君のことを忘れたいから遠回りしてきた

君のことを忘れたいから遠回りしてきた

last update最終更新日 : 2026-07-03
作家:  麻木香豆たった今更新されました
言語: Japanese
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概要

バッドエンド

BL

ヤンデレ

美容師の來 人気モデルの也夜 この二人は晴れの日を迎える前に也夜の事故で叶わなかった。 そこから堕落していく來。 也夜の家族からも別れて欲しいとも言われ最愛の人を忘れるためにも他の人に抱かれ仕事に集中していく日々。 やがて也夜を忘れていく中、來の独立を手助けしたい人がいると……。 そこから來は順風満帆かと思いきや、也夜が目を覚ましてしまった……。

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第一話
 來《らい》は、この日こそが自分にとって最大の幸せな日になると、ずっと信じていた。  生まれてから今日まで、生きづらさを抱えてきた。  けれど、彼に出会って光が差した。 「生きてみよう」と思えたのも、その人がいたからだった。  カレンダーには赤い丸をつけ、指折り数えて待った日。 「来月だね」「来週だね」「いよいよ明日だね」 互いにそう言い合い、胸を高鳴らせていた。  なのに。  その日を共に迎えるはずだった相手は、今、ベッドの上で静かに横たわっている。 「どうして……」  呟いても、答えは返らない。  願っても、時は戻らない。  ただ、來の胸にあるのは、どうしようもない現実を前にした痛みだけだった。  二人が結婚式を迎える日の前日。  明日の予報は晴れ。雨男な也夜はずっと心配していたのだが明日の予報を確認してホッとしているようだ。 「てるてる坊主吊るそうと思ったけど大丈夫みたいだね」 「子供みたいなことしないでよ、來。きっと来てくれる人の何人かが晴れ男かもしれない」 「なるほど。晴れ男VS雨男、比率が晴れ男の方が多かった……すごいことだ」  と二人笑い合う。出席者はほとんど男ばかりだ。  同性婚、仲間内の結婚式というものもあってのことだが互いの親戚は報告のみ、両親は顔合わせという食事会のみで終わった。  まだ食事会まで辿り着けただけでも良い方だと來は思っている。  その時以来、両親、兄とは会ってもいないし話もしていない。  來と也夜は挙式会場に行っていた。駅から近い式場でまだ真新しい建物である。  式の前には前撮りも同じ建物の中で済ませたが本当は市内の寺の中庭でする予定が案の定也夜の雨男っぷりが発動してしまったようだ、せっかくいいロケーションなのだが大雨で急遽式場内での撮影になった。  だがそれはそれで様になった、それもこれも也夜は人気モデルというのもあったのだろう。  背も180を超え、顔はもちろん手足も長くバランス良い。來も180以上、手足も長いが少し痩せ気味なところもあり也夜の横に立つと少し劣る、と感じる。  也夜は王子様タイプだと言われているが見た目は確かにそうである。  しかし來はそうでない、一緒にいるからわかることだ。  見た目の王子様な也夜は普
last update最終更新日 : 2026-07-01
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第二話
 今夜は式場の提携するホテルで宿泊するのだ。 特に高級ホテルとはお世辞でも言えないのだが互いの部屋を行き来していてそれぞれのベッドでない場所で寝るといういつもとは違うところで一夜を過ごすのも新鮮だろう、と思って泊まることにした。朝も準備で慌ただしい。「今夜は寝られるかなぁ」「寝させない気?」「いや、來のいびきひどいから」「ちょっとさぁ……」「あと寝坊はしちゃダメだから、目覚まし時計設定しておかないとね」「大丈夫だよ、也夜が先に起きるんだから」「僕に頼ってばかりはダメだって」「なんで?」 モデルの仕事をしていて真面目な也夜は寝坊も遅刻もしない。反対に來は寝坊して遅刻もしやすい。 大輝に何度か怒られたことはある。だから來は也夜の家で泊まる際は也夜をあてにする。「いつまでも僕をあてにしないで」 と也夜が言うと來はエッと声が出てしまった。なぜこんな時に? と。「君はもう22歳。大輝さんにも釘を刺されたんだよ。もうアシスタントからさらに昇格したわけだし。一緒に住むから遅刻は減るだろうけども來自身自分で起きられるようにしないとねって」「大輝さん、也夜と何話してんだか……まぁなんとか頑張るよ」「厳しくするからね」 少しシュンとした顔をする來。すると也夜はニコッと笑った。「ウソウソ。僕は鬼になれません、ちゃんと來を起こすから」「どうやって」 來があざとく首を傾げると也夜がベッドに來を座らせてそしてそのまま押し倒す。「也夜っ」 その來の声を也夜は唇で塞ぐ。何度かキスをして來は笑う。「毎朝キスして起こす」「……いつもじゃん」「うん。それで押し倒されて布団でぬくぬくして……」「結局遅刻……也夜のハグが幸せだから」「僕も、來とのハグ、最高に幸せ」 再び2人はキスをする。「もう、也夜。こういうのは夜だって」「初夜……と言うのか? 前夜?」「前夜祭?」 也夜は來の首筋にキスをした。來は気持ちよくて声が出てしまう。 甘い香り、也夜の甘い香水の香り、それとリンクしたシャンプーの香り。自分の中に入っていく幸せ……抱きしめ合う。 幸せだ、來は胸いっぱいになる。 ピコン その幸せの余韻を打ち消すかのように着信が鳴る。これは也夜のスマホからだ。「鳴ったよ、也夜」「ん?」「もしかしたら式場の人からかもしれないし」 しっかり者の
