ボク、女の子に生まれ変わったけど、元気です! のすべてのチャプター: チャプター 41 - チャプター 50

62 チャプター

第四十一話 九月二十七日(水) ちびっこと遊ぼう!

 ネコザキ先生が、「ヤマト街西・児童館前」というアナウンスに会わせてボタンを押すと、バス内に、ピンポンという音が響く。 というわけで、今日はいつもの先生の車ではなく、バスで児童館にやってきました。名前の通り、ヤマト街近くみたいです。「うっへっへ~。ちびっこの相手、楽しみだなー」 やたら浮かれているククを見ると、ボクまで気分が高揚してくるな。 今日のシャロンは、バスで爆睡してました。いつもの調子が戻ってきたようで。「ごめんなさいね、こんな遠くまで。どうしても、私詳しいの、この辺になっちゃって……」 先生が、ちょこんと頭を下げる。「いえいえ! 遠くの子たちと触れ合うのも、風情ですよ!」 よくわからないフォローを入れる、バーシ。「お邪魔します。お電話差し上げた、ネコザキと、うちの生徒です」 先生が入館して、館長さんらしきおじさんに頭を下げる。「どうもどうも。館長のカトウです。今日は、子どもたちの面倒を、見ていただけるということで」「はい。ボランティア部の活動の一環として、お手伝いさせていただきます。みんな、ご挨拶」「よろしくお願いします!」 一同、お辞儀。「こちらこそ、よろしく。今日は、四人遊びに来てましてね」 館長さんに案内されながら、「ごらくしつ」と書かれた部屋に入る。「みんなー。今日は、お姉さんたちが遊び相手をしてくれるよー。ご挨拶ー」 テーブルでブロック遊びしていた四人が、とてとてと並ぶ。「アメリです!」 ボクら、無言で仰天。ネコザキ先生と同名な上に、容姿まで「先生が子供まで若返ったら、こんな感じだろうなー」という姿。 思わず先生と見比べると、当の先生が一番ビックリしていた。しっぽがぶわっと。「ミケよ、よろしくね!」 次は、三毛髪ロングの女の子。身長を見るに、この中では、一番お姉さんのようだ。といっても、ハーちゃんよりも小さい。「クロです。よろしくお願いします……」 黒髪ロングの、ちょっと、内気そうな子。でも、なんか、とてもしっかりしてそう。「ノーラだ! よろしくなー」 これまた、元気そうな子。黒髪ショートだけど、茶のブチが所々入っている。「では、私は事務室に戻っているので、なにかあったら声をかけてください」「はい、それでは」 衝撃から立ち直った先生が、館長さんとご挨拶を交わす。「おおー。何して遊ぶー
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第四十二話 九月二十八日(木) 念動能力者 VS 発火能力者!?

「ふぃ~っ……! よくまあ、これだけ好き勝手に、捨ててくれるもんだねえ」 部活のゴミ拾い中、ククが額の汗を拭いながら、不満をこぼす。 ここ、ルンドンベアはきれいな街だけど、悲しいかな、やはり心無い人というのはいる。 例えば、植え込みに煙草の吸い殻。喫煙者のマナーが良くなったなんていわれるけど、こうしてゴミ拾いしていると、どうにも実感できない。火事にでもなったら、どうするのだろう。 実際、吸い殻に限らず、拾っても拾っても出てくる、細々としたゴミに、ちょっとボクらは疲れていた。「こっちは空き缶だー。もうちょっと歩けば、ゴミ箱あるのになー」 今度は、バーシの愚痴。どうも、アイちゃんや子供の相手と比べると、士気が下がっちゃうねー。「くはあ~……」 シャロンは大あくび。マイペースだね。ことシャロンに関しては、良くも悪くも、一時期の不安定な感じがなくなってきたようで、何より。 ネコザキ先生は、ゴミ袋広げて、ボクらの取得物を回収する係。「もう、いっぱい! 二袋め持ってくるから、待ってて」 そう言って、トランクにゴミをしまいに行く先生。この後、収集所に持っていく予定です。 とりあえず、ボクらは休憩。「疲れますなー。アユムさんや」「そだねー。なので、ボクは少しでも楽しくなる方法を、今、ひらめきました」「ほうほう?」 空き瓶をトングで拾って、掲げる。「例えば、これ捨てた人。栄養ドリンクの空き瓶だから、きっと、バリバリの営業マン。この辺で営業周りしてたわけですよ」「おお、名推理!」 ポンと手を打つバーシ。「なーんて風に、推理したり、背景を考えながらゴミ拾いすると、ちょっと楽しくなるかも?」「なるほどね! ククー! シャロンー!」 さっそく、ゴミ拾いが楽しくなるかもしれない方法を、向こうのチームに伝授しにいく幼馴染み。 二人も、うんうん頷いていて、興味深そう。「お待たせしました。再開しましょう」「はーい!」 先生が戻ってきたので、少し場所を移動しながら、再開。「この吸い殻――」 バーシが、短くなったタバコを拾い上げる。「発火能力者の仕業ね!」 なんか、妄想劇場が、開幕変な方向に行ったー!「この男は、ここで、もう一人の超能力者とバトルしてたのよ! 見て、この煙草の袋!」 吸い殻を小袋に入れ、ねじられた
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第四十三話 九月二十九日(金) ドキドキの!? 水着選び!

