All Chapters of 『裏切者は赦さない。愚かな奴らを一刀両断、追い込みをかける』── 陰謀 ──: Chapter 21 - Chapter 28

28 Chapters

21 ◇婚約者の言動

  本日のお洒落コーデは、くすみピンクのニットにグレーのデニム。 肩の部分が少しだけ覗くニットは女性らしい柔らかさがあり、ゆったりとした袖が全体を優しい印象に見せてくれる。 耳にはお気に入りのゴールドのピアスをつけ、ブラウンのバッグを手に家を出た。 涼と会うからといって特別気合いを入れたわけではない。 それでも少しくらいは可愛く見られたいと思う自分がいて、結局いつものお気に入りを選んでいた。 鏡に映る私は普段と何も変わらない。 だけど心の中だけは違った。 今日の私はデートに行くためではなく、涼とのこれからを確かめるために家を出たのだから。 涼とはこれまで何度か行ったことのあるお店でLunchを摂った。  この季節にしてはお昼時というのもあって、ポカポカ陽気で良い天気だった。 そのせいか心もつられて、パッと明るい気持ちで涼と接することができた。 食事のあと、涼の車に乗り込んだ。 この時までのふたりの会話は他愛のないものばかり。 涼は確か、話したいことがあると言っていたはずなのだが。 話を早く聞きたい自分がいたが、こちらから催促するのは嫌だった。 涼はなかなか切り出せないような何か、爆弾発言でも言い出すつもりなのか? 例えば『私に悪いことをしたので、私が嫌悪感を捨てられないようならお別れしよう』とか『別れることになっても仕方がない』とか? ヤダっ。 こんな酷いことされたのに私が振られるような形になるの? ヤダヤダ。 別れるのなら、振るのは私でなきゃ許せない。 ……などと、車中であれこれ嫌な妄想をしていたら、涼の住むマンションの前まで来ていた。「希樹、コーヒー入れるから飲んでって、話もゆっくりしたいし。」「うん、じゃあ、いただこうかな。涼のおいしいコーヒー」 涼の部屋に入るのは何度目だろう。 濃い木目の家具と落ち着いた色合いのソファ。 大きな窓の向こうから差し込む陽射しが、部屋全体を柔らかく照らしている。  落ち着いたブラウンを基調としたリビングは相変わらず綺麗に片付いていて、余計な物がほとんど見当たらない。 窓から差し込む午後の光がガラステーブルの上で反射し、その向こうには二人掛けのソファと観葉植物が静かに佇んでいる。 壁際にはテレビボードとベッドが整然と並び、この部屋の主の几帳面な性格を物
last updateLast Updated : 2026-07-26
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22 ◇危機は脱出できた?

 なんとか、希樹との婚約破棄は免れたと言っていいだろう。 実は、今後の婚約続行そのまま結婚という流れに際して、希樹から 先日の話し合いで条件が出されていた。 それは今のままだと不安は払拭されない。  だから俺が今の職場を辞めて遠方へ住居を移し、転職するって ことがその条件なのだ。 そして愛結には2度と会って欲しくない、ということも言われている。  希樹からこの条件を持ち出された時、正直俺はびっくりした。  まさか、そんな条件をつけてくるとは! だけどその時の俺は思った。  ここで決裂するわけにはいかない。 婚約破棄すれば必ず両親、祖父母、親戚筋まで皆から理由を 聞かれるのは必至。 親友の婚約者と付き合い、キスしてたなんて知れたら、それこそ 身の破滅が待っているだけ。 それでなくても自分には優秀な兄がおり、破門もしくは絶縁したところで 彼らにとって痛くも痒くもない存在で、悲しいかなそれこそが俺の立ち位置 なのだ。 そんなことになれば、未来永劫谷村一族から破門され、2度と 谷村の敷居は跨げまい。 この事が何を意味するか、すなわち相続する権利を剥奪され無一文で 放り出されるということにほかならない。  跡継ぎでないにしろ、普通に過ごしていれば億単位の相続が 約束されているのだ。    一時、余所の会社で修行してくるという名目でここを離れても、絶縁では ないのならいずれ時を見て、一族の会社に返り咲くことも可能だろう。  今は何とか希樹の機嫌を損ねないことが、先決だった。  俺はすぐさま、希樹の要望を飲んだ。   希樹は俺の本気度に感激している様子。  俺はほっとした。  これでひとまず最悪のシナリオから脱出できた……と、そう 思えたからだ。
last updateLast Updated : 2026-07-27
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23 ◇再構築

