資料には、御堂テクノロジーの破産についての説明は一切なかった。記されていたのは、フォトンテックへの出資計画だけだった。そして、フォトンテックの主要株主として記載されていたのは、怜央の妻――望月紗和だった。それまで一部の株主たちは、怜央の妻は莉乃だと聞かされていた。ところが突然、資料には妻が別にいると書かれている。株主たちは一様に驚いた。御堂怜央の妻は莉乃ではなく、紗和だったのだ。社内外で広まっていた噂とは、まるで違っていた。しかも、その妻である紗和は、すでに一社のテクノロジー企業を実質的に支配していた。その会社は御堂ホールディングスと提携し、上場へ向けて動き始めている。フォトンテックの業績資料は、目を疑うほどの内容だった。わずか数か月で、売上高は100倍に伸びている。資金調達の発表後は、フォトンテックの成長期待が御堂ホールディングスの株価にも波及し、2,000億円規模の資産価値上昇が見込まれていた。短期間で、巨大な収益源が新たに加わるようなものだった。今年度のグループ全体の利益は減少していたものの、株価は13%前後上昇すると予測されている。資料を読み終えた株主たちは、すっかり満足した様子だった。あとは出資と提携が正式に成立し、グループの企業価値とともに自分たちの資産も大きく増えるのを待つだけだ。だが、そこで誰もが同じ疑問を口にした。「御堂社長の判断力と経営手腕に疑いはありません。しかし、これほど重要な会議なのに、フォトンテックの主要株主である奥様が、なぜ出席されていないのでしょうか?」その疑問をきっかけに、ほかの株主たちも次々と不審を抱き始めた。怜央に妻がいること自体は、間違いない。だが、その妻が本当に紗和なのか。そして本当に、フォトンテックの主要株主なのか。それは極めて重要な点だった。肝心の妻本人が姿を見せない以上、この計画書そのものが作られた話ではないかという疑念も生じる。そのときだった。株主総会の会議室の扉が開いた。瀬川に案内され、紗和が株主たちの前へ姿を現した。怜央はそこで初めて、株主たちに紗和を正式な妻として紹介した。以前の紗和なら、この瞬間を夢が叶ったように感じていただろう。ようやく怜央と肩を並べ、すべての人の注目を浴びながら、彼の妻として紹介
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