拓也はスマートフォンの検索結果を何度も読み返していた。 別居中。 離婚調停中。 妊娠中。 出生届。 戸籍。 検索する言葉を少しずつ変える。「……やっぱり、俺の子なんだよな」 美月はまだ自分の妻だ。 その事実だけで、拓也は安心した。 離婚が成立していない以上、全部の関係が切れたわけではない。「だったら、急ぐ必要ないじゃん」 拓也はベビーベッドを見る。 美月は帰らないと言った。 赤ちゃんをここで育てるつもりもないと言った。 けれど、今すぐ離婚できるわけではない。 それなら待てばいい。 出産まで。 その後まで。「ずっと会わせないなんて無理だろ」 拓也はそう結論づけた。 その頃。 美月はカフェから帰る車の中にいた。「久しぶりに楽しかったです」「そうですか」「店長、全然変わってなくて」 美月は笑う。「体調が落ち着いたら、少しずつ戻れたらいいなって思いました」「いいと思います」 蒼真の返事は短い。 それでも美月には十分だった。 拓也のことばかり考えて過ごしたくない。 調停がある。 病院もある。 警察にも相談している。 けれど、それだけが自分の生活ではない。 カフェにも戻りたい。 子どもが生まれた後のことも、自分で考えたい。 少しずつ。 拓也とは関係のない予定を増やしていきたかった。 数日後。 藤崎との打ち合わせで、美月は前回のメールについて話していた。「拓也、あのあと何か言っていましたか?」
Last Updated : 2026-08-31 Read more