All Chapters of ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です!: Chapter 11 - Chapter 20

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第十一話 九月八日(木) 新計画、始動!

「そういえばさ」 今日はいつもと逆に、ボクとバーシがククの机に集まって、休み時間に雑談。もちろん、シャロンも一緒。「二人のお父さんお母さんって、お仕事何やってるの?」 うちが食堂、バーシが服屋さんなことは、こないだ話したのだけど、そういえば、二人のほうは訊いていなかった。「あー。うち、親父は会社員。かーちゃんは専業主婦」「うちはパパが市役所の職員で、ママが小学校の先生っすね」 へー。というか、シャロンのお母さんの職業が意外。「シャロンは、やっぱり、お母さんのいる学校に通ったの?」「いや。むしろ親子だと、ベンギを図っちゃう可能性があるってんで、ママは、うちの入学と入れ替わりに、学校変わったっす」 なるほどねえ。「学校の先生って、何時ぐらいに帰ってくるの?」「遅いっすよー。七時に帰ってきたら、早いほうっす。生徒が帰った後も、色々やることあるんすよ」 ひょえー。「シャロンは、家帰って誰もいないって、寂しくない?」「まー、慣れたっすねえ」 ボクだったら、帰ったら誰もいなくて、一人モソモソ夕ご飯を食べるとか、耐えられないな……。「じゃあさ、今度四人で遊ばない?」「お、さんせー。シンボクを深めたかったしな!」「この中で、一番家が広いの誰だろ?」 各自のおうち事情を、突き合わせる。 結果、ボクの家に集まろうという話になりました。「でも、アユムとバーシは、火曜以外暇ないんだろ? どうすっかね」「うーん。そこは、お父さんとお母さんに相談してみる」 というわけで、詳しい打ち合わせは明日またすることになり、今日の授業もバリバリ楽しみ、下校となりました。  ◆ ◆ ◆ 「いいわよ」 お父さんたちに相談すると、あっさりお母さんから、火曜以外の休みの許可がもらえました。「ねえ、アルクさん?」 お父さんも、うんうん頷く。「ほんとは、店の手伝いなんかさせず、自由にさせてあげたかったところだからな。適当に休んでもらって、かまわないよ」「うわあ、ありがとう!」 立ち上がって、背後から二人の肩を抱く。「じゃあ、部活の日にちも増やしていいかな?」「いいんじゃない? ねえ?」 お母さんが、お父さんを見る。「ん。青春は一度きり。アユムの好きなようにするといいよ」「ありがとー!」 肩を抱く力に、さらに力を込める
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十二話 九月十日(土) おいでませ! マイ・フレンズ!

 今日は、四人で遊ぶ日! ボクとバーシ、ククとシャロンは、公園の南口を出たところで、家への道が分かれるので、分岐点で待ち合わせ。「こんちゃー!」「ちわっす!」 バーシとオカルト談義と健康談義で暇をつぶしていると、二人がやってきました! お。二人とも、暖かそうで、カジュアル&清楚系な服装。おっしゃれー。 とりあえず、挨拶返し。「バーシムレ先生。先生から見て、二人の服装はどうでしょうか?」 マイクを向けるふりをする。「そうですねー。ククさんは、足が長いので、ジーンズを見事に履きこなしてますね。紺に白袖のスタジャンと、フロントに猛禽の顔のような刺繍の入った、赤いキャップも、よく似合っています。ラフめに揃えた、統一感のあるスタイルですね」 バーシの言う通り、ククはキャップを被っている。もちろん、ボクらの被る帽子は、猫耳が出るようにできている。「シャロンさんは、白で統一した、ワンピースにカーディガン。そして、同じくつば広の白い帽子。清潔感がいいですね、ベンチで、ごろ寝したらもったいない服装です」「えー? 楽しみを取らないでくださいっすよ~」 うーん。趣味・寝ること……なんて人が、実在するんだから世の中広い。隣で批評してる親友は、重度のオカルト趣味だけど。まあ、健康オタクのボクが言えた義理じゃないね。「とりあえず、突っ立っててもしょうがないし、行こうか」「「さんせー!」」 ボクの切り出しで、てくてくと我が家まで歩いていくことになりました。「ただいまー! おじいちゃん、おばあちゃん! 友達を連れてきたよー」 裏口から帰宅!「おかえりなさい。はじめまして。アユムと仲良くしてくれて、ありがとうね」 おばあちゃんが、よっこいしょとこちらにやってくる。「こんにちは。クク・チェンバレンっていいます!」「こんにちはー。シャロン・レーベルトですー」 二人も、脱帽してお辞儀。「おじいちゃんは?」「みんなのために、おやつ作ってるわよ」「わあ! 楽しみ! あ、入ってきちゃって」 ラドネスブルグは、靴のまま室内で過ごす文化なので、みんなそのまま、マットで泥を落として入ってくる。 というわけけで、ボクの部屋へ。「おおう、これはなんとゆーか……」 ボクの部屋は、健康グッズと健康法読本にまみれている。「健康オタクだって、話には聞いていたけど、スゲ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十三話 九月十日(土) おじいちゃんのぽかぽか焼き

