誠一が受け取れるのは、決められた額の生活費だけだった。あまりにも馬鹿げている。どう考えても筋が通らない。征臣が低く言った。「俺の見立てが正しければ、あの老いぼれが裏で手を回したんだろう」「九条薫子が?」「ああ。あの女を九条家の人間と呼ぶつもりはない」それでも紗和には、薫子がいったいどうやって遺言の内容に手を加えたのか、まるでわからなかった。遺言について調べに行っていた者たちが、次々と戻ってくる。その表情を見る限り、作成手続きそのものには問題が見つからなかったらしい。兄弟たちが受け取る財産はごくわずかだった。一方で、最大の受益者となった誠一は、遺産の9割近くを引き継ぐことになっている。怒りを抑えきれなくなった兄たちは誠一と完全に決裂し、今後は千鶴子の面倒も見なければ、本邸へ来ることもないと言い放った。「遺産はもっと公平に分けるべきだろう。それを誠一一人に渡すなんて、あまりにも偏りすぎてる。末の息子ばかり贔屓してれば、いつか痛い目を見るぞ」だが誠一は、少しも気にしていなかった。老いた母親一人を養うのに、いったいいくらかかるというのか。これほど大きな本邸で暮らさせ、毎日の食事にどれほど金をかけたところで、受け取った遺産の1%も使わないだろう。自分が面倒を見ればいい。そして千鶴子が亡くなれば、その財産もいずれ自分のものになる。そう考えているのは明らかだった。伯父の一人が、わざと怜央のそばへ歩み寄った。そして焚きつけるように言う。「私たちは皆、お前こそ御堂家の後継者だと思ってる。誠一が死ねば、あいつの財産を継ぐのはお前しかいない」怜央は冷たく笑った。「あの男が死ぬのを、もう20年以上待ってます。言われなくても、今すぐ死ねばいいと思ってますよ」伯父は顔を強張らせ、そのまま背を向けて去っていった。もちろん怜央も、伯父たちがこのまま黙って引き下がるとは思っていない。すでに弁護士へ相談を始めており、遺言による分配を覆し、グループ株式を改めて分けさせるため、あらゆる手を尽くすつもりらしい。騒ぎもひとまず落ち着き、人々が帰り始めた。征臣も紗和を連れ、邸宅をあとにしようとする。宗一郎が倒れる前後の状況も聞いた。遺言の内容も確認した。知りたかったことは、ひととおり把
Read more