Todos os capítulos de 大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。: Capítulo 121 - Capítulo 130

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第121話  伝えたつもりと、伝わったつもり

 翌日。 メールを開いたまま、私はしばらく指を動かせずにいた。──望月瑠奈からの、あの一文が頭から離れない。《先輩にも、ちゃんとお伝えしておきたくて》(“ちゃんと”って……何を?) 昨夜は結局、返事もできないまま眠ってしまった。 平田さんの顔が浮かんでは消え、瑠奈の笑顔がそのたびに重なって、胸の奥がざわざわと落ち着かなかった。  出社してすぐ、オフィスはいつもより少し騒がしかった。「平田さん、今日の午後、外出ですよね」「うん。クライアント先で打ち合わせ」 聞こえてきたその会話に、私は無意識に耳を澄ませてしまう。(望月さんも、一緒……?) 胸がきゅっと縮んだ、そのとき。「中谷先輩」 背後から、明るい声がする。 振り返ると、そこには望月瑠奈が立っていた。「昨日のメッセージ、見てくれました?」 あまりにも自然な笑顔に、私は一瞬だけ言葉を失った。「……うん。見た」「あ、よかったです」 少しだけ、瑠奈はほっとしたように微笑む。「昨日、平田さんと少しだけお話しする時間があって……」 その言葉だけで、私の心臓は嫌な音を立てた。「“少し”?」「はい。今後のこととか、仕事のこととか……色々」
last updateÚltima atualização : 2026-09-01
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第122話  選ばれる前に言えなかったこと

 翌朝。 目覚ましが鳴るより早く、私は目を覚ました。 昨夜、平田さんからのメッセージに返事はしないままだった。文章を打っては消し、打っては消し……結局、何も送れずに朝になってしまった。(“少し待ってほしい”って言われたのに……。 私は、“待つ側”にすら、なれてない) 重たい気持ちを引きずったまま、出社した。 オフィスでは、いつもと同じ朝が流れていた。 コピー機の音、電話の着信音、誰かの笑い声。 でも、私だけが、違う世界にいるみたいだった。「中谷先輩、おはようございます」 背後から声をかけられ、振り向くと瑠奈。「……おはよう」 昨日のやり取りのあとなのに、瑠奈はいつもと変わらない笑顔だった。「今日、平田さん、戻りは夕方みたいですね」 ぎくりと心臓が跳ねる。「……そうなんだ」「はい。出先から直帰って言ってました」(直帰……) 今日も、直接話せない。 ──その事実に、ほっとする気持ちと、焦る気持ちが同時に湧いた。「先輩」 瑠奈が、ふっと声のトーンを落とした。「昨日の話、変に思ってたらごめんなさい」「……」「でも、私、後悔したくないんです」 迷いの
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第124話  言えなかった言葉が、背中をつかんで話さない

 瑠奈が平田さんを連れて応接スペースを出て行ったあと。 私は、しばらく動けなかった。 椅子の肘掛けに置いた指先が、冷たく震えている。(……言えなかった) 胸の奥で、敗北みたいな痛みがじんじんと広がる。 誰に負けたわけでもないのに、負けたような気分だった。(“上司です”なんて……それが本音なわけないのに) 自分でもわかっている。 でも口に出せば、今まで積み上げてきたものが壊れてしまう気がして。(怖い……) 本当は、それだけなのに。 午後の業務が始まっても、集中できなかった。 デスクに戻ると、向かいの席の美鈴さんがちらりと私を見た。「朱里ちゃん、大丈夫?」「え……えっと、はい」「顔色悪いわよ」 言いながら、そっとミネラルウォーターを差し出してくれる。「ありがとう、ございます……」 喉に冷たい水が落ちていく。 だけど、心の熱は全然冷えない。「……何かあった?」 美鈴さんの聞き方は優しくて、逃げ道を作ってくれる。(でも……言えない) 私と平田さんのことを、誰にも言ってはいけない。「いえ、ちょっと……眠いだけです」 自分でもわかるくらい下手な嘘だった。
last updateÚltima atualização : 2026-09-02
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第127話  “上司と部下”を越えるための、ひとつの約束

