転機になるだろう。彼女を陥れた者を彼女自身の手で葬り去るのだ。その為なら俺は、どんな事でもしよう。知英の未来に明るい光を灯せるのならば、この手を汚しても構わない。俺は知英を起こさないように、そっとベッドから起き上がった。そして、床に散らばっている服の中からスーツのジャケットを拾った。その内ポケットには、近藤からの授賞式の招待状が入っていた。遂に、この日が来た。知英のデザインを奪った奴に復讐できる。今は喜びの絶頂にいるであろう安東の顔が絶望で歪む姿を早く見たい。知英を苦しめた罪は重いことを、その身に思い知らせてやる。「招待状?」振り向くと、バスローブ姿の知英が立っていた。「そう。コンペの授賞式が今夜あるから。近藤が送ってきた」「近藤社長が?」「知英ちゃん、奪われたものを取り返しにいかない?」「まさか……そのために?」「安心して。近藤は味方だ。知英ちゃんの大事な大舞台に必要な会場と観客を用意してくれた」俺は知英がジュエリーデザイナーとして認められ、その才能が世界に羽ばたくことを祈っている。その為ならば、これくらいのこと朝飯前だ。「ありがとう。必ず、デザインを取り戻して、翼さんにプレゼントする」「そうと決まれば、主役に相応しいドレスを買いに行こうか」「そうね。着飾って、先輩を驚かせなくちゃ」知英は珍しく、無邪気な笑顔を俺に向けた。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「これと、これと、これも。それから……靴はこれとこれ。あとはバッグも……」「翼さん、さすがに買いすぎよ」「どれも知英ちゃんに似合うから。ドレスは何着あっても困らないし。だからこのドレスも」俺の指示で、店員たちが次々と知英の元に商品を運んだ。「知英ちゃん、他に欲しいものは?」「もう十分過ぎるわ。ありがとう」「分かった。これで支払いを」俺は店員を呼び止め、クレジットカードを渡した。「翼さん、いつも買ってもらってばっかりだわ」「いいんだよ。俺がしたくてしてるんだから」俺は知英に微笑んだ。今日のドレスは知英にとっての戦闘服だ。闘いに勝つために必要なものを知英に買い与えただけだ。あと少し
last updateÚltima actualización : 2026-09-04
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私の尊厳

「ここって……雑誌で見たわ。日本一、予約が取れない美容室だって」「それじゃあ、行こうか」桐生は店の前で、呆然と立ち尽くす私の手を握った。「いらっしゃいませ。桐生様。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」私と桐生は、案内されたVIPルームへと向かった。そこには、一人の黒髪の男性が立っていた。「ご無沙汰しております。桐生様」「忙しい中、わるいな。湊くん」「とんでもございません。今日はどのようなご用件でしょうか?」「俺の恋人のヘアメイクを頼みたい。会場一、華やかになるように」私は桐生と湊の会話を、なるべく冷静を装って聞いていた。湊といえば、美容師界のプリンスだ。その甘いルックスだけではなく、確かな技術力にも定評があり、大物芸能人や人気モデルまでもが彼に担当して欲しいと希望している。その、湊が私のヘアメイクを担当するのか!?私は、動揺せずにはいられなかった。「承知しました。こちらにお座りください」私は湊に呼ばれ、ゆっくりと歩き出した。そもそも、桐生と湊が知り合いだということにも驚きだ。御曹司の交流関係には毎回脱帽する。「よろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくお願いいたします。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」「桜井知英と申します」「桜井様ですね。桐生様ととてもお似合いです。二人とも美男美女だから」お世辞だと分かっていても、嬉しくて顔がにやけてしまう。「ヘアメイクのご希望はありますか?」