数日後。 拓也は自宅のソファでスマートフォンを眺めていた。 画面には、以前保存した病院周辺の地図が表示されている。 あれから何度も開いていた。 行くつもりはない。 ただ見ているだけ。 そう思っていたはずだった。「……今日、暇だな」 拓也は呟いた。 仕事はまだ決まっていない。 応募しようと思って求人情報はいくつか見たものの、実際に応募したのは二社だけだった。 一社からはすでに不採用の連絡が来ている。 もう一社からは返事がない。 拓也は地図へ視線を戻した。 病院へ行くわけではない。 近くへ行くだけなら、何も問題はない。「別に病院に用があるわけじゃないし」 誰に聞かれたわけでもないのに、口に出していた。 美月が今日、健診だという保証もない。 そもそも、今も同じ病院へ通っているかさえ分からない。 なら、会う可能性などほとんどない。 それでも――もし会ったなら。 それは偶然だ。 拓也は立ち上がった。「ちょっと出てくる」 リビングにいた和江が振り返る。「どこ行くの?」「その辺」「仕事探し?」「まあ、そんな感じ」 嘘ではない。 帰りに求人でも見ればいい。 拓也は家を出た。 病院の最寄り駅に着いたのは、昼を少し過ぎた頃だった。 改札を出たところで、足が止まる。「……本当に来ちゃった」 一瞬だけ、帰ろうかと思った。 だが、ここまで来たのだから少しくらい歩いてもいい。 病院とは反対方向へ行く理由もない。 拓也は地図を確認しながら歩き始めた。 やがて、見覚えのある建物が見えてくる。 以前、美月を見つけた病院だった。 正面玄関から少し離れた場所で足を止める。 病院へは入らなかった。「これなら何もしてないよな」 ただ道に立っているだけだ。 誰かを待っているわけでもない。 そう考えながら、出入りする人たちを眺める。 十分。 二十分。 三十分。 美月は現れない。「そりゃそうか」 拓也は苦笑した。 健診の日なんて知らないのだから、当然だ。 帰ろう。 そう思った時だった。 病院の前に、一台の車が停まった。 拓也の表情が消える。 見覚えがあった。「……九条」 運転席から蒼真が降りてくる。 そして助手席へ回り、ドアを開けた。 そこから降りてきた女性を見た瞬間。 拓也は息を止
Terakhir Diperbarui : 2026-08-23 Baca selengkapnya