 触れているだけの手が、こんなにも落ち着かないなんて。  私は、自分の鼓動が伝わってしまいそうで、指先に余計な力を入れないよう必死だった。 「……このまま、ずっと立ち話も変ですよね」  先に視線を外したのは、平田さんだった。 「ちょっとだけ、歩きませんか」 「……はい」  “ちょっとだけ”。  その言葉が、どこかお守りみたいで、胸が少し軽くなる。  二人並んで歩き出すと、さっきまで張り詰めていた空気が、ほんの少し緩んだ。 「中谷さん」 「はい」 「さっきの……“私も”の続き」  心臓が跳ねる。 「無理に聞かないって言いましたけど」  困ったように笑う。 「やっぱり、気になります」 「……ずるい」  小さく呟くと、平田さんは肩を揺らして笑った。 「ですよね」  少し間を置いて、私は深呼吸する。  逃げない、と決めた。 「……私」  声が、思ったより落ち着いていた。 「“大嫌い”って、何度も言ってきましたけど」  彼が、足を止める。  私も、立ち止まった。 「本当は」  ぎゅっと拳を握る。 「好きって言葉が、怖かっただけです」  街灯の下で、平田さんが真剣な顔で私を見ている。 「期待して、もし違ったらって思うのが、嫌で」  胸が、じくりと痛む。 「だから、誤魔化してました」  沈黙。  でも、不思議と怖くなかった。 「……ありがとうございます」  平田さんが、静かに言った。 「ちゃんと話してくれて」 「……いえ」  照れ隠しに視線を逸らす。 「で、ですね」  少しだけ、強がって言う。 「だからって、すぐどうこうって話じゃないですから」 「分かってます」  即答だった。 「俺も、同じ気持ちです」  意外で、思わず顔を上げる。 「急に距離を変えたら、逆に壊れそうですし」  優しい声。 「だから」  少し考えてから、続ける。 「ひとつ、約束しませんか」 「約束……?」 「はい」  平田さんは、ゆっくり言葉を選ぶ。 「仕事中は、今まで通り」  うなずく。 「でも」  少しだけ、声が柔らぐ。 「仕事が終わったあとだけは」  目が合う。 「“上司と部下”じゃなくて、ちゃんと向き合う」  胸の奥が、じんわり温かくなる。 「……それって」 「焦らず、でも誤魔化
last updateÚltima atualização : 2026-09-04
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第128話  後輩の勘は、だいたい鋭い

 翌日のオフィスは、驚くほど“いつも通り”だった。  コピー機の音、キーボードを叩く音、誰かの小さなため息。  その中で私は、昨日の帰り道が夢だったんじゃないかと錯覚しそうになる。 「中谷さん、この資料──」 「はい、すぐ確認します」  平田さんは、完璧に“上司の顔”をしていた。  声のトーンも、距離感も、何ひとつ変わらない。 (……約束、ちゃんと守ってる)  そう思うと、胸の奥が少しだけむず痒い。 「中谷さーん」  ひょい、と隣から顔を出してきたのは、望月瑠奈だった。 「この数字、ここで合ってますか?」 「うん、合ってるよ」  答えながら、ふと視線を感じる。  瑠奈の目が、ちらりと平田さんの席に向いた。 「……?」 「なんでもないです」  にこっと笑うけれど、その笑顔がどこか探るようで、私は内心ドキッとする。 「そういえば」  瑠奈は声を潜めた。 「昨日、平田さんと一緒に帰ってましたよね?」  心臓が、一拍遅れる。 「……え?」 「たまたま見かけました」  あっさりと言われて、誤魔化す暇もない。 「コンビニの前で」  あの時か。  私は、できるだけ平静を装う。 「たまたま方向が同じだっただけだよ」 「ふーん」  瑠奈は、納得したような、していないような顔をする。 「でも」  ぐっと距離を詰めてきて、小声で続けた。 「中谷さん、昨日より顔色いいです」 「……それ、関係ある?」 「あります」  即答だった。 「なんか、柔らかくなってます」  私は、言葉に詰まる。 (鋭すぎるんだけど、この子) 「それに」  瑠奈は、意味ありげに笑った。 「平田さんも、ちょっとだけ優しかったです」 「えっ?」 「ほんのちょっとですよ?」  楽しそうに付け足す。 「でも、分かります」  私は、苦笑いしか返せない。 「瑠奈は、気にしすぎ」 「そうですか?」  首を傾げながら、瑠奈は席に戻っていった。  その背中を見送りながら、私は小さく息を吐く。 (これは……隠し通せる気がしない)  その時。 「中谷さん」  後ろから、平田さんの声。 「午後の打ち合わせ、少し早めても大丈夫ですか?」 「は、はい。大丈夫です」  視線が合う。  一瞬だけ、ほんの一瞬だけ。  昨日の夜の余韻み
last updateÚltima atualização : 2026-09-04
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第129話 “なんでもない”が、増えていく

