「何だって?莉乃が、誰とホテルに入った?」怜央は一瞬、言われた意味を理解できなかった。妊娠中の莉乃が、別の男とラブホテルへ入った。それだけでも十分すぎるほど衝撃的だった。結婚式まで挙げた自分を差し置いて、ほかの男と関係を持とうとしている。これほどの屈辱はない。だが瀬川の口から返ってきたのは、さらに信じがたい名前だった。「誠一さんです。花宮莉乃は、誠一さんと一緒に入りました」瀬川も、怜央がどれほどの怒りを覚えているか察しているのだろう。「位置情報はすぐ送ります。こちらの者が外で見張っています。入ったばかりなので、当分は出てこないかと……」それだけ告げると、早々に電話を切った。これ以上何か言えば、怒りの矛先が自分に向きかねないと思ったらしい。直後、怜央のスマホへ何枚もの写真が送られてきた。莉乃が誠一の腕に親しげに絡みつき、人目も気にせず耳元へ唇を寄せている。むき出しの欲望を宿した視線が、蛇のように誠一の首筋へ絡みついていた。インド文化では、蛇は欲望の象徴とされる。その一枚の写真だけでも、莉乃がどれほど激しく誠一を求めているのか、十分に伝わってきた。怜央には信じられなかった。瀬川が「当分は出てこない」と言った意味も、嫌というほどわかる。胸の奥で、怒りが一気に燃え上がった。表情から温度が消えていく。――莉乃は、いったいどこまで自分を馬鹿にしていたのか。怜央は乾いた笑いを漏らした。思えば十数年前、莉乃を見つけ、必ず恩を返すと誓ったあの日から、自分はずっと愚かだった。莉乃にとって、自分は金を出してくれる都合のいい存在でしかなかったのだ。怜央はすぐに車を走らせ、瀬川から送られてきた場所へ向かった。一方その頃。征臣に屋敷を追い出された莉乃は、美玲から思いがけない情報を聞き出していた。美玲は、ひどく落ち込んでいる莉乃を見かね、葉山家が進めている案件について少しだけ口を滑らせたのだ。近く大型設備に関する案件が正式発表されれば、葉山グループの株価にも大きな影響が出る可能性がある。今回、葉山家が征臣を訪ねたのも、その設備調達に関する協力を取りつけるためだという。莉乃は有頂天になり、すぐ薫子へ報告しようとした。だが、その前に誠一のことが頭に浮かぶ。ここ数日、莉乃
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