絵里香は言った。「知らないの?あなたのお兄さん、九条征臣が街の南側に、とんでもない規模のレイクサイド・ガーデン邸を建てたのよ。希少な花が千種類以上も植えられていて、まるで別世界みたいなんだって。湖まで丸ごと敷地に含まれているらしいわ。乗馬場もゴルフ場もあって、上流階級が好みそうなものは何でもそろってる。それに、将来の妻のためだけに建てた屋敷だって噂よ。お披露目の日にはパーティーも開かれて、名の知れた有力一族の若い世代が一斉に招待されるの。縁談のきっかけを作るには、これ以上ない機会じゃない」絵里香がしきりに「お兄さん」と口にするのを聞き、莉乃はそこでようやく、現在の九条家を率いる征臣のことだと気づいた。莉乃は薫子の指示で、行方不明になった九条家の令嬢になりすましている。絵里香からすれば、征臣が莉乃の兄ということになるのは当然だった。「ええ、知ってるわ。最近いろいろありすぎて、頭から抜けていただけ。あなたも出席するの?」「当たり前でしょ。九条会長ほどの人が開くパーティーよ。絶対に行くわ。だから莉乃、早くここから出してよ」莉乃にも、絵里香の狙いはすぐにわかった。だが、どれだけ期待したところで無駄だろうとも思った。征臣が絵里香を選ぶはずがない。その冷ややかな反応を感じ取った絵里香は、たまらず口を開いた。「莉乃、私じゃお兄さんに釣り合わないって思ってるの?確かに九条会長は別格よ。でも、あの人に釣り合う女なんて、そう簡単に見つかるものじゃないでしょ。体格もしっかりしてるし、背も高い。私だって長身だから、少なくとも並んだときの見栄えは悪くないわ。もし私が九条家の奥様になれば、あなたとは今まで以上に近い身内になるのよ。あなたにとっても悪い話じゃないでしょう?」もちろん絵里香には、口に出していない思惑もあった。そのパーティーには、名のある若い有力者がほぼ勢ぞろいする。征臣との間に何も起こらなかったとしても、別の大物と縁をつなぐことはできる。とはいえ、何より重要なのは、莉乃に頼んで征臣との間を取り持ってもらうことだった。モデル並みのスタイルに加え、莉乃とのつながりもある。自分ならきっとうまくいくと、絵里香は本気で信じていた。ここ数日、朝から晩まで考えていたのはそのことばかりだった。こんなところに閉じ込められ
Read more