All Chapters of 『裏切者は赦さない。愚かな奴らを一刀両断、追い込みをかける』── 陰謀 ──: Chapter 11 - Chapter 20

28 Chapters

11 ◇ため息が──

 「「フ~ゥ……」」 知らずしらず俺たちふたりの口から ため息が洩れていた。 希樹が呆れた表情で顔を傾けて俺を見てきた。  その目は次の行動をどうする? と、物語っていた。 俺はそれに答えて頷いた。    どうもこうも真実を暴くしかあるまいっ。  自分に言い聞かせた。 「あ~ゆ~!  僕ちゃん愛結にがっかりピョンよぉ!」 俺のふざけた台詞に愛結の目が一瞬、点になった。 まさかこんな場面でふざけるとは思わなかったのだろう。  その顔には戸惑いと警戒が入り混じっていた。「なに言ってんの、二輝。  私のこと、信用してないの?」「僕ちゃんだってぇ、愛結ぴょんのこと信じたかったぴょん」「ふーざーけぇーないでっ!」  愛結が怒りを顕わに大声を出す。「……ざけんな、怒るのはこっちだってぇ~の。  黙って聞いてりゃぁ、ペラペラあること無いこと無いこと しゃべっちゃってからに。 お・ま・え、自分がどんなムチャクチャなこと言ってるか 自分がよぉ~く分かってるだろーがよっ!  ちょっとはその鳥頭で物事よく考えろ。  何の根拠もなしに、俺と希樹がここまでお前らの跡を付けてくると思う?  ちゃんと根拠があるからなんだよ。 嘘をつけばつくほどお前の罪は重くなってくし、信用も ひとつまたひとつと失くすことになるんだぞ。 それ、分かっててそんな御託を並べてんのか? 俺に言えない相談があるって?  なら、希樹がいるだろ?    何で希樹すっ飛ばして涼なんだよ、おかしいだろ。 お前から涼に相談事持ち込んだんなら、お前から涼を誘惑したって ことだな? 」 「違う、誘惑なんてしてない。  ただ、相談してただけ」
last updateLast Updated : 2026-07-15
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12 ◇取るべき道

 店の中で話していても、愛結がまったく自分たちの浮気を認めず 手に負えない状況が続き、ひとまず解散することにした。 俺たちは来た時とは違う、元々のカップル同士で一緒に帰ることになった。  そこで、店から出たあと涼に付いて歩く希樹の側に寄っていき、こそっと 話をした。  「希樹、俺、今の愛結の言い訳聞いて取るべき道を決めたわ。  写真は後日渡すよ。  希樹はひとまず涼と話し合いをして、まぁそれからだな 」    「うん、そうだね、そうする。  ここからはお互い出す結論も同じになるかどうかわからないものね。 二輝、お疲れさま。  二輝がいてくれてよかった。 私ひとりじゃ、どうしていいかわかんなかったと思う」 「いやいやいや……希樹に感謝してるよ。  つらいのにありがとな。  ンじゃぁっと、ここでひとまず解散だな」 こんな風に希樹に声を掛けたあとで、俺は彼女の先を歩いていた涼に 声を掛けた。 「涼、後日証拠を持たせて弁護士向かわせるから、首を洗って待ってろ! 」「……ぁぁ」 俺が怒りに満ちた視線を投げかけたが、奴が俺の目を見ることはなかった。 そして、奴と希樹は同じ車に乗り込んだ。 このあと俺たちも車に到着。 乗り込もうとドアを開け入る前に、向こう側のドアを開けて乗り込もうと していた愛結に声を掛けた。   「あーゆーちゃんっ、あなたにも同じくぅ、弁護士挟んでぇ…… 婚約破棄しますからヨ・ロ・シ・ク ♪」 愛結には皮肉を込めて、お茶らけ気味に告げた。 このあと車に入り、エンジンを掛ける俺の横で、愛結が焦りまくりの言い訳を 垂れ流す。「ちょっ、ちょっと待って。  二輝、何かの間違いだから落ち着いてよ。  落ち着いて話せばわかるから」 こんなになってもまだ観念しない彼女に痛烈な次の一手を放つ。「はんッ、おかしいこと言う人だね。  涼が良いからチュッチュッしたり、いろいろ仲良くしてたんでしょ?  まだ俺たち結婚前だから、ちょうどいいじゃんか。  涼に結婚してもらえ。  そんでもって希樹にはちゃんとけじめつけて謝りな。 まぁ涼が愛結を第一夫人にしてくれる気があるならだけどな。  ははっ!   すぐ弁護士を向かわせるから覚悟しといてね」          ◇ ◇ ◇ ◇   涼と希樹があ
last updateLast Updated : 2026-07-16
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13 ◇見られてしまった