「アユム、入っていいかな?」 おじいちゃんの声だ。「どうぞー」「やあ、はじめまして。お菓子ができたのだけどね。食べるかい?」 おじいちゃんが手にしているのは、クッキーと思われるもの。「あ、はい! はじめまして! いただきます! クク・チェンバレンです!」「はじめましてっす。シャロン・レーベルトっす~。いただきますっす~」 というわけで、ありがたくいただくことに。「じゃあ、アユム。マエへさんと茶話してるから、用があったら声をかけておくれ」「はーい」 笑顔を残し、去っていくおじいちゃん。「あ、お名前聞いてなかったっすね」「おじいちゃんは、イクゼっていう名前だよ。マエへっていうのは、おばあちゃん」「お父さんたちは?」 ククが問うてくる。「うーん、一度に全員紹介しても、混乱するだけだと思うから、追々ね。ちなみに、お父さんとお母さんは仕事中」「ハーちゃんは?」 そういえばという感じで、尋ねるバーシ。「お友達のところに、行ってるはずだよ」「そっかー。ハーちゃんにも、二人を紹介したかったなあ」 残念そうに、お菓子をつまむ幼馴染み。「ハーちゃんって、誰ぞ?」 ククも、お菓子をつまむ。「ボクの妹。かわいいんだよ~」 にへら~と、顔が緩む。はい、姉バカです。「へー。会ってみたかったなあ」「また今度ね」 ボクも、お菓子をつまむ。 あ、チョコクッキーだこれ! まだ温かいから、中のチョコチップが、とろけておいし~!「こりゃ、おいしいっすね~」 頷く一同。さすが、おじいちゃん。「ところでアユムっち。ベッド借りていいっすかね?」「あたしが代わりに、ダメ出しするよ。よそ様のうちで、居眠りすんな」 「ちぇ~」と、残念そうなシャロン。ほんとに、この睡魔はどこから湧いてくるのだろう。「そういえばさ、ボランティア部、発足したらまず何やる?」 クッキーをかじりながら、前向きな話をするバーシ。「実はボクに、妙案があるんだよね」 みんなに頭を寄せるようジェスチャーし、六つの猫耳が揃ったところで、こしょこしょと腹案を述べる。「それだ!」「確かに、すごく喜ばれそーだな!」「いいっすねー」 三人とも、好感触!「じゃあ、満場一致で、初活動はこれで!」 クッキーで乾いた喉を、紅茶で潤す。「ところで、うちもなーんかシュミっ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十四話 九月十一日(日) 犬の散歩と、食堂「トマラン」名物料理

