All Chapters of 無くした恋のその先へ ~この恋を忘れたふりはもうできない~: Chapter 51

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第51話 相思⑦

サウナの前で待ち合わせ、蒼也と顔を合わせた時、聖の表情は昨夜とは大違いだった。そっけないふりをしようと頑張ってはいるが、昨夜までの張りつめたものは、もう感じられなかった。蒼也もその聖の空気にうれしそうにしていて、その表情に胸が温かくなった。聖とキヨがサウナの玄関へ向かう背中を追いながら、蒼也と並んで歩いた。「少しでも言葉を交わせて、よかった」独り言のように小さく呟く蒼也の目元は、穏やかに和らいでいた。私は、そっと彼の指に自分の指を絡めた。――8年前あの時。 もし彼を引き止めていたら。 もし宮崎まで追いかけていたら。そんな「もしも」を何度も考えてきた。でも――結局、私たちはこうしてまた出会い直した。だからきっと、あの恋は終わっていなかったのだ。 途切れたのではなく、ただ時間をかけて再び動き出すのを待っていただけ。「朱莉、なんでそんなに嬉しそうにしてるの?」 「ん? 私嬉しそうなの?」 「すごくニヤニヤしてるね」「ん~だって、蒼也と一緒にいられるから」顔を見上げて笑うと、蒼也は耳まで赤くしながら、満面の笑みを返した。 その笑顔を見ていると、胸の奥があふれそうなほど熱くなる。「蒼也、大好き」そう彼に向かって笑いかけると、蒼也が思わず顔を寄せてきた。その時、聖とキヨの呼ぶ声が飛んできた。蒼也が、我に返り苦笑いしながら耳元で囁く。「二人きりになったら……覚悟しといて」二人のもとへ歩き出した背中に、「望むところだ」と心の中で返す。これから先も、きっと迷う。 不安になって、泣くこともあるだろう。それでも彼となら、そのたびに向き合い、何度でも恋をし直せる。
last updateLast Updated : 2026-08-19
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