Todos os capítulos de 大嫌い!って100回言ったら、死ぬほど好きに変わりそうな気持ちに気付いてよ…。: Capítulo 131 - Capítulo 140

180 Capítulos

第131話 返事ひとつで、世界は騒がしくなる

 スマホの画面を、もう何度見ただろう。 ──今日の帰り、また一緒に帰りたい。  たったそれだけの文章なのに、胸の奥がざわざわする。 (逃げない、って言ったくせに)  私は深呼吸して、親指を画面に置いた。 『……ちょっとだけなら、いいです』  送信。  それだけで、心臓が一気に早鐘を打つ。 (何この緊張感)  既読がつくのは、思ったより早かった。  そして、すぐに返事が来る。 『ありがとう。じゃあ、エントランスで待ってます』  淡々とした文面なのに、どこか嬉しそうな響きがして、勝手に顔が熱くなる。 (……単純すぎ)  その日の仕事は、正直ほとんど頭に入らなかった。  時計を見るたびに、秒針の音がやけに大きく感じる。  定時。  バッグを手に席を立つと、心なしか周囲の視線が気になる。 (別に、何もおかしくないのに)  エントランスには、すでに嵩がいた。  スーツ姿のまま、スマホをポケットにしまって、こちらに気づくと少しだけ表情が緩む。 「中谷さん」 「……平田さん」 「今日は、ありがとう」 「“ちょっとだけ”ですから」  そう言うと、嵩は小さく笑った。 「わかってます」  並んで歩き出す。  外はもう暗く、街灯の光が濡れた歩道に反射していた。 「雨、すっかりあがりましたね」 「そうですね」  会話はそれだけ。  なのに、沈黙が苦しくない。  むしろ、隣にいること自体が落ち着く。 (……こういうの、ずるい) 「中谷さん」  しばらくして、嵩が口を開いた。 「最近、前より話しやすくなった気がします」 「え……?」 「前は、“大嫌い”って、よく言われてたので」  心臓が跳ねる。 「……それ、まだ気にしてたんですか」 「正直、はい」  困ったように笑う嵩に、胸がちくっと痛んだ。 「冗談だって、わかってはいたんですけど」 「……」 「でも、最近は言われなくなって」  嵩は、少しだけ歩く速度を落とした。 「それはそれで、距離を感じるというか」 (……なんでそんなこと言うの)  私は視線を前に向けたまま、ぽつりと返す。 「……言わなくなっただけです」 「嫌いじゃ、なくなった?」  一瞬、言葉に詰まる。 (ここで“違います”って言えたら、どれだけ楽だろう) 「……」  沈黙が
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第132話 縮まったのは距離?それとも覚悟?

 夜風が、少しだけ冷たい。  並んで歩く帰り道は、いつもより長く感じるはずなのに、気づけば半分ほど過ぎていた。 (“ゆっくり行こう”なんて言われたのに)  嵩は、朱里の歩幅に自然に合わせてくれている。意識しているのか、無意識なのか──それがわからないのが、また厄介だった。 「……」  沈黙が続く。  でも、不思議と居心地は悪くない。  ただ、静かすぎて、自分の心音ばかりがうるさい。 「中谷さん」  不意に呼ばれて、肩が跳ねる。 「はい?」 「さっきの話なんですけど」  さっき──「大嫌い」の話。 (まだ続くの……?) 「最近、言わなくなった理由、聞いてもいいですか」  嵩の声は穏やかだった。詰めるようでも、探るようでもない。  ただ、知りたい、という響き。 (ここで誤魔化すのは、ずるい気がする)  朱里は一度、唇を噛んでから答えた。 「……言うと、面倒くさい人だって思われそうなので」 「思いませんよ」  即答だった。  それがまた、胸に刺さる。 「“大嫌い”って言うときって」  朱里は視線を落としたまま、続ける。 「本当は、嫌いじゃないとき、だったので」  空気が、ほんの少し張り詰める。  嵩は足を止めた。 「それって……」 「深い意味はないです!」  慌てて言葉を被せる。 「ただの、口癖というか、自己防衛というか……」 (何言ってるんだろ、私)  でも、嵩は否定しなかった。 「自己防衛、ですか」 「……はい」 「近づきすぎると、怖くなるタイプ?」  図星すぎて、言葉を失う。 「……っ」 「ごめんなさい、変なこと聞きました」  嵩はすぐに一歩引いた。  その距離の取り方が、優しすぎて、胸が苦しくなる。 「でも」  嵩は、少しだけ照れたように笑った。 「そういうの、嫌いじゃないです」  今度は、朱里が立ち止まる番だった。 「……今、なんて」 「強がりなところ」  嵩は、まっすぐ朱里を見た。 「中谷さんの、そういうところ」  頭が、真っ白になる。 (ちょっと待って。これ、どういう意味?) 「……平田さん」 「はい」 「それ、勘違いさせる言い方です」 「勘違い、してほしい場合は?」  冗談めかした口調なのに、視線は真剣だった。  朱里は、何も言えなくなる。
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第133話  考えておく、の破壊力