「どうぞー。入って入って」 放課後、みんなでバーシのお店へ。おじゃましまーすと、ぞろぞろ入店。「でね。今年の新作水着を、取り揃えてみました!」 じゃん! と、腕を広げ、水着コーナーを見せびらかすバーシ。一同から、「おお~」と声が上がる。「誰からいくー?」 楽しそうに、立てた両人差し指を揺らすバーシ先生。「んじゃあ、あたしからいってみっか。女は度胸!」「お、一番手! えっとねー。クク、スタイルいいから、ぶっちゃけ、セパレートが似合うと思うのよ」 そう言って取り出したのは、白、黄、赤のセパレート。前世でいう、ビキニだ。「うえ~。小っ恥ずかしいなあ」「絶対似合うってー。十三歳と思えないぐらい、背も高いし、手足長いし。出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んでるし。ぶっちゃけ、スタイル羨ましすぎ」 そう言って、ククにとりあえず黄色を手渡す。「恥ずいな~。シャロン、どう思う?」「見たいっす! 姉さんのそのセパレート、すっごい見たいっす!」 ふんすと、鼻息が荒い。「そうか~? まあ、お前がそう言うなら……。でもなあ……。うーん。何かあと一つ、勇気くれ!」「うちの瞳を見てくださいっす! このアコガレの眼差しを!」 シャロンの瞳が、キラキラと輝いている。「おおぅ……。なんて純粋な瞳だ……。わかった! あたしも女だ! セパレートにする! 色は、お前が選んでくれ!」「やったっす! えーと……うーん?」 三種を見比べるシャロン。「うん! やっぱり姉さんには、太陽の黄色が似合うっす!」「よし、それで!」「お買い上げ、ありがとうございまーす! おかーさーん、お友達価格ってことで、十%引きできないかなー?」 レジで店番してるおばさんに問うと、快くOKサインが出る。「やったね! じゃあ、十%引きで。次どっちいくー?」 ボクとシャロンを交互に見るバーシ。「姉さんがいったなら、次鋒はうちっすかね」「シャロンは、ワンピースのほうが、似合うと思うんだよね」 青系で、無地、猫のシルエット入り、イルカのシルエット入りの、三種を出す。「んでさらに、シャロンは、寒色が似合うと思うんだー。とりあえず三つ、私センスで選んでみたけど、どう?」「確かに、うち暖色のイメージじゃないっすね。で、体もヒンソなので、確かにセパレートはビミョーっす。ただ、無地はなんかピン
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第四十四話 九月二十九日(金) 水の楽園! ①

