「試してから広げる、ですか」 クラウス様が感心したように頷く。「私は失敗したらどうしよう、と考えてしまって、なかなか新しいことができません」「私もです」 リリア様も小さく笑う。「お父様にも、『前例がないことは慎重に』とよく言われます」 その言葉に、私も頷いた。「それはとても大切なことだと思います」 みんなの視線が私へ集まる。「だからこそ、全部ではなく、一部だけ試すんです」「一部だけ?」「はい」 私はテーブルに置かれた焼き菓子を一つ手に取った。「例えば、このお菓子がとても美味しかったとします」 みんなが焼き菓子を見る。「家でも作りたいと思っても、最初から十人分作るのは少し勇気がいりますよね」「確かに」 クラウス様が笑う。「失敗したら材料がもったいないですね」「ですから、一人分だけ作ってみるんです」「うまくできたら、次は家族の分を作ればいい」「それなら失敗しても困ることは少ないですよね」「なるほど……」 リリア様が目を輝かせた。「お菓子作りにも使えそうなお話です」「そうですね」 私も嬉しくなって笑う。 身近なことに置き換えると、少し伝わりやすくなる。「面白い考え方ですね」 今度は別の令息が口を開いた。「普通は失敗しない方法を探しますが、シェリル様は失敗しても大丈夫な方法を考えていらっしゃる」 私は少し驚いた。 そんなふうに考えたことはなかった。「そう……なのでしょうか」「そうだ」 静かな声が答える。 ヴィクター殿下だった。「失敗を恐れるな、ではない」 皆がヴィクター殿下を見る。「失敗しても困らない
Zuletzt aktualisiert : 2026-07-19 Mehr lesen