「おまかせでお願いします」「ドレスのお色はなんですか?」「白です」「承知しました」それを聞いた湊の表情が一変した。先程のにこやかな表情から、プロの表情に変わった。それから湊は、私の肌にメイクを施していった。その動きに一切の迷いは無かった。「桜井様、綺麗な髪ですね。緩やかな巻き髪なんでどうでしょう?」「ぜひ、お願いします」ヘアメイクをしている間、桐生はソファーに座り、ずっと私を見ていた。鏡越しに目が合うと恥ずかしさが募った。「完成しました。どうでしょうか?」「わぁ!すごい!私じゃないみたい」すると、桐生が私の元へ歩いてきた。「うん。今日もすごく綺麗だ。ドレスに着替えておいで」「はい。行ってきます」私は湊に案内され、更衣室にやって来た。そこで、湊からドレスを受け取り、早速、着替えた。湊のヘアメイクは完璧だった。いつもの何倍も
last updateÚltima actualización : 2026-09-05
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始まりの場所

私は桐生の運転で、授賞式の会場のホテルに到着した。偶然にも、このホテルは私と桐生の出会いの場でもあった。まだ数ヶ月前の事なのに、もう随分と前の出来事のような気がする。あの雨の日、偶然、駆け込んだこのホテルで桐生と出会った。私の運命を変えた場所で、今度は、私の尊厳を取り戻す。なんという巡り合わせなのだろう。 「俺たちの始まりの場所だね」 「そうね」 桐生も同じことを考えていたようだ。私は桐生の横顔を覗きみた。相変わらず、整った造形に見惚れてしまった。 「また俺の事見てたでしょ?」 「見てない/」 「ふーん」 「なに?/」 すると、桐生は私の右手の甲にそっとキスをした。 「素直じゃないから」 「みんなが見てる//」 「だからした。今日の知英ちゃんは綺麗すぎるから。変な虫がつかないように」 「私に寄ってくる人なんて居ないわ」 「ほんと、知英ちゃんは分かってない。だから、俺から離れないで。分かった?」 有無を言わせぬ桐生の視線に、私は頷いた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 会場に足を踏み入れると、別世界のような煌びやかな景色が広がっていた。招待客は、私でも知っているような著名人ばかりだ。みな、各々に素敵に着飾っていた。 すると、一人の男性が桐生に声をかけた。 「桐生社長。ご無沙汰しております」 「ご無沙汰しております。斎藤社長」 齋藤と呼ばれた男性は、私の存在に気づくと桐生に問いかけた。 「お隣の美しい女性は、もしや、桐生社長の?」 「そうです。私の恋人です」 「おお!それはめでたい。桐生財閥も安泰ですな」 「彼女次第ですけどね」 「またまた、桐生社長。あなたなら何でも手に入るでしょう」 齋藤の一言に、桐生の表情が変わった。私はこの顔を知っている。齋藤は桐生の逆鱗に触れたのだ。 「彼女を力で手に入れようとは思わない。これ以上、彼女を侮辱するなら、どうなるか分かっているか?」 「は、はい……申し訳ございませんでした」 「分かったならここから出ていけ」 桐生の一言で、齋藤は逃げるように会場から出て行った。私は未だに険しい表情をしている桐生に言った。 「翼さん、ありがとう。でも、私のせいで仕事に支障が出たりしない?」 「大丈夫だよ。彼の
last updateÚltima actualización : 2026-09-06
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偽りの授賞式