  社会人になった今も、実家住みの愛結。  愛結の部屋は、昔と変わらず可愛らしかった。 白を基調にしたベッドには、淡い色の枕と幾つかのクッションが並び……。 ベッドの周りには小さな間接照明やガーランドライトが飾られ、柔らかな 光が部屋を包み──窓辺や棚には小物やぬいぐるみが並び、ラタン調の家具が柔らかな雰囲気を 作り出している。 そしてベッドと並行して設《しつら》えられているクローゼットには、 籐籠やお気に入りのバッグが整然と吊るされていて……。  実家の一室とは思えないほど作り込まれたその部屋は、どこを見ても 愛結らしい『可愛い』で溢れていた。 そんな自慢の部屋の真ん中で、今の愛結は落ち着きなくスマホを 握りしめていた。          ◇ ◇ ◇ ◇  どうしよう……涼と一緒の車にいるところを二輝と希樹に 見られてしまったよ。 とにかく、あのふたりが現れた時には軽く抱き合ってたっていうか、 そうよ抱き合ってたんじゃなくて慰めてもらって寄り添ってただけだよぉ。 なのに何、あのオーバーなリアクション!  愛結はどこまでも、事実を捻じ曲げてでも── 自己中に物事を進め、強引にふたりのことをあしらおうとするのだった。 出張だって言ってたのに、私を騙してつけて来た二輝。  絶対希樹の入れ知恵に決まってる。 二輝なんてここのところ平日も土日も仕事しごとで超多忙なのよ。 だから、たまに会えたらすっごく優しくて── たまにしか会えないことをすごく気にかけてくれてたくらいなんだから。 もちろん、私を疑ってる素振りなんて1ミリもなかったのよ?  それなのに急にこんなことするなんて有り得ない。  きっと涼が希樹に尻尾を掴まれたかして疑われてしまい、私に繋がった のかもしれない。 そういうことなら、疑わしい相手《女》は他にいることにしてもらって、 私とは本当に今回たまたま相談に乗ってもらってただけってことにすればいいのよ。 涼と結婚?   するわけないでしょ。   涼からも、両親や親戚筋が筋の通らないことは許さないから結婚は無理って はっきり断言されてるし、第一私は二輝のことが好きなんだから。 涼なんて、ちょっとした遊びっていうか、暇つぶしの相手なだけだもの。 二輝だってあんなに好き好きLoveLove
last updateLast Updated : 2026-07-18
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14 ◇やさぐれる彼氏

 二輝が、涼に啖呵を切るみたいにして愛結を連れて帰って行ったあと、 私と涼はまだ乗り込んだ車の中にいた。 寒いんだけど……。  エンジンのかかっていない車内はひんやりとしている。 ちょっとヤサグレた感の涼は何も言わず、長い睫毛の付いたその瞳は フロントガラスをただ見つめているだけ。 少しも温かみの感じられない婚約者に、私は疎外感を覚えた。            ◇ ◇ ◇ ◇  そんな涼がポツリと呟いた。「いつから? なぁ、いつから俺のこと疑ってた? 」  「7月、8月頃?  疑うっていうか、最初はなんか違和感を覚えたのよね。  何となくとしか言いようがないんだけど、涼がおかしいっていうか、 そう、遠いなぁ~って! 」 「遠い? 」 「うん、すごく今まで感じたことのない距離感を感じたのが、疑いを持った キッカケだったかな。 一緒にいても前のように近くに感じられなくて寂しかったわ」「なに? その訳の分からない距離感だとか、遠いだとか。  俺的には7月からもその前も、希樹とは同じような付き合い方だと 思ってるけど」「そうなの?  だけど実際愛結と2人で会ってたわけなんだから、やっぱり気持ちは 私に向いてなかったってことなんじゃないの?  涼との気持ちの距離感が遠いって感じた私の直感は当たってたって いうことじゃない?」「……」 「涼、二輝はさっき何も言わずに弁護士挟んで処理するとだけ言い残して 帰ってったけど、そのことに関してどう思ってる?」「うん、二輝の捨て台詞を聞いて、俺もその辺のこと考えてた。  その……何か手持ちの証拠があるとか?」 「うん、いい線いってるか……な」 私の肯定の言葉を聞いて、少し涼がキョドリ出した。  今更焦っても無駄だよ、涼。 全部じゃないにしても、親友を、そして婚約者を裏切ってると断定できる くらいの証拠はあるんだからさ。
last updateLast Updated : 2026-07-18
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15 ◇怒ったり謝ったり

