ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です! のすべてのチャプター: チャプター 51 - チャプター 60

62 チャプター

第五十一話 十月二日(月) 放課後に、いろいろと

「ねー。ちょっと、ひらめいたことがるんだけど」 帰り道、公園でバーシが後ろ向きに歩きながら、なにやら提案してくる。「危ないよ、そんな歩き方」「じゃあ、止まって話す。えっとね、部活のどっちかの日を、アイちゃんにあててほしいの」「こないだ、掃除終わったばかりじゃない。遊びに行ってあげたいのは山々だけど、ボクら、やらなきゃいけないボランティア多いし」 首を傾げ、顔を見合わせるボクとシャロン。「すっごく、大事なことなんだ。アイちゃんをね……って、クク、聞いてる?」「ふぇっ!? あ、ああ。すまん。何の話?」 ため息ついて、顔を見合わせるボクら三人。お昼からククは、ずっとこんな調子だ。シャロンの恋心判明が、よっぽど衝撃的だったのだろう。 これは、シャロンの背中も押して、早々に決着させてあげるべきだなあ。「えっとね、部活のどっちかの日で、アイちゃんに会いたいの。ちょっと耳貸して」 みんなで、バーシの口元に耳を近づける。 そして、彼女の真意は……。「ええーっ!?」 思わずびっくり! しばらく四人で話し合ったけど、バーシの決意は固いようだ。 ……どーなるんだろ、この計画。「あと、もいっこ。今度の土曜は、私の誕生日だよー。招待するね!」「あ、それだったら、うち来ね? かーちゃん、焼き菓子作るの上手くてさ、プロ顔負けだぜ」 一同から、「おおー!」と声が上がる。「ククのうち、バス停近い?」 ちょっと、考えるバーシ。「歩いて数分。バーシんたちんとこ、通る路線だぜ。ほら、初めて教会行ったとき、乗り合わせたろ?」 ああ、そういえば。「じゃあ、よっぽど大荷物じゃなきゃ大丈夫かな」「いや、何買わせる気だよ」 クク、少し調子が戻ってきたみたいだ。「プレゼントかー。やっぱオカルトグッズがいい?」 バーシといえば、オカルト。オカルトといえば、バーシ。「おまかせ~。心がこもってれば、何でも嬉しいよ」 ふふ、と微笑む。我が恋人ながら、チャーミングな笑顔だ。「あ、そうだ。パパとママに、予定変えてもらわないといけないっすね」 ん? と首を傾げるボクら。「土曜、家族でピクニック行く予定だったんす」 これに、ククが「ええーっ!?」と大声を出す。「お前、そういうの嫌じゃなかったか!?」「今回は、自分から言いだしたんすよ。ママに、サンドイッチ作って
last update最終更新日 : 2026-07-10
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第五十二話 十月三日(火) はじめて

「バ~シ~! あっそびーましょー!」 ストルバック家裏口から、バーシの部屋に声をかける。「お、アユムち~ん。今行くから、待ってて~」 バーシが窓を開け、返事する。 今日は、両家とも定休日。普通なら、家族の付き合いを優先するとこだけど、今のボクらの関係は、普通ではないのデス。 しばし待っていると、おばさんが出てくる。「アユムちゃん、いらっしゃい。私たちね、これからでかけるのよ。お留守番してるバーシと、遊んであげてちょうだいね」 おや。おばさんおじさん、それにおばあさんにおじいさんまで、車に乗り込んでしまった。完全に、二人きりかー。「お待たせ~」 バーシさんが、やっと現れましたよ。部屋着じゃなく、やけに気合の入った服装だ。メイクもバッチリ。「きれいだよ、バーシ」「やーだー! もう、キーザー!」 ぺしっと叩かれる。ふふ、照れちゃって。「とりあえず、入って入って」 というわけで、おじゃましまーす。 ◆ ◆ ◆「なんか……二人きりだと思うと、緊張するね」 リビングで並んで腰掛けながら、正直な気持ちを言う。「私も。ほら」 バーシがボクの手を取り、自分の胸に当てる。そのことに、まずドキドキしてしまう。バーシの胸に、手が当たってるんだもの。当の彼女も、心臓がすごい速さで動いてる。 無言で見つめ合う、ボクたち。 ただそうしているだけでも、すごく幸せな気持ちだ。「ねえ」 沈黙を、バーシが破る。「一昨日の続き、しよ?」 間違いなく、あれのことだ。こくりと頷く、ボク。 彼女が、ゆっくり押し倒してきた。それに一切抵抗せず、受け入れる。「アユム……かわいいよ……」 心臓が、ドクンドクンいってる。顔を近づけてくる、バーシ。「ちょっと恥ずかしいから、目、つぶって?」 言われたとおりにする。すると、唇に柔らかいものが触れた。 互いの、ファーストキスを捧げあう。 二度目の人生にして、初めての恋人とのキス。 彼女の、唇の感覚を愉しむ。柔らかいな。気持ちいいな。……あっ。バーシの舌が、ボクの唇をつついてきた。 それを受け入れ、舌を絡ませ合う。すごい。すごく変な感じ。でも、とろけそう。 いつまでそうしていただろう。少し息苦しくなって、唇を離す。 目を開けると、とろんとした目つきで、頬を紅く染めたバーシがそこにいた。
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第五十三話 十月四日(水) アイ