「たっだいま~」 裏口から帰宅すると、愛しの妹が、例によってRPGのレベルアップに勤しんでおりました。「ハーちゃん、ハーちゃん。お隣さんが、水着を入荷しましたよー」「知ってるー。さっき買ったから」 な、なんだってー!?「ハーちゃああああん! 今から、一緒に買いに行こうと思ったのにいいいいい!」「だって、おねーちゃん、何時に帰ってくるかわかんないんだもん。あんまり遅くなると、フーちゃん危ないし」「そりゃ、そうだけど~」 とほほ。「逆に、おねーちゃんの買い物に付き合おうか?」「ごめん、こっちもそれ終わっちゃった」「なんだ、おねーちゃんも自分のぶん、さっさと買っちゃったんじゃない」 ぐうの音も出ない。「じゃあ、どんなの買ったか、見せあいっこしよう!」「ええ~恥ずかしいな~……。そりゃあ、おねーちゃんに見てもらいたいのは山々だけど? わざわざ、そのためだけに着替えるのも、ちょっとっていうかー」 うにゅう。まあ、ゲームもいいとこっぽいしねえ。「くぅ~っ! わかった! 明日の楽しみに取っとく! その代わり、ボクのかっこいいのも見てよね。ふふふ」「うん! 楽しみにしてて! 私も、楽しみにしてる!」 うふふ~。じゃあ、今日はさくっとお風呂入って、宿題して休みましょーっと。明日、いーっぱい遊びたいもんねー。 ◆ ◆ ◆ 翌朝。バーシと三人でバスに乗って、駅へGO! 次のバス停で、フーちゃんも乗り合わせてきました。「ハーちゃん、お姉さん方、おはようございます」「おっはよー」 みんなで、フーちゃんにご挨拶。 雑談しながら駅に着くと、見慣れた二人の姿がありました。「ククー、シャロン~。おはよー!」「おーっす!」「はよっすー!」 全員で挨拶を交わし合う。「えーと、こっちの子がハーちゃんかな?」 ククは、髪色で判断したようです。フーちゃん黒髪だからね。「はじめまして、ハーシル・トマルナーです」 ぺこりとお辞儀。ふふ、猫被っちゃって。「ハーちゃんのお友達の、フローラ・ルルナーシュです。はじめまして!」 フーちゃんも、自己紹介。「あたしは、クク・チェンバレン」「シャロン・レーベルトっす。ハーちゃんとは、二度目っすね」 凸凹サイドも自己紹介。「じゃ、電車乗ろー」「おー!」 みんなで切符を買い、切ってもらう。自動改札がな
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第四十五話 九月三十日(土) 水の楽園! ②

「うおー! 一番、ククチェンバレン、入るぜー!」「だーめ。準備運動が先でーす」 プールに突撃しようとするククを、制する。「そっすよ、姉さん。足つったら、その日一日、遊ぶどころじゃなくなるっす」「むう、シャロンまで……。わーったよ。じゃ、アユムセンセ、お手本よろしく~」「りょーかーい。ハーちゃんたちも、ボクの真似してね」 いっちにーと、足伸ばしや屈伸など、準備運動を黙々と進める。 それにしても、屋内でヤシの木育ててるんだ。ラドネスブルグで、見れるとは思わなかったな。 ほかにも、おっきな滑り台とか、寝そべる椅子とか、いかにもレジャープールです! って感じのものが、目立つ。 温水プールだけあって、室温は暖か。なんなら、湿気もあって暑いぐらい。「準備運動おわりー。熱中症になるから、プールだからって油断せずに、こまめに水分補給してね」「熱中症ってなんぞ?」 首を傾げる、ククほか一同。しまった。こっちじゃ、一般的じゃない名前だったか。えーっと、こっちだと何だったかな……そうだ!「ごめん。日射病の間違い。太陽なんか差してないけど、内容は同じだから、気をつけて。ボクの、前世知識を信じてほしい」「アユムの前世知識なら、信じる! みんなも、ね!?」 バーシの気迫に気圧されて、「は、はい……」となる一同。注意事項は、こんなもんかな?「じゃー、泳ごうか」「あの! アユムおねーさん!」 フーちゃんが、おずおずと挙手。「わたし、その、全然泳げなくて……。泳ぎ、教えていただけますか?」「いいよー」 と応えたはいいけど、ハーちゃんの視線が……。「フーちゃん! 私が、教えてあげる!」「え、あの、わたし、お姉さんが……」 なんか、バチバチしてるぅ~! お母さんに指摘されたあとで見ると、確かにこりゃ、嫉妬劇場だ。「えーと、二人にはボクらの誰かがついてなきゃだから、ボクが二人の面倒見るよ」「うーん、まあ、それでいいや」「よろしくお願いします」 ふう。ハーちゃんが、落ち着いてくれたようで、何より。「じゃあ、小児用プール行こうね。みんなー。ボクは二人と一緒に、小児用プール行ってるからー」 伝言は伝わったようで、プールに入ろうとしていたバーシが、頷きながら手を振る。 ◆ ◆ ◆ というわけで、小児用プール。ハーちゃんたちよりも小さな子
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第四十六話 九月三十日(土) 水の楽園! ③