  「私、あれっ? って思ったので7月くらいで、本格的におかしいって思ったのが8月に入ってからだったの。 それで8月の後半辺りで興信所に涼の浮気調査頼んだのよ。 一応婚約者だし、権利あると思うんだ。 ハハっ、ちょっと吃驚した?」 「えっ、ゲホゲホッ」  涼が驚ろき過ぎて? むせた。 『いろいろ平然と好き勝手しておいて、今頃むせたりするんかい』っと、胸の中で突っ込みを入れてみた。*「なんだぁ~、それっ。 気持ち悪いなぁ~プライバシーの侵害だろ?」「普通ならね。そうだよね、そこ、怒るところよね。 ほんと、ほんと。 だけどさ、浮気してる人はそこ、怒るとこじゃなくてさぁ~、謝るところじゃないの?」  私はこんなこともあろうかと、持参してきた愛結と涼の車中でのキスシーンがくっきり鮮明に写し出されている1枚の写真を涼に見せた。「ねぇ、これ……誰と誰なの?」 涼は狭い車の中で両手をHold upして、私に全面降伏した。「この時も愛結の相談に乗ってただけなんて、埒もない言い訳なんてしないわよね? これ、れっきとした浮気じゃないの。 言いたいことあったら、今なら聞く。 ないなら、私たちこれっきりだから」「すまない、出来心なんだ。もちろん本気じゃない。 俺は希樹とこのまま結婚したいと思ってる。 今回はキスだけなんだし、許してくれないかな。 今後は絶対余所見《よそみ》しない、希樹だけだ。  俺が結婚まで考えるほど好きなのは希樹だけだから。  結婚やめるなんて言わないでほしい……頼むよ」 そう言って涼は私にそっとキスしようとした。「ごめん、こんな気持ちのままじゃぁ、今は無理」  「いや、俺こそごめん。つい気持ちが入ってしまって」  そんなこんなで、気まずい雰囲気の中──このあとようやく、車を走らせ彼が家の前まで送り届けてくれた。 私はしばらく考える時間がほしいと言って車を降りた。 そしてそのまま涼と別れ、彼の車が見えなくなるまで家の前で見送った。          ◇ ◇ ◇ ◇ 入浴したあと、ベッドの上でぼーっとしながらその夜を過ごした。 白を基調にまとめられ、ガーリーなインテリア雑貨で飾られた部屋は、柔らかな間接照明に照らされて静まり返っている。  窓辺のチェストの上にはお気に入りの香水や小
last updateLast Updated : 2026-07-19
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16 ◇恨み言

「希樹、あなたが二輝を唆したのはわかっているのよ。  あなたのせいで私、二輝と結婚できなくなったのよ。    どーしてくれんのよ。あなたは涼と別れないんでしょ?  だったら何で私たちを尾行してあんな写真撮ったりする必要 があったの? 直接話してくれたらよかったのに。 私、謝ったのに……。  二輝に一生懸命謝ったのに、取り付く島もなくて話も聞いてもらえないの ……うぅっ。  みんなあなたのせいよ。  責任とって、うぇっうえっぐぇっ」  二輝に婚約解消された愛結から私を責めたてる電話がかかってきた。 「いいわよ、希樹から涼を盗ってやる、見てなさいよ」  なんだそれっ。 最後に素敵な告白を聞かされてしまった。  もうほんとにわからず屋め、バーカバーカ。 自業自得っていう四文字熟語知らないのかよ。  私も声にならない声で、ちょびっと応戦をした。  ほんと参った。 愛結があんなにお馬鹿な子だったなんて、正直ショックはかなり 大きい。            ◇ ◇ ◇ ◇   二輝は有限実行の男だと知っていたけれど、電光石火のごとく 仕事の速い、そしてできるヤツだった。 連絡も取れずドキドキ不安な日を3日ほど過ごしたあと、 二輝から召集がかかった 翌週の日曜日、二輝の家に来るように連絡があって、私の 両親も呼ばれた。 なんなの、これっ!そんなに大事にすること?  胸の内で二輝に精一杯の反発をするけれど、どうしよう もなく不安にかられる。  何も知らない両親は、結婚式のことで何か話があるの かしら。  今からいろいろと親交を深めておかなくちゃ……とか、暢気 なことを話していた。 ノンキな……って、そうだよ、私が涼とふたりきりで会ったり してなければほんとは今頃お式の話とか、これからのふたりの 門出のことで両家揃って楽しい時間を過ごしていたはず。  涼と希樹も直に結婚するんだし、お互い暗黙の了解で それまでだけの期間限定の関係のつもりだった。 先日の密会さえバレなければ、こんな大事《おおごと》になることも なかったのよ。  どうしてこんなまずい展開になっちゃったんだろう。 なんとかしなくっちゃぁ~。 愛結、嘘も心から信じてるとそれはほんとのことになるん だから、日曜日もこの間と同じように
last updateLast Updated : 2026-07-20
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17 ◇固い決意