「バーシムレさん……というか、みんな。本気なのね?」 車を運転しながら、ネコザキ先生が尋ねてくる。「はい。よく話し合って、決めました」 バーシが、ボクらを代表して宣言した。「この間、出会って、友達になったばかりなのになあ……」 泣きそうな声を出す、クク。「だからだよ。早めにしないと、逆に辛くなるよ」 やはり、バーシの決意は固い。 ボクらは今日、アイちゃんを天国へ送るために教会に向かっている。 ボクだって、ククと同じ気持ちだ。ケーキを幸せそうに食べていた、アイちゃん入りククの姿が忘れられない。 でも、バーシの言うことも真理。こうやって、思い出を積み重ねていくほど、別れが辛くなる。 そして、アイちゃんが現世に縛られ続けるのは、やはり幸せなことではないと思う。「着きましたよ」 とうとう、来てしまった。覚悟を決めて、車を降りるボクたち。「アーイちゃん! 遊びに来たよ!」 中に入ると、バーシが努めて明るい声で呼びかける。「わあ、みなさん! 今週も来てくれるなんて!」 スウッ……っと、彼女が現れる。「じゃ、クク。お願い」「お、おう……。アイちゃん。ちょっと、あたしん中に入ってくれるかな?」「はい! お外で遊ぶんですね?」 違うんだ。違うんだ、アイちゃん。でも、それは言わない。 以前よりあっさり、ククに入り込む彼女。「アイちゃん」「はい! 今日は、何して遊ぶんですか!?」「ちょっと、お絵描きしよっか」 震える声を必死に堪えながら、バーシが提案する。「いいですね! やりましょう、やりましょう!」 四十八色入り色鉛筆と、画用紙を、バーシが取り出す。 こうして、心の奥底に切ない計画を秘めながら、お絵描きが始まった。 ◆ ◆ ◆「う~ん。次は、何描きましょう?」 色鉛筆を、ぺちぺちと頬に当てる、アイちゃんクク。ボクらも、適当に色々と描いている。「ユーフラジーが見たいな! 私たち、なるべく詳しく描いた、ユーフラジーが見たい!」 バーシが、無理して明るい口調で言う。「いいですね! 任せてください! ユーフラジーのこと、いっときも忘れたことがありませんから!」 辛い。ククの意識があったら、号泣してそうだ。先生とシャロンは、辛さをごまかせないのか、それを忘れるように、無言で自分のお絵描きをしている。シャロンの白猫が、ケット
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第五十四話 十月五日(木) 起伏の激しい、ここ最近

