美咲は以前、紗和のパソコンに保存されていたプロジェクトを、すべて自分のもとへ移していた。紗和は御堂ホールディングスを裏切ったのだから、外へ出たところで行き詰まるに決まっている。そう考え、いずれ自分で使うために取っておいたのだ。その後まもなく、社内では、紗和を雇う者は御堂ホールディングスを敵に回したものとみなすと、怜央が言い渡したという噂が流れた。美咲が得意でいられたのも、ほんの数日だった。紗和が「ヴァルサンダー」を取り戻したと聞き、周囲のエンジニアたちが次々と退職を促されていく中でも、美咲にはこの恵まれた地位を手放す気などなかった。莉乃には、これまで多額の金をつぎ込んできた。普段から食事をおごるだけでなく、200万円以上もするシャネルのバッグまで贈っている。あと少しで昇進できるというのに、ここで解雇されては、あまりにも割に合わなかった。そこで美咲は、あることを思いついた。「ヴァルサンダー」を取り戻した紗和は、どうせ海外へ行く。パソコンに何気なく残していた小さな企画など、今さら気にも留めないだろう。そう考えて、その企画を怜央のもとへ持ち込んだ。すると狙いどおり、美咲は解雇を免れただけでなく、多額の秘密保持料まで受け取り、主任エンジニアに任命された。社内では毎日のように幅を利かせ、主任エンジニアの立場を満喫していた。サミットで資金調達に成功すれば、一気に2,000億円規模のプロジェクト責任者になれる。そんな未来まで思い描いていた。そしてサミットが終わると、予想どおり怜央から呼び出しがかかった。美咲はドアを開け、胸を張って社長室へ入った。だが、少ししてようやく、室内の空気がおかしいことに気づいた。莉乃は目を赤くして美咲をにらみつけ、怜央は険しい顔のまま、彼女を見ようともしなかった。先に口火を切ったのは莉乃だった。「小野寺さん、よくも会社を騙して、あれを自分の製品だと言えたわね。あなたのせいで、私は大勢の前で笑いものになったのよ。本当に最低だわ」美咲の顔から、笑みが消えた。すぐに何が起きたのかを察し、必死に言い訳を始めた。「花宮社長、誤解です。本当に誤解なんです。わざとではありません。望月紗和、あの女がわざと会社の共用USBに残して、私を陥れたんです!」咄嗟に言い逃れを考
Read more