   一度失くした信用は100%戻らない……戻すことは不可能。 だから、私は涼に1つの条件を出した。   思いの外、涼がすぐに私の要望を飲んでくれたこともあり、再構築を決めた。            ◇ ◇ ◇ ◇ 久しぶりに希樹からメールをもらい、週末に会うことになった。  結局俺と愛結は別れることになったのだが……。    希樹の話によると、もう一度涼を信じてやり直すと言うことだった。「涼の信頼度は地に落ちたけどね。  周りから見たら馬鹿な女と思われるかもだけど、悔いを 残さないために一度は彼にチャンスをあげようって思うの」  希樹は寂しそうに言った。 「今後物理的にふたりが会えないようにすることにしたわ。  涼にはお父さんの会社を辞めてもらって、私たちはこの地を離れて 遠方で暮らすことにしたの」 「すんなり涼はOKしなかったんじゃないのか?」 「ふっふっふ……。  それが、私も吃驚なんだけど、私とやり直すためなら火の中水の中って いう感じ。二つ返事で新天地へ行って転職するって」 「すごいっ、希樹、愛されてるんだな」 「どうだろう~。  その辺は案外微妙ぅ~かもしんないけど……。 浮気する人たちってすぐヨリが戻るっていうから、結婚するなら この辺はきっちり〆とかないとね。 私もね、もし涼が待ってほしいとかって少しでも躊躇するところが 見えたら、婚約はやめようって決めてたんだけど。 ところで、二輝は今どんな感じ? 寂しいと思うけど」*「そうだな、寂しくないと言えば嘘になるけど── 俺は希樹みたいには相手を許せなかったからしようがないよ。  とにかくしばらくは、仕事に没頭するさっ。  ところで、新天地とやらは結婚
last updateLast Updated : 2026-07-28
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24 ◇妊娠という爆弾

  その後、寂しくシングルライフを送っていた俺に、新たな試練が待受けていた。 3月、愛結の両親から会ってほしいと連絡がきた。 今頃何を話すことがあるというのだ。 俺はNOと拒絶した。 「電話で言うことじゃないけど、むっ、娘が妊娠してるのよ」 愛結の母親が声を抑えて叫んだ。 「はぁ~~~! 」 (避妊してましたけど……。それ一体誰の子なんだよっ!)「誰の子ですか?」「二輝くんしか考えられないって娘は言ってるの」  俺は素早く過去の行いを振り返る。 希樹からの情報を貰った少し前に、確かに俺と愛結はイタしていた。 だが、ゴムは付けていてちゃんと避妊はしていたはず。 父親が涼の可能性もないわけではないが、今頃になってのこの展開に嫌な汗が流れた。「妊娠は確実なんですか?」「病院で貰ってきたエコーもあるわ」 佐倉の母親の爆弾発言でその後、我が家にて両家が集まり婚約破棄は一旦白紙に戻すこととなった。 俺の両親は身体の関係があったわけではないので、今回は不問にして子のためにやり直してはどうか、という気持ちに変化していった。 そして俺は、命の重さ、子の人生を思うと心中複雑で心が揺れた。 その後愛結からは、毎日のように、子のためにやり直してほしいとメールが届くようになっていた。 俺からの色よい返事がないとわかると、やり直してもらえないようなら中絶する、というようなことを言い始めた。  本気か、それとも俺からの良い返事を貰うための嘘なのか、正直判断に悩むが、そんないいぐさを聞いて益々、気持ちは愛結から離れていった。 
last updateLast Updated : 2026-07-29
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25 ◇怖い女

  こんな風に気持ちがない状態で結婚してもよいのか?  子供のことは大事だが。 あーっ、何か突破口はないのか……。 俺は折衷案を出した。 出産のあとにDNA検査をして自分の子だとわかったら、結婚するか認知のみにするか、その時に決めると。 今すぐの結婚の約束はないと伝えた。 こんな状況で信用できない人間を相手に、今すぐの約束なんてムチャだ。これが俺の精一杯の譲歩だった。 俺の両親も賛成してくれた。 愛結の両親も愛結もそれでいいと返事してきた。「ありがと、二輝。 子供が生まれたら私たち結婚できるんだね。 私、幸せ……」 と、愛結からのメールが。 おっ、ちょっ、おまえ……。 子供が生まれたら結婚って──もう決定事項になっていて怖すぎる。 結婚せずに認知だけという形を取る可能性もあるのに、華麗にスルーしてくるあたり、愛結が怖すぎる。 子は秋頃に生まれる。 愛結の自信を見ている限りでは俺の子のようだが、彼女の自分ご都合主義の性格がわかった今では、本当のことが証明されるまでは100%信じることはできない。 もう子を産んで結婚という流れを勝手に妄想している愛結からは、その後会いたいというメールが頻繁に届くようになった。 アホかいっ。 俺らはそんな仲じゃないだろうに。 妊娠にかこつけて……どさくさに紛れて……早くも俺を手懐けようとしてくる。 あーゆ、アホ過ぎるし怖すぎるぞっと。 そんなこんなで、俺の子の誕生を待ちながらの日々は、着々と過ぎていった。 そのような日々の中で──。
last updateLast Updated : 2026-07-30
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26 ◇久しぶりの再会