「トマルナーさん!」「……? はい!」 給食時間中、ぼーっとしていたボクは、クラスメイトの言葉で現実に引き戻される。「フォーク、止まってるよ? どしたの、ぼーっとして」 時計を見れば、五分以上も固まってたようだ。「うわ、教えてくれてありがと!」 大急ぎで、食事を再開する。どうしたものかと、ため息を吐くクラスメイトたち。幸せ逃げさせちゃって、ゴメン。 ◆ ◆ ◆「アユムも、そんなだったか。あたしも、食欲全然出なくてさ。でも、残すのは悪ぃから、頑張ってかっこんだけど」 昼休み。ボクら四人、みんなあんな調子だったらしい。「辛いっすね……。いや、姉さんを差し置いて、言う台詞じゃないっすけど」 シャロンが、首を横に振る。この計画で一番辛いのは、人形を縫っているククだろう。お別れのための作業を、一人進める。なんと、孤独で辛い作業だろうか。「今度は、自分が姉さんを助ける番っす! 辛いときは、いつでも言ってくださいっす! 辛さを、分かち合うことぐらいしか、できないっすけど……」「いや、それで十分嬉しいよ。辛くなったら、呼ぶから来てくれよな」「うす!」 ご近所の、幼馴染みの強みだなー。 幼馴染みといえば、もう一人、辛い思いをしてる子がいた。「バーシも、いつでもボクに言ってよね」「うん……」 俯いたまま言う、思案顔の計画発案者。辛くないわけがない。「せめてさ!」 パン! と手を打つ。「バーシの誕生日は、楽しくやろう? そっちも、大事なイベントだよ?」「そだな。何かスマン、バーシ」「いや、別に謝るほどのことでも」 わたわた手を振る、マイラバー。「そういや、ケーキの好みとかあるか?」「うーん、割と何でも好きだよ?」「そっか。じゃあ、お任せってことでいいな」 ケーキの内容は、クク……というか、ククのお母さんの考えに、任されたようだ。「今日は、お年寄りの話し相手っすね」「ジェネレーションギャップ、すごく感じそうだなー」「ボクとバーシは、おじいちゃんたちと歳が近ければ、話合わせやすいかなあ?」 などと、凸凹コンビとわちゃわちゃ相談。「バーシ」「ん?」「バーシのやってることは、正しいって! 自信、持と?」 会話に参加してこない恋人の肩を、ぺーんと叩く。「おおう。うん、あり
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第五十五話 十月六日(金) キューピッド、がんばるぞー!

「アユムさん、アユムさん」「なんですかな、バーシさんや?」 お手々つないで登校中、彼女が不意に呼びかけてきた。「私たち、シャロンのキュ……キューペットだっけ?」「キューピッド?」「そう、それ。それに、なってあげるべきだと思うのですよ」 さすがバーシ、異世界の天使だか神様だかにも、興味津々ですねえ。 でも、確かに二人の仲を進展させたいところ。だって、ボクらこんなに幸せなんだもん! シャロンとククだって、幸せにしてあげたい!「でも、具体的にどうする?」「うーん、それは歩きながら考えましょ」 というわけで、作戦会議しながら学校に向かうのでした。 ◆ ◆ ◆「おはよー!」「おーう! おはよーさん!」「はよっす!」 凸凹コンビやクラスメイトから、挨拶が返ってくる。爽やかな朝だねえ!「ねえねえ、クク、シャロン。帰り、寄り道してかない?」「最近、ママそういうの、うるさく言わなくなったんで、かまわないっすよ。距離次第っすけど」「同じく」 やはり、レーベルト家はいい方向に進んでいる。「いやね。帰り道の公園で、くつろぐのもいいかなあって思って」「そのぐらいだったら、全然OKっすよ」「あたしも」「じゃー、決まり!」 帰りが楽しみー! ◆ ◆ ◆「なにげに、この公園でくつろぐって初めてかもなー」 ククの髪が、そよ風になびく。こういうの、絵になるよねー、ククは。「そだね。帰りに通り抜けるだけか、朝の散歩だけだもんね」 児童公園ではないので、子供の頃、バーシと遊ぶこともあまりなかったなあ。 さ・て。 バーシと顔を見合わせ、頷き合う。「ククさ~ん、ちょっとこっちへ~」「おお? なんぞ?」 ククの背中を押し、ベンチへ連れて行く。バーシも同様に、離れたベンチへ、シャロンを連れて行った。「なんだよ、一体」「クク。ボクとバーシ、最近すごく幸せなんだよねー」 にこ~と、微笑む。「お、おう。そりゃ良かったな。おめでとさん」「でね! ククとシャロンにも、幸せになってもらいたいわけですよ、ズバリ!」 ぽん、と手を打つ。「ああ、そうきたかー……。いやさ、シャロンのことは好きだよ? でも、あたしの好きってのは、あくまでも姉妹愛なんだよ」「ほんとに、ほんとに?」 圧迫面接。「バーシの見立ては、本物だよ。シャロンの愛も
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第五十六話 十月七日(土) ハッピーバースデー、バーシムレ!