 売店のドリンクで給水だけして、凸凹コンビを探す……。あ、いたいた。フロートマットに注目して探したら、案の定、シャロンがすやすや寝てました。それを追うように、クク。 この流水プールは輪っか状になってるので、二人が近づいてくるのを待つ。 きたきた。ざぶん。「お、アユム。バーシとは別行動?」「うん。ハーちゃんたち、この深さだと危ないからね」 けんけんしながら、二人で会話。「シャロンはずっとこんな感じ?」「ん。なんてーかさ、こいつがこうやって、安らかに寝てるの見ると、ちょっとホッとするんだよな。『ああ、今、家の中の嫌なこと忘れられてるんだな』って」 愛おしそうに、シャロンを見る彼女。「まあ、最近じゃ、家庭環境ずいぶんマシになったみたいだから、そんな感傷に浸らなくても、いいんだろうけど。習慣だな」 ククの表情は、どこまでも優しい。シャロンの耳が、ピクピクしてる。ボクらの会話が、夢の中で聞こえてるのかな。「そっか。ところで、そろそろごはんにしない? ほら」 中央の大時計を顔で指し示すと、お昼どきが近づいていた。「あや、もうそんな時間か。どれ、眠り姫様を起こすとしますかね」「ボクは、バーシたち呼んでくるね。あそこの売店で、何か買って食べよう」 先ほど、ドリンクを買った売店を指し示す。「らじゃー。じゃ!」「うん、じゃあね」 というわけで、三人を呼びに行くのでした。 ◆ ◆ ◆「バーシ、ありがとうね。思いっきり、羽が伸ばせたよ」「どういたしまして。フーちゃん、手を添えてあげれば、顔上げてバチャバチャできるようになったよ」「すごいすごい!」 拍手。「おねーちゃーん。私も褒めてー」「ハーちゃんも、去年より泳ぎ上手くなってるね!」 頭を撫でる。「ふっふーん! でしょー?」 ドヤ顔。「ところで、お昼にしない? ククたちを、待たせてるんだ」「あ、ほんとだ。もう、こんな時間! 二人とも、ごはん食べに行こー」 「はーい」と応じる、ハーフーコンビ。 では、参りましょうか。 ◆ ◆ ◆「お待たせー」「おー、待ってたぜー」 ククが、テーブルでドリンクを飲みながら気さくに応える。「ふわあ……まだ眠いっす……」 むにゅむにゅしてるシャロン。今まで浮き沈みが激しかったから、この調子を見ると、安心する。「じゃあ、行こ
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第四十七話 九月三十日(土) 水の楽園! ④

「おー! 波打ってるねえ!」「っすねえ!」 プールの波打ち際を見て、なんだかハイになっている凸凹コンビ。 ボクも、前世でも今生でも、映像でしか波打ち際なんて見たことないから、作り物とはいえ、ちょっと感動。「姉さん! 波打ち際といえば、アレやりたいっす! 『やったな、こいつぅ~』のアレっす!」 ちょっと、興奮気味なシャロン。暖かい国への旅行とかは、映画とかでもよくあるシチュなので、シャロンたちにもおなじみのシーンだったりします。「いいな! やるかー!」 ククも、ノリがいい。「アユムー! 私たちもやろ!」 バーシも。「まあ、かまわないけど」「あー! ずるーい! おねーちゃん、私ともやろー!」「わたしもいいですか!?」 ハーフーコンビにも、お願いされてしまう。 というわけで、ボクだけなぜか、三方向から水をばちゃばちゃかけられ、「やったな~、こいつぅ!」と、お約束の台詞とともに、順繰りにかけ返すのでした。「ちょっとストップ! さすがに、三方向同時攻撃への対応は疲れる! 一旦、やめやめ!」 さすがのボクも、ギブアップ。君たち、いつまでやる気なの。なんか、普通に一対一でのどかにかけあいっこしてる凸凹コンビが羨ましい。 「えー?」と不満そうな三人だけど、フィジカル自慢なボクが、肩で息してるの見て、諦めてくれたみたいです。「はー……」 波打ち際に座って、一休み。心地いいな。ほんとの海も、こんな感じなのかな。 ハーフーコンビは、二人でかけあいっこし始めました。ボクが間に入ると空気がおかしくなるけど、やっぱ親友なんだなーと思ったり。「よっと」 バーシが、隣に腰掛けてきた。「いいとこに、プールが出来たよねー」「そうだね」 何気ない会話。なんだろう。なんだか、いいムード。押し寄せ、返す波の感触が心地良い。「アユムってさ、恋愛対象って、男、女どっち?」 いたずらっぽい微笑を浮かべ、問いかけてくるバーシ。なんだか色っぽくて、ドキッとしてしまう。「わかんない。わかんないけど……ちょっと今、バーシにドキッとした」「え、マジ? マジで言ってる?」 頬を赤らめる彼女。「マジ」「そっかー。マジかー」 なんか、照れくさそうに、指で床をくりくりする幼馴染み。 ボクは多分、彼女に対して、友情以上のものを感じている。 ボクの魂の奥底に、男の
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第四十八話 九月三十日(土) バーシムレ

