美玲にしてみれば、莉乃は何の役にも立っていなかった。つい先ほども、美玲が紗和に一言ぶつけただけで、逆に言い返されて腹を立てる羽目になったというのに、莉乃は助け舟一つ出さなかった。そこで美玲は気づいた。莉乃には、紗和と真正面からやり合う度胸がない。征臣を恐れているからだ。美玲の態度からそれを察した莉乃も、これ以上遠回しに探るのはやめた。「美玲さん、もしかして征臣お兄さまのこと、好きなの?」あまりに直球で聞かれ、美玲は一瞬言葉に詰まった。実の兄たちになら、征臣を奪ってでも自分の夫にしたいと平然と言える。だが、他人の前で認めるとなると話は別だった。決して褒められた感情ではないことくらい、美玲自身にもわかっている。自尊心の強い美玲は、自分ほどの女なら男のほうから寄ってくるのが当然だと思っていた。一人の男をめぐって、ほかの女と争うような立場には見られたくない。だからこそ、征臣のほうから自分に夢中になり、紗和を捨てて追いかけてくる形にしたかった。それが美玲にとって、一番体面のいい結末だった。莉乃に本心を見透かされたことで、プライドを傷つけられたような気分になる。「何のことかわからないわ」征臣と紗和の間に割って入ろうとしているなど、どうしても認めたくなかった。だが莉乃は、にこにこと笑っている。「美玲さん、別に隠すことじゃないでしょう?好きなら好きでいいじゃない。征臣お兄さまほどの男なら、好きになる女が大勢いて当然よ」美玲は露骨に苛立った。「好きだなんて言ってないわ。あなたには関係ないでしょう」そこで莉乃は、美玲がなぜ認めたがらないのかを察した。すぐさま、機嫌を取るような口調に変える。「誤解しないで。隠す必要なんてないって言ったのは、美玲さんが二人の間に割り込んだわけじゃないからよ。忘れたの?あなたとお兄さまには、もともと正式な婚約があったでしょう」美玲は、莉乃が突然そんなことを言い出すとは思っていなかった。莉乃はそのまま畳みかける。「人の仲に割って入ったのは、紗和のほうよ。あの女、昔から人のものを横取りするのが好きなの。美玲さんが私のことをどう思ってても構わない。でも、これだけは信じて。私だって、あの女には散々な目に遭わされてきたの。私と怜央くんは幼なじみで、小さい
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