「楽しみだな~」 手をつなぎながら、バスの中。バーシは、この上なく上機嫌。「家でもパーティーするんだよね?」「うん、夜にね。アユムくんは、なにくれるのかな~?」「それは、向こうでのお楽しみ~」 肩を預けてくるので、ボクも預ける。見事なバカップルぶりだと、我ながら思う。 そんな二人の世界を作っていると、目的のバス停に着きました。 降車すると、シャロンがちょこんと立っていた。「待ってたっす~」「おまたせ~。ククは?」「姉さんなら、家で準備中っす」 とりあえず、シャロンの先導に従って歩いて行く。「そういえば、あれからどう?」 バーシが、興味津々といった様子で尋ねる。「もー、ごろにゃんと甘えまくったっす~! 膝枕してもらったりー、抱っこしてもらったり~」 とろけた顔を向けてくる。ぐるぐると、猫なで声も出しそうな勢いだ。ボクら、もうその声出せないけど。「それはそれで、積極的だねー」「うふふ。姉さん、拒まないっすから。もう、幸せで、どっかに飛んでいっちゃいそうっすよ~」 ほんとに、翼でも生えて飛んでいきそうだ。「あ、ここっす」 「チェンバレン」と表札に書かれた家の、インタホンを押すシャロン。「はーい、どなたー?」「うちっす。二人が来たっすよ!」「おー、今行くわ」 ややあって、ドアからククが出てくる。「おまたー」「はーい、こんちわー。じゃ、上がらせてもらうね」 上がると、ホリンがしっぽを振って近づいてきた。「おー、今朝ぶりー。上機嫌だねー」 ボクらのしっぽ振りは不機嫌、犬のしっぽ振りは上機嫌なのだから面白い。前世のボクは、これ、知らなかったみたいだ。「用意カンペキだぜー。ダイニングに来なよ」 ククと一緒に、ダイニングへ。数珠つなぎになった色紙のリングで、飾り付けられている。「おばさんとおじさんは?」「邪魔しちゃ悪いからって、ケーキ作り終わったら、シャロンとこ行ったよ」 へー。こっちも、家族ぐるみのお付き合いなんだね。「ほい、ケーキ」 ククが、小さめのホールケーキを置く。四人分だからね。て、ショートケーキ!? この世界にもあったんだ!「ネコザキ先生がさ、ヤマト生まれのケーキのレシピ教えてくれてさ。かーちゃんに作ってもらったんよ」 へー。そういえば、ショートケーキは日本生まれって、何かで
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第五十七話 十月八日(日) チェンバレン一家

 今日は、お店番。ウェイトレスとして、かいがいしく働いています。 おっと、呼び鈴が。「いらっしゃいませ! ……あ」「よ。来たぜー」 ククと……おばさんにおじさんかな? おばさん、恰幅がいいですねえ。ククのスタイルの良さは、おじさんに似たのかな?「あなたがアユムちゃん? いつも、娘がお世話になって~」「はい。ええと、ご挨拶は後ほど。三名様でよろしいでしょうか?」 いきなり、距離感ゼロで来る人だなー、おばさん。なんか、調子狂うな。こういうとこは、ククに遺伝してるな。初日に、いきなり「友達にならないか」って、声かけられたっけ。「そうね。お仕事の邪魔しちゃ悪いわよね。案内してくれる?」「かしこまりました」 というわけで、四人がけのテーブルを勧める。「ここ、サーモンとイクラとほうれん草のスパゲッティーがうまいんだぜ! アユム、あたしそれと、コーヒーフロート」 ククが、うちの名物をプッシュしてくれる。ありがたや。「そう? じゃあワタシはそれと、このケーキを」「僕も、そのスパゲッティーと白ワインを」「かしこまりました」 お父さんにオーダーを伝えて厨房から出ると、「今、お客さん少ないから、お友達のご家族とお話してて大丈夫よ」と、お母さんに言われる。「ありがとう!」と言って、ククのテーブルへ。「お話しの許可が出たよ。アユム・トマルナーです。ククとは、仲良くさせていただいてます」 ぺこりとお辞儀。「今後も、うちの子をよろしくね。ククの話だと、なんでも健康にすごく関心があるんですって?」「はい。長生きが夢なので」 へー、と感心するおばさん。「なにか、いいダイエット方法、知らないかしら?」「そうですねえ。やはり、ジョギングがおすすめですね。なんなら、ただの散歩でもいいダイエットになりますよ」「やっぱり、運動と食事になるのねえ。ラクして痩せる方法ないかしら」 ため息を吐くおばさん。幸せが逃げますよー? しかし、個性の強い人だなー。「かーちゃん。あたしも、アユムと話したいんだけど? 夫婦の会話でも、しててくれよなー」「あら、ごめんね」 おばさんは、おじさんとの会話に入りました。「アユム。実はさ、あたしらも……」 小声で言いながら、ちょんちょんと、自分の唇を指差すクク。「わお! おめでとう!」「やべーわ、やみつきになりそう」 ひ
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第五十八話 十月九日(月) 死後の幸せ