 コイビトか~……。 ベッドにボフッと倒れ込み、疲れた体を休めつつ、柔らかな感触を味わう。 家が隣だったし、家族ぐるみの付き合いもあったから、自然と仲良くなった女の子。 ボクが小学校に上がるか上がらないかという頃に、前世の記憶が戻ってしまい、大混乱する中、実の親も含め、周りの大人たちは心配こそすれど、記憶の混乱とお医者様にも言われ、信じてくれなかった。 そんな中、たった一人、心の底から信じてくれた君。 この世でただ一人の、ボクの完全な理解者。 思春期を迎えると、君の何気ない仕草にドキッとすることが、何度もあった。 ボクは、やっぱり本質的に男の子なのだろうか? そんな疑問をいだき始めていた頃、学校の授業で、ジェンダーの問題について教わった。同性を好きになるのは、おかしなことではないと。 でもそれは、ますますボクを混乱させた。ボクは、女なのか、男なのか、ナニモノなのだろうかと。 この問題は、バーシにも家族にも、教師にもどうにもできなくて、一人で悩む日々が続いた。 そしてあるとき、「心の奥底を十%ぐらい、前世の男の子が間借りしている」という、自分なりの結論を得た。 これが、正しい理解なのかはわからない。 ただ、はっきりと言えるのは、女装やメイクこそ未だに抵抗があるけど、ボクは自分が女であることは嫌ではないし、決して男ではないということ。 それだけは、なんというか、魂で理解できる。前世の男の子は、心の奥底でボクに色々影響を与えているけれど、ボクから主導権は奪っていない。 その上で、バーシが好きだ。だから、これは精神的にも同性愛なんだ。 バーシ。明るくて。優しくて。……ちょっと変わっていて。そんな彼女が、好きで、好きで、大好きで。 一歩進んだ関係を、周りに打ち明けたらどうなるだろう。 お母さんは、なんだかんだで受け入れてくれそうだな。お父さんと、おじいちゃん、おばあちゃんはショックを受けるかもしれないな。 ククとシャロンは、祝福してくれると思う。ほかのクラスメイトは、どうかな? ちょっと、予想がつかない。 バーシと電話で話したいな。でも、おじいちゃんとかに聞かれたら、どうしよう。 こんなとき、この世界にもスマホがあったらなあと思う。そしたら、二人でこっそり、とりとめのない会話を、いつまでもできるのに。 体は疲れてるのに、興奮して、
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第四十九話 十月一日(日) ね、デートしよ?

