伊織の言葉を聞き、怜央の胸に激しい痛みが走った。心臓が激しく脈打った。確かに、すべての原因は自分にある。初めから紗和の味方をし、莉乃ときっぱり縁を切っていれば、紗和がこんな目に遭うことはなかった。それでも、紗和を看病する権利だけは手放したくなかった。手放すわけにはいかなかった。伊織に別の思惑があることも、よく分かっている。「これは紗和自身が選んだことだ。お前に口を出す権利はない。俺は紗和の夫だ。あの時、俺を選ぶべきじゃなかったなんて言うのは、本当は自分が選ばれたかったからだろ。今まで結婚しなかったのも、ずっと俺の妻を狙ってたからじゃないのか。今さら看病を口実に、そんな卑しい望みを叶えようっていうなら、絶対に許さない」そこまで聞いて、紗和はもう耐えられなかった。涙を流しながら叫んだ。「卑しいのはあなたよ。御堂怜央、あなたが一番卑しいわ」怜央の頬を、涙が瞬く間に伝い落ちた。以前の紗和なら、どんな時も無条件に自分の味方をしてくれた。どれほど冷たくしても、彼女は怜央を愛していた。だが今、紗和が選んだのは怜央ではなく、伊織だった。一言ごとに、怜央の顔から血の気が引いていった。だからこそ、ますます手放せなかった。もう後がない。ここで紗和を看病し、リハビリを支える機会まで失えば、本当に何も残らない。これほど傷つけてしまった今、それが唯一の償いだった。怜央は死んでも譲るつもりはなかった。「妻にどれだけ誤解されていても、誠意を尽くせば、いつか気持ちは戻ると信じてる。それでも干渉するなら、既婚者の家庭を壊そうとしたと、明日にでも大学へ訴える。妻にはほかに親族がいない。いちばん近い家族も、第一の保護責任者も俺だ。勝手に連れ出せば違法になる。手術に同意できるのも俺だけだ」伊織は怒りに息を詰めた。紗和を奪われまいとする怜央は、すっかり我を失っている。国内の法律では、最も近い家族が同意しなければ、病院も退院を認めない。もし伊織が勝手に紗和を連れ出し、移動中に何か起きれば、怜央は病院の責任を追及できる。病院側にその危険は負えなかった。紗和の全身が震えていた。傷の痛みではない。怒りを抑えきれなかったのだ。重傷を負ってから何時間も休み、ようやく呼吸が整い、痛みも少し和らいだ。だが、込み上げる怒りは抑えられない
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