「はぁっ……アユ……ム、スゲー、な……はっ、ついてく、ので、精いっぱ……いっ」 背後から、ククの息も絶え絶えな声が聞こえてくる。「無理して、喋んなくていいよ~。もっと、ペース落とそうか?」 一方ボクは、マイペースそのもので、トットットッと、まだ低い朝日差す中、軽快に走行中。これでも、かなり抑えてるんだけどな。「悪、い。落として……」 隣まで下がると、それはもう、バテバテなククがおりまして。片や、お供のワンちゃんのほうは、元気そのもの。「ごめんね。もっと、気を使うべきだったよ」 対するククは、返事する元気も無い様子。途中、自販機の前を通りかかり、ククが「止まって」と、手でジェスチャー。 二人で、そばのベンチに腰掛け、スポドリを飲みます。「ぷはーっ! 生き返ったぁーっ! あたしのほうこそ、自分の体力のなさナメてたわ。もっと、動けるつもりだったんだけどなあ」 深く、ため息を吐く彼女。幸せが逃げちゃうよ?「クゥ~ン」 しっぽを振り振り、甘えた声を出すホリンの頭を、「よーしよし」と撫でる飼い主。 ホリンは長毛種で垂れ耳。黄金色の毛並みがきれい。 そして、何といっても大きい。この子が全力出したら、ククはもとより、ボクもきっと、引きずられちゃうなあ。「やっぱり、ペットの世話って大変?」「そりゃね。特にこいつ、体大きいし。まあ、大きいほうがかっこいいからって、おねだりしたの、あたしなんだけどさ。まさか、ここまでデカくなるとはねー」 愛犬とじゃれ合いながら、答える彼女。「特に犬ってさ、上下関係きっちり教えてやらんと、変な行動しちゃうんだよ。シャロンに、その点猫は楽だよなーって言ったら、猫は猫で、躾ができなくて大変なんだと」 へー。やっぱ、生き物育てるって、大変なんだね。「そろそろ行く?」 空き缶をゴミ箱に入れ、提案。「だな」 ククも立ち上がり、空き缶を捨てる。「今度は、早歩きぐらいで行くから」 というわけで、ペースに気を配りつつ、公園をぐるりと回ったのでした。  ◆ ◆ ◆  ククと別れて、帰宅~! シャワーの後においしい朝食をいただき、バーシたちに、どこで集まろうかと電話する。チャットがないって、不便だなあ。「あ、ねえねえ。うちで、服見てかない?」「それ、いいねえ!」「シャロンにも、自分に合う服探してもらいたい
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十五話 九月十一日(日) ナイススタイリスト、バーシムレ先生!

 さてさて。歯も磨き終わったし、お隣さんに行きまっしょー。「こんにちは~」「こんにちは。いらっしゃい、アユムちゃん」 おばさんにご挨拶。 三人は……と。いたいた。「ククは、今のラフスタイル似合ってるよ。うちには置いてないけど、ミリタリーっぽいのとかも似合うと思うな」「おお。そういう、かっこいい系の、好きだぜ」「やあ、やってますねえ、皆さん」 輪にひょっこり入ると、みんなから「待ってたよー」と嬉しい言葉をもらう。「クク、確かにミリタリー似合いそうだよね」「うんうん。良ければ、取り寄せようか?」「そうだなー。かーちゃんと相談してみる」 まあ、服もボクら中学生には、高い買い物だからね。「うちは、どんなのが合うっすかね?」「シャロンのお母さんは、ああいうフェミニンなのばかり選ぶの?」「っす」 「うーん」と唸り、考え込むバーシ。「フェミニン、似合ってないわけじゃないけど、シャロンってもっと、自由人なイメージあるのよね。とりあえず、カジュアルから試してみようか」 ハンガーをかき分け、品定めしていく我らが先生。「とりあえず、これどう?」 黒い文字がプリントされた黄の長袖に、薄青のショートパンツと黒のニーソックスを当てる。「どう? 二人の意見も聞きたい」「うーん。悪くないと思うよ?」 悪くはない。でも、なーんか一味足りない。「あたし的には、ちょっとシャロンのイメージとは違う気もするな。フェミニンを見慣れすぎたせいかもしんねーけど」「っすね。選んでもらって悪いっすけど、なんか違う感がするっす」 再び考え込む、バーシ先生。「いっそ、これで攻めてみる?」 先生が選んだのは、パンクルック。チョーカーの棘が、実にシゲキ的!「ぶははは! いや、これはこれで、ぶっ飛び過ぎだって!」 大爆笑する凸凹コンビ。ボクも、つられて笑いそうだよ。「あー、すまないっす。選んでもらったのに」「大丈夫。私も、半分冗談で当ててみただけだから」「ていうか、この店、こんな派手なのもあったんだね」 バーシも冗談だったとわかり、我慢をやめて、くすくす笑う。「まーね。お母さんが、気まぐれで仕入れちゃったのよ」 というわけで、次の品定めにいくバーシ先生だけれども。「あ、そうだ。シャロン猫飼ってたよね」 と言って、黒い猫のシルエットが描かれた、左肩の出
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十六話 九月十二日(月) ツンツンハーちゃん