 今日もお店の手伝いを終え、湯上がりにくつろいでいると、裏口のインタホンが鳴りました。「はーい、どちら様……おや、バーシ」 彼女が相変わらずオシャレな格好で、ドアの向こうに立ってました。「どしたの?」「アユム、外着に着替えて、うち来れない?」 と言った後に、「少し、お金持って」と、小声で付け加えてくる。 はて、お金? 霊感グッズでも、売りつけようってんじゃないだろうね? まさかね。 そんなわけで、ストルバック家にお邪魔することになりました。 ◆ ◆ ◆ で、バーシの部屋。相変わらず、変な人形とか、よくわからないお札とか、オカルト雑誌なんかが、無駄にきれいに並べられている。変な夢とか見ないのかな、これ。「とりあえず、お金持ってきたけど、何するの? 霊能儀式?」「違う違う! 抜け出してさ、デートしよ!」「ええっ!? もう夜になっちゃうよ!?」 唐突な提案に、びっくり。ボク、これでもヒンコーホーセーですよ?「それがいいんじゃない! 夜の抜け出し……青春してると思わない!?」 バーシが、身を乗り出してくる。見えそで見えない胸元に、ドキドキ。「でも、家族にはアイちゃんのとき、さんざん心配かけたし……」 照れくさくて、胸元から視線を外す。「なーに、後ろめたい?」 それを、別の気まずさと受け取ったようだ。「私がお金出すからさ、映画見に行こうよ! アユムが出すのは、ポップコーン代ぐらいでいいから」 ああ。だから、お金持ってきてって話だったんだ。 どうしよう。バーシとは、デートしたい。でも、家族に心配もかけたくない。「どうしても、今じゃなきゃダメ? 明日とかさ……」「上映遅いのよ、あの映画。ねえ、ダメ?」 身を乗り出した姿勢のまま、上目遣いで見つめてくる。吸い込まれそうな瞳だ。「わかった……行くよ」 そんな瞳に、ヤラれました。 ◆ ◆ ◆ というわけで、映画館。 宣言通り、チケット代はバーシが出してくれました。外は日がもうすぐ完全に沈む。いいのかなあ……。 今更か。 中に入っていく。ちなみに、何見るかというと、恋愛映画。それも、女同士の。 実はバーシ、これでホラー映画のたぐいは、一切見ない。「作り物なのがわかってるから、面白くもなんともない」んだそうで。マニアだねえ。 ポップコーンとドリンクを買い、座席へ。ボクら
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第五十話 十月二日(月) しっぽのきもち

「そういえば、不審者捕まったらしいぜ」「うんうん! 昨日、家族に聞いた~」 毎度おなじみ、朝の散歩。昨夜のドキドキデートの話は伏せておいて、ククと雑談中。「これからは、運動をもっと早い時間に戻せるな~」 う~んと伸びをしながら、朝の陽光を満喫する。「本来、いつぐらいの時間なん?」「んー? 大体、日の昇り始め。ボク、いつもそのぐらいに、自然に目が覚めるんだよね」「はやっ! いや、マジでニワトリか! さすがに、その時間に付き合うのはきついな~」 ニワトリが、豆鉄砲食らったような顔をするクク。「そっかー。まあ、こうやって重り着けて散歩するのも、結構いい運動になるし、ククと話してると楽しいし、今のままでもいいかな」 腕を上に伸ばして組み、にゅいんにゅいんと左右に振る。「ほんと元気だな~」「ありがとう。最高の褒め言葉だよ」 元気。それは、ボクにとってかけがえのない宝の一つ!「おっと、出口だ。じゃあ、また学校でな~」「はーい!」 というわけで、出口でお別れ。さーて、帰りは走りますかー! ◆ ◆ ◆「でさー。ヤマト街のジンジャがね、けっこーうなパワースポットらしいのよ」「へー。やっぱ、行く気?」 お昼。四人でククの机囲んで、お話し中なわけだけど。「なー。お前ら、さっきからずっと、二人で喋ってね?」 ククに、バーシと喋りっぱなしなことを指摘され、ハッとなる。「ごめん。無視してたわけじゃないよ?」「うんうん」 むう。なーんか、ボクらを見る、ククの目が……。「二人とも、ちょっと。シャロンは、ちょっと待っててな。あたしん席に座ってていいから」「うす! 姉さんのカンショク、タンノーさせてもらうっす!」「変態オヤジみたいなこと言うなや。ま、とりあえず行こうか」 そんなこんなで、ククに肩を抱かれて、人気のないあたりに連行される。「何、クク? こんなところ連れてきてさ」「……オメーら、デキただろ」 ドキーン! 思わず、しっぽがブワッとなる。「ビンゴか。そっかー、ついにデキたかー」 腕組みして、うんうん頷く彼女。「はー……。カンが鋭いですなあ、ククさんは」 バーシも動揺から立ち直り、感心する。ボクらのしっぽというのは、どうにも正直なもので、ごまかしが効かない。「でも、自分のことにはニブい
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