 そして寒さも少し和らいだ麗らかな翌日曜日……  俺の家ではすでに依頼してあった弁護士も来ていて、俺と俺の両親の4人で愛結とその両親が来るのを準備万端、証拠と共に今後作成するであろう必要な書類、そしてこの先の方針等を整えて、待っていた。 俺は自分の両親に掻い摘んで愛結とのこれまでのことを伝えていた。 その上で自分の決心を話すと、父親から「一生は長い。結婚を控えているというのに夫となる人の親友とスキンシップできるような、そしてこの後に及んで嘘を平気でつける女性とはとても信頼関係を築くことはできまい。 私もお前の決めた道でいいと思うよ」と背中を押してもらえた。  母親は愛結のことをとても気に入っていたので「そんなことがあるなんて信じられないわね、と俺の撮った写真を残念そうに眺めていた後で、今は悔しいしとても残念だけど人生山あり谷あり。 いつか今日のことを思い出に代えてあんなこともあったねって、笑える日が来るわよ、二輝。 しっかりと言いたいことを伝えてすっきりするといいわよ。 私もお父さんもあなたの後ろで応援するからね。 それにしても愛結さんがねぇ~同じ女として今でも信じがたいわぁ~。 涼くんが好きなら何であなたと別れなかったのか、不思議。 こちらが知らなければ結婚するつもりだったなんて。 ケジメをつけられない人間は駄目ね。 特に異性問題でだらしのない人は何度でもやらかすらしいから」と、残念そうではあったけれど、俺を応援してくれた。* 来客を待つ間、俺は念入りに弁護士と打ち合わせの確認をした。 そして、間もなく佐倉家の人たちの到着となる。 様子を見るに、愛結はどうも先日のことをひと言も親に話してないようだ。 にこやかに俺と両親に愛結の両親が挨拶をしてきた。 愛結だけは、流石に先日の今日で出迎えた俺と俺両親の態度を見て、今日呼ばれた意味をそれとなく察知したようだ。 俺たち3人の顔をまともに見られない様子を見ていると、それがよく分かる。 俺の両親もほぼ彼女のことはスルーだ。 どんな顔でどんな対応をしていいのか、両親も困惑してのことだと思う。 応接室に入ってもらう。 流石に椅子が足りず、2脚ほど別の椅子を置いての話し合いが始まった。 愛結の両親が世間話を始めたので、キリのいいところで俺が話しをぶっ
last updateLast Updated : 2026-07-22
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18 ◇娘を信じたい親心

   彼女の親父《おやっ》さんが訊いてきた。「うちの愛結が?  きっと何かの間違いだ、娘はそんなふしらだな子じゃない……。  そんな風に育てた覚えはない」と言いつつ、隣の愛結を見た。 「愛結、まさかそうなのか?」 「愛結、二輝くんの勘違いでしょ?  ちゃんと説明してちょうだい」 と愛結の母親が続けて言った。    それまでじっとしたを俯いていた愛結が顔を上げ、父親と母親両方に 向けて話し始めた。「そうなのよ、ちょっとしたコトなのに二輝が過剰反応 しちゃって私も困ってるの。  涼くんに相談に乗ってもらってただけなのにね。  それも会ったのは、あの日一度だけなの。  結婚前で二輝が過剰反応してるのよ」 そして、今度は俺に向けて話し出した。「この間ちゃんと説明したのにどうしてわかってくれないの? こんなことで私たちの婚約解消しなきゃいけないの?  私は二輝と結婚したいよ」  愛結の抵抗する姿を見て、彼女と両親に向けて俺は言った。  「今回、非を認めなくてもですね、皆さんが婚約破棄に応じてくだされば それでよしとしよう、そう考えていました。 ですが、どうしてもご納得していただけないようですので 仕方ありませんね。  これは先日愛結さんが言うところの、ただの相談をしていただけという日に 撮影したモノです。ご覧になってください」  そう言って先日撮り溜めた中から強烈にインパクトの強い2枚を選んで 3人に見せた。 彼女の親父さんは「これは……」と言ったきり固まってしまった。 母親は「どういうこと愛結、さっき相談事があってって……。  こんなことしておいて、相談事って……」 と憤った。 その後、しばらく押し黙っていた両親が口を開いた。 娘がしたことで不快な想いをさせたことに関しては大変申し訳なく思うが、 娘と二輝くんの結婚を自分たちは楽しみにしてきた。 娘もこのまま結婚を望んでいるので、今回のことは水に流して 穏便に済ませてくれはしないだろうかと、嘆願してきた。 「愛結、あなたちゃんと二輝くんに謝罪したの?  ちゃんと謝って一度の出来心だったと許してもらいなさい。  さぁ早く謝って!」 「二輝、ご……ごめんなさい」 愛結はそん
last updateLast Updated : 2026-07-23
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19 ◇嘘つき女