「おねーちゃん、ちょっとキモいんだけど」 対面で、眉をしかめるハーちゃん。 我が妹・ハーちゃんは、ごはんを食べるのが遅い。なので、先に食べ終わったボクは、にまにまと、かわいいハーちゃんが、ごはんを食べる姿を眺めていたのです。「お気になさらず~。かわいいハーちゃんを、見てるだけだから」「それが、キモいんだってば」 ハーちゃんは、ちょっと反抗期。ボクには特に訪れなかったものだけど、これがもう、かわいくてかわいくて。無理して大人ぶってるのがエモ! ボクに何を言っても無駄と悟ったのか、両手に持ったトーストを、黙々とかじります。うーん、その姿もハムスターみたいでかわいい! やっとこ、ごちそうさました後は、歯を磨きに行きます。ボクもまだだったので、同行~。「ちょっとー、ついてこないでよー」「だって、ボクも歯磨きまだだもん」 諦めたように、歯を磨く妹。ふふ、かわいい~。ツレないところがまた、いいんだよね~。「終わったから、好きなだけ磨いて」「はいはーい」 こうして、朝の平和なひとときが過ぎていくのでした。  ◆ ◆ ◆ 「それにしても、ハーちゃんと道が別々になっちゃったのは、寂しいなー」 バーシと、ぽてぽて通学路を歩いていると、思わず大きなため息。幸せが逃げちゃうな。 小学生の頃は、三人で一緒に通ったものだけど。「どしたの。一週間目で、ホームシックならぬ妹シック?」「そうかも。かわいいハーちゃんと、一緒に歩きたい~!」 腕をぶんぶん振る。「私も、あんな時期があったからわかるけど、ハーちゃんも難しいお年頃でしょ? そっとしといてあげなよ」「バーシにも反抗期ってあったの?」「ありましたよー。すぐ治っちゃったけどね」 へー。「ハーちゃんの場合、いつまで続くのかなあ?」「さー? 人それぞれとしか言いようがないねー。私の場合、かなり珍しい早さで治ったみたいよ?」 ほむ。今の、ツンツンしてるハーちゃんもかわいいけど、やっぱり、「おねーちゃん、おねーちゃん」ってベタベタしてたころが恋しいな。 「ふう」と、もう一度大きなため息。ああ、幸せが逃げていく……。  ◆ ◆ ◆ 「反抗期?」 お昼休みに、せっかくだから凸凹コンビにも話を振ってみる。「あたしは……親があんまり口出ししてこねーから、経験ねーな。せいぜい、部屋に入ってこないでく
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十七話 九月十三日(火) 雪溶けハーちゃん

 今朝も、ハーちゃんを避けながらの生活。つらいなあ。 他に悩みを打ち明けられそうな人……あ! 一番頼れそうな人たちを、すこーんと意識の外にやっていた! 今日はお店がオフだから、お父さんたちに悩みを打ち明ける、いいチャンスかもしれない。 よし、学校から帰ったら、さっそく相談してみよう!  ◆ ◆ ◆ 「なるほどねえ。道理で、昨日から様子が変だと……」 お悩み相談室と化した、我が家のリビング。 目をぱちくりさせて、ボクの変わりぶりを理解するお母さん。「そうかー。もう、そんな年頃かー」 お父さんは、ハーちゃんが反抗期であることに、やっとこ気づいた感じだ。「母さん、女の子の反抗期って、そんな早いのかい?」「早いですよ。ほんとに早い子は、小三で突入しますから」 「へえ」と、変な感心をする、ボクとお父さん。「ボク、どうしたらいいのかなあ。シャロンには、そっとしておくべきって言われたけど、ボク、もう耐えられないよ……!」「そんな、一日で大げさな……。ほんと、シスコンねえ」 ため息を吐くお母さん。お母さんも、幸せ逃げちゃうよ?「俺は、洗濯物別にしてくれとか言わないから、てっきり反抗期まだだと思ってたよ」「私たち、あまり子どもたちに構ってあげられませんからね。ハーちゃんを構い倒すアユムに、白羽の矢が立ったんじゃないかしら」「うう……」 心の底から、しょんぼりする。「とりあえず、わかりました。アユムもつらいでしょうけど、下手に刺激してもいけないし、お母さんたちに任せて?」「うん……。ありがとう」 項垂れたまま、リビングを後にするのでした。  ◆ ◆ ◆  その日の夕食。「ねえ、ハーちゃん」「何?」 お母さんの呼びかけに、妹が返事する。「お姉ちゃんのこと、好き? 嫌い?」「んぐっ!?」 唐突かつ直球な質問に、ボクとハーちゃんが喉をつまらせる。「えほっ……唐突に、変なこと訊かないでよー!」 水でごはんを流し込み、抗議する彼女。ボクも、水で流し込む。こんな変なことで、姉妹シンクロしなくても。「好き? 嫌い?」 お母さんは、穏やかな笑みを浮かべながら、ハーちゃんに再度問う。「……好きでも嫌いでもないっつーか、その、ちょっと鬱陶しいだけ……」 ぐさっ。「じゃあ、嫌いなの?」「だから、鬱陶しいだけ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十八話 九月十四日(水) ボランティア部、始動!

