しかも、並んでいるのはどれも紗和の好物だった。焼きたてのトーストに、ふんわりとしたスクランブルエッグ、野菜たっぷりのサラダ。それに、湯気の立つホットミルクまで用意されていた。だが今の紗和には、征臣とどう顔を合わせればいいのか分からなかった。もともと二人は婚約しており、もうすぐ正式に夫婦になる。男女の関係を持ったとしても、何もおかしくはない。それでも昨夜のことは、何一つ覚えていなかった。征臣が満足したのかどうかさえ分からない。意識を失ったまま、まるで人形のように横たわっていただけなら、彼を少しも喜ばせられなかったのではないか。紗和は覚悟を決めて食卓へ近づき、非の打ちどころのない征臣の顔を見た。きっちり髪を撫でつけても、無造作に前髪を下ろしてもよく似合う。鋭い目元が、近寄りがたい冷徹な雰囲気をいっそう際立たせていた。隙一つないほど清潔感があり、欲望など持ち合わせていないかのように厳めしい。すっかり、いつもの禁欲的な征臣に戻っていた。昨夜、頬骨のあたりを赤くし、耳まで真っ赤に染め、何も身につけずにいた男とは別人のようだった。視線がぶつかり、紗和は気まずそうに目をそらした。征臣は無表情のまま言った。「座れ。朝食にしろ」昨夜のことを何か言われるのではないかと、紗和の顔は緊張で赤くなった。距離が近づいたとき、征臣の喉元に一つだけ赤い痕があることに気づいた。おそらく、自分がつけたものだろう。意識を失っていたわりには、ずいぶん正確な場所に残していた。紗和は征臣の喉仏が好きだった。低く心地よい声とともに上下する様子が、ひどく艶めかしく見える。おそるおそる腰を下ろし、目を合わせないまま、温かいミルクをひと口飲んだ。それから、トーストとサラダを少しずつ口に運んだ。少し離れていても、征臣の冷気が食卓越しに伝わってくるようだった。性格も気性も、何もかもが冷たい。長く接してきた紗和が抱いた印象は、それだった。こっそり眺めながら、上品な顔をしているくせに、ずいぶん獣じみた人だと思った。その瞬間、視線を捉えられた。「何かあるのか」紗和はポケットから腕時計を取り出した。「これ、あなたのでしょう。部屋に落ちていたから……」昨夜、征臣が邪魔そうに外して放り置いた時計だった。目にした途端、征臣の脳裏
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