 その日の午後は、やけに長く感じた。  数字の並んだ資料を眺めながら、私は何度も同じ行を目で追っていることに気づく。 (……集中しなきゃ)  なのに、頭の片隅から離れないのは、瑠奈の言葉だった。 ──昨日より、顔色いいです。  自覚はなかった。  でも、否定できなかった。 「中谷さん」  会議室で、平田さんが私の名前を呼ぶ。 「ここ、どう思います?」 「……あ、はい」  慌てて資料に視線を戻す。  距離は、ちゃんとある。  仕事の話だけ。  余計な言葉も、視線もない。 (……なのに)  胸の奥が、少しだけ落ち着かない。  会議が終わり、解散の空気になったとき。 「中谷さん」  また、平田さんの声。  今度は、ほんの少しだけトーンが低い。 「さっきの提案、助かりました」 「いえ……こちらこそ」  それだけの会話なのに、心拍数が上がる。 (“なんでもない”はずなのに)  デスクに戻る途中、スマホが震えた。  田中美鈴からだ。 『今日、夜空いてる?』  私は、画面を見つめたまま立ち止まる。 (……美鈴に、話したい)  でも同時に、言葉にした瞬間、何かが変わってしまいそうで怖い。 『ちょっとだけなら』  送信して、胸をなで下ろす。 「朱里?」  背後から名前を呼ばれて、肩が跳ねた。 「はいっ」  振り返ると、平田さん。 「大丈夫ですか?顔、固まってましたけど」 「だ、大丈夫です」  反射的に言い切る。  平田さんは少しだけ眉を下げて笑った。 「無理してませんか」  その言葉に、心が揺れる。 (……優しくしないで)  私は、思わず口にしてしまった。 「平田さんって、そういうところ……」  言いかけて、止まる。 「……?」  続きを待つ視線。 「……いえ、なんでもないです」  逃げるように視線を逸らす。  平田さんは、少し困ったように笑った。 「最近、その“なんでもない”多いですね」 「……気のせいです」  即答すると、ますます怪しい。  平田さんは何も言わなかった。  けれど、その沈黙が、やけに重い。  仕事が終わり、帰り支度をしながら、私は思う。 (“なんでもない”が増えるたびに) (本当は、隠してる気持ちが増えてる)  美鈴に、どこまで話そう。  瑠奈
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第130話 親友は、だいたい全部お見通し

「……最近、距離が近いんだか遠いんだかわからなくて」 「うんうん」 「話してると安心するのに、あとから自己嫌悪するし」 「うんうん」 「で、気づいたら“なんでもない”って言葉ばっかり増えてる」  美鈴は、静かに頷いてから言った。 「それ、“大嫌い”って言ってた頃より重症じゃない?」 「……」  図星すぎて言葉を失う。 「ねえ朱里」  美鈴は少しだけ声を落とした。 「平田さんの前で、“大嫌い”って言わなくなったの、いつから?」 「……最近」 「それってさ」  美鈴は、にやっと笑う。 「好きすぎて、冗談にできなくなったってことじゃない?」 「ちが……」  反論しかけて、止まる。 (違う、って言えない) 「しかも」  美鈴は続ける。 「向こうも、朱里のこと気にしてる顔してるよ」 「……それは、ない」 「じゃあ聞くけど」  美鈴は身を乗り出した。 「瑠奈ちゃんが近くにいるとき、平田さんのこと見るの、なんでそんなに嫌そうなの?」 「それは……」  答えはわかってる。  でも、口に出したら負けな気がして。 「朱里」  美鈴は真剣な目で言った。 「このままだと、誰かに取られるよ?」  心臓が、ぎゅっと縮む。 「“大嫌い”って100回言う前にさ」  美鈴は、少し優しく笑った。 「一回くらい、“好き”って思ってる自分を認めなよ」  私はカップを持ち上げ、ようやく一口飲んだ。  甘くて、少し苦い。 (……ずるい)  親友は、どうしてこんなに全部見抜くんだろう。 「……ねえ、美鈴」 「なに?」 「もしさ」  私は、恐る恐る言った。 「向こうから一歩踏み込まれたら……どうすればいいと思う?」  美鈴は即答した。 「逃げない」 「……」 「それだけでいい」  その言葉が、胸に残る。  カフェを出たあと、夜風に当たりながら、私はスマホを握りしめた。  画面には、平田さんとのトーク。  最後のメッセージは、あの一言。 ──今日の帰り、また一緒に帰りたい。  まだ返していない。  でも。 (……逃げない)  私は、指先に力を込めた。
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