「ごめんなさいね。ここしか取れなくて」 放課後、もらいたてホヤホヤの部室で、ネコザキ先生が恐縮する。 部室といっても、小狭い用具室。まあ、ボクら五人ならそんなに狭苦しいってほどでもないかな。だいたいボクらは、部の性質上、校外活動が多くなるし。「いえいえ。ありがとうございます。ところで、ここの用具はボクらが使っても?」 モップを手に、尋ねてみる。「それが、ダメなのよ。これはこれで、学校で使うからって」 肩をすくめる先生。「やっぱ、持ってきて良かったな!」 ビニール袋から、雑巾を取り出すクク。「だね!」 バーシはバケツ。「これ、かさばったっすー」 シャロンは、ほうきとちりとり。「あら、準備がいいわねえ」 目を丸くする、ネコザキ先生。「昨日、校長先生とばったり会って、部費とかのこと、訊いてみたんです。そしたら、まだ先になるって。なんで、持参しました」 「なるほど」と、頷く彼女。「じゃあ先生。目的地に行きましょうか」「ああ、もうボランティア先決めてるのね? そういうことは、早く言ってくれないと」「すみません。今後、気をつけます」 一同お辞儀。「とりあえず、バスで行くようなところなんで、バスに乗りましょう」「わかりました。行き先はどこですか?」 先生のしっぽが、ぴこぴこ動く。先生なのに、かわいいなって思ってしまったり。「セント・ミマモル教会です」「あら? あそこって……」「はい。廃教会です」 再び、目を丸くする先生。「そんなとこ掃除して、どうするの?」「そんなところだから、なんです。どうしても、ダメですか?」「いえ。街の美化にはなりますから、構いませんけど……。わかりました。行き先を職員室に残してくるので、みなさんは準備を進めててください」 「はーい」と、先生が出ていったのを確認して、ジャージに着替えるのでした。  ◆ ◆ ◆  教会までは、バスで三十分ほど。地味に遠い。まあ、バスだから回り道もするからね。「そういえば、先生ってお父さんがヤマトの方ですよね?」「ええ」「じゃあ、お豆腐を手に入れる方法、ご存じないですか?」 ダメ元で訊いてみる。「入手方法なら、あるわよ。家の近くにヤマト人街があってね。いつも飲んでるお茶も、そこで手に入れてるの。あまり、規模は大きくないんだけどね。お豆腐もよ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第十九話 九月十五日(木) ヤマト街を巡ろう! ―前編―