コンペの授賞式が始まった。最前列には、着飾った安東が笑顔を浮かべながら座っていた。私は湧き上がる怒りを歯を食いしばって堪えた。あと少しの辛抱だ。私は自分に言い聞かせた。 受賞作品はどれも魅力的で素晴らしいデザインばかりだった。壇上に上がるデザイナー達は、誰もが誇らしげな表情をしていた。 そして、遂に迎えた最優秀賞発表の時。ジュエリーデザイナーならば、誰もが欲しい憧れの賞。だが、今年はその選出さえも、安東を陥れる為の罠に過ぎない。 「今年の栄えある最優秀賞は……安東岬さんです。おめでとうございます。こちらへどうぞ」 司会者が安東の名前を呼ぶと、彼女はその場に立ち上がった。そして、わざとらしく涙を流し、同僚に祝福されながら、壇上へと上がった。次に、花束とトロフィーを抱えた近藤社長が壇上に上がった。 「安東さん、おめでとう」 「ありがとうございます。近藤社長」 「早速、最優秀賞に輝いた安東さんのデザインをご覧ください」 司会者の言葉を合図に、安東のデザインが大型スクリーンに映し出された。それは間違えなく私の考えたデザインだった。分かってはいたが、この屈辱は耐えがたかった。 「安東さんに質問です。このデザインのコンセプトはなんですか?」 「それは……」 安東が勝手に私のデザインについて語るのか?このデザインは愛する桐生を想って考えたものだ。その想いを盗作するような奴に、汚されてたまるか。 「翼さん、私行くわ」 「うん、思う存分暴れてきて。後のことは俺に任せて」 私は桐生に背中を押され、観客席の通路を堂々と歩いた。そして、壇上の下からスクリーンを指さした。 「これは私のデザインです。安東さんは私のデザインを盗作しました」 私に気づいた安東の表情が強ばった。しかし、それも一瞬のことで、開き直った安東は私に言い放った。 「それなら証拠をみせなさい!どうせないんでしょ?」 余程、自信があるのだろう。安東は勝ち誇った表情で私を見下ろした。早く安東を舞台の上から引きづり落としてやりたい。私も負けじと安東を睨んだ。 「証拠ならあります」 私の合図を待っていた近藤の部下が、大型スクリーンに安東の悪事が記録されている防犯カメラ映像を流した。映像が流出することは無いとタカをくくっていた安東の表情がみるみる青ざめて
last updateÚltima actualización : 2026-09-06
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希望

「遅れてしまい申し訳ない」 聞き覚えのある声が近づいてきた。私は恐る恐る顔を上げた。 「お待ちしておりました。レオ・ベルバトフ様」 安東はレオに挨拶した。レオのような権威のある世界的デザイナーが、一企業の授賞式に来るとは考えにくい。レオは何の為に、この会場に足を運んだのだろうか。私の頭に疑問が浮かんだ。 「レオ・ベルバトフ様が私のデザインを気に入って、買い取ってくださったの。だから、このデザインはレオ様のもの。あなたは一生手に入れることができないのよ」 安東は高らかに笑った。勝利を確信したのだろう。 「そう。僕が買い取った。だから、僕の自由にしていいよね?」 「もちろんです」 安東が即答した。 「だって、桜井さん」 「え……?」 「僕、桜井さんの原画を見たんだ。それで、このデザインを気に入ってね。そしたら、ちょうど全く同じデザインを僕に売ってきたデザイナーがいてさ」 すると、レオは私のデザインの原画を描きためたスケッチブックをスクリーンに映した。会場の招待客はみな、その原画に注目した。 「やっぱり盗作じゃない」 「犯罪よ」 「賞をとるために同僚を陥れたってこと?最低だな」 会場中から、安東に向けて怒号が飛び交った。レオは床に座り込んで、動けなくなっている私を支え、起き上がらせた。 「桜井さん、このデザインを君に返すよ」 「ほんとに……?」 「ああ。これは君のものだ」 「ありがとうございます」 私の目から次から次へと涙が流れた。大舞台で泣き顔を見せたくないのに、私の意志とは関係なく、涙が溢れて止まらなかった。 「ほら、君のナイトが来たよ」 振り返ると、優しい微笑みを浮かべた桐生が居た。私は桐生の胸に顔を埋めて泣いた。 「知英ちゃん、よく頑張った。あとは俺に任せて」 それからすぐ、会場が騒然となった。 「警察です。安東岬。署までご同行願います」 「どうして私が……」 「自分が一番分かっているだろう。この場でお前の罪を暴露してもいいんだぞ?」 桐生は安東に言い放った。その背中は怒りで震えているように見えた。私は不安になり、桐生の腕を掴んだ。 「知英ちゃん、大丈夫。あとは、警察に任せよう。心配しなくても、安東は二度とデザイン業界には戻れないから」 安
