怜央に突き放され、絵里香は言葉を失った。絵里香は篠原家の跡取りであり、一族でただ一人の娘だった。文字どおり、大切に育てられてきた箱入り娘だ。以前の怜央は、母・清美の境遇に負い目を感じていたこともあり、さまざまな形で篠原家を支援してきた。だが絵里香は、事業で利益を上げることにも、一族の資産を守ることにもまるで関心がなかった。御堂家が勢力を拡大し続ける一方、篠原家の資産は年々目減りしている。時代遅れの貿易事業に固執し続けた結果、徐々に市場から取り残され、今では御堂家から回される利益の薄い仕事に頼るしかなくなっていた。それでも絵里香が仕事に身を入れないのは、自力で成功を目指すより、桁違いの名家へ嫁ぎ、有力者の妻として一足飛びに頂点へ上り詰めるほうが賢いと思っているからだ。確かに、絵里香自身の条件は悪くない。以前、怜央は将来有望な名家の息子を何人か紹介しようとしたことがある。ところが絵里香は相手の欠点ばかりをあげつらい、誰一人として気に入らなかった。やがて怜央も匙を投げ、紹介を頼まれてもまともに取り合わなくなった。それでも、これまでは絵里香をそれなりに大切にしてきた。だが紗和を巡る一件を通じて、絵里香が抱える悪意が少しずつ露わになっていった。怜央が罪滅ぼしのように篠原家を支え続けてきたせいで、絵里香はいつしか自分の立場を勘違いし、ついには怜央の結婚にまで口を挟むようになったのだ。今の怜央に、もう遠慮するつもりはなかった。自分のことに口を出すなと、はっきり釘を刺した。絵里香は言い返すこともできず、気まずさをごまかすようにシャンパングラスを一つ手に取り、莉乃へ差し出した。ところが怜央は、さらに追い打ちをかける。「その格好、本当にきれいだと思ってるのか?」絵里香は眉をひそめたものの、さほど気にした様子もなく、その場で軽く身を翻した。「何よ、怜央。このドレスのどこが悪いの?ここに入ってから、もう十数人の男が私を見てたわ」怜央の口元に、冷ややかな嘲笑が浮かんだ。「あいつらは、タダで寝られそうな女かどうか確かめてただけだ」絵里香の顔が一気に赤くなった。そのドレスは胸元が大きく開いているだけでなく、ウエスト部分まで大胆にくり抜かれ、へそまで露わになっていた。言いたいことだけ言うと、怜央は二人をその
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