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私の尊厳

Author: るな
last update publish date: 2026-09-05 14:31:25

「ここって……雑誌で見たわ。日本一、予約が取れない美容室だって」

「それじゃあ、行こうか」

桐生は店の前で、呆然と立ち尽くす私の手を握った。

「いらっしゃいませ。桐生様。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

私と桐生は、案内されたVIPルームへと向かった。そこには、一人の黒髪の男性が立っていた。

「ご無沙汰しております。桐生様」

「忙しい中、わるいな。湊くん」

「とんでもございません。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「俺の恋人のヘアメイクを頼みたい。会場一、華やかになるように」

私は桐生と湊の会話を、なるべく冷静を装って聞いていた。湊といえば、美容師界のプリンスだ。その甘いルックスだけではなく、確かな技術力にも定評があり、大物芸能人や人気モデルまでもが彼に担当して欲しいと希望している。その、湊が私のヘアメイクを担当するのか!?私は、動揺せずにはいられなかった。

「承知しました。こちらにお座りください」

私は湊に呼ばれ、ゆっくりと歩き出した。そもそも、桐生と湊が知り合いだということにも驚きだ。御曹司の交流関係には毎回脱帽する。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお
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  • 婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました   始まりの場所

    私は桐生の運転で、授賞式の会場のホテルに到着した。偶然にも、このホテルは私と桐生の出会いの場でもあった。まだ数ヶ月前の事なのに、もう随分と前の出来事のような気がする。あの雨の日、偶然、駆け込んだこのホテルで桐生と出会った。私の運命を変えた場所で、今度は、私の尊厳を取り戻す。なんという巡り合わせなのだろう。 「俺たちの始まりの場所だね」 「そうね」 桐生も同じことを考えていたようだ。私は桐生の横顔を覗きみた。相変わらず、整った造形に見惚れてしまった。 「また俺の事見てたでしょ?」 「見てない/」 「ふーん」 「なに?/」 すると、桐生は私の右手の甲にそっとキスをした。 「素直じゃないから」 「みんなが見てる//」 「だからした。今日の知英ちゃんは綺麗すぎるから。変な虫がつかないように」 「私に寄ってくる人なんて居ないわ」 「ほんと、知英ちゃんは分かってない。だから、俺から離れないで。分かった?」 有無を言わせぬ桐生の視線に、私は頷いた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 会場に足を踏み入れると、別世界のような煌びやかな景色が広がっていた。招待客は、私でも知っているような著名人ばかりだ。みな、各々に素敵に着飾っていた。 すると、一人の男性が桐生に声をかけた。 「桐生社長。ご無沙汰しております」 「ご無沙汰しております。斎藤社長」 齋藤と呼ばれた男性は、私の存在に気づくと桐生に問いかけた。 「お隣の美しい女性は、もしや、桐生社長の?」 「そうです。私の恋人です」 「おお!それはめでたい。桐生財閥も安泰ですな」 「彼女次第ですけどね」 「またまた、桐生社長。あなたなら何でも手に入るでしょう」 齋藤の一言に、桐生の表情が変わった。私はこの顔を知っている。齋藤は桐生の逆鱗に触れたのだ。 「彼女を力で手に入れようとは思わない。これ以上、彼女を侮辱するなら、どうなるか分かっているか?」 「は、はい……申し訳ございませんでした」 「分かったならここから出ていけ」 桐生の一言で、齋藤は逃げるように会場から出て行った。私は未だに険しい表情をしている桐生に言った。 「翼さん、ありがとう。でも、私のせいで仕事に支障が出たりしない?」 「大丈夫だよ。彼の

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    「ここって……雑誌で見たわ。日本一、予約が取れない美容室だって」「それじゃあ、行こうか」桐生は店の前で、呆然と立ち尽くす私の手を握った。「いらっしゃいませ。桐生様。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」私と桐生は、案内されたVIPルームへと向かった。そこには、一人の黒髪の男性が立っていた。「ご無沙汰しております。桐生様」「忙しい中、わるいな。湊くん」「とんでもございません。今日はどのようなご用件でしょうか?」「俺の恋人のヘアメイクを頼みたい。会場一、華やかになるように」私は桐生と湊の会話を、なるべく冷静を装って聞いていた。湊といえば、美容師界のプリンスだ。その甘いルックスだけではなく、確かな技術力にも定評があり、大物芸能人や人気モデルまでもが彼に担当して欲しいと希望している。その、湊が私のヘアメイクを担当するのか!?私は、動揺せずにはいられなかった。「承知しました。こちらにお座りください」私は湊に呼ばれ、ゆっくりと歩き出した。そもそも、桐生と湊が知り合いだということにも驚きだ。御曹司の交流関係には毎回脱帽する。「よろしくお願いします」「こちらこそ、よろしくお願いいたします。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」「桜井知英と申します」「桜井様ですね。桐生様ととてもお似合いです。二人とも美男美女だから」お世辞だと分かっていても、嬉しくて顔がにやけてしまう。「ヘアメイクのご希望はありますか?」「おまかせでお願いします」「ドレスのお色はなんですか?」「白です」「承知しました」それを聞いた湊の表情が一変した。先程のにこやかな表情から、プロの表情に変わった。それから湊は、私の肌にメイクを施していった。その動きに一切の迷いは無かった。「桜井様、綺麗な髪ですね。緩やかな巻き髪なんでどうでしょう?」「ぜひ、お願いします」ヘアメイクをしている間、桐生はソファーに座り、ずっと私を見ていた。鏡越しに目が合うと恥ずかしさが募った。「完成しました。どうでしょうか?」「わぁ!すごい!私じゃないみたい」すると、桐生が私の元へ歩いてきた。「うん。今日もすごく綺麗だ。ドレスに着替えておいで」「はい。行ってきます」私は湊に案内され、更衣室にやって来た。そこで、湊からドレスを受け取り、早速、着替えた。湊のヘアメイクは完璧だった。いつもの何倍も