last updateÚltima actualización : 2026-09-07
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祝杯

授賞式を終えた私と桐生は、自宅で祝杯をあげていた。 「知英ちゃん、お疲れ様。乾杯」 「翼さんもお疲れ様。乾杯」 私はグラスに注がれた赤ワインを一口飲んだ。 「それにしても、今日の知英ちゃんは格好良かったよ」 「ありがとう。翼さんのお陰。近藤社長とレオ様にも感謝してる」 私は取り戻したデザイン画をテーブルに広げた。すると、無意識に涙が零れた。私の頬に伝った涙を桐生は優しく指で拭った。 「本当に取り戻せたんだと思ったら……止まらなくて……」 「泣いていいんだよ。知英ちゃんが頑張った証なんだから」 桐生の優しい言葉が胸に沁みた。私はしばらくその場で泣き続けた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「知英ちゃん、平気?」 「うん、もう大丈夫」 「良かった」 私が落ち着きを取り戻すと、桐生が言った。 「知英ちゃんのデザインなんだけど、桐生コーポレーションで商品化してみない?」 「え!?」 「もちろん無理にとは言わない。だけど、知英ちゃんの才能を多くの人に知ってもらう機会になると思うんだ」 「嫌な訳ない。私のデザインが国内外に広がるってことよね?」 「そうだよ。世界規模で商品展開するからね」 今、私の身に起きていることは現実なのだろうか?長年、夢見てきた事が叶おうとしている。私は嬉しさのあまり、桐生に抱きついた。 「翼さん、ありがとう。ぜひ、やらせてください。私に出来ることは何でもする」 「よし、決まり。早速、今月中に試作品を作るように手配するよ」 「ただ……」 「何か気掛かりな事でもある?」 「このデザインは翼さんの為に描いたの。だから、一つ目は翼さんにプレゼントしたい。わがまま言ってごめんなさい」 「謝らないで?俺も嬉しいから。それなら、一つ目は俺がもらうよ」 「うん!ぜひ!」 「って、仕事の話はこれくらいにしよう」 「そうね」 ワインを飲み終えた私は、グラスを洗う為に席を立った。すると、桐生も私についてきた。そして、私を後ろから抱き締めた。 「翼さん、洗えないわ」 「俺が洗うからいいよ。それよりこっち向いて?」 私は桐生に言われるがままに振り向いた。そこには優しい笑顔を浮かべた桐生が居た。私は、桐生の頬を優しく撫でた。桐生に見つめられると、全身の力が抜けていく。 「あのさ、来週、旅行に行かない
last updateÚltima actualización : 2026-09-08
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二人きりの温泉旅行

「知英ちゃん、準備できた?」 「うん、今行く」 私はボストンバッグを持って寝室から出てきた。数年ぶりの旅行だ。あれもこれもとバッグに詰めていたら、大荷物になってしまった。 「知英ちゃん、重いでしょ。持つよ」 「翼さんだって荷物あるのに」 「俺は軽いから大丈夫」 桐生は私からボストンバッグを受け取ると、自分の荷物と共に駐車場まで運んだ。思い返せば、桐生は、出会った時からスマートに気遣いができる人だった。そして、今日も桐生は助手席のドアを開けてくれた。 「ここから一時間半くらいで宿に着くから。知英ちゃんはゆっくりしてて」 「ありがとう」 「楽しみだね」 「とっても」 「じゃあ、出発するね」 桐生はゆっくりとアクセルを踏んだ。そして、発車してすぐ、桐生が私に尋ねた。 「あ、そうだ。何か音楽流す?」 「うん、聴きたい」 「知英ちゃんは誰の曲が好き?」 「私は……」 桐生に聞かれ、私はスマートフォンに保存してある曲を探した。そのアーティストは、〝exist〟というバンドだ。