孤児院の子どもたちは、ひとまず食堂へ移されることになった。 医師が来るまでは、一度にたくさん食べさせない方がいい。 そう判断したエドワード公爵様の指示で、まずは温かいスープと柔らかなパンが少しずつ配られていく。 子どもたちは最初、戸惑っていた。「……たべていいの?」「もちろんよ」 私が答えると、目の前の男の子がおそるおそるパンへ手を伸ばした。 一口食べる。 それから、もう一口。 隣の子も。 その隣の子も。 少しずつ食べ始める。 その様子を見ているだけで、胸が苦しくなった。 どうして同じ孤児院の中で、きれいな服を着ている子と、こんなに痩せている子がいるのだろう。◇◇◇「持ってまいりました」 孤児院の職員が、大きな帳簿を何冊も運んできた。 エドワード公爵様が一冊を開く。 ヴィクター殿下とサイラスも、その横から覗き込んだ。「食料費……」 サイラスが数字を追っていく。「多い」「そうなの?」「うん」 サイラスは食堂を見回した。「三十六人なら、十分」 帳簿の数字が正しいなら、少なくとも子どもたちを飢えさせるほど食料が不足しているようには見えないらしい。「こちらにも寄付の記録がありますね」 エドワード公爵様が別のページを開かれる。 町の商人。 教会。 貴族。 たくさんの名前と金額が並んでいた。 思っていた以上に、この孤児院には多くのお金が入っている。「それなのに……」 私は食事をしている子どもたちを見る。 どうして? その疑問は、きっとここにいる全員が抱いていた。「ベアトリス」
Last Updated : 2026-08-15 Read more