怜央は車を飛ばし、莉乃が入院している病院へ戻った。邦彦は姿を見るなり駆け寄ったが、怜央一人でダイソン医師がいないと分かると、顔色を変えた。「怜央君、ダイソン先生は?」娘の手術を頼んだ医師を連れてこなかったことへの不満が、顔にありありと浮かんでいた。怜央が電話をかけると、白衣を着た外国人男性が入ってきた。褐色の短髪で眼鏡をかけた、若く大柄な男性だった。ダイソンではなかった。「花宮さん、こちらはハーバート教授です。整形外科とスポーツ医学の第一人者で、スポーツ外傷の治療では世界的に知られています。若く見えますが、代表選手の手術も執刀してきました。莉乃のような症例なら、ダイソン先生にも劣りません」説明を聞き終えるなり、邦彦は手を上げた。乾いた音とともに、平手が怜央の頬を強く打った。「私と莉乃に、何と約束した!ダイソン医師でなければ治せず、脚を切断するしかないと伝えただろう。それなのに、こんな若い二流の医師を適当に連れてきてごまかすとは。君がこんな人間だったとは思わなかった。失望したよ」怜央は目を細め、眉を寄せたまま、頬の痛みに耐えた。邦彦が自分を殴るとは思っていなかった。しばらくして、ようやく口を開く。「花宮さん、ハーバート教授は駆け出しの医師ではありません。アメリカで名高いスポーツ外傷の専門家です。莉乃の症例も確認し、切断する必要はなく、治療できる可能性があると言っています」邦彦の顔から血の気が引いた。怜央が切断の必要性を疑い、別の医師に確認するとは思っていなかった。出ていく時には、ダイソン医師を呼べなければ切断するしかないという話を、完全に信じていたはずだ。実は、莉乃が担当医に金を渡すよう邦彦に命じ、そう説明させていた。露出した骨とひどい傷口を見れば、病状をそれほど深刻に誇張しても不自然には思われない。それでも邦彦は引き下がらず、憤りと悲しみに満ちたふりをした。「御堂怜央、莉乃を死なせたいのか?どこの誰とも分からない医師の話を信じるのか。ネット越しに診ただけの医師が、莉乃の脚を実際に見たのか?見てもいないのに治せると言う人間に、娘の命を預け、手術台で死なせるつもりか!」理屈を並べたあと、急に崩れ落ちるような声を出した。「私の娘が、あまりにも不憫でならない。まだ若いのに、こんなひどい目
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