「ねえ、クク」「なんぞ?」「最近、明るいね?」 朝の散歩中、ククに話題を振る。「そりゃまあ、今、恋してるしな!」 ふんすと、胸を反らす彼女。「その、さ。ユーフラジー作るの、もう辛くないの?」「辛いよ。でも、その上で突っ切ることにした。やっぱ、アイちゃんは天国でかつての仲間たちと、幸せに暮らすべきなんだ。だから、アイちゃんを幸せにするんだと思って、糸を通しているよ」 ボクと、同じ回答に至ったようだ。「だよね。いつごろ完成しそう?」「水曜には間に合わせる。だから、次の部活でお披露目だな」「そか」 しばし、無言で歩を進める。「アイちゃんも、誕生日に呼びたかったな」「そーすっと、誕生会の間、あたしの記憶がなくなるからな。それは切ねえ」 ままならないものだね。 なんだかしんみりしたムードのまま、出口に着いてしまった。「じゃあ、また学校で! ホリンも、明日またね!」「おう! 帰るぞー、ホリン」 ボクも、帰路につく。 ある意味、ユーフラジー再現計画が失敗に終わることを、願っている自分がいる。でも、それはよくない考えだと、頭を振る。 お別れしたくないよ、アイちゃん……。 いけない、いけないな。肝心のククが、吹っ切ろうとしてるのに。ここに来て、決心が揺らいでいる。 思考を行ったり来たりさせながら、気づけば家に戻ってました。 ◆ ◆ ◆「アユム。ついに明後日だね」 昼休み。バーシたちが、きりりとした表情で、ボクの机にやってくる。「うん。やっぱり、やるんだよね……」「アユム。吹っ切ろうぜ。頼むよ。あたし、くじけちゃうじゃんかよ」「ごめん」 こういうとき、頼りになる大人に相談したい……。あ。「ねえ。ネコザキ先生とも、よく話してみない?」「……そっすね。そういえば、先生の意見は、あんまよく聞かずに、決めちゃったっすね」「職員室、行こう」 席を立ち、四人で先生のもとへ向かうのでした。 ◆ ◆ ◆「あら、みんなそろってどうしたの?」「その、明後日のことでお話が……」「ああ、なるほど……」 ボクらの真剣な表情で、察してくれたらしい。「ちょっと、場所変えましょうか。すみません、音楽室お借りします」 キーを取る先生。ともに、ゆっくり話せる環境に向かう。 ◆ ◆ ◆ 音楽室の机を動かし、輪になるボクら。 それぞれの
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第五十九話 十月十日(火) カムアウト!