   忘れもしない2月の3週目の土曜に、愛結と涼の密会の現場を突撃してから 元サヤに戻った希樹は、4月になると涼を連れて新天地へと旅立って行った。  そして6月にこちらで挙式後、また新居に戻って行った。  つい、最近のことだ。 俺は愛結との子が産まれてくるのを待っているような状況だったのだが、 そんな俺の元へ希樹から会って話したいことができたと、連絡がきた。  それは駆け足で真夏へ向かっている7月中旬のことだった。  当初は日帰りも考えていたのだが、土曜に会って翌日帰るという余裕のある 工程にした。 俺たちはお互いの住む街からの中間地点で待ち合わせをし、駅前 のホテルに併設されているカフェレストランで落ち合った。  待ち合わせ場所は、駅近くのホテル一階に入っているカフェレストランだった。 明るい照明に照らされた店内にはテーブル席が規則正しく並び、ガラスの 仕切り沿いには緑の観葉植物が植えられている。 平日の昼下がりということもあって客はそれほど多くなく、どの席にも ゆったりとした空気が流れていた。 だが、俺の気持ちはまるで落ち着かない。 愛結との件もある。 そして、希樹がわざわざ会いたいと言ってきた理由も気になっていた。  電話をもらった時から、あまりいい話ではない気がしていた。  だが、希樹を目の前にして、その嫌な予感が当たっていたことを確信する。 久しぶりの希樹との再会なのだが……。  希樹にはいつものような元気がなかった。  覇気がなく、どこかひどく緊張している様子だ。 こちらまで、一体どんな話が飛び出してくるのかと胸がざわついた。  「いよぉ、久し振り! 新婚生活はどうだ?」 「うん、お久し振り。  折角のお休みなのに遠くまで呼び出すことになってごめん
last updateLast Updated : 2026-07-31
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27 ◇逸る気持ち

  「根拠っていうか、証拠はあるのか?」「……ンとに、何ていうか。  ある時たまたま閃いちゃって……。  以前涼の車に小型カメラ搭載してたことをね、思い出したの。 それで探してみたら、車のトランクにあって。  ……見ちゃったんだよね。  今日、その証拠のSDカード持ってきてるのよ」  俺たちは残っていた飲み物を急いで飲み干した。  互いにそれ以上言葉を交わす必要はなかった。 希樹が持ってきたSDカードの中に何が映っているのか。    その中身を確認することしか頭になく、俺たちは逸る気持ちのまま 店を飛び出した。  俺と希樹はネットカフェを探し、それを見て聞いた。  日付も入っていて、映像も音声も悲し過ぎるほど鮮明に 撮れていた。はいぃーっ! ヤツらクロ確定。 「希樹、実はあれから愛結本人、彼女の両親それと俺の両親も、皆んな子供の ために結婚を考えろって言ってきて婚約破棄を白紙に戻すことになってるんだぜ。 きれいさっぱり愛結とはさよならするはずだったのに。  今は子供が産まれたらDNA鑑定して俺の子だってことが確定したら籍を入れる っていう雰囲気になってきてる」 「酷い……」 「俺の親たち、キスぐらいなら子供のために許してやれって言ってたわ。  ははっ。この映像見たら今度は何て言うかね。 参ったわ、これでよぉ~くわかった。  アイツら自分を守るためならどこまでも嘘をつくんだって ことがね。はぁ~っ!」  二輝は大きなため息を吐いた。 「俺の子なら認知はするが、再構築して結婚はないな。  希樹、サンキュー!  知らずにいたら俺、愛結と結婚してたかもしんないからね。  泥沼、蟻地獄1丁目に行き
last updateLast Updated : 2026-08-01
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28 ◇なくならない疑念

   今回二輝に見せたSDカードに入っている映像は、涼の車に取り付けていた ものだった。     涼は昨年の6月に新しく車を買い替えていた。      その直後から出先でも自宅前の路上でも (車庫にいちいちめんどくさがって入れないことがある涼にも問題はあるの だけれど)車に傷をつけられたり、タイヤをパンクされたりするようになっ たらしい。       この話は涼から昨年、何度か愚痴られていた。  そしてその対処法に小型カメラを設置したことも聞いていた。    私たちはそれぞれ自分の車を持っているので今まで涼の車を運転する ことはなかったのだけれど、たまたま先日車検があり涼の車を借りること があった。       彼の車で買い物に行ったんだけど、運転している時にふと小型カメラのことを 思い出して。      見ると車内に設置している様子はない。  今は悪戯されることもなくなって、外してしまったのだろう。        私が浮気に確信をもって気付いたのは7月頃だったけれど、小型カメラを 設置していた頃には2人の関係はすでに始まっていたかもしれない。   私はふと閃いてしまった自分の考えを、振り払うことができなかった。    小型カメラに何か映ってはいないだろうか、私の知らない何か。      私はショッピング先の駐車場に車を止めると、後部のトランクを開けて 小型カメラがないか、探した。      ここになかったら、家に帰り涼の持ち物の中を調べてみようと思った。
last updateLast Updated : 2026-08-02
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