バイト終わりに、家まで送ってもらうことが日課になった。休日には、日帰りで行ける建物巡りに一緒に出かけたりもした。「あーちゃん。水、出しっぱなしだよ。何してんの?」皿を洗いながらぼんやり蒼也のことを思い出して、つい手が止まっていた。洗う皿も無いのに、流しで水だけが流れ続けていたようだ。「あーちゃん。彼氏、紹介してよ」聖が覗き込むようにして顔を見ている。朱莉の彼氏に興味津々なようだ。「え!?」ふと冷静になった。蒼也は聖のことをちゃんと受け入れてくれるのだろうか。「おウチに連れてきてよ。あーちゃんの初彼氏。見たい!会いたい!」「えぇ~~わかった......今度、聞いてみる」「真面目で堅物くんなんでしょ?僕、男装しとこうか?」朱莉は一瞬考えて、それから聖に笑顔を送る。「聖のしたい格好で全然OK。聖を変な目で見るような男なら、私の見る目が無かったってことだから」夜、眠る前のメッセージのやり取りで、翌日の送りの時にうちに寄ってもらうことになった。家に来た蒼也は、「緊張するな」と言いながら、至って普通に聖を受け入れた。それが実に自然で、聖もニヤニヤしながら、いい彼氏じゃん、と喜んでくれる。自分の大切な人たちが互いを受け入れてくれていること、それがすごく嬉しかった。付き合い初めてしばらくして、休みの日に出かけた帰り、蒼也の部屋に誘われた。こういうことを想定して、デートの時は、下着には気をつかっている。いつそういう時が来てもいいように。きちんとした性格だから、ピカピカに掃除された部屋を想像していたが、それなりにズボラな男子学生の部屋っぽい感じで、机の上に雑誌が開きっぱなしだったり、ソファの背もたれにタオルが引っ掛かっていたりする。 そういうところに、普段にはない隙が見えてさらに好感度が上がった。まぁ、要は、自分は蒼也が好き過ぎて、何がどうなっていても、『それもまたイイ』と脳内変換ができるらしい。こういうのを世間では、恋は盲目というのだろう。
Huling Na-update : 2026-07-05 Magbasa pa