美月は、拓也から届いた手紙を封筒へ戻した。 できれば二度と見たくない。 それでも、捨てるわけにはいかなかった。「明日、藤崎先生に連絡します」 美月が言うと、父が頷いた。「その方がいいな」「うん」 母はまだ玄関の方を気にしていた。「でも、本当に誰だったんだろう。あの人」「何か言ってなかった?」「『朝倉美月さんに渡してください』って、それだけ」「拓也の名前は?」「言ってないよ。だから私も普通に受け取っちゃった」「そっか……」 母を責める気にはなれなかった。 自分宛ての封筒を持ってきた人間が、拓也に頼まれた人物だとは普通は思わない。「顔は覚えていますか?」 蒼真が尋ねる。「うーん……見たら分かると思うけど」 母は少し考える。「知らない人だったから、そんなにちゃんとは見てないかな」「そうですよね」 蒼真もそれ以上は聞かなかった。 美月は封筒をバッグへしまう。 せっかく久しぶりに実家へ帰ってきたのに、気持ちはすっかり沈んでしまった。「ごめんね」 思わず口から出た。 父が眉を寄せる。「何がだ?」「せっかく久しぶりに帰ってきたのに、また拓也のことで……」「美月が謝ることじゃないだろ」「でも」「手紙を持ってこさせたのは拓也さんでしょ」 母も言う。「美月じゃないんだから」「……うん」 何度も同じことを言われている。 拓也がしたことまで、自分の責任にしなくていい。 頭では分かっているのに、つい謝ってしまう。「今日はもう、その話やめよう」 母
Last Updated : 2026-08-20 Read more