「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」 とうとう開店の日がやってきた。 店の前には色とりどりの開店祝いの花がずらりと並び、その中には大輝からの花もあった。 白と黒を基調にしたモノトーンの内装は、上品で落ち着きがあり、どこか來の性格を映しているようでもあった。 そして、同じくモノトーンコーデで出迎えるのは……美園。 ミスコン一位の肩書にふさわしい美しさ。立ち居振る舞いからは、育ちの良さと知性が滲み出ている。 それでいて、上品すぎず、近寄りがたくもない。客ひとりひとりに合わせた柔らかな接客で、すでにこの店の“顔”としての存在感を放っていた。 その姿を見ながら、來は胸の奥に小さな痛みを覚える。 あぁ、やっぱりこの雰囲気、どこか也夜に似ている。 人前に立つときの堂々としたオーラ、光を浴びたときの品のある笑顔。 思い出すつもりなどなかったのに、不覚にも記憶が滲み出してしまう。「……仕事、仕事」 と自分に言い聞かせ、來はハサミを握った。 オープン初日ということもあって、来客は途絶えない。 中には、大輝の店での常連客もいれば、かつての也夜のファンらしき人々も混じっている。 中には「一度見てみたかった」とクーポンを使って来る客もいれば、「也夜くんの恋人だった美容師さんですよね」と好奇心で来る者もいた。 それも仕方のないことだ。 世間に“元恋人”として名前が出てしまったのだから。 問題は、その後だった。「今も也夜くんとは連絡取ってるんですか?」「退院されたって聞きましたけど、本当ですか?」 そんな質問が平然と投げかけられる。 本当のことを言えば、関係はもう途絶えている。 けれど「知らない」「もう付き合っていません」などと答えれば、きっと彼らはもう二度と来ないだろう。 来は笑顔のまま、上手く誤魔化す術を身につけていた。「最近は忙しくてなかなか会えないんですけどね……でも、美園さんが受付で報告してくれるから助かってます」 そう言えば、皆、安心したように笑顔で帰っていく。 来てくれるお客の期待を裏切りたくない、というより……也夜を完全に過去にできない自分への言い訳のようにも思えた。 美園は來の意思を尊重し、滅多に也夜のことを話さなくなった。 中には、「美園さんと結婚すればいいのに」とか、「也夜くんとは契約結婚にして、子どもは美園さん
最後更新 : 2026-08-02 閱讀更多