「知英ちゃん、そろそろ帰ろうか」「そうね」私と桐生が帰り支度を終えた時、彼のスマートフォンが鳴った。「もしもし」「翼。俺だけどさっき、日本に着いてさ」「はぁ!?」私は桐生の大きな声に思わず驚いた。「レオ!帰国するなら事前に連絡しろって毎回言ってるだろ」どうやら電話の相手は、〝レオ〟というらしい。私は桐生の隣で、通話が終わるのを静かに待った。「分かったよ。いつものホテルのバーな。ああ。また後で」桐生は通話を切った。「知英ちゃん、今夜なんだけど……」「私の事なら気にせず行ってきて?」「いや、そうじゃなくて、知英ちゃんも一緒に来て欲しいんだ」「でも、私は知らない人でしょ?お友達と積もる話もあるだろうから」「ううん、知英ちゃんは知ってるはずだよ。世界的ジュエリーデザイナーのレオ・ベルバトフだから」「レオって、あのレオ様だったの!?」私は思わず大きな声を出して驚いた。ジュエリーデザイナーを志す者で、知らない人は居ないであろう。レオの生み出すデザインは、どれも斬新で人の目を惹く。私もレオのデザインに魅了されたひとりだ。「留学先で意気投合してさ。それからの腐れ縁なんだ」「そうだったのね」「レオに知英ちゃんを紹介したいんだ。俺に本気の恋人が出来たら紹介するって前から話しててさ。もちろん、知英ちゃんが嫌でなければだけど」「嫌なわけないわ。嬉しい。ありがとう」すると、桐生は私の顔をじっと見つめた。「翼さん、どうしたの?」「ううん、なんでもない」「そう。ならいいのだけど」私は桐生の表情に一抹の違和感を抱えながらも、レオの待つバーへと急いだ。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「レオ、待たせたな」「おお!翼、来たか!って、その方は?」今、私の目の前に、レオ・ベルバトフが居る。メディアや雑誌でしか拝見したことがない雲の上の存在の彼が、私に話しかけている。これは現実なのだろうか?「初めまして、桜井知英と申します」「桜井……あ!!希望の石!君だったのか」「え?私の作品をご存知なのですか?」「ああ。翼が絶賛しててね。俺に何度も見せるからさ」「レオ。それ以上は」「だって、本当の事だろ?」レオと話す桐生は、いつもと違い肩の力が抜けているように見えた。桐生にとってレオは、気心が知れた相手なのだろう。「ところで、桜井さん
Última actualización : 2026-09-02 Leer más