「では、皆様」 エドワード公爵様が立ち上がられた。「せっかくですので、薬草園をご案内いたしましょう」 一同は部屋を出て、屋敷の裏手へ向かう。 そこには、いくつもの薬草畑が整然と並んでいた。「すごい……」 私は思わず見渡した。 薬草ごとに区画が分けられ、一つひとつ丁寧に管理されている。「こちらは解熱薬の材料です」「こちらは傷薬ですね」 研究者の方々が説明してくださる。 皆、真剣な表情で耳を傾けていた。◇◇◇ そのときだった。 メイナードがふいに立ち止まる。「どうしたの?」 私が尋ねると、メイナードは薬草畑の奥をじっと見つめた。「誰かいる」 その一言で、皆の表情が変わる。「誰か?」 近くの研究者が辺りを見回す。 だが、私には誰の姿も見えない。「間違いありません」 メイナードは静かに言った。「人の匂いがします」 その瞬間。 ガサッ。 薬草畑の奥で草が大きく揺れた。「そこか!」 護衛騎士が駆け出す。 すると、小さな影が勢いよく飛び出した。「待ちなさい!」 まだ十歳にも満たない、小さな子どもだった。 ぼろぼろの服。 痩せた体。 胸に何かを抱えたまま、必死に逃げていく。「逃がすな!」 護衛騎士が追い掛ける。 けれど、その子は細い通路を器用にすり抜けていった。◇◇◇「メイナード!」 私が呼ぶより早く、メイナードは地面を蹴っていた。 風のような速さで走り抜ける。 あっという間に子どもの前へ回り込んだ。「きゃっ!」 驚いた子どもは足を止め、その
Zuletzt aktualisiert : 2026-08-03 Mehr lesen