 玄関のドアを閉めた瞬間、朱里はその場に背中を預けた。 「……はぁ……」  深いため息が、自然と漏れる。 (なんであんな返事したんだろ)  ──考えておきます。  逃げでも拒否でもない、でも一歩引いた、いつもの自分。  スマホを取り出すと、画面は静かなままだ。 (……来てない)  平田嵩からのメッセージは、まだ届いていなかった。  それが少しだけ、寂しい。 (来たら来たで、どう返すか分からないくせに)  朱里はソファに腰を下ろし、天井を見上げる。  嵩の言葉が、頭の中で何度も再生される。 ──「強がりなところ、嫌いじゃないです」 ──「勘違い、してほしい場合は?」 「……ほんと、ずるい」  口ではそう言いながら、胸の奥がじんわり温かい。  そのとき、スマホが震えた。  心臓が一拍、跳ねる。 (……きた?)  画面を確認して、肩の力が抜ける。  ──田中美鈴。 『ねえ朱里、今日の顔どうしたの  仕事中ずっと上の空だったけど』 (……やっぱり、分かるよね)  少し迷ってから、返信する。 『そんな顔してた?  ちょっと、考え事』  すぐに既読がつき、間髪入れずに返事が来た。 『嘘  それ、平田さんでしょ』 「……」  スマホを握りしめたまま、朱里は固まる。 (どうして、みんな分かるの) 『なんでそうなるの』 『だって分かりやすいもん  最近、朱里』  胸が、ぎゅっと縮む。 『ねえ、今日一緒に帰った?』 『……少しだけ』 『はい確定』  美鈴の軽快な文字が、やけに眩しい。 『で?  例の「大嫌い」発動しなかったの?』 『してない』 『じゃあ進展じゃん』  その一言に、朱里の指が止まる。 (進展……?) 『進展っていうか  平田さんが距離詰めてきてる感じは、ある』 『朱里はどうしたいの』  その問いに、すぐ答えが出ない。 (どう、したい……?)  嵩と並んで歩いた帰り道。  沈黙が、心地よかったこと。  瑠奈に見られても、嫌じゃなかったこと。  そして──また一緒に帰りたい、と言われたときの、胸の高鳴り。 『……嫌じゃない』  しばらくして、美鈴から返事が来た。 『それ、もう十分じゃない?』 『朱里さ  大嫌いって言わなくなった時点で  自分の気持ち、分
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第134話  大嫌いが言えなくなった夜