  「あーゆ、嘘はだめだよ、一度だけ?……じゃあないよね?  そうやってずっと俺を一生騙すつもり?  結婚して一生添い遂げようって相手にだぞ! もうそれって俺の知ってる好きだった愛結じゃない。  俺の知らない女だ。」 「二輝、ホント1回だけなの。  嘘ついたのは悪かったけど── だけど、それは二輝に婚約破棄されるのが怖かったから。  私が好きなのは…… 結婚したいのは…… 二輝だけ。 これはホントのほんとよ。結婚止めるなんて言わないで。  私たち今まで仲良く上手くやってきたじゃない。  こんなことで別れるなんて、私、納得できないよ」  愛結の未だ続く抵抗の言葉に続いて、彼女の親父さんが援護して言った。 「今すぐ婚約を破棄しないで、もう少し考えてみてくれないだろうか。  娘は二輝くんを好いている。結婚も楽しみにしている。 腹も立つだろうが一時の気の迷いと許してやってほしい。  ほんとに娘が馬鹿なことをして申し訳なかった。  家に帰ったら娘にはいろいろと今後このようなことがないよう、 よぉ~く言い聞かせるので、よろしく頼むよ二輝くん」  俺は佐倉家の面々の厚顔に呆れた。「じゃあ、お尋ねしますけど、一度なんだから許してほしいと あなた方はおっしゃる。  では、もしも以前から何度も継続していたり、身体の関係も 否定できない可能性でもあればその時は、俺の……北尾家の 要求を呑んでくれますね?」  予想もしてなかった俺の詰問に、愛結の父親はギクっとした表情をして 自分の妻の方を向き、アイコンタクトをとった。 愛結の方はと言えば、表情が明らかに変わった。 俺は両親の返事を待たずに希樹から借りた更なる証拠写真を見せた。 「これは9月頃に興信所が撮った写真です。
last updateLast Updated : 2026-07-24
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20 ◇二輝と愛結の婚約破棄

   「前からちょくちょくこうやって涼と逢引してるのに、どの口が俺のことが 好き、結婚したいって言えるのか。  ほんと俺ピエロ? ただの道化師だな……あーゆっ《愛結》?」  彼女の親父《おやっ》さんが愛結を平手打ちした。  母親も愛結の肩を叩いて泣いた。 「お前という奴は、恥ずかしくないのか?  往生際の悪い。  最後のさいごまで、見られてはまずい証拠を出されるまで平気で嘘をつき 続けて、俺も母さんも二輝くんや彼のご両親にどんな顔をすればいいんだ」  愛結の両親は俺と俺の両親に何度も頭を下げ、今度こそ婚約破棄を 受け入れ愛結を連れて帰って行った。 彼らは結局のところ婚約破棄を納得し、諸々のこちらが使った費用も 返金するということで、合意したのだった。 万が一を考えて弁護士を呼んでいたけれど、出番はほぼなかった。  思ったよりあっけなく終わり、ヤレヤレだ。 涼も呼んで〆めてやろうかと思ってたけど、希樹が別れないなら 今の段階で涼の両親に知られるのはまだまずいのか? とも思い 呼ばなかったのだ。          ◇ ◇ ◇ ◇  考える時間がほしいと別れたあの日から、20日が過ぎた。 涼からは例えたった1行のメールであったとしても毎日1回は必ず メッセージが届いていた。大体1日に2~3回届いた。「今日も一日が終わろうとしているれど、考えるのは希樹のことばかりだよ。  一度久し振りに会いたいな。  直接話したいこともできたので、休みの日に軽くLunchしない?  すごく希樹に会いたい」  このまま会わずにいても心がクサクサするだけなので、彼と 20日振りに会う事にした。 私はOKの返事をした。 涼は一体どんな話を私にしてくるのだろう。  その話を聞いたら私は自分の取るべき道を決められる?  そう考えると会いたいような会うのが怖いような。 でもこのままの状態で留《とど》まっていられないのなら、会うしかない。  そして自分の心を確めるしかないのだ。
last updateLast Updated : 2026-07-25
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