 今日もヤマト街に繰り出して、帰宅。こないだから、話そう話そうと思っていて、話せなかったことに、やっと決心がついた。「ええと、家族のみんなに、打ち明けたいことがあります。ちょっと、集まってほしいんだ」 お父さんたちが、なんだなんだと、ボクに招かれるままに、ダイニングに集まる。「あのね……。ボク、バーシと付き合い始めた。恋人として」 えーっ! という絶叫に包まれる一同。「本気か、アユム」 おじいちゃんが、困惑を絵に描いたような顔で尋ねてくるので、こくりと頷く。脱力するおじいちゃん。「冗談でしょう?」 おばあちゃんも困惑。今度は、首を横に振る。「はあ……。仲がいいのは結構だが、そういう関係とは……」 お父さん、頭を抱えて下を向いちゃった。「お母さん、こないだの夜遊びで、ちょっと臭いなーと思ってたけど、ほんとにそうだったなんて……」 この中では一番理解のありそうなお母さんも、ショックは隠せないようだ。 でも、一番ショックを受けてるのは……。「お姉ちゃんのバカ! なんで私じゃないの!?」 ハーちゃん、ボロボロと涙をこぼして、怒り泣き。「ハーちゃん。お母さんと約束したでしょ。ボクとハーちゃんはね、そういう仲には……」「うっさい、バカーッ!」 乱暴に立ち上がり、そのまま駆け出してしまう。「おい、ハーちゃん!」 お父さんとお母さんが、慌ててあとを追いかける。「アユム、その、考え直す気はないのかい?」 力なく、尋ねてくるおじいちゃん。「うん。ボク、今サイコーに幸せ。誰に言われても、友達に戻るつもりはないよ。キスも済ませたし」「キッスだと!? ああ……ちょっと、休んでくる」 おじいちゃん、去ってしまいました。「イクゼさん……。はあ……。孫の顔、見たかったけどねえ」 おばあちゃんも、顔が渋い。「それについては、本当にごめんね。前世だと、女同士で子供作れる技術があったんだけど。だから、結婚したら養子でも取るよ」「簡単に言ってくれるねえ……。ちょっと、イクゼさんが心配だから、見てくるわ」 ボク一人になっちゃった。 ハーちゃんが気になるな。こういうとき、ハーちゃんが行くところといえば……。 二階へ上がるための階段に向かう。 あ、やっぱり。お父さんと、お母さんがいた。「ハーちゃん、出てきて」「しょうがない、鍵を
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第六十話 十月十一日(水) SO LONG

「はァッ!?」 お昼休み、昨日家族に、バーシとの関係を告白したことを、当の本人と凸凹カップルに告げると、驚愕とか呆れとか、何か色々混じってそうな、変な大声が三人から上がる。「しーっ。クラスのみんなには、内緒だよ」「って、アユムねえ……私に、一言相談しなさいよ!」「それは、ほんとごめん。祝福してもらえると思ったら、なんか真逆の反応でさ」 右手で顔を覆い、首を振るバーシ。「これ、私も家族に、ハッキリ言わなきゃいけない流れじゃん……」「ほんと、ごめんて」 恋人に、深く頭を下げる。ボク、さっそく尻に敷かれてるね。「しっかし、ダイタンっすねえ~。パパとママに姉さんとのこと言ったら、どうなるやら、想像もつかないっす」「だなー。うちらはまだ、内緒にしとこうな」 肩をすくめる二人。「まあ、ボクから言うべき話は以上だけど、今日、一番大事なユーフラジーの出来栄えは?」「ああ。こんな感じにしてみたんだが……」 ククが、巾着袋から、ぼろい人形を取り出す。「え! 新品じゃないの?」「新品も新品だぜ。ただ、火事から十四年だろ? で、その前もアイちゃんが愛用しててさ。だから、わざとくたびれた感じに作ったんだ」 はー……。器用なもんだ。「シャロンは、いいお嫁さんゲットしたねえ」「ちょ、恥ずかしいこと言わないでほしいっす!」「お、おう! あたしまでその……照れるじゃねえか……」 もじもじする二人。「ちょっと~。私がいいお嫁さんに、なれないみたいじゃない」「そうは言ってないよ~」 バーシに責められてしまった。どうも、昨日から歯車がうまく回らないな。アイちゃんを送るときに、響かなきゃいいけど。 そんなこんなで、なんだか調子が狂ったまま、放課後を迎えるのでした。 ◆ ◆ ◆「着きましたよ」 車を、教会近くに停車させる先生。ついに、この時が来てしまった。 みんな、表情が険しい。「そんなじゃ、アイちゃんにニセモノだってバレちゃうよ。スマイル、スマイ~ル」 にっと、指で口角を上げ笑顔を作る。「なんだよ。お前だって、できてないじゃんか」「んー……バーシ」「何? ちょ、やめ! 私、脇腹弱いの!」 彼女の脇腹を、くすぐり回す。「緊張、ほぐれた?」「ふー……おかげさまで。お返し!」「やーめー! あははは!」 逆襲されてしまった~!「姉さん
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