「來くん、ほんと顔がいいよね」 ある日のこと、西流ガールズNeoのメインメンバーにそう言われた。「またまたぁ。おだてが上手だね。でも僕を褒めたって、君の売り上げに貢献できるわけじゃないよ」「わかってるってば。関係者による貢献ポイントは、もう無効なんだし」 彼女の言う通り、最近は不正が相次いで、スタッフやテレビ局関係者による“裏支援”は禁止された。体の関係や金銭の授受まで発覚したらしい。 來は彼女たちと仲良くはなったが、女性には興味がない。お気に入りの子もいない。 強いて挙げれば、初日にメイクを直してあげた研究生の子くらいだ。だが彼女は一ヶ月ほど前から体調を崩して休んでいる。人気が出ていたが、それでもこの世界は心身が健康でなければ続かない。最近ではメインメンバーの一人も活動休止に入った。 それを見るたび、來は思う。この世界で生きるって、本当に大変なんだな。 マンションのローンも抱えている來は、貢献はしていなかった。だから関係者貢献禁止令が出たとき、どこかで少しだけ安堵した。「僕はこうやって、君たちが“可愛い”って言ってもらえるように、メイクやヘアスタイルを整えるだけ。それしかできないのが残念だよ」 そう言うと、周りのメンバーたちは笑った。「またまた~!」 彼女たちが來の口調を真似してはしゃぐ。 24歳の來は、10代半ばの女の子にからかわれても、もう笑って受け流せる。『來は優しいよ』 ふと、也夜の声が蘇る。 なぜこんなタイミングで思い出すのだろう。髪を触っているからか。いや……整髪剤の匂いのせいだ。 匂いは記憶と深く結びつく。どんなに忘れようとしても、香りひとつで一瞬にして時間が巻き戻る。 人から優しくされた記憶がなかったから、來は「せめて自分が優しくなろう」と決めていた。 それがどれほど大変なことか、誰よりも理解してくれていたのが也夜だった。 ふとした拍子に思い出すのは、いつものこと。 そして也夜はまだ“生きている”。事務所は定期的に彼の過去の出演作やショーを発信し続けていた。 ファンは今でも復帰を願っている。自分は、もう家族ではないのに。「來くん、也夜くんにはもう会ってないんだって?」 その一言に、來の心臓が一瞬止まる。 話しかけてきたのは、宇津々リカ。ツンとした態度が特徴のメンバーだ。「ちょっとリカ、それは言っ
最後更新 : 2026-07-10 閱讀更多