スマホの画面が暗くなっても、朱里はしばらく動けなかった。 (……楽しかった、って送っちゃった)  言葉にした途端、それが嘘じゃないことを、はっきり自覚してしまったから。  胸の奥が、じんわりと落ち着かない。  ベッドに腰掛け、クッションを抱える。 (大嫌い、って言えば楽だったのに)  そう言って突き放せば、ここまで考え込まずに済んだはずだ。  でも──。  今日の嵩は、少しだけ違った。  急かさず、詰めすぎず、それでいて確実に距離を縮めてくる。 ──「じゃあ、今日はゆっくり歩こうか」  その一言が、どうしてあんなに優しく響いたのか。 「……反則だよ」  朱里は天井を見上げて、小さく息を吐く。  そのとき、スマホが再び震えた。  嵩からだと分かっているのに、心臓がまた跳ねる。 『無理してないなら  また、金曜にでも』  たったそれだけの文面。  でも「また」という言葉が、妙に重い。 (金曜……)  次に一緒に歩く約束みたいで。  朱里は指を止めたまま、画面を見つめる。 (断る理由、探そうと思えば探せる)  忙しいとか、予定があるとか。  でも──。 (行きたくない、とは思ってない)  それどころか、少しだけ楽しみにしている自分がいる。  朱里は、ゆっくりと文字を打った。 『金曜  定時なら、大丈夫です』  送信。  数秒後。 『了解です  じゃあ、またゆっくり』  短い返事なのに、胸が温かくなる。 (……完全に、やられてる)  クッションに顔を埋め、朱里は小さく呻いた。 「大嫌いって、言えなくなったら  どうすればいいの……」   その問いに答えるように、別の通知が入る。  ──望月瑠奈。 『朱里さん  今日、平田さんと一緒でしたよね』  心臓が、嫌な音を立てる。 (……来た)  既読をつけるか迷っている間に、追撃。 『別に責めてるわけじゃないです  ただ、気になっただけ』  その“ただ”が、信用ならない。  朱里は深呼吸してから、返信した。 『少し話しただけだよ』  すぐに返ってくる。 『へえ  少し、ですか』  含みのある文面。 (やっぱり、見てたんだ)  しばらく沈黙が続き、朱里はスマホを伏せた。 (……何も、悪いことしてないのに)  なのに、
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第135話  金曜までの三日間が長すぎる

火曜日の朝。 朱里は、出社した瞬間から妙な疲労感を覚えていた。(まだ一日も経ってないのに……) デスクにバッグを置き、パソコンを立ち上げる。 いつもと同じオフィス、同じ空気。なのに、落ち着かない。「おはようございます」 背後から聞こえた声に、思わず肩が跳ねた。 嵩だった。「……おはよう」 声が、少しだけ硬くなる。 嵩はそれに気づいたのか気づいていないのか、いつも通りの距離感で席に着いた。「昨日は、雨上がりだったな」「……そうだね」 それだけ。 それだけなのに、胸の奥がざわっとする。(普通の会話、普通のはずなのに) 画面に視線を落としながら、朱里は自分に言い聞かせる。(仕事中。切り替え、切り替え) けれど──。「朱里さん」 今度は別の声。 望月瑠奈が、すぐ横に立っていた。「昨日、珍しく定時でしたよね」 柔らかい笑顔。 でも、その目は探るように細められている。「……まあ、たまたま」「へえ」 瑠奈は、嵩の方をちらりと見た。「平田さんも、ですよね?」 空気が、一瞬止まる。 嵩は少しだけ間を置いて答えた。「そうですね。珍しく」 それだけで済ませたのは、きっと配慮だ。(ありがとう……) 朱里は内心でそう思ったが、同時に胸がちくりと痛む。 “配慮される関係”になってしまったことが、嬉しくもあり、怖くもある。「そうなんだ」 瑠奈はにこりと笑い、何事もなかったように去っていった。 その背中を見送りながら、朱里は小さく息を吐く。(やっぱり、気づかれてる) 午前中は、集中しようとすればするほど、時間が進まなかった。 キーボードを打つ音。 電話の呼び出し音。 コピー機の低い唸り。 すべてが、やけに鮮明だ。(……金曜まで、長い) 昼休み。 朱里は一人で席を立ち、社外のコンビニへ向かった。 人混みを避けるように歩きながら、スマホを取り出す。(連絡、来てないよね) 分かっているのに、画面を確認してしまう。 ──通知なし。(仕事中に来るわけないのに) 自嘲気味に笑い、ポケットにしまった、その瞬間。 メッセージが表示された。『無理してない?』 嵩だった。 タイミングが良すぎて、思わず足を止める。(……見てた?) いや、そんなわけない。 朱里は一度深呼吸してから、短く返した。『大
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