「よーし! また一段と、きれいになったな!」 例の廃教会で、額の汗を拭いながら、いい顔をするクク。「っすね。あと一息で、内側は完璧っすね」「外壁は……危ないから、一階をモップがけするぐらいになっちゃうけど、いい?」 隣に佇むアイちゃんに尋ねるバーシ。今日は彼女も、念動力でお掃除に参加しました。「はい。もう、十分すぎるぐらいで……」 両ほっぺに手を当てて、笑顔のアイちゃん。「今回が終わっても、定期的にお掃除にこなきゃだからね。寂しい思いは、なるべくさせないよ」 笑顔を向けると、彼女も笑顔を返す。「お疲れ様でした。職員室で、お茶飲ませてあげるわね」「いいんですか? あの緑のお茶、どんな味か楽しみだったんスよ!」 顔を、ぱあっと輝かせるクク。 緑茶、前世のボクが知ってるのと同じ味かな? 楽しみだなあ。「じゃあ、また来週ね!」 みんなでアイちゃんに手を振り、バス停に向かうのでした。  ◆ ◆ ◆ 「へえ! 緑茶って甘いんですねえ!?」 職員室で、初緑茶の味に驚く、ボク除く三人。緑茶は、ボクの前世が知っている味だった。「これ、砂糖とか入ってないんすよね?」 シャロンも興味深げだ。「砂糖なんか入れたら、かえって変な味になっちゃうわよ。まあ、抹茶っていうお茶を使った、スイーツもあるけどね」 「へ~」と、またも三人から感心の声。「ボク、前世では抹茶スイーツ、食べたことなかったなあ……」 ドクターに止められちゃってね。「あら、じゃあ今度、みんなでヤマト人街めぐりする?」 「したいです!」と四人ですごい食いつき。「さすがに、これを部活動と言い張るのは無理だから、土曜か日曜にしましょう?」「あ、じゃあ土曜でいいですか? 日曜はお店のヘルプ頼まれてて」 恐縮して挙手。「みんなが構わなければ、先生は土曜でもいいけど。どう?」 三人から、「異議なーし」の反応。「じゃあ、次の土曜に決定! 九時に校門前でいいかしらね?」 「はい!」と一同。 いやー、楽しみだなあ。まさか、こんな身近に、ヤマト食品への道が拓けていたとは。  ◆ ◆ ◆  バーシと一緒に校門に来ると、茶色い乗用車が停まっていました。中には、先生とククシャロコンビの姿。「おはよーございまーす」「おはよう。乗っちゃって。あんまり長々と路駐するのもよ
last updateLast Updated : 2026-07-10
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第二十話 九月十七日(土) ヤマト街を巡ろう! ―後編―

 お茶屋さんを立ち、次に通りかかったのは和菓子屋。「へえ、丸っこくて可愛いっすねえ。なんか、ゲームに出てくるスライムみたいっす」「それ、水まんじゅうっていうんだよ。……ですよね、先生?」「え、ええ。ほんとに詳しいのね」 ボクの前世知識に、舌を巻く彼女。「これも食ってみてーなー」「さすがに、お茶以上おごるのは、他の生徒に対して、えこひいきになっちゃうから、自分のお小遣いでお願いね」「りょーかいっすー。このスライムくん、食べちゃうっすよー」 というわけで、ククシャロコンビは水まんじゅう。バーシは花形の練りきり、ボクは前世から一度食べてみたかった、栗羊羹を注文。先生は、お土産として何か一箱と、自分用に茶饅頭を買ったようです。「なんです、それ?」 箱の中身を尋ねる。「おせんべいっていってね、ポリポリしてておいしいのよ。……って、トマルナーさんには説明不要かな?」「あはは。はい。知ってます、それも」 肩をすくめる先生。 ともかくも、和風なイートインで、いただきます宣言して、一同ぱくっ! うわあ、羊羹ってこんなに甘いんだあ! ほっぺが落ちそう~。「もっと、お小遣い持ってくれば良かったな~。私もお土産買いたかったわ」「まあ、また今度ね。お店とお菓子は逃げないから」 ちょっと残念そうなバーシを、慰める先生。 サービスで出された緑茶をいただき、ごちそうさま。おいしかった~! というわけで和菓子屋を出て、ヤマト街を練り歩くボクたち。「わ! きれー!」 バーシが反応したのは、呉服屋さん。「和服っていってね、洋服とはちょっと違うのよ。さすがの私も、持ってないんだけど」「そうなんですか……って、たっか! ……あ」 うっかり大声で叫んでしまい、口に手を当てるバーシ。「……高いですね」「そうね。絹で作ってるし、手織りだから」「はー……。でも、ほんときれいですねえ」 金地に牡丹をあしらった柄に、見惚れる幼馴染み。「うちでも売れないかなあ、これ」「どうかしらね? 私は商売のことは、よくわからないから」 ククやシャロンも、興味深そうに他の着物を眺めている。 ボクはというと、今ひとつ。やっぱり、女性ものって、いまいち興味湧かないんだよね。だからって、紋付き袴なんてもっと興味ないけど。和服にも、ユニセクシャルがあればいいのに。「他に、回
last updateLast Updated : 2026-07-10
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