「今日も野次馬」というユーザーのコメントが、見る見るうちに「いいね」を増やしていた。【外面だけ取り繕って、中身は最低な男っているんだね。望月さん、絶対戻っちゃだめ。こんな男、拾ったほうが不幸になるだけ】その下で最も多くの「いいね」を集めていた返信は、たった一言だった。【ほんとそれ。元夫、汚すぎ】紗和の視線が、その言葉の上で一瞬止まった。なぜこれほど胸に引っかかったのか、自分でも分からない。たぶん、「汚い」という言葉があまりにもぴったりだったからだ。莉乃の存在を知らなかった頃の結婚生活を思い返す。怜央は海外にいる莉乃のもとを訪ねたあと、何食わぬ顔で家に戻り、別の女に触れたその手で紗和の肩を抱いていた。今になって思えば、確かに汚らしい。紗和はコーヒーカップを置き、もう一度スマホを手に取った。指先で、赤いハートの「いいね」をそっと押す。記事を拡散することも、コメントを残すことも、声明を出すこともしなかった。ただ「元夫、汚すぎ」という一言の隣に、小さなハートを一つ残した。それだけだった。そしてスマホを脇に置き、新製品の発売計画書を再び開いた。ほんの些細なことだと思っていた。たかが「いいね」一つ。紗和のSNSにはフォロワーもほとんどおらず、普段投稿するのは業界ニュースや会社の近況ばかりで、自分の写真すら一枚も載せていない。そんなアカウントを、いったい誰が見ているというのか。だが紗和は、ネットユーザーの特定力を甘く見ていた。午後3時17分、100万人を超えるフォロワーを持つ芸能系インフルエンサーが、スクリーンショットを添えて新たな投稿をした。画像には、認証済みの望月紗和のアカウントが「元夫、汚すぎ」というコメントに「いいね」していることが、はっきりと映っていた。添えられていた言葉は、たった一言だった。【本人、まさかの参戦】その投稿をきっかけに、騒ぎは再び一気に燃え上がった。返信欄は、たちまち大盛り上がりになった。【あはははは、望月さん最高!】【この「いいね」だけでしばらく笑える。潔すぎて好き!】【一言も発してないのに、「いいね」一つですべて伝わるの強すぎる。沈黙は雄弁って、こういうことか】【望月紗和『黙ってるからって、何も思ってないわけじゃない』】【本人公認で草。元夫
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