アークライト公爵家での昼食を終えたあと。「シェリル」 サイラスが静かに声を掛けた。「今度はこっち」「まだあるの?」「ある」 私は思わず笑ってしまう。「今日は一日研究なのね」「うん」 迷いなく頷くところが、いかにもサイラスらしかった。◇◇◇ 案内された先は、大きな図書室だった。「わあ……」 思わず声が漏れる。 天井まで届く本棚。 壁一面に並ぶ本。 前に来たときも驚いたけれど、十歳になった今見ると、その多さがよく分かる。「全部読むの?」「読んだ」「全部!?」「うん」 私は思わず本棚を見上げた。「すごい……」「まだ増える」 さらりと言われてしまう。 本当に本が好きなんだなあ。◇◇◇「シェリルは?」「え?」「どんな本が好き?」 そう聞かれて少し考える。「色々読むけれど……」 私は一冊の本を手に取った。『王国薬草図鑑』「こういう本かな」「薬草?」「知らないことがたくさん書いてあるでしょう?」 前世では、本屋さんへ行くと図鑑や雑学の本をつい立ち読みしてしまった。 今世でも、それはあまり変わらない。「面白い」「うん」「知らないことを知るのって、楽しいもの」 サイラスは少しだけ目を細めた。「同じ」 その一言が、何だか嬉しかった。◇◇◇「でもね」 私は本を棚へ戻しながら言った。「本に書いてあることが、全部正しいとは限らないと思うの」
Zuletzt aktualisiert : 2026-07-16 Mehr lesen