学生時代からのファンでライブに行ったこともある。だが、私の中での桐生のイメージは、クラシックを聴いている姿だ。バンドの曲を聴いている桐生が想像出来なかった。私は信号が赤になったのを見計らって、桐生にスマートフォンの画面を見せた。 「この曲なんだけれど……」 「ああ!〝exist〟か!このバンドの曲格好いいよね。これもいいけど、こっちの曲も歌詞が切なくて好きなんだよ」 「え!?翼さんも〝exist〟を知ってるの?」 私は桐生が〝exist〟を知っていたことに驚きを隠せなかった。 「うん。新曲もよく聴くよ」 「私、てっきり翼さんはクラシックばかり聴いてると思ってた」 「え?俺ってそういうイメージ?」 「ええ。とても気品があるから」 「それなら俺のイメージ壊しちゃったかな?」 「ううん、むしろ親近感が湧いた」 「良かった……俺たち気が合うね」 「そうね、とっても」 私は桐生が好きと言った曲を選んで再生ボタンを押した。イントロから格好いいギターの音色が響いた。 「そういえば、俺、大学の学園祭でバンドを組んだことがあるよ」 「そうなの!?」 「うん。俺がボーカルで、近藤がギター、あと二人は同じ学部の学生と組んだ」 「見たかったな。翼さん、格好良かっ
last updateÚltima actualización : 2026-09-09
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休息

旅館に到着すると、従業員の方々が私たちを盛大に出迎えた。その光景をドラマでしか見たことがなかった私は、思わずその場で足を止めた。「知英ちゃん、行こう」そんな私の様子を察した桐生が、私の手を握ってくれた。そのお陰で、落ち着きを取り戻した私は桐生と共に堂々と歩いた。「いらっしゃいませ、桐生様。奥様」「ご無沙汰しています。澤部さん」桐生は何事も無かったかのように話を進めているが、今、私は〝奥様〟と呼ばれた気がするのだが……それは聞き間違いだったのだろうか?「ようこそお越しくださいました。お部屋へご案内いたします。奥様もお荷物をお預かりします」「ありがとうございます」やはり、聞き間違えではなかった。澤部という男性は、私の事を桐生の奥さんだと勘違いしている。これは、訂正するべきなのだろうか?私は桐生の顔を見た。「ん?知英ちゃん、どうしたの?」「あの……澤部さんが、私のこと奥様って……」「うん、言ってたね」「いいの?ほら、違うって言わなくても。翼さんに迷惑かけない?」「いいんじゃない?この旅行中は、知英ちゃんは俺の奥さんってことで」桐生は私に微笑んだ。「それにさ、俺、結婚を考えてない女性と本気で付き合ったりしないから」桐生の言葉に、私は頬が熱くなるのを感じた。一度は、結婚を考えた相手が居た。だけど、その相手に裏切られ、結婚はもう懲り懲りだと思っていた。それなのに、桐生の言葉が私はとても嬉しかった。「もう//真面目な顔して言うから///」「可愛いね、奥さん」桐生は私の顔を覗き込んで微笑んだ。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「こちらでございます」澤部が、私と桐生が宿泊する部屋のドアにカードキーをかざした。「わぁ……」私は部屋に入るなり、目の前に広がる絶景に息をのんだ。「知英ちゃん、気に入った?」「とっても!」私は桐生に笑顔を向けた。こんなにも贅沢な部屋に宿泊出来るなんて、桐生に感謝してもしきれない。 「桐生様、私はこれで失礼します。何かございましたら、遠慮なくフロントにお申し付けください。それから、夕食は18時頃、お部屋にお持ちいたします。では、ごゆっくりお過ごしください」 澤部は会釈をすると、静かに部屋を後にした。桐生と二人きりになった私は、机に置いてある急須でお茶を入れた。「翼
last updateÚltima actualización : 2026-09-09
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