「お前……」怜央は、思わず言葉を失った。莉乃が目的のために自分に薬まで盛り、さらには何食わぬ顔で自分のスマホから紗和に電話をかけ、怜央と寝たことをわざと聞かせていたなど、夢にも思わなかった。紗和の様子があれほどおかしかった理由を、怜央はようやく理解した。あの電話さえなければ、今は許してもらえなくても、莉乃の邪魔がなくなれば、いつか紗和の心を取り戻せると信じていた。だが結局、怜央は最も愚かな過ちを犯し、紗和をさらに深く傷つけてしまった。あれほど辛辣な言葉を浴びせられたのも当然だった。怜央には紗和を責めることなどできなかった。「だが、分かっているだろう。俺はお前と離婚できない。御堂ホールディングスの社長でなくなれば、お前の会社の資金調達も上場も後押しできなくなる」続けて、怜央は言った。「すまない。わざとじゃない。あいつが……」だが、莉乃に薬を盛られたとは言えなかった。下手をすれば、紗和が警察へ通報し、莉乃が不利な立場に追い込まれるかもしれない。怜央は息を整えた。「全部、俺が悪かった。二度としないと約束した直後に、その約束を破るべきじゃなかった。本当にすまない」以前の怜央は、決して謝ろうとしなかった。紗和にどれほどひどいことをし、彼女のお腹の子を失わせ、自信も尊厳も踏みにじってきたというのに、一度として謝ったことはなかった。まるで、それが紗和の払うべき犠牲であるかのように。それなのに、ほんのわずかな間に何度も謝罪を口にした。自分の過ちを悟ったからではない。紗和が本当に自分のもとを去ろうとしていると、ようやく気づいたからだ。彼女に深く愛されているという、以前の絶対的な自信はもうなかった。怜央は初めて、紗和を失うことに恐怖を覚えた。紗和は怜央を見つめ、答えた。「離婚したことは、しばらく伏せておけばいいわ。これからは、もう何の関係もない他人になるの。わざわざ公表する必要もないでしょう。上場記念のセレモニーが終わったら、私はフォトンテックの海外部門に異動して、向こうに常駐するつもり。御堂家の人たちには、海外出張に行ったとでも説明しておけばいいわ。連絡先も消す。私のほうからマスコミに離婚を明かすつもりもない。その代わり、もう二度と会わない。お互いの人生にも、一切関わらない」紗
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