last update最終更新日 : 2026-07-01
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第三話
 ディナーの一時間前になっても、也夜は帰ってこなかった。 遅刻どころか、いつも一時間前には必ず動く人なのに……と、來は胸の奥がざわついた。 メールは既読にならない。電話も繋がらない。 也夜の言っていた“友人”とは誰だったのか。 共通の友人はいる。けれど、互いの過去の人間関係はあまり知らない。結婚式で初めて顔を合わせる人も多い。 なぜ「結婚式で会えばいいじゃない」と言えなかったのだろう。 そんな思いが、ぐるぐると來の頭の中を巡り続けていた。 ディナーの予約をしてあるレストランに、時間を一時間ずらしてもらおうと電話をかけようとした。 そのときだった。 見知らぬ番号からの着信。 普段なら絶対に出ない。だが、也夜からかもしれないと思って、反射的に通話ボタンを押していた。 「うわっ」と思いながらも、少し間を置いてスマホを耳に近づける。 知らない番号のときは、すぐに声を出さず、相手の呼びかけを待つ、そんな謎のルールを自分の中で決めていたのだ。 だが、その沈黙を割るように、甲高い女性の声が飛び込んできた。『もしもしっ、この電話の持ち主の方のお知り合いですかっ!?』 ずいぶん早口だった。だが“持ち主”という言葉に、來は察した。 何か、あった。「は、はい……上社……上社也夜の……その……」 自分たちはまだ家族ではない。なんと名乗ればいいのか。彼氏? 恋人? その言葉を探す間もなく、女性が続けた。『失礼ですが、ご家族ではない? ご友人の方ですか?』「……はい」『実は、〇〇病院の者ですが、ご家族の方と連絡は取れますか?』「……病院……?」『はい。この、かみやしろ、なりやさん? 事故に遭いまして』「事故……」 その瞬間、來の足から力が抜け、膝が床に落ちた。『車に轢かれて……歩道を歩いていたそうです。一命は取り留めましたが、身分証が……あ、ありました。上社也夜さん』「也夜……也夜っ!」 來は全身を震わせ、スマホを落とした。 その後の記憶は、曖昧だった。 どうやって也夜の妹・美園に連絡したのか覚えていない。ただ、気づけば、彼女がホテルの部屋に来ていて、一緒にタクシーに乗り込んでいた。 正気を取り戻したのは、走り出してしばらくしてからだった。 美園は隣で電話をしている。窓の外では、車の列がほとんど動かない。「來くん、大丈夫? お
last update最終更新日 : 2026-07-01
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第四話
 也夜は病院のベッドに横たわっていた。 体にはたくさんの装置やチューブ、そして包帯が巻かれ、痛々しい姿。処置はすでに終わっているようで、眠っているようにも見えた。「お兄ちゃんっ……!」 先に到着していた両親のうち、母親は泣きじゃくり、父親はただ呆然と椅子に腰を下ろしていた。 美園は兄のもとに駆け寄ろうとしたが、母親に腕を掴まれた。「ダメよ、装置が繋がってる。触っちゃいけない」 來は、也夜の真正面に立ち尽くしたまま、息を詰めていた。「也夜……也夜っ」 そう呼びながら手を伸ばした瞬間、看護師に制止された。「ダメですよ!」「だって、也夜が……也夜!」「落ち着いてください!」 その声に、來は聞き覚えがあった。電話のときの声だ。「……あなた、也夜さんの彼氏さんですね」「は、はい……也夜は……也夜はどうなんですか……?」「落ち着いてください。というか、あなた――家族じゃないのに、どうしてここに?」 家族じゃない。 その言葉が、胸に突き刺さった。 明日、パートナー協定を結ぶ予定だった。だから――まだ、來と也夜は“家族”ではない。「明日には、僕ら家族になるんです……」「そうです! 兄は明日、この人と結婚するんです! 一日前倒しでもいいじゃないですか!」 美園は涙を浮かべながら、強い口調で看護師に言い返した。 だが看護師は、困ったように首を横に振る。「規則は規則です。あなたが中に入れたのですか?」「はい、私が入れました。一緒に入りました。この人は、もう私たち上社家の一員です!」 その言葉に、來の胸が少しだけ温かくなった。 美園は、ふたりの関係を最初に受け入れてくれた人だった。少し時間はかかったけれど。 看護師は小さく息をついた。「……規則は規則ですが、今回はいいでしょう。あとで先生から説明があります。みなさん、一旦外に出てください」 四人は促され、病室を出る。 來は振り返り、眠る也夜の姿を見つめた。 胸が締めつけられる。心電図の光が規則的に動いているのが、唯一の救いだった。――也夜は生きている。それを信じるしかなかった。 病室の外のベンチに腰を下ろすと、ようやく父親が口を開いた。「……きっと、死んだ婆さんがな。結婚をやめさせるために、也夜を天国に呼び寄せたんだろう」 あまりに突飛な言葉に、來は何も言えなかった。 
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