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    「ちょっと……翼さん、待って//」桐生はホテルの部屋に入るなり、私の静止も聞かず、私を壁に追いつめた。桐生の整った顔が私に近づいてくる。私は抗う術を忘れたかのように桐生を見つめた。「ほんとに待って欲しいの?」「ずるい……」「言わないと分からない」「分かってるくせに//」すぐ傍に桐生は居るのに、触れてくれない。それがもどかしくて堪らなかった。「知英ちゃん、顔真っ赤」「翼さんのせいだから///」「俺?まだ何もしてないけど」すると、桐生は私の唇に触れるか触れないかの所まで顔を近づけた。しかし、寸前の所で桐生は私から顔を逸らした。「どうしたの?」「今日の翼さんは意地悪だ」 「嫌い?」「嫌いになれないの知ってるでしょ」私は背伸びをし、桐生の首に両腕を回した。そして、自ら桐生の唇にキスをした。いつから私はこんなにも欲望をさらけ出すようになったのだろう。「こんな私は嫌い?」私は桐生の目を見つめた。「ううん、好き」「んん……//翼さん、苦しっ」私は桐生のキスに応えることに必死だった。桐生はキスが上手い。容赦なく桐生の舌が私の口内に侵入してくる。それ故、気を抜くと腰から砕け落ちそうになる。「煽ったのは、知英ちゃんでしょ?」桐生は私を軽々と抱きかかえ、ベッドまで運んだ。私に覆い被さる桐生の胸元から、鍛え上げられた素肌が見えた。桐生は私の服のボタンを慣れた手つきで外し、自らも服を脱ぎ捨てた。ずっと見ていたいほど、桐生はいい体をしている。私は思わず桐生に手を伸ばした。「触りたいの?」私は無言で頷いた。すると、桐生は私を起き上がらせ、腕を掴んだ。「いいよ。触っても」私を見下ろす桐生の視線が、更に私を興奮させた。私は思わず生唾を飲んだ。そして、そっと撫でるように桐生の上半身に触れた。「知英ちゃん、満足した?」「まだ……」私のこの言葉を合図に、桐生は何度も私の唇にキスをした。唇が腫れるのではないかというくらいお互いの唇を貪った。どんなに触れても足りない。桐生をもっと感じたい。誰が何と言おうと、桐生は私のものだ。そして、私は桐生のもの。だから私は桐生の身体に、私の痕跡を刻みつける。私は桐生の背中に爪を立て、彼の首筋に吸い付いた。数日もすれば痕は消えてしまう。それでも今夜は、証が欲しい気分なのだ。「知英ちゃん……はぁ……」桐生の吐息が

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  • 婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました   分かっていても

    コンコンコン 「はい」 「芹沢です」 桐生はノックをした相手が芹沢だと分かると、自ら社長室のドアを開けた。 「お待たせしました。保冷剤です」 「芹沢さん、ありがとうございます」 「お気になさらず。桜井様は桐生社長にとって大切な方ですので」 芹沢は私と桐生の顔を交互に見比べた。私は芹沢に動揺を悟られまいと、できるだけ平然を装った。 「知英ちゃん、それ貸して。俺がやる」 「ありがとう」 私は保冷剤を桐生に手渡した。 「芹沢、今日はもう帰っていいぞ」 「承知しました。社長、お疲れ様でした。桜井様もお大事になさってください」 「芹沢さん、ありがとうございます」 芹沢は私に微笑みかけた。いつも仏頂面の芹沢の笑顔を初めて見た私は、驚きを隠せなかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「どう?冷たい?」 「うん。とっても」 桐生は私をソファーに座らせ、赤くなった腕を丁寧に冷やした。桐生のお陰で、痛みはほぼなく、赤みもひいてきた。 「翼さん、もう平気。痛くないわ」 「ほんとに?」 「ええ。赤くもないし」 すると、桐生は私の腕を冷やしていた保冷剤を机に置き、腕をそっと撫でた。今まで冷やしていたせいで、余計に桐生の体温を感じてしまう。 「よし、腫れてないな」 「だから大丈夫って言ったでしょ?」 「うん、だけど心配だったから」 心配性で、過保護な桐生が愛おしい。普段は、誰も寄せ付けないオーラを放っているにも関わらず、今の桐生の無防備な姿はギャップでしかなかった。 「さっきの話だけれど、お父様が言ってたことは間違ってないわ。その、私が何処の馬の骨かも分からないって……私、言われ慣れてるから。だから、翼さんはこれ以上、お父様と揉めないで」 「知英ちゃん、慣れたらだめだ。あいつは知英ちゃんに対して、最低なことを言った。だから、知英ちゃんは怒っていいんだ。我慢する必要なんてない」 桐生は私と向き合い、私の目を見て訴えた。 「だけど、私は親の顔を知らない。自分がどこで産まれたかも分からない。孤児なのよ。そんな私が翼さんの隣に居たらいけないの。私だってそんなこと言われなくても分かってる」 「知英ちゃん、俺を見て?」 「いや……今は顔を見られたくない」 私は話しながら、涙が次から次へと流れた。